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記者・大草芳江が活動をつづります

2011年2月14日

河北新報エッセー連載(第3回)「クズか宝石か」

カテゴリ:弊社取組み

河北新報「まちかどエッセー」連載(夕刊・隔週月曜日・全6回)を担当させていただいてます。
今回で第3回目となります。(過去のエッセイは、第2回第1回

連載の共通テーマは「科学って、そもそも何だろう?」ですが、
今回のサブテーマとして、「人間の主体性」を取り上げました。

その「人間の主体性」という、科学的に取り扱いにくい概念に、
物理学で切り込む科学者が、沢田康次さん(東北工業大学学長)です。

そもそも人間は主体的に生きたい存在だ、という人間の心の重要な部分について、
今回のエッセイでは、沢田さんへのインタビュー結果も織り交ぜながらまとめました。

エッセイ(第3回)の内容は、下記の通りです。よろしければご覧ください。

「クズか宝石か」  大草芳江

 「なぜ大学院を中退してまで起業したのか」とよく聞かれる。実は、起業するまで私は一度も起業なんて考えたことがなかった。周りの皆と同じように、そのまま大学院で学位を取得し、東京で就職するものだと思っていた。でも、何かがしっくりこなかった。

 これまで、人が良いと言うものを、私は自分で確かめもせず、良いと言うことで生きてきた。ところが良いはずの何かは、だんだん色あせ、輝きを失っていった。心は「生き生き」しなくなり、しぼんでしまいそうだった。

 「生き生きしている」とは何かを、物理学的に研究している科学者がいる。東北工業大学学長の沢田康次さんだ。

 物理学の神髄を「どんなに複雑なことでも少数のものに分類できること」と語る沢田さん。生物でない現象が「生き生きしている」とは何か。それは生物が「生きている」こととどう違うのか。でも、それをいくら追求しても人間が「生きている」ことは分からない。人間には心がある。なぜ人間の心は「生き生きしている」のだろう。科学的に取り扱いにくい概念に、物理学で切り込む。

 しかし、最初から「生き生きしている」ことを研究対象にしていたわけではない。30歳のころ、3カ月間ずっと白い壁だけを見ながら、沢田さんは考えた。目に見えないものではなく、自分の目で、しっかと見えるものを対象にして新しい科学をつくっていこう、と。

 「一生をかけるだけの感動が科学には必要だよ。『天空の城のラピュタ』で『あの地平線 輝くのは どこかに君をかくしているから』とあるよね。もし自分と何の関係もなかったら、ただのクズですよ。でも、その中に自分と関連のある人がいるから、輝いて、生き生きして見える。だからクズか宝石かは、どんな物語を自分が想像できるかということ。すると世の中全部、宝物になる」

 何の脈略もないように見える複雑な世界で、科学者たちは物語を紡ぎ、自分にとっての宝石を見つける。それを皆に伝えるべく、日々原石を磨く。その原石は遠くではなく、近くにあるものらしい。私も私にとっての原石を、宝石まで磨きあげたい。

(河北新報「まちかどエッセイ」掲載 2011/02/14夕刊)

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今回のエッセイのもとになった沢田康次さんへのインタビュー記事はこちら

ここからは、文章構成上、今回のエッセイには書いていないお話なのですが、
沢田さんは、「今のところ、主体性は不思議だと思われている」と話していました。

「今までの科学は全部、原因があって結果がある、ある意味で受身の科学だ。
 一方、心の一番大事なところは、自分が原因となって動くところである。
 では、なぜ自分が主体となって、原因となれるのだろう?」

その問いかけで、幼い頃にすごく不思議に思ったことを、思い出しました。

たしか幼児か小学生の頃、私は魔法を使えるようになりたいと思い、
たまに、空を飛んだり念力でものを動かす練習などをしていました。
(もちろん半分は諦めながら。結局、魔法は使えなかったのですが)

ある夏の日、少しだるかった私は、座布団の上に寝転びながら、
近くにあるリモコンか何かを、念力で動かそうと念じていました。

頭にギュッと力を入れ、「リモコンよ、さぁ動け」と念じてみますが、
当然ながら、リモコンはピクリとも動きません。

仕方がないので、リモコンを念力で動かすのは諦めて、今度は、
「私の腕よ、さぁ動け」と念じると、(当然ですが)私の腕は動きました。

私の腕は、「腕を動かせ」という私の命令によって、動いたわけです。
「おぉ、魔法なしでも、私は私を動かすことができるんだな」と、
幼い私は、当たり前のことに感心していたわけですが、
そう考えているうちに、「あれ?でも変だな」と思い始めました。

そもそも「腕を動かせ」という私の命令そのものは、
一体どこからやって来たのだろう?

別に、外からの命令や刺激があったわけでも、
そうしなくてはならない必然性があったわけでもなかったのに。

私が「こうしたい」と思う意識そのものは、一体どこからやってくるのだろう?
そう不思議に思って、ふわふわと変な気持ちになったことを覚えています。

「なぜ自分が主体となって、原因となれるのだろう?」

話は戻りますが、そのような問いも科学の対象になるとは驚きです。
それについて詳しく知りたい方は、沢田さんへのインタビュー記事をご覧ください。

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