サイエンス・エンジェルへの期待と、中高生読者へのメッセージ
梅原克彦さん（仙台市長）

2008年1月23日公開

私自身、サイエンスエンジェル（以後、ＳＡ）の熱烈な応援団です。個人的なことを言うと、両親は臨床関係の医者で、東北大の内科にいました。私は昭和２９年生まれの５３歳ですが、私が育った時代は、本当に貧しかったんです。安月給ではあるけれども、ダブルインカム（income:収入、両親ともに収入があったと言うこと、共働き）でしたので、両親が仕事をしていても、「婆やさん」がいて私の世話をしてくれました。今なら「婆やさん」のような家政婦さんを雇うと言うことはとてもできないですが、当時はそれほど人件費が安い、貧しい時代だったと言うことです。

だから私の母親は、メディカルドクターとしてのキャリア、女医としてのキャリアは、全く中断しなかった。人を雇ってと言うのができましたから。社会全体は貧しかったけど、ダブルインカムでそれができたのです。

けれども今は、結婚して、子どもを生んで、自分のキャリアを中断しないで、というのは難しいですね。近くにおじいちゃんやおばあちゃんが住んでいればできるかもしれませんが。出産や母親としての子育ては、代わりが効かないものですから。次の世代の人、科学者を志す人は大変だ。社会全体である程度サポートしていかないといけません。

研究者をはじめとする知的職業に就く人たちが、キャリアを中断しざるを得ない厳しい状況ですから、若い女性たちがはじめからサイエンスの道をあきらめてしまうということもあります。それ以前に科学に興味を持ってもらうことも必要ですね。科学はテクノロジーへとつながります。テクノロジーの前提としてのサイエンスは、男性の仕事というイメージがあるかもしれませんが、ヨーロッパ、アメリカでは、女性研究者もたくさんいますし、言わずと知れたキュリー婦人も、女性の研究者ですね。日本だったら才能を持った科学者がたくさんでている。ＳＡ全員が科学者になるわけではないけれども、すその尾を広げると言うことが大切です。社会・国全体にとって大切なことです。小谷教授、大隅教授の二人が核になって集まるＳＡ、その志が良し。市の施設もひとつの場として活用していただき、応援していきたいと思っています。

―中高生読者へのメッセージをお願いします。

パソコンやテレビゲームで時間をつぶすのはやめてください。どんな分野でもいいから、好きな分野でもいいから、本を読みなさい。パソコンやテレビゲームは、そのときはおもしろいかもしれないけれども、本には、数千年の知の集積があります。人生８０～９０年で、それに触れるのは、本当に少しなのです。君たちは、まだまだ人生長いと思っているでしょうけど、人生本当にあっという間ですよ。私もあっという間に、５０歳を過ぎましたから。文学になったメディアを通じて、数千年の知の集積を知るということは大切なのです。

パソコンがなぜ駄目なのかと言うと、情報の洪水だからです。限られた人生、限られた時間です。エッセンスに若い感受性が豊かな時期に触れて欲しいですね。先人たちが気づいたすばらしいもの。どういうものが素晴らしいのかと知るわけでもありますから、一流のものに感性が豊かな時期に触れて欲しいです。パソコンなんかいじっている暇ないですよ。感性を高めるために、自然と触れ合うこと、生身の人間と触れ合うことを大切にしてください。

パソコンなど利便性のある世界にいると思っているが、私たちの世代から見ると可愛そうですよ。本当にいいもの、心に残る財産となるものに、若いうちから触れていないと駄目ですよ。例えば書物以外にも、友情。子どもの頃からの友情は、５０年続きますよ。利害や打算等は一切ありません。

母国語がすべての基盤です。何をするにしても、表現するためのボキャブラリーや言語の運用能力は必要ですね。義務としてとらえず、楽しむことが大切です。学校の授業は面白くないのかもしれないけど、日本の教科書は、よくできているらしいですよ。あとサイエンスを志す人なら、数学は一生懸命勉強してください。よく勉強しなさい。面白いよ。

【大草芳江】

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