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記者・大草芳江が活動をつづります

2009年2月19日

新博士お祝いパーティー(東北大理学研究科物理学専攻)を取材しました

カテゴリ:取材日記

制作を担当させて頂いている東北大学理学部物理系同窓会「泉萩会」HPのコンテンツ制作のため、
同物理学専攻の新博士をお祝いする講演会&祝賀会を先日、取材してきました。

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東北大学大学院理学研究科物理学専攻では、
平成19年度から新博士による講演会と祝賀会を開催しているそうです。

(※ちょっと細かいですが、東北大学大学院理学研究科の物理系は、
物理学、天文学、地球物理学の、3つの専攻に分かれています。

ですから、「東北大学大学院理学研究科物理学専攻」と呼ぶとき、
他の物理系である「天文学専攻」や「地球物理学専攻」は含まれません)

この講演会は、フィギュアスケートに例えれば、エグジビションに当たるもの。

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ということで、専門の異なる人でも理解できるよう、
かつ発表者本人が楽しんで発表できるよう、新博士の皆さん9名が講演しました。

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ある先生曰く、
同じ物理学専攻の教授でも、専門が違えば、普段は質問しづらいものなのだそう。
けれども、このような場なら純粋な好奇心から質問できて良いと、仰っていました。

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講演会に続いて、新博士と専攻賞受賞者を祝うパーティーが開催されました。

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「食べても良いよ」と仰って頂きましたが、気づくと既になくなっていて残念・・・

当日は写真撮影に加え、物理学専攻賞に選ばれたお二人の新博士、
菅原さんと齋藤さんをインタビューさせて頂きました。

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※左から修士4人、博士2人の方が、専攻賞を受賞した方々です。

物理学専攻賞受賞者の一人、菅原さんのグループは、
40年来未解決だった黒鉛が超伝導体になるメカニズムを解明することに成功し、
物理の世界で最も権威のある英国科学雑誌「Nature Physics」(オンライン速報版)に
発表するなど、世界的に注目される研究成果を残したことで、昨年話題になりました。


ところで、そもそも「超伝導」、
よく耳にする言葉ですが、どのような現象なのでしょう。

インタビュー内容は、後日記事にてご報告するとして、
この機会に勉強した内容を、記者ブログでご報告します。

そもそも「超伝導」とは、特定の物質を超低温に冷やすと、
電気抵抗がゼロになったり、磁石を近づけるとぷかぷか浮かぶマイスナー効果
(=物質内部から磁力線が排除される)と呼ばれる現象が起こったりする現象です。

鉛筆の芯に使われている黒鉛(グラファイト)は、層状の構造を持っているのですが、
(鉛筆でなめらかに字が書けるのは、このグラファイト層の間がすべりやすく、はがれやすいため)
そのグラファイト層の間にカリウム(K)原子を入れると、
低温で電気抵抗がゼロとなる超伝導を示すことが40年前に発見されました。

私たちの身の回りどこにでもある安価な黒鉛が超伝導になるということで、
世界中で大きな注目を集め、特に日米仏の研究者の間では
対立する超伝導を説明するモデルが提案され、激しい議論が展開されてきましたが、
そのメカニズムは40年間、依然不明のままだったそうです。

ところが2005年に、これまで絶対温度で高々2K程度であった超伝導転移温度が、
牛乳や骨に含まれているカルシウム(Ca)をグラファイト層間に入れると、
一気に11.5Kまで急上昇することが報告されました。

そこで菅原さんらのグループは、「光電子分光法」という技術で常温から温度を下げながら
グラファイト層間にCaを入れた超伝導物質の電子のエネルギー状態を直接観測。

その結果、Caを入れたグラファイトの層と層の間に、
新たな電子の通り道(=「層間電子軌道」と命名)があることを発見しました。

zu1.gif

図1 (a) 黒鉛、(b) 黒鉛超伝導体、(c) 黒鉛超伝導対中のパイ電子、シグマ電子、層間電子状態
Copyrightc2008 Japan Science and Technology Agency.

そして超伝導転移温度以下になると、
電子はグラファイト単独層に存在する「パイ軌道」や「シグマ軌道」ではなく、
グラファイト層が重なり合うことで層の間に新しく形成される層間電子軌道だけを
流れることを発見したそうです。

また、層間に挿入されたCa原子は、この層間電子状態に電子を与えると同時に、
層間電子が超伝導になることを助ける働きもしていることも判明しました。

つまり、超伝導となる原因は、実は黒鉛そのものではなく、
新たに挿入したCaによってできた層間電子であることを実験的に観測し、
その超伝導への寄与を明らかにしたということで、
黒鉛超伝導の長年の難問を解決したものと言えるのだとか。

超伝導は、日常ではあまり扱わない程の低温でしか生じない現象であり、
社会での利用には、冷却のために高価な液体ヘリウム(沸点4K、-269 ℃)が
必要なため、まだ一部の特殊な用途に限られていますが、

20世紀末に超伝導転移温度が比較的高く、安価な液体窒素で冷却できる
「高温」超伝導体が相次いで発見されてからは、
一般的な低温環境で機能するさらに実用的な超伝導体が存在するのではないかと
期待され研究が続けられています。

そんな中、このメカニズム解明が今後の研究に寄与するところは大きいと言えそうです。

具体的には、物質を改良して層間電子軌道に入る電子の数を増やせば、
超伝導転移温度を高められる可能性があるそうです。

また、黒鉛化合物の超伝導転移温度は、先述の通りそれ程高くはありませんが、
銅酸化物系や鉄系など超伝導転移温度が「高い」超伝導物質も、黒鉛と同じく
層状構造をしているので、こちらの解明につながる可能性もあります。

ちなみに、超伝導における「高温」とは、「高い」と言っても、-200℃~-100℃くらい。

高温とは、ふつうは人間が「熱い」と感じるほど温度が高いことをあらわす語ですが、
従来の超伝導体と比較すると、液体窒素(沸点は77 K、つまり-196 ℃)で
冷却できるということで、これでも「高温」と呼ぶのだそうです。

これからは、「超伝導」というキーワードにも注目ですね。

このように取材する立場になってから、
実は自分の身のまわりで行われている活動の魅力に気づかされます。

「宮城の新聞」では、それらをひとつひとつ、認識してかたちにしていこうと思います。

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