【レポート】目指すべき都市像を議論開始 第2回仙台市総合計画審議会
2009年11月24日公開
奥山恵美子仙台市長より「仙台市総合計画審議会委員」の委嘱を受け、『宮城の新聞』の大草芳江は20代の委員として審議会に参加します。『宮城の新聞』では、仙台市総合計画審議会での審議のプロセスを記事にまとめ、中高生の皆さんに伝えていきます。
※そもそも「仙台市総合計画審議会」とは?→こちらの記事をご覧ください。
仙台市総合計画審議会の会合のようす(写真提供:仙台市)※写真は第1回目のもの
仙台市の長期的な市政運営の基本指針となる新しい総合計画の策定に向け、「仙台市総合計画審議会」の第2回会合が20日、市役所で開かれた。会合では委員が、新総合計画の策定の考え方や目指すべき都市像などについて審議し、意見交換を行った。
現行の「仙台市基本計画(仙台21プラン)」は1998年の策定で来年度に期限を迎えることから、仙台市は先月、学識経験者や企業経営者など委員30人からなる審議会を発足させた。
今回の審議会では、人口減少などの社会情勢の変化を見据え、21世紀中葉に到達すべき都市像を明示するため「仙台市基本構想」の見直しも行う。
◆「選択と集中」、市民の理解が不可欠
新総合計画の策定にあたって市が示した基本的な視点は、「戦略性」と「実効性」があり、「仙台の特性を踏まえた」「市民にわかりやすい」計画を目指すこと。
これに対し委員からは「戦略性は、『選択と集中』を意味する。やることとやらないことを明確にすることは、行政として勇気がいること。少なくとも何が中心なのかを市民に理解してもらうことが伴わなければ、議論の意味がなくなる」といった意見が出された。
市の担当者は「もはや右肩上がりの時代ではない。プラスの分配ではなく、痛みや負担といったマイナスを分かち合いながらでないと、これから厳しい局面を生き抜いていけない」と厳しい財政状況を説明し、「市民にも市職員にも、一言で言うと、仙台市はどのような方向を目指すのかを見出せることが望ましいのでは」と今回の視点の意図を述べた。
委員からは「戦略性は大事だが、首尾一貫したものをやらなければ、スローガンだけで終わってしまう」「市民からの意見を吸い上げる強いしくみがなければ、市民が納得したかを確認できないのでは」といった懸念の声が出された。
また、福祉や環境など各施策別の計画が、総合計画と同時進行で審議されていることを指摘した委員からは、「本来ならば、全体的な市の方針があるなかで、各施策別に大きな計画が出て、具体的な施策が決まっていく。総合計画とは半年なり一年なりずらして、各施策別の計画を審議する方が良いのではないか」との意見も出された。
◆目指すべき都市像、意見さまざま
続いて市の担当者が、これから想定される市の状況や課題を分野別に紹介。人口減少が進む社会情勢の変化を受け、下記7つの論点をたたき台として示した。
①成熟社会の到来、②安全な暮らし、③持続可能な都市、④まちづくりの主体(市民‐企業‐行政の関係)、⑤人づくり、⑥仙台の持つポテンシャルの発揮、⑦東北との関係。
各委員から出された意見(一部)は、下記のとおり。
「大学と企業の連携を強めるなどして、東京への人材流出を防ぐ施策を」「知恵の時代である今、高齢化をポジティブにとらえ、高齢者の活力を引き出す工夫を」「仙台市の町内会加入率や環境に対する意識の高さなど、全国に誇れる仙台市の良さを、最大限発揮できる計画を」「大学生・専門学校生の多さが仙台市の財産。青春時代を過ごした仙台に戻ってこれるようなまちづくりを」「税収の確保などの施策も、長期的な視野に立って見つめていく必要があるのでは」「子育てと仕事の両立ができる環境を行政として整える必要性がある」「市民と行政、企業の戦略的な協働が求められる。市職員も市民と一緒に汗をかく姿勢が必要だ」「暮らしやすい仙台を次世代に引き継ぐには、仙台の歴史や文化、風土などの資産を、子ども達ももっと知る必要がある」「長年仙台で商売を続ける企業もあれば、都合の良い時期にだけ仙台にいる企業もある。まちづくりの担い手となる市民の概念を鮮明にする必要がある」「物言わぬ市民が安心して住める都市づくりを」「仙台ならではの資源を、学校教育のなかで自然なかたちで知り、仙台を愛していけるような構想を」「議論には、国の施策と市の施策が混じっている。市がどこまでどのようにやれるのか」「そもそも大きな理念である総合計画に、『実効性』を求めるのは論理矛盾」「市民の意見を聞くのに、『市政だより』や『パブリックコメント』だけでは駄目。より積極的な位置づけが必要」「東北との関係。仙台が他の地域にやってあげているという意識を捨て、使ってくださいという視点が必要」「沈黙の市民が街づくりの担い手に自然となってくるようなしくみづくりを」「建築中の東西線。各駅の特徴を生かしたまちづくりを」
審議会は月1回のペースで審議を重ね、来年秋、新しい総合計画を奥山恵美子市長へ答申する予定。これから年明けまでに2回程度、委員8名からなる起草委員会が、基本構想のたたき台を策定。これを踏まえ、来年2月前後に第3回審議会が行われる。
-副会長の宮城大学教授の宮原育子さんに、今回の議論を踏まえての感想と、今後にむけての意気込みを聞いた。
◆新しい社会に生きる新しい仙台人に/副会長の宮原育子さん(宮城大学教授)
副会長の宮城大学教授の宮原育子さん
30人いる委員の皆さんが、それぞれの分野で問題を深く認識し、自分の言葉で語っているので、これをまとめるのは大変だ。
前総合計画での詰め残しを、新総合計画へ盛り込むと同時に、新しい仙台をつくっていく。このふたつをどこまで集中して、皆に納得してもらえる計画をつくっていけるか。単に意見を出しただけでは、意見はまとまらない。起草委員会で意見を集約してもらうことが大切だ。
これまでとは違う社会の到来を認識して、仙台に暮らす人自身も、新しい社会に生きる新しい仙台人になっていくことだろう。新しい総合計画とともに、その第一歩を踏み出せると良い。外から見ても「仙台が変わってきた」とわかるものが良いだろう。
【総合計画とは?】
総合計画は、地方自治法第2条第4項の規定に基づく総合的かつ計画的な行政の運営を図るための「基本構想」と、それを具現化するための長期計画である「基本計画」、および中期計画である「実施計画」の3つで構成される市政運営全般にわたる計画のこと。
【仙台市の人口減少】
市の人口は、2011年前後をピークに減少へ転じ、2018年以降、急激に減少する見込み。人口減少は、経済活力や都市構造に影響を与えるため、人口減少を踏まえたまちづくりが必要となる。
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