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記者・大草芳江が活動をつづります

2013年9月15日

長崎の軍艦島に上陸してきました(世界遺産に推薦へ)

カテゴリ:フォトギャラリー

 世界文化遺産の2015年度登録にむけた今年度の政府推薦候補1枠が、長崎の端島(軍艦島)なども含む、「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」となる方針が固まったことが、昨日、報道されました。その軍艦島に、実はちょうど先週、上陸してきました。

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長崎の端島(軍艦島)を海上から望む

 というのも、法事のため、数年ぶりに帰った長崎で、約半日の自由時間、「さて、何に有効活用しよう」と考えた時、ふと目に入ったのが、「軍艦島クルーズ」の文字。そういえば、軍艦島は2009年、上陸が解禁されていたのでした。

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空港や観光地など至る所で見られた、「長崎の教会群」を世界遺産へ!

 同じく今年度の世界文化遺産への政府推薦候補として競合していた「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」も、この機会に本当はまわってみたかったのですが、教会群は島々に点在しており、半日でまわるのは到底無理。

 それに対して、軍艦島クルーズは所要時間3時間程度、出発地の長崎港までは長崎市街地から徒歩圏内。これはもう軍艦島に行くしかないと、上陸を即決。タクシー運転手さんの話によると、軍艦島クルーズの運営会社は3社、料金は3~4千円のようです(ガイドさん付き)。

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いざ、軍艦島クルーズへ

 利用したのは、朝9時出発の船でしたが、思った以上に満席でした。「観光ポイントは全て船の進行方向右側にある」との事前情報を得て、2階右側席を死守すべく、早めに列へ。案の定、2階右側から席が埋まる中、何とか2階右側最前列に座ることができました。

 軍艦島は長崎港から南西に約19kmの沖合にあります。出航して間もなく、巨大な三菱重工長崎造船所が、事前情報通り、進行方向右側に見えました。この造船所では、戦艦「大和」と並んで有名な戦艦「武蔵」もつくられたそうです。停泊中の海上自衛隊イージス艦も見えました。

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三菱重工業長崎造船所

 「長崎の産業は、三菱重工の造船で成立していた」と元・三菱社員の大叔父が話していたことを思い出しました。後から調べると、この三菱重工業長崎造船所も、今回の産業遺産の一つとして、稼働中の工場としては初めて、推薦されるようです。

 続いて、長崎湾のランドマーク「女神大橋」、隠れキリシタンが身を潜めていたという「高鉾島」「神の島」、昔は炭鉱の島で今はリゾートの島「伊王島」「高島」が、事前情報通り、すべて進行方向右側に見えました。その一つひとつに、歴史を感じます。

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軍艦島が近づくと、船の2階右側最前列はカメラを持つ人たちでごった返した

 そして出航から約45分、いよいよ軍艦島が見えてきました。四角くて黒っぽい、いかにも人工的な形をした島です。軍艦島の正式名称は「端島(はしま)」。外観が軍艦「土佐」に似ていることから、軍艦島と呼ばれるそうです。

 軍艦島に上陸すると、廃墟と化した建造物群が異常に密集してそびえ立つ光景が目に飛び込みます。一瞬、自分がどの時代のどの国にいるのか、わからなくなるような不思議な感覚に陥りました。桟橋近くでゆらゆらと泳ぐ青い魚たちが、対比して、一層鮮やかに見えた気がします。

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軍艦島に無事上陸。天候の関係で、上陸できない場合も多いという

 軍艦島で見学できるポイントは3箇所だけです。崩壊の危険性があることから、ほとんどが立入り禁止です。ガイドの方が、当時の写真を交えながら、軍艦島を丁寧に案内してくれました。

 そもそも軍艦島とは、炭鉱のためだけにつくられた島です。江戸時代は佐賀藩が小規模な採炭を行なっていましたが、1880年に三菱が10万円で買い取り、採炭を開始しました。大変良質な石炭が採れたことから、八幡製鐵所などに製鉄用原料炭として送られたそうです。

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日本初の鉄筋コンクリート造りの高層集合住宅

 もともと現在の3分の1ほどの大きさしかなかった島ですが、周りを埋め立てる形で護岸堤防の拡張を繰り返し、今日の島の形に。狭い島で多くの人が生活するために、日本初の鉄筋コンクリート造りの高層集合住宅が建築されたのも、ここ軍艦島とのこと(1916年)。

 最盛期には(1960年頃)、東京ドーム1.3個分の土地に、約5,300人もの人々が住んでいたそうです。これは、どれくらいの人口密度かと言うと、当時の東京都の人口密度の9倍、当時世界最大の人口密度ということですから、驚きです。

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ガイドの方が手にするのが、当時の共同浴場の写真だ

 幹部職員の社宅は風呂付でそこそこ広かったようですが、鉱員は6畳一間に家族全員で住み、浴場は共同。なお、浴場は3階層に分かれ、下部の浴槽に鉱員は服を来たまま入り、次の中部の浴槽でやっと服を脱ぎ、上部の浴槽で綺麗になったそう。水も貴重だったのでしょう。

 しかも、高層集合住宅は、島を襲う高波から、石炭を守るための防波堤としての役割も果たしたとか(特に台風の時は、護岸を軽く飛び越えて、島全体を覆うくらいの高波が来るらしいです)。

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写真中央上に見えるのが高層集合住宅、写真右手は学校

 そんな話を聞いて、さぞかし鉱員の生活は辛くて過酷だったろう...と想像したのですが、ガイドさんの話によれば、「鉱員は、食物と着物だけにお金を払えば良く、生活は裕福だった。端島の家庭は県下一の電化製品普及率を誇り、東京オリンピックも見れた」とのこと。

 島には、学校や病院、売店のほか、映画館やパチンコホールなどの娯楽施設もそろい、行商で賑わっていたそうです。プールもありました。逆に言えば、唯一困ったことは高波や台風だけだった、とのことです。

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プール跡

 もちろん炭鉱の仕事は、気温30度・湿度95%とスチームサウナ並の悪条件のもと、ガス爆発などの危険と常に隣り合わせの仕事ですので、大変過酷であったはずです。きっと、豊かさへの希望が、人々の気持ちを明るく前向きに掻き立てたのでしょう。

 しかしながら、エネルギー革命で石炭から石油へ需要が移ったことで、軍艦島は1974年1月に閉山。当時、島にいた約2千人は3ヶ月以内の立退きを求められ、同年4月、軍艦島は無人島になりました。炭鉱のためだけにつくられた島は、その役目を終えたのです。

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廃墟と化した総合事務所

 それから、たった40年足らずで、人の手が入らなければ、ここまで廃墟と化してしまうことに、ショックを受けました。栄えていた頃の人々の生活や高揚感を想像しながら、現在の軍艦島の姿を見ると、人類の営みとは何と儚いものだろうと感じます。

 それと同時に、エントロピーは増大するという自然の摂理も強く感じられ(もちろん海水や海風の影響で風化が早いこともあるでしょうが)、人類の営みと自然の摂理の縮図を見たような気持ちになりました。

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最後に、軍艦島を周回して、船は長崎港へ戻る

 そして今もなお、軍艦島は、日々刻々と風化しているそうです。船員さんに話を聞くと、「去年と今年でも軍艦島は違う。また上陸禁止になるかもわからない。保存のため、原爆ドームのように風化防止の処理を施すかどうかも難しい議論」とのことでした。

 また、件の世界文化遺産の話について聞くと、「長崎としては、教会群登録の方が潤う」と話していました。実際に長崎市内では、「長崎の『教会群』を世界遺産へ!」という標語をよく見かけました。「軍艦島」より先に「教会群」登録を求めていた長崎。今回の決定には揺れているようです。

 いろいろな意味で、複雑な気持ちになった、今回の軍艦島上陸でした。

【追記】 トルコライスの日(9月16日)、消える

ピラフ、スパゲティ、トンカツを一皿に盛った、長崎発祥の「トルコライス」をご存知ですか?
実は、トルコとはあまり関係は無いようですが、ご当地グルメとして今も愛され続けています。

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約20年ぶりに食べたトルコライス。母と二人で分けてもお腹いっぱい。

9月16日は「トルコライスの日」らしいとパンフで知り、タイムリーなので、
この軍艦島のブログ更新ついでに載せておこう、と思った矢先でしたが、
念のため調べた所、「トルコライスの日」は今年で取りやめになったそうです。

長崎市ではエルトゥールル号遭難事件の起きた9月16日を、
トルコと日本の友好が始まった日として「トルコライスの日」に制定したそうですが(2010年)、
駐日トルコ大使館から「追悼の日」と指摘を受け、「配慮が足りなかった」と廃止したとのこと。

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長崎名物ミルクセーキ

最後に、もう一つの長崎ご当地グルメを紹介します。長崎名物ミルクセーキです。
私も今回、母に教えてもらって初めて知ったのですが、
長崎でミルクセーキと言えば、この氷菓子を指すとのこと。
練乳ベースで、昭和レトロな感じの、優しい味がしました。
(私の好きな長崎ご当地アイス「ちりんちりんアイス」に通じる味です)

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