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2017年 05月 23日 (火)

東北経済産業局長の豊國浩治さんに聞く:社会ってそもそもなんだろう? 取材・写真・文/大草芳江

2011年08月04日公開

それぞれの人がそれぞれ人生を送るために、
それぞれ役割を果たすことが仕事であり、
それぞれ仕事をすることが、社会である。

豊國 浩治 Koji Toyokuni
(経済産業省 東北経済産業局 局長)

【人物・経歴】
昭和35年埼玉県生まれ。昭和58年3月、東京大学法学部卒業。58年4月通商産業省入省(資源エネルギー庁長官官房原子力産業課)、平成元年6月イギリス留学(ケント大)、平成10年6月関東通商産業局総務企画部総務課長、11年7月富山県商工労働部長、14年7月大臣官房参事官(産業技術環境局担当)、15年9月産業技術環境局技術振興課長、18年1月独立行政法人日本貿易保険総務部長、19年7月内閣官房行政改革推進事務局特殊法人等改革推進室参事官、21年7月貿易経済協力局貿易管理部貿易管理課長を経て、22年7月より現職。

  「社会って、そもそもなんだろう?」を探るべく、【社会】に関する様々な「人」をインタビュー。
その人となりをまるごと伝えることで、その「人」から見える「社会とはそもそも何か」を伝えます。


「それぞれの人がそれぞれ人生を送るために、
それぞれ役割を果たすことが仕事であり、
それぞれ仕事をすることが社会である」と語る豊國さん。

「どんな仕事でも一生懸命やることが世の中のためになる」
という気持ちを持つことの大切さを強調する意図を聞いた。

<目次>
仕事をすることが社会
どんな仕事も、それぞれ社会に役立っている
「自分の仕事が社会の役に立っている」気持ちが大切
ものの豊かさではなく、心の豊かさを持つように
社会とは常に困難があるもの。楽観的に考えた方が良い。


経済産業省東北経済産業局局長の豊國浩治さんに聞く


仕事をすることが社会

―豊國さんがリアルに感じる「社会」とはそもそも何ですか?

まず、子どものころ、学校に通っている時代と、
学校を卒業し、社会人として過ごす時代があるわけですが、
私は社会人になってから過ごすところが社会だと考えています。

もちろん、子どもの頃も広い意味では社会にいるわけですが、
社会に出る前に、社会人になるための勉強をするところが学校であって、
仕事をすることが、社会に出ることだと思います。

―では、そもそも「仕事をすること」とは何ですか?

社会には、子どもやお年寄りも入れて、いろいろな人がいて、
それぞれが生活をしていて、それぞれの人生を歩んでいます。

それぞれの生活のためには、現代社会においては、
一人で自給自足をしているわけにはいきません。

例えば、朝からものを食べたり、洋服を着て、電車に乗ったり、
いろいろなものを買ったり、いろいろなものを利用したり。

毎日の生活ではありますが、そういうものを支えるために、
役割を果たすことが、仕事をしていることだと思います。

つまり、仕事をすることは、学校に行って卒業することも含め、
それぞれの人々が生活を成り立たせて人生を送るために、
それぞれが役割を果たすことだと、私は思っています。


どんな仕事も、それぞれ社会に役立っている

―初めから、そのように思っていたのですか?

子どものころは、「大人になったら、給料を稼がないと
いけないから、仕事をするのだろう」と思っていました。

けれども、自分が仕事を選ぶ時、それからもっと歳をとって、
新入社員として会社に入りたい人たちといろいろ話すなかで、
どんな職業がよいかを考えた時、そう思うようになったのです。

よく「人の役に立つ職業」という話を聞きますが、
いろいろ考えますと、どんな職業も役に立っているのです。

例えば、医者になれば人の命を助けることに直接役立ちますが、
では、自動車工場に働く人がどうかを考えますと、
自動車も非常に役立ちますし、自動車に乗ると楽しいですね。

すると、自動車をつくることが、人々の生活や幸せを支えている。
「あぁそうか、いろいろな職業も、それぞれ役に立っているのだな」
と思うようになりました。

―実際に、豊國さんの仕事をする中でそう思ったのですか?

あるとき、「貿易保険」と言いまして、
輸出をする時に保険をかけてもらう仕事をしていました。

その時も、「保険を一つでも多く売ることが、
世のため人のため、社会のためになります」と
会社の人たちに言っていました。

なぜならば、保険を売ることで貿易輸出がやり易くなり、
一つでも多くのものが輸出ができるようになれば、
日本のものを外国の人が買うことができるので役に立ちます。
そのために仕事をしているわけです。

ですから、一つでも多く保険を売ってください。
それが世のため人のためなのです、と言いながら仕事をしました。
それはやっぱり、今でも間違っていないと思います。

そのような意味で思い出しますと、松下電器の松下幸之助さんは
「一つでも多くの電球をつけよう」と考えました。
電球を一個でも多く売ることが、世のため人のためになると。

それぞれの仕事は、世のため人のため社会のため。
そのような意味でも、それぞれが仕事をすることが、
一番大事なことだと、私は思っています。

ただし、それは「会社に勤めろ」という意味ではなく、
社会参画にはいろいろな形があり、専業主婦もいます。
社会への参画は、広い意味で仕事をすることだと思っています。


「自分の仕事が社会の役に立っている」気持ちが大切

―社会の成熟化に伴う細分化・複雑化によって、現代社会では、
 なかなか自分のやっている「仕事」と社会との関係性を
 実感しづらい状況にあると思いますが、その点については、
 どのようにお考えですか?

例えば、「自分がネジを絞めることが、社会の役に立っている」
と考えた方が良いと思うのです。そう思おうと思えば、
ネジを絞めることが楽しい。それが大切なことだと思います。

そもそも仕事とは、社会にとって必要なことでなければ、
仕事として成り立たないものです。社会から求められているから、
お給料が支払われるわけですね。

ですから、どんな仕事でも一生懸命やることが、
世の中のためになるのだ、と思いましたけれどもね。

―特にどのような場面で、そのようなことを強く感じたのですか?

それは社会に出てから、就職する人を採用する立場になったり、
部下を持つようになって部下といろいろな話をするようになった時です。

例えば、先の大震災で皆さんが仰っていたことは、
「ガソリンスタンドに行けばガソリンを給油できて、
スイッチをつければ電気がつき、栓を開けばガスが出る、
これまで毎日普通にしていたことが如何に大変かわかりました」。

逆に言えば、ガソリンを運ぶ人やガソリンを入れる人、
発電所の機械を動かしている人が、それぞれ大きな役割を
果たしているということです。

社会とは、それぞれ仕事をしっかりやることが大事ですし、
それこそが充実感を感じながらやっていくべきものでしょう。


ものの豊かさではなく、心の豊かさを持つように

―仮に皆がそう思いながら仕事をしていれば、
 それはとても幸せな社会だと思うのですが、
 現実にはそのような実感が乏しいと感じています。
 なぜ、そのような実感を持つことができたのですか?

私たちの親の世代は、戦争を経験した世代です。
ですから、自分が「こういう職業に就こう」と思っても、
なかなか自由にならなかった時代があったと思うのです。

その時代から見れば、今は非常に豊かな時代になりました。
希望さえあれば、いろいろな職業につけるし、
学校に行きたいと思えば行ける時代になりました。

けれども、今の人たちは心配ばかりしているから、
かえって悩んでいるのかな、と思いますね。

さらに言うと、豊かになった反作用で、今の人たちは、
何でもかんでも完全を目指しているから、心配ばかりしてしまう。
昔は心配事だらけだったわけですし。その違いを感じています。

―昔と今の違いを感じているのですか?

先日、「お菓子放浪記」という映画のパーティーで挨拶をしました。
石巻がロケ地ですが、戦後の上野を舞台にのど自慢で優勝する話です。

その映画の登場人物は、ものがない時代に生きているわけですが、
明日食べるものがないのが当前で、だからどうと言うこともなく生きている。
別に、今の人が悩むようなことで、悩んだりしていないわけです。

映画に出た上野公園には小さい頃に行ったことがあったのですが、
私はその時、駒込のアパートに住んでいて、
「お風呂のある家に住んでみたい」というのが夢でした。

その時代に比べると、日本は豊かになっと思うのです。
そういうことを考えるにつけ、今の人は、
何でもかんでも心配ばかりしているように感じます。

自分の将来、一点の曇りがないことを望んでも、
そんなことは、あるわけがありません。
ですから、もう少し、心の強さを持った方が良い。
ものの豊かさではなく、心の豊かさを持つようにして。

そして、きちんと仕事をして、
「社会のために役立っているんだ」という気持ちを
持って過ごすことが、一番大事なことではないでしょうか。


社会とは常に困難があるもの。楽観的に考えた方が良い。

―ある程度の基準が満たされるから、次の上位階層の欲求が生まれ、
 その欲求を原動力に発展して、今のわたしたちは存在しているので、
 人間がより完全なものを目指す志向そのものは、否定できないのでは?

もちろん、豊かになれば良いと思いますよ。
ただ、いろいろな豊かさがあるのだと思います。

長い歴史の中で、少しずつ積み上げてきたものがあります。
仙台の街並みも、これまでずっとつくりあげてきたものですね。
それはもっと積重ねて、良いものをつくっていく努力が必要だと思います。

先の大震災で多少くじかれた感じはありますが、
歩みを止めることはなく、これまでに続いて、
積重ねていくことが大事だと思います。

ただ、そういうことをずっとやってきた中で、
どんどん皆、迷うことになりましたね。
迷うことなく、しっかり生きれば良いと思うのですが。

―豊國さん自身、迷いはなかったのですか?

ある時は「今やっている仕事が自分に向いているだろうか?」と、
考えることもありますが、難しく考えすぎない方が良いでしょう。

やはり社会と言うと、常にいろいろな困難はあるものなので、
心配事をネガティブに捉えたりしないで、
逆に、「何とかなる」と思った方が良いと思いますね。
どんな仕事にでも、意味があるのです。

あまり悲観的に考え過ぎず、もっと世の中を、
楽観的に考えてきた方が、幸せになると思います。

雨が降った次の日は、また雨が降ると思わないで。
何とかなりますよ。冬が来ると、春が来るのですから。

―最後に、中高生の読者へメッセージをお願いします。

一生懸命勉強しましょう。中高生の皆さんは、
将来、社会に出ると思いますが、仕事をすることが、
社会に対して貢献できるようになるということです。

そのような考え方を持ち、あまり心配し過ぎずに、
前向きに生きていただきたいと思います。

―豊國さん、本日はありがとうございました。

取材先: 東北経済産業局      (タグ: ,

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