取材・写真・文/大草芳江 2008年3月7日公開
宮城県では、平成22年4月高等学校入学者から現行の通学区域(5地区14学区)が撤廃され、全県から学校を選択できるようになる。だがそもそも、各高等学校の特色はどのように違うものなのだろうか?中学生の主体的な進路選択が推進されるよう、高等学校の特色などを取材して紹介する。今回は、ユニークな高校として知られる宮城県仙台第一高等学校の仙台一高「らしさ」にせまった。
自由な校風と自発能動の精神
校内には大槻文彦氏の銅像がある。
図書館で「言海」(全4巻)に出会うことができる。
仙台一高は旧制仙台一中以来の伝統校で、初代校長は日本初の近代的国語辞典『言海』の編纂者である、国語学者・大槻文彦氏。仙台一高の自由な校風は、自主性と自由を重んじる学者ならではの気質が、どうやら基盤にありそうだ。
仙台一高を知る・7つのトリビア
「自由な校風と自発能動の精神」と聞いていても、具体的なイメージは意外と湧かないもの。そこで仙台一高の特色を表す、7つのトリビアをご紹介しよう。
標語である「自發能動 以亮天功」を成就するため、「発起人制度」が定められた。
仙台一高には、生徒会はあるが、いわゆる「生徒会長」や「執行部」がない。では、生徒会活動や学校行事はどうしているのかと言うと、仙台一高には「発起人制度」という全国でも類をみない制度がある。いわゆる「執行部」や「生徒会長」等がなく、文化祭や体育祭等の実行委員会は、各学年の有志で構成される。反面、実行委員が募らなければ文化祭などの行事は中止になる。まさに「自重献身」と「自発能動」を体現する制度だ。実際に過去にたった一度だけ、文化祭が中止になったことがあるそう。これも生徒があえて「やらないこと」を選んだ結果であるようだ。
制服がないのは有名だが、「一足主義」と言って上靴もない。靴のまま教室に入れる。もちろん下駄箱もないので、いわゆる玄関らしきものもない。
職員室の代わりに、各教科の研究室が教室の間にある。そのため研究室に行けば、担当の教員が不在であっても,他の教員から指導を受けることが可能。歴史的には、生徒と共に学び共に進む「具学具進」をモットーとした第10代校長の小野徳四郎氏が、「互いに刺激し合いながら学ぶことにより、互いに成長する」と考え,一部の教科の研究室をつくったことがそのはじまり。その後、東北大学工学部を定年退職後に仙台一高の校長となった第11代校長の宮城音五郎氏が,「教員も研究が必要だ」という考えのもと、全ての教科について研究室をつくった。
教員の著書。
左/平居高志(国語)、右/加藤徳善(物理)
取材活動を通して、仙台一高には研究熱心な教員が多い印象を受けた。中には、著書を出版している教員もいる程。もちろん研究好きな教員は、どの学校にもいるだろう。だが研究者気質の教員が力を発揮できる環境は、そう多くはないかもしれない。具学具進の精神は、確かに根付いているようだ。
仙台一高と仙台二高のライバル関係は有名な話だが、その対立姿勢は、単語レベルにまで徹底されている。体育祭を指す場合も、仙台二高が「大運動会」であるのに対し、仙台一高は「大運動祭」であるから、特に新入生はその表現に気をつけよう。一見、単にいがみ合っているだけなようにも見えるが、その根底には、お互いの個性を認め、切磋琢磨していこうという精神が見え隠れする。
授業中も、教師の発言に対し、度々[p∫i:]が発せられる。
[p∫i:]という独特の表現は、仙台一高生独自の意思表示の手段。不適切な発言への不満及び批判から賛同まで、幅広く使用されている。「[p∫i:] を発する生徒は、それなりの考えをもっている、りっぱな生徒です」と伊藤教頭。一方で、卒業後、公の場で[p∫i:] を使えないことに物足りなさを感じる生徒もいるとか。いずれにせよ[p∫i:] は仙台一高独自の表現手法。生の音を聞いてみたい方は、是非仙台一高へ足を運んで欲しい。
青色が校長室。南に生徒の教室がある。ちなみにピンク色は、理科系の実験室や講義室。県内トップクラスの広さを誇る。
校内は「生徒の環境を第一に考えての設計」だそうで、南側の日当たりの良い場所が生徒の教室に設計されている。一方、校長室はなぜか北向き。校長室の裏がアイスバーンにならないよう技師が苦心する程、日当りは不良とか。設計者の中にはOBもいたようで、仙台一高の校風を熟知していた模様。いずれにせよ、生徒第一の学校であるらしい。
廊下には、各分野で活躍する卒業生の新聞記事などが、所狭しと貼られている。
仙台一高は1892年の設立以来、各分野で活躍する著名人を多数輩出している。またOBの結束力も強く、卒業後も仙台一高を愛してやまないというのも有名な話。総合的な学習の時間には、第一線で活躍しているOBが校外研修講師として授業を行っている。また、OBからの寄付や寄贈も多い。OBからの見えないバックアップの力は大きいようだ。
仙台一高出身の著名人(敬称略)
青木存義(どんぐりころころの作詞者)、吉野作造(政治学者、大正デモクラシーの理論的指導者)、 奥田新三(商工次官、セントラル硝子社長・会長)、 一力次郎(元河北新報社社長)、 内ヶ崎贇五郎(元東北電力社長)、岩越忠恕(元日産自動車社長)、加藤陸奥雄(第13代東北大学総長)、 武田豊(元新日本製鐵会長 )、佐藤功(憲法学者、上智大学名誉教授)、 石田名香雄(第15代東北大学総長)、一力一夫(河北新報社社主・会長)、 佐藤道夫(参議院議員(民主党))、菅原文太(俳優)、井上ひさし(作家)、 樋口陽一(憲法学者、日本学士院会員、東京大学名誉教授、東北大学名誉教授)、 藤原作弥(元日本銀行副総裁)、守屋武昌(元防衛事務次官)、 本川達雄(生物学者、東京工業大学教授)、 小池光(歌人、仙台文学館館長)、野家啓一(哲学者、東北大学教授) 、梅原克彦(仙台市長)、 桜井充(参議院議員(民主党))、佐伯一麦(作家)、一力雅彦(河北新報社社長)、 岩井俊二(映画監督)、坂本タクマ(漫画家)、小久保英一郎(天文学者(国立天文台))、等多数 。
名物先生が語る「仙台一高」らしさとは
「赤パン」と「死海」の意外な関係が、「仙台一高らしさ」を物語る?!
生徒指導部長の藤田さんと「赤パン」
生徒指導部長と言えば強面と相場が決まっているが、藤田さんもその例に漏れない。しかし会話からにじみ出るその実直で温かい人柄に、藤田さんを慕う生徒は多いことは容易に想像できる。仙台一高の日常生活や行事からそのスタンスまで、ユーモアを交えながらのロングインタビュー。 [詳細]
校長が語る、仙台一高「らしさ」
「見守る」姿勢の意味するもの。伝統の底に流れるものとは―
「外から見たら、私たちは何もしていないように見えるかもしれません」。北島博校長は、柔和な表情で、こう話しはじめた。北島校長から語られる、仙台一高「らしさ」を表す様々なエピソード。本特集制作にあたり、数々の教員や校長ら管理職と接してきたが、そこに驚く程、共通していた点は― 自制心を以って「見守る」姿勢。社会という名の大海原で自分を持って生きるには、自分自身で羅針盤をつくるしかない。いずれ社会へ旅立つ生徒への、心からのエール。一朝一夕でできることではない。序列化によるコントロールを排除した「見守る」姿勢とは、つまり、多様性を受け入れる器量なのだ。 [詳細]
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仙台一高教諭が東大教授と公開授業でバトル?!
東京大の小森陽一教授が講義、授業検討会へ参加
写真左:平居さん(仙台一高教諭)
写真右:小森さん(東京大学教授)
高等学校教諭が東京大学教授と公開授業で対決?!そんなユニークな公開授業が、宮城県仙台第一高等学校を会場に、みやぎ教育文化研究センターの主催で、07年12月、開催された。 [詳細]
教諭(国語担当) 平居高志さん
普通の人なら怖気づいてしまうであろう、東京大教授との公開授業対決。
しかし平居さんは、「授業を常にしている身なので、断る理由があったら教えて欲しい」
と主催者の申出を快諾。そのスタンスは、まさに教師の鑑。自身で本も出版している。
仙台一高で部活体験教室 学区制度撤廃に向け、進路選択の参考に
宮城県仙台第一高等学校(北島博校長)は26日、県内中学校第1学年在籍の男女を対象にした、化学部・吹奏楽部主催の体験教室を実施する。平成22年度からの学区制度撤廃に向け、生徒たちの進路選択の一助として、同校への理解を深めてもらうのが狙い。 [詳細]
教諭(吹奏楽部顧問) 菅野淳一さん
初心者を全国へと導く指導力の秘密は、鳴らしていない音を味方につける「良い音づくり」。
「料理と同じ。よいダシ(音)をとれれば、よい料理(音楽)づくりに結びつくんです」。
自身も研究を欠かさないその指導スタイルに、仙台一高の「具学具進」の精神を感じる。
教諭(化学部顧問) 藤川卓志さん
仙台一高化学部は、数々のコンテストでも優秀な成績を収める実力派。
生徒自ら試行錯誤し見つけていくことを重要視する藤川さんは「見守る」スタンスを貫く。
「本当は言いたいんです、あそこに書いてあるよ、って(笑)」。
「自発能動」の精神がここでも垣間見える。
市場競争の重要性学ぶ 仙台一高で公取委が出前授業
近い将来、社会人として経済活動に参加する高校生に対し、市場経済と独占禁止法などの役割を理解してもらおうと、「高校生向け独禁法教室」が13日、宮城県仙台第一高等学校(仙台市)で開催された。公正取引委員会事務総局東北事務所(仙台市)の職員3名が講師として派遣され、1年生37名が、企業の市場競争を促す独占禁止法の意義などについて学んだ。 [詳細]
現役生へのロングインタビュー
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