「第13回体験型自然科学の教室」を開催しました (その1)
組織の枠を超えた若手研究者・学生ら主体のNPO法人「natural science」では、
その活動のひとつに、宮城の豊かな自然の中で行う、幼児~小学生の親子対象の
科学教室「体験型自然科学の教室」を定期的に開催しています。
第13回目となった今回は、青葉山(東北工業大学グラウンド)にて、「山の教室」を開催。
今回のテーマは、以下のとおり。
①素材や構造を考えて、軽いけれども丈夫な気球をつくろう!
②自然の種子を真似て、よりゆっくり落下する種子モデルをつくろう!
③蜘蛛と向き合い、ナノスケールの蜘蛛の糸の丈夫さを体感しよう!
我々「natural science」の科学教育プログラム開発・実施のコンセプトは、
単に作業をして終わるのではなく、下記2点のプロセスを重視した構成になっています。
(1)対象と「自分とのつながり」を感覚と知覚によって把握し、その中に探求する価値を見出す
(2)そのプロセスで生まれる問題を、自らの力で分析的・総合的に解決することができる
これらの能力は、たとえ言葉がままならない子どもであっても、
生来持ち合わせている能力です。それらの能力が端的に表れるよう、
子どもの動作と科学のプロセスが一致するような工夫をしています。
また、自分の試行錯誤の結果が、客観的な数字(滞空時間など)として評価できるよう、
競技形式などをとるようにプログラムを構成しているのも、力を入れているポイントです。
こちらは、「①素材や構造を考えて、軽いけれども丈夫な気球をつくろう!」コーナー。
そもそも気球とは、
空気より軽い気体を風船に詰め込む事で浮力を得て、飛行するもの。
空気より軽い気体=水素やヘリウムを使用する「ガス気球」もありますが、
今回は、火などで温められた空気が周囲の空気より軽くなることを利用する「熱気球」です。
うまく飛ばすためには、如何に軽量化するかがポイントなのですが、
野外という実験条件で、想像以上に曲者なのが、「風」の存在です。
風速は1~2 m/s と、肌ではあまり風を感じない程度の風でも、
想像以上に、気球の形状が安定しなくなり、浮かばなくなってしまいます。
実験では、様々な大きさや重さ、材質が異なる素材を用意。
最も滞空時間が長い気球をつくるために、各自素材を選び、構造を考えます。
できるだけ軽量化したいけれども、
軽量化すればするほど、風による影響を受けてしまう、
というトレードオフの関係が、「自然」の中でしか味わえない難しさですね。
本格的な「燃料搭載型」気球へステップアップする前に、
まずは、熱源を地上に固定したまま風船部分のみ飛ばす「ブースター型」に挑戦。
でも実は、「ブースター型」を飛ばすだけでも、自然の中では、結構難しい。
親子で力をあわせて、気球を制作中です。
15分ほどかけて、完成! ちゃんと、飛ぶかなぁ?
本人以外の子ども達も、その行方に注目しています。
「飛んだ!」
滞空時間が如何に長いかで、順位を競い合います。
うまく飛んだ子の気球は、自然と、他の子どもたちの観察対象になっていたようです。
安全管理面への配慮と、競技性を高めるため、スタート地点は一箇所に固定。
それぞれ戦略が異なる気球。だれが一番になるでしょう?
詳しいご報告は、NPO法人「natural science」HPにてご報告いたしますが、
子ども達は、試行錯誤の中で、滞空時間に効いてくるパラメータを見つけ出し、
それを気球という形にして、表現していました。
むしろ、大人がつくったものよりも、子どもがつくった気球の方が、
長く飛ぶ場面もよく見られましたよ。
誰かに教えられなくとも、きちんとパラメータとその因果関係を感じて、
認識しながら気球をつくっていることが、子どもへのインタビューからもよくわかり、
大変驚かされました。
子どもの動作と、パラメータの因果関係がリンクする場を設定さえすれば、
たとえ言葉にできなくとも、子どもは大人顔負けの仮説と検証を繰り返しているようです。
逆に言えば、「子ども向けにわかりやすく」という発想が、子ども生来の能力を
発揮する前提を奪う危険性があることを意味しているのかもしれません。
いずれにせよ、年齢関係なく「本物の科学」を、
すなわち、自らの五感で対象と「自分とのつながり」を把握し、
それらを分析的・総合的にくみ上げ積み重ねていく「科学的思考力」を重視する場を、
つくれればと思います。
ちなみに、今回見事1位を獲得したのが・・・
natural science の大野かがくしゃです!
前回(夏の教室:ヨットをつくろう!)表彰台入りできなかった悔しさをバネに、
今回は科学者としての威厳を、口だけでなく結果で、きちんと見せたようです。
ちょうど写真の右上に、かすかに写っているのが大野かがくしゃの気球です。
(ブースター型だけでなく、難易度の高い燃料搭載型でも1位でした)
なぜ、大野かがくしゃの気球が最もよく飛んだのか?
それは、 natural science HP にて、後日公開予定です。
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