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2017年 06月 28日 (水)

[Vol.3]
山崎賢治さん(宮城県教育委員会)

誰かを喜ばすために自分の時間をフルに費やしていくという生き方が、

山崎賢治さん
1969年生まれ。青森県八戸市生まれ、仙台育ち。1992年、宮城県庁入庁。(財)みやぎ産業振興機構、産業経済部経済産業再生戦略局を経て、2007年4月より宮城県教育委員会。「起業教育ネットワーク東北」や「仙台市太白少年少女発明クラブ」等、県庁での仕事以外にも、さまざまな活動を行っている。


-皆さんにとって比較的身近な「公務員」という仕事。しかしながら一口に「公務員」と言っても、その仕事は多種多様である。ましてや「公務員」がどのような思いで仕事をしているかについては、知れる機会はそう多くないかも知れない。県庁で「公務員」として働く山崎賢治氏が、その仕事をする中で学んだこと。それは、「無くてはならない存在として生きていく」という生き方だった。

-今までどのようなお仕事をされてきたのですか?

「15年間のうち、宮城県庁の産業経済部(現在は経済商工観光部)というところで、"宮城県の産業を元気にする"仕事をやってきました。会社を経営する人たちの応援や、新しく会社をつくる人たちの育成(社長さんとそれを応援する人たちの出会いの場をつくったり、社長さんたちの相談にのるような仕事)を通して、自分で事業をおこす人たちがたくさん生まれてくるような制度をつくってきたんです。その仕事に関連して、子どもたちが働くことについて考える教育や、自分で何かを生み出す力を広めるための応援団「起業教育ネットワーク東北」をつくったり、ものづくりが好きな子どもたちがたくさん育つように「仙台市太白少年少女発明クラブ」のお手伝いをしています。その他、一馬君([vol.2]株式会社デュナミス代表取締役社長 渡辺一馬さん)や畠山さん([vol.1]河北新報社 畠山茂陽さん)のお手伝いで、Five Bridgeの運営にも携わっています。今年の4月からは、宮城県教育委員会に転勤しました」

社長さん達との出会いで、"働くことって何なのか"に気づかされた。

-公務員という道を選んだのは、なぜですか?

「昔から、面白いことをして人を笑わせたり、みんなでお祭り騒ぎをしたり、イベントをやったり、っていうことが好きだったんだよね。"みんなで楽しく"っていうキーワードがいつもあって、そんな仕事がしたいなって。あんまり深く考えていなかったんだけど、役所に行けばそういう仕事をやれるんだろうと思っていた。"公共の福祉に奉仕する"って話だから。"自分だけが良い"ってだけじゃなく、"みんなのためになる"ことができるんじゃないかと思って。」

-実際に仕事をして、どうでしたか?

「仕事というものにも、様々な役割があってさ。誰かが喜んでいる顔を直接見ることが出来る人もいれば、一方で、裏方をずっとやらなきゃいけない人もいる。だから仕事によっては、一体誰を喜ばせているのかが、分かりづらいこともあった。そうなると働く手応えを実感するのが、なかなか難しくなっていったんです。」

-自分が社会にどのような影響を与えるのかが、わかりづらい社会になっていますものね。

「実際そういうことに慣れてしまって、言われたことを、ただ漫然とやってしまっていた時期もあって、それはそれで、楽なことなんだけど。特にサラリーマンって言うのは、"決められたことさえやっていれば、自動的にお金がもらえる"という錯覚に陥ってしまいやすいから。サラリーマンという仕事は、自分の働く手応えが、見えにくい。だから悪くとれば、自分の時間を切り売りしている感覚になったこともあるよ。」

-主体的に活動されている今の山崎さんとは、真逆のイメージですね。山崎さんの内面で、何か転換点のようなものはあったのでしょうか?

「社長さん達との出会いで、"働くことって何なのか"に気づかされたんです。"社長"っていうとみんな"すごくお金持ちなんだ"とか"贅沢できるのかな"って思うかもしれないけど、できたばっかりの会社ってすごく大変なんだよね。サラリーマンのままでいれば、大きな仕事の一部分だけをやることで決まったお金が貰える。けれども社長さんというのは、その仕事の全部に責任を持って、人も使って、指示を出して、誰かの役に立つことをし続けないと、お金がもらえないんです。だから朝から晩まで働いても、サラリーマン時代の給料より全然稼げてないし、社員からはいろいろな問題が出てくるし、会社の問題を解決しなきゃいけないし、いろんな人に会ってお金を借りたりしなきゃいけないし。もともと社長さん達は優秀なサラリーマンで給料も高かったから、サラリーマンをやっていた方がずいぶん楽なはずなのに、サラリーマンの何十倍も苦労している。でも、苦労しているんだけど、すごく楽しそうだった。そういう大変な社長業をやっている人たちと出会って、最初は不思議だったんです。」

-社長さん達がそこまで苦労をして、会社をつくっている理由。そこに、どのような気づきがあったのですか?

「自分の会社の製品やサービスが、誰かの役に立つ。お客さんに喜ばれたという手応え。社長さんが考えて、お金をかけて用意して世の中に送り出したものが、誰かの役に立って、誰かの笑顔につながった。それを全部自分で考えてつくりだしたことを、すごく喜んでいる。そんな社長さん達を見て、気づいたんです。"誰かに必要とされたいということを強く望む人たちが、自分で会社をやっているんだな"って。部分部分の仕事で役に立つよりも、自分で会社をやった方が嬉しさが何十倍もあるから、サラリーマンの何倍の苦労にも耐えられる。人によっては、それを苦労とも思っていなくて、全然へっちゃらで。そうやって乗り越えていける人達を見て、思ったんです。すごくよく自分の人生を生きている人たちと一緒に、誰かを喜ばすために自分の時間をフルに費やしていくという生き方が、"生きる手応え"ではないか、と。」

自分が生まれつき持っていることや、できることを組み合わせて、人を喜ばせることができること。それが、仕事だよね。

「自分が今まで一番嬉しかったことを思いだしてみると、必ず誰かが隣にいた。"幸せは2人から"と言った人がいるけど、一人じゃ幸せ感じられないんだよね。人が幸せを感じるには、誰かが必要なんだな。例えば君が、部活をやっていて一番嬉しかったことは何?中体連で勝ったこと?じゃあもし君一人だけだったら、そんなに嬉しかったかしら?よくよく考えてみてよ。まわりに仲間がいたから、もっともっと嬉しかったんじゃないかな?人は誰かの役にたちたい動物なんだ。」

-「人は誰かの役に立ちたい動物」だから、「働く」ということですか?

「世界一のお金持ちは、燃やしても使えきれないほどのお金を持っていたけど、ずっと働いてましたよ。なんで働くんだろうね?お金が欲しくてやっているなら、十分すぎるくらいあったのに、やっぱり人が喜ぶことをしたいから、ずっと仕事をしていたのではないかな。"人に喜んでもらえるから好き"っていう気持ちには、器がないから、いくらでも大きくなっていくでしょう。心の中にあるモノだから。世界中の人々に喜んでもらえるまで、ずっとずっと大きくしたいって思うでしょ。だから自分が生まれつき持っていることや、できることを組み合わせて、人を喜ばせることができること。それが、仕事だよね。」

-では、誰かが喜ぶこと、誰かの役に立つこと、とは?

「例えば、誰も見たことのないものをつくることは、きっと誰かを喜ばせるはずだ。じゃあ、誰も見たことのないものをつくって喜ばせるには、どうすればいいんだろう?新しいものに気づくには、人よりも先回りして、人の3倍4倍5倍考えること。自分の好きなことや得意なことだったら、人より何倍も考えることが出来るでしょ?例えば"ご飯だよ"ってお母さんに言われても、ゲームならずっとやっていられるでしょ。ゲーム並みに自分がはまれるものってあるでしょ?それで誰かを喜ばせることが出来たら、幸せじゃない。」

--人の3倍4倍5倍考えられるくらい、自分がはまれるものというのは、きっと職業という枠にも当てはまらないくらいに、人それぞれ違うのでしょうね。

「だから、自分は何が得意なのかを見つけよう。そのためには、きっといろんなところにいったり、いろんな人に出会わなきゃいけない。身の回りにいる人だけじゃ、それが見つからないかもしれない。もっとたくさんの人に出会える機会を、自らつくり出していくことが必要ですよ。これから毎日、街ですれ違う人たちと全員友達になるくらいの勢いでやんないと。その中に、大親友になれる人がいるかもしれない。」

-人の多様性に触れることで、これまで見えなかったものが見えたり、これから削ぎ落とさなくても済むことが、あるような気がします。

「いろんな人と出会えることを大事にしようよ。水と空気のように普通過ぎて、その大切さに普段は気づかないことも多いかもしれないけど、会う人会う人のことを考えてみて。自分がどうやって生きていくかに気づくことが、できるかもしれないから。"生きてて楽しかったな"とどれだけ思えるかは、どれだけの人に会ったかに比例するのは確実。ある本で読んだけど、人のオーラは、その人が喜ばせた人の数で決まるんだって。カリスマやTVの人は、それだけ人に喜んでもらってるんじゃないかな。みんなに好かれる人は、そういうところをもっているし、喜んでもらうことの楽しさに気づいていて、どんどん人も寄ってきてくれる。そういう風にして、自分も働きたいなぁと思って。」

役所の究極の目標は!?

「役所の仕事は基本的に、いろんな都合が悪いことや世の中の困り事を解決すること。たくさんのいろんな人が住んでいると、人と人との間の問題や都合の悪くなる問題が、たくさんでてきます。そういうものをひとつひとつ解決していくことが、役所の役割。だから、それをどうやって解決してたくさんの人に喜んでもらえるのかを、人の何倍も考えるのが、役所の基本なんです。役所だけでなく、すべての仕事の基本ですよ。」

-人の何倍も考ることができてはじめて、仕事になるんですね。

「そうです。だから、"ありがとう"ってたくさん言われる人になりましょう。そうだよね、"ありがたい(有り難い)"って、"有るのが難しい"ってことですよ。あなたにしか提供できないものをもって、誰かに提供してくれたから、"有り難う"って言われる。有り難い存在になるために、みんな頑張ってるんですよ。」

-自分である必然性を見つける、ということですか。

「ある意味、役所が究極に狙っているのは、地域に住んでいる人それぞれが、誰かから"有り難う"と言われる存在になることを目指しています。例えば、役所が解決しなきゃいけない問題で、"失業"と言う問題があります。"失業"という問題が、どれだけ悲しいものかわかりますか?"有り難う"って言われない立場になることを"失業"と言うんです。生きることと仕事をすることは一緒。"有り難う"って言われない人をなくしたい。」

-すべての人がお互いに"有り難う"と言われる状態は、ある意味、究極の世界ですね。つまり、それぞれの個性が活かされる世界、人間の多様性が保持されている世界。

「そう、全員ユニークな存在であるってこと。自分が好きで一番上手にやれることと、他人が喜んでもらえることが、一致することを仕事にできれば、それはすごい幸せなんだろう。例えば、スケートの選手。どう見たって、スケート嫌いじゃないよね。頑張った分だけ、みんな喜んでくれるって知っているから、あんなにがんばれるんだと思う。金メダルは、それが形になったもの。"あんたすごい"って固まりが、金メダル。だからみんな金メダルを目指す。みんなそれぞれに、そういうメダルがあるんだよね。ケーキ屋さんがお客さんに喜んでもらえるケーキをつくるとか、小説書いている人がいろんな人に読んでもらってベストセラーになるとか、掃除のおばさんがぴかぴかに掃除をすることとか。みんなそれぞれ、金メダルと同じものだよね。本当に探せば、その金メダルが見つかるはずだよ。大変だけど、自分で見つけたときの楽しさや嬉しさは大きいよね。でも今、中高生だったら、その可能性がどこにあるかは、まだまだわからないじゃない。だから見つかるまで、ずっと勉強し続けるんだ。いろんなものに興味をもって、いろんなことを学ぶ。それが、自分の生きる理由とか、何で自分が喜ばれるのかっていう、手がかりだったり道具だったりするから。」

-自己の存在証明を見い出しにくくなっている現代社会で、他者との関係性は特に重要な意味を持ってきていると思います。それを見つけるための手段が"学ぶ"ことだとすると、"学び"の場を提供することが、山崎さんの存在証明であるということですか?

「今やっていることは、生きること・勉強すること・働くこととは何なのか?の"気づき"をみんなに得てもらうための教育なんです。自分の存在理由があるんだって気づいた人が、悩んでたものがとれたように、嬉しそうな顔をしている。学ぶことに気づくことは、大人になってからも遅くない。自分もそうだったから。自分の足でここに存在しているということに、早く気づけるような道案内をできたらいいな。町中の大人がそういう道案内を出来る大人になったら、もっともっと町全体が生き生きしてくる。 そして、多くの人が、自分の得意なところで、みんなの役にたつようになれるかを見つけて実践できるようになってくると・・・目標は全員がそうであったら、きっと役所は必要なくなるね。つまり、誰かが問題を見つけて、みんなの力をあつめて、自分たちで解決することができるようになってしまうと、自分立ちで役所の役割を果たせることになるんだね。」

いつもニコニコして、ワクワクして、はつらつしている人のそばにいれば、うつるから

-最後に、中高生の皆さんへメッセージを。

「みなさん、生きていくのは"わらしべ"長者のお話のようなものなので、"わらしべ"をもちましょう。勉強って、"わらしべ"みたいなものですよ。知ったり持ったりすることで、後々それが何に変わっていくのか、読めないのが勉強。でもそれを知っていることで、後々10倍20倍になっていく。だから、"わらしべ"と言って、絶対ばかにしてはならないよ。"そんなの役にたたない"なんて、きっとわからないはず。気づいている人は、みんな"わらしべじゃない"ってわかっているから、あれだけ時間をかけて勉強しているんだよ。後で、勉強したことを、実際に使ったり見たり聞いたり体験することがあるから。そのときに思い出して、"しまった、やっとけばよかった"って思わないようにね。あれこれ言うよりも、まずはやってみましょう。」

-「~のために・・・をやる」という構図を当てはめることによって、削ぎ落とされていくポテンシャルは、想像以上のものだと思います。

「そして、大人を見たら、自分の時間をよく"活きて"いて、自分を"活かしている"人なのか、そうじゃない人なのかを見てみて。そして、できるだけ活き活きしている人を見ようよ。そういう大人を見ていれば、いつかわかるから。いつもニコニコして、ワクワクして、はつらつしている人のそばにいれば、きっとうつるから。」

(2007/04/06 Five Bridgeにて 文責:大草芳江)




【参考サイト】

宮城県
http://www.pref.miyagi.jp/
起業教育ネットワーク東北
http://eenet-tohoku.jp/
仙台市太白少年少女発明クラブ
http://eenet-tohoku.jp/html/taihakuhatumei/
Five Bridge
http://www.five-bridge.jp/
取材先: 宮城県      (タグ:

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