「TEDxTohoku 2012」登壇とロシア訪問記、「鉄」でつながる話。【追記】あり
いつの間にか、2012年も残すところ2週間を切りましたが、いかがお過ごしでしょうか?
この秋から冬は、いろいろなところで講演させていただいたり、取材させていただいたり、
逆に取材していただいたりで、バタバタしていましたが、一段落つき、久々の更新です。
今年も、なかなか(やっぱり・・・)更新できなかった、この記者ブログ。
「記者ブログ拝見しました。お酒が好きなのですね」と最近コメントをいただいて、
酒好きにしか見えない(否定はできませんが)話題ばかりの更新を反省しつつ、
年内中に、少しずつ、最近のご報告をしたいと思います。
【写真提供】TEDxTohoku2012(著者登壇のようす)
そこで、まずは、遅ればせながら昨日、WEB版「宮城の新聞」に公開したロシア訪問記と、
先月、私も登壇させていただいた「TEDxTohoku2012」との興味深いつながりのお話から。
「TEDxTohoku」とは、カルフォルニアで26年前に始まったTEDの「Ideas Worth Spreading」
の精神に基づき、世界各地で独自に運営されているプログラムの一つ。
東日本大震災をきっかけに、東北大学の亀井さんや余力さんら大学生たち有志が中心となり、
昨年度から「TEDxTohoku」を立ち上げ、企画・運営しているそうです。
※「TEDxTohoku」とは?→「TEDxTohoku2012」公式ページ(About)
※TEDとは?→Wikipedia
「TEDxTohoku2012」のコンセプトは、「まだ見ぬ"みちのく"へ、ともに」。
"みちのく"(道の奥)には、伝統と革新の間で培われた価値観が宿る、
それが「未知の区」につながっている、との意味が込められているそう。
私も、仙台・宮城で7年間活動する中で感じる可能性をスピーチさせていただきました。
拙いスピーチではありましたが、不特定多数の人々の前で、かつ10分間という時間で、
自分の原点や方向性を端的な因果関係で伝える、大変良い挑戦の機会を頂戴しました。
そんな中、よく言われている話ではありますが、「目で見る言葉」と「音で聞く言葉」では、
因果関係の組立て方がこんなにも異なるのだなぁと、今更ながら、たいへん驚きました。
ふだん自分は「目で見る言葉」ばかりで視覚情報に依存している分、今後の課題として、
他者との対話で「音で聞く言葉」の因果関係を意識して鍛えねばならぬ・・・と痛感です。
亀井さんはじめ関係者の皆さまには、登壇当日まで、インタビュー取材を通じて、
構成やスライドデザインのブラッシュアップなど、多大なるバックアップをしていただきました。
このような貴重な機会を頂戴したことに、この場をお借りして、改めて感謝いたします。
【写真提供】TEDxTohoku2012(左から、畠山さん・蟹澤さん・著者)
さて、冒頭の話に戻りますが、その控え室でのこと。登壇者としてご一緒させていただいた、
気仙沼で牡蠣養殖業を営む猟師の畠山重篤さん(NPO法人「森は海の恋人」理事長)と、
地質学者の蟹澤聰史さん(東北大学名誉教授)が、"鉄"でつながる興味深い瞬間を目撃!
というのが、件のロシア訪問記と、とても関係しているのです。
ここで急に登場した"鉄"ですが、鉄のお話をする前に、ちょっとだけ、おさらいを。
三陸沖は「親潮と黒潮がぶつかる世界三大漁場の一つ」と、小学校の頃に習いました。
親潮という名は、「魚類を育てる親となる潮」という意味でつけられたように、その豊富な
栄養塩が特徴ですが、実は、栄養塩だけでなく、"鉄"も重要な役割を果たすらしいのです。
というのも、栄養塩がたくさんあれば、必ずしも植物プランクトンが大増殖するわけではなく、
実際に、栄養塩はたくさんあるのに、植物プランクトンが成長しない海域が存在するそうで、
その原因は"鉄"不足であることが、分析機器の発達によって、約10年前にわかりました。
"鉄"と言えば、地球上に最も多く存在する元素の一つですが、
一方で、鉄は水には溶けにくい性質があるため、海は大変な"鉄"不足状態らしいのです。
9月下旬に東北大学生態適応GCOEの仕事で訪れた、アムール川の支流・ビキン川流域に広がる原生の森
では、親潮の"鉄"は、一体どこからやってきたのか?
それが実は、アムール川流域の森林と湿原から供給され、オホーツク海を通ってきたことが、
つい2年前、北海道大学の白岩准教授らのプロジェクト研究で、わかってきました。
ちなみに、そもそも、なぜ"鉄"が植物プランクトンにとって必要なのかと言うと、
プランクトンが栄養塩を利用できる形にして取り込むプロセスで、鉄が必要なため。
だから栄養塩がいくらあっても、鉄不足ならば、プランクトンは成長できないわけです。
すなわち、親潮にとって、アムール川流域は巨大な「魚付林」と考えられるということで、
我らが三陸沖の特産物と、アムール川流域の森林は、"鉄"でつながっていたのですね。
※以上、ロシア訪問記では構成上割愛しましたが、そのソース元である東北大学生態適応
GCOE国際フィールド実習・事前セミナーでの白岩准教授のお話を、簡単にご紹介しました。
【写真提供】TEDxTohoku2012(控え室のようす)
前置きが長くなりましたが、畠山さんは20数年前から、気仙沼湾に注ぐ大川上流の山に、
落葉広葉樹の植樹を続けている方で、今年の国連フォレストヒーローズにも選出されました。
「TEDxTohoku」でも、牡蠣養殖業ならではの世界観と、この"鉄"のお話をされてました。
そして、蟹澤さんは、地質学者として長年、地質学の研究をされてきた方です。
控え室で、この"鉄"話をしていた時、蟹澤さんが「確かに、あの辺は玄武岩や安山岩など
鉄の豊富な岩石ですね」と相槌をうったのを境に、お二人の"鉄"話は、みるみる発展。
これまで、水産業者と地質学者の接点はなかなかなかったそうで、お二人とも、
「岩石由来の鉄という視点は、考えもしなかったなぁ」「まさか、こんな収穫があるとは」と、
まさに"鉄"が結びつけたご縁を、とても楽しんでおられた様子でした。
後日、蟹澤さんは早速、気仙沼西部の地質の資料を畠山さんに送られたそうで、
これから何か新しい発見があったら、おもしろい発展ですね。私も楽しみです。
また、蟹澤さんには先週、「宮城の新聞」インタビュー取材にも、ご協力いただきました。
「足元の石を蹴飛ばさずに、足元の石から、自然に親しみ理解を深めることができたら、
どんなに素敵だろう」。お話を伺いながら、そう、石から見える世界に思いを馳せました。
そういうわけで、本日は、"鉄"でどんどんつながっていったお話でした。
蟹澤さんのインタビュー記事は、後日公開予定ですので、お楽しみに。
【追記】(2012.12.19)
昨日、TEDxTohoku代表の亀井さんが、当日の写真データやTシャツなどを、オフィスまで
届けてくれました。わざわざありがとうございます。そして、恐る恐る自分の写真をチェック。
実を言うと、写真で一番気になるのは、「自分の口が尖っていないかどうか」なのです。
【写真提供】「TEDxTohoku」
これまでも、いろいろな方から、講演中や取材中の写真を撮っていただきました。
そのたびに、「もっと、私の口が尖っていない写真、ないですか?」と私が聞くと、
相手の方が、「これが一番、尖っていない写真だったんですよ・・・」と返事に困るくらいに、
口が尖っていない写真を探す方が難しいのです。
【写真提供】「TEDxTohoku」 (注:これは、私の中では、"口が尖っていない"方にカウントしています。
じゃあ、"口が尖っている"方はどれくらいなの?と言うと、さすがの私も恥ずかしすぎて載せれません・・・)
ドキドキしながら確認すると・・・、写真40枚のうち、口が尖っていたのは、今回わずか4枚。
すなわち9割は尖らず!この数字、きっと誰も共感してくれないと思いますが、快挙です(涙)
(あまりにも口が尖っている写真は、予めスタッフさん側で抜いてくれたのかもしれませんが)
【写真提供】「TEDxTohoku」
今回は学会風でなくジョブズ風に(ただ実際に見たことないので完全にイメージですが)、
「説明はしない」「余計な因果は言わない」を、初めてこんなに強く意識しました。
これでもかというくらいに肉をそぎ落とし、これだけで大丈夫かなと思うくらいに骨だけに。
そして、恥ずかしながら今更ではありますが、内容でなく構造こそ、相手に関係なく、
頭の中に伝わるものなんだと、人生で初めて強く実感し、感激した次第であります。
(あぁ、「それでよく起業なんかしたものだ」という声が聞こえてきそう・・・)
逆に、これまでの自分は、如何に「内容を説明しよう」としていたことか。
それを世間では「口先だけ」と言うもの、道理で口が尖るわけだ・・・と妙に納得しつつ、
これからも「構造で伝える」バロメーターとして、自分の口先をチェックしたいと思います。
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蟹澤聰史 (2012年12月30日 09:32)
大草さん
紹介させて頂いて有り難うございます。ほんとうに不思議な縁とい
うのがりますね。ところで、早速この記事を私のFBにも紹介させて頂きました。