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記者・大草芳江が活動をつづります

2008年1月31日

赤パンと死海 (仙台一高・生徒指導部長を取材しました!)

カテゴリ:取材日記

仙台一高の生徒指導部長、
藤田英幸さんにインタビューしてきました。

生徒指導部長と言うと、強面の方が多いですが、
藤田さんも例に漏れず、ちょっと見た目は怖いです。

でもお話ししてみると、このあたたかさ。

080131-01.jpg

実はもともと、若林区の要請を受けて仙台一高が協力する
3月のあるイベントについてお話を伺っていたのですが、

「いいんじゃないですか、一高ですから。世の中のための一高だ」と
大らかに話す藤田さんのお話は、
仙台一高のスタンスをよく描写してて大変興味深かったので、
藤田さんのお話を、ここでは、ほぼそのままご紹介しようと思います。

■生徒指導部ではなく、生徒「支援」部。
―――――――――――――――――――――――――――――

「上から押さえつけるよりも、見守って、後方支援をしていく。
つまり生徒をバックアップしていくのが、一高スタイルです」。

と藤田さん。
名刺には「生徒指導部長」の肩書きがありますが、
内部では、生徒指導部ではなく、生徒"支援"部と呼ぶそう。

「指示待ち人間をつくりたくないんでね。
校訓は『自重献身』、標語は『自発能動』。
生徒たちも意識しているのではないでしょうか。
これが、一高が一高たる由縁なんでしょうね」。

「自発能動」の精神は「発起人制度」という制度を生み、
行事は、各学年の有志で企画・運営されています。
ここでも、どんなに時間がかかろうと、教員は見守る姿勢を貫くそう。

例えば、「運動祭」。
朝の8時からはじまって、なんと20時に終わったこともあるとか。

「生徒からクレームが出てると、そこで審判との協議がはじまって、
試合が一時間止まることだってあるんです。
生徒が自分が納得するまで、とことん協議するんですね。

それをじーっと見守る生徒たちも立派です。
それをまたじーっと見守る先生方も立派です。

納得するまで、とことんさせます。
気がつくと、お月様が上っている。
けれども保護者からのクレームも、来ませんでしたね。

もちろん子どもたちだから、気づかないこともあるので、
ヒントは与えます。けれども答えは教えません。
自分自身で答えを見つけていくんです」。

―先生方は自制心を以って、
「自重献身」と「自発能動」が成立する条件をつくっているんですね。

「時間もかかるし、失敗もあるのですが、
教員は"こういうやり方もあるぞ"程度に留めておくんです。
そこからチョイスするのは、生徒自身。
どう考え、どう判断して、どう動いていくか、それを決めるのは自分自身なのです」。

■赤パンと死海
―――――――――――――――――――――――――――――

「卒業生は皆おもしろい生き方をします。
留学をしたり、旅に出たりしているやつも多いようだ。
それも普通の人なら行かないところ、観光地じゃないところに行っていますね。
おもしろいエピソードがあるのだけど、一高には"赤パン"というものがあるんです」。

と取り出したのは、真っ赤な海パン。

080131-02.jpg

※リース用なので、「体」と書いてあります。

仙台一高のプールの時間では、この赤パンをはいて授業をするそう。
「全員で授業をやると、壮観ですよ」と藤田さん。

「ある卒業生が中東を旅していたとき、こう思ったそうです。
"せっかくここまで来たんだから、死海を赤パンで泳いでみよう"
一高生は好きですから、赤パン(笑)」。

―皆さん、これを卒業後もはかれるですか...?

「どう見たって、今どきじゃないデザインなんですよ。
でも我々はこれにこだわります。
一高生の命ですから、やっぱり(笑)」

―高校ジャージをパジャマに再利用する例は多いでしょうが...

「例えば、一高体操と言うものがあるのですが、
結婚式で赤パンをはいて、一高体操を踊ったりしますから」。

―卒業後も、まだまだ使い道があるようです。

「それでね、その卒業生が、宿で赤パンを干していたそうなんです。
そしたら、見知らぬ人が訪ねてきて、こう言ったそうです。
"君は、一高生かい?"」

―世界広しといえども、治安も安定しない中東でですか?
しかも、赤パン、ですか。

「死海でばったりと会ったそうなんですよ。
赤パンが目印になるなんてねぇ」。

一見、ただの笑い話。
けれども、一高のスタンスを端的に表すエピソードです。

「卒業生や保護者の顧客満足度が非常に高いんです。
一緒に酒を飲むと、"やっぱり先生、一高でよかった"って皆口にしますね。
酒飲んで、毎回校歌を歌いますよ。校舎向いて。
大絶叫ですよ。それくらい卒業生は、一高が好きなんです」

―確かに一高OBの母校愛は、印象深いものがあります。

「いた人じゃわからないところだけど、
勉強以外にも得られるものが、ここにはあります」。

■他の学校と違うというのは、赴任して3分でわかった。
―――――――――――――――――――――――――――――

藤田さんは、もともと北学区出身。
実はあまり仙台一高の事を知らないまま、
約10年前に仙台一高へ赴任してきたそうです。

その時の印象について、藤田さんはこう話します。

「"たかが一高、されど一高"
生徒らは自己主張するは、納得いかなければとことん食いついてくるは。
でも聞くところはちゃんと聞くし、今どきこんな生徒たちがいるのかと驚いたよ」。

仙台一高の就任式では、「熱烈歓迎会」という伝統行事があるそう。

「就任の挨拶で、拍手がはじまりますよね。
ずっ~と拍手が鳴っているんですよ、挨拶が終わるまで」。

こちらが声を大きくすると、負けずと拍手も大きくなる。
これは、高校生と真剣勝負だと思い、藤田さんも必死になったそう。

「私もマイクを外して、肉声でしゃべりました。
そしたら一高生も、"こいつは只者じゃないようだ"と思ったみたい」。

―生徒さんと向き合えるかどうかが、この熱烈歓迎会で判断されそうですね。
非常にユニークな伝統です。

「一高生は遊び心あるし、単に偏差値だけでは比べられない魅力があるのではと思う。
合う合わないは、もちろんあるとは思います。
個性的な学校で、いろんな人間が、いろんなことをできる場所です」。

■いじめがない理由
―――――――――――――――――――――――――――――

「個性があると、普通はいじめられますね。
けれどもいろいろな人間がいるから、いじめがない場所です。
"そういう人間がいてもいいんじゃないか"と認め合うんだよね。
俗に言う"変わっている子"も、のびのびと生活しています」。

―俗に言う"変わっている子"というのは、つまり、
ひとつのものさしでは計れない、ということですよね。
上意下達の仕組みで管理してしまえば、
ひとつのものさしに合わない性質や人間が排除されてしまうけど、
ここではその間逆の仕組みがあるからこそ、
生徒本来の多様性が、きっと保持されているのでしょう。
まさに、「自重献身」と「自発能動」が生み出す場ですね。

「そうですね、世の中、ものさし1本になりつつある。お金とか、成績とか。
でも多様な価値観を認められる余裕が欲しいところに、この学校はいいと思います」。

―まるで、小さな社会ですね。ウィキペディアのような。

「生徒たちは、誰かがつまらないことを言ったと判断すれば、"ぴしーっ"と言うし、
逆に"ここは皆話を聞くところだぞ"と判断すれば、自重の"しーっ"を言うんですね」。

校則らしい校則はない、と言う藤田さん。

「ここにあるのは、世のため人のため、"自重献身"という行動の規範。
そして、自ら考え行動する、どう生きるべきかという"自発能動"の精神。
それ以上のものは、いらないんですよね」。

■伝統は動いている
―――――――――――――――――――――――――――――

「絶滅危惧種みたいなものなんじゃないですかね、一高は。
仙台一高だから、こういったものが、残っているのでは」。

―それって、"伝統"というやつなんですかね?

「伝統の力って、すごいと思いますよ。
伝統というものは、只者じゃないですね。
伝統の重みと言うものを、ここにいると感じます。
中途半端なものじゃない、ずしっとしていて、
守らなきゃいけないものを、感じますね」。

―「自重献身」と「自発能動」の軸が、伝統なんですね。
時代に合わせて変化しているように見えても、
軸だけが変わらないということでしょうか?

「何も動かないのが伝統ではなくて、
マイナーチェンジやフルモデルチェンジを繰り返しながら、
時の生徒が、自分の学校がどうあるべきかを判断して考え、
戦ってきたものがあると思います」。

例えば仙台一高では、運動祭の種目も生徒が決めるそう。

「変わった種目も多いんですよ。
毎年、新種目を準備しないといけないという伝統があるのですが、
アンケートをとって過去の種目よりも優れていると判定されれば、
"伝統科目"として加わります」。

―クリエイティブな仕組みですね。

「運動祭の開催日も、以前は4月29日の祝日開催でしたが、
生徒の発案で、今は平日開催になっています。

ある日、たまたま台風が来て、平日開催になったことで、
部活の試合でこれまで参加できなかった生徒も参加でき、
非常に盛り上がったことがありました。
そこで、"運動祭は、外向きの行事なのか、内向きの行事なのか?
女子学生に来てもらうための行事じゃなく、内向けの行事ではなかろうか?"
と発起人が皆の前で演説したんです。
結果、賛成多数で可決され、翌年からは平日開催になりました」。

―民主主義ですね。

「もちろん衰退する時はありますよ。
でもそのときに、"これでいいのか?"と核になる生徒が出てきて、
崩れそうになると、それをこらえようとするマンパワーがあるんですよね。」

「自分もこの中に入って、はじめてわかることが多い」と藤田さん。
「自重献身」と「自発能動」を軸に、学校という枠の中で、
小さな社会があるような印象を受けました。

藤田先生のお話も含めた、
「仙台一高らしさ」にせまる仙台一高特集は、
もう少しでオープン予定です!

もう少々、お待ちください。

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