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2017年 08月 19日 (土)

「シーズ」と「ニーズ」出会いの場提供 産学官連携フェア

2009年10月19日公開

仙台市青葉区の仙台国際センターで開催された「産学官連携フェアみやぎ」のようす

 産学官の連携による新規事業創出に向け、大学・研究機関の「シーズ」と企業の「ニーズ」のマッチングを図ろうと、「産学官連携フェアみやぎ」が14日、仙台市青葉区の仙台国際センターで開催され、企業などから760人が訪れた。

 宮城県内外41の大学・研究機関や産業支援機関などが、研究成果や産学官連携事業の取組みなどを、ポスター形式で紹介。同時開催された「東北大学イノベーションフェア2009 in 仙台」とあわせ、117ブースの「シーズ」発表に、見学者は熱心に聴き入っていた。

国産基本ソフト(OS)「トロン(TRON)」の生みの親として知られる坂村健さん(東京大学教授)が、「イノベーションとユビキタス」と題して基調講演を行った

 基調講演では、国産基本ソフト(OS)「トロン(TRON)」の生みの親として知られる坂村健さん(東京大学教授)が、「イノベーションとユビキタス」と題して講演した。

 宮城県や経済団体などが一丸となり、県内企業が製造する優れた工業製品を「みやぎ優れMONO」として認定し、県内外に広く発信していく「みやぎ優れMONO」発信事業の認定式も行われた。

 ※「みやぎ優れMONO」発信事業に関する詳しい記事はこちら
 ◆ものづくりで宮城を元気に 「みやぎ優れMONO発信事業」スタート(宮城の新聞 09/06/22)

第1回「みやぎ優れMONO」認定式のようす

 第1回「みやぎ優れMONO」に認定された製品は、下記の5製品。ウェットスーツ「フリーダムNZ」(モビーディック)、「フォトニック結晶光学素子」(フォトニックラティス)、「WindWill(ウィンドウィル)」(空調企業)、「極微弱発光検出装置(ケミルミネッセンスアナライザー)」(東北電子産業)、「緊急地震速報機」(アイリスオーヤマ)。

 みやぎ産業振興機構・産学連携推進課課長の村上信幸さんは、「大学にシーズはあるが、ニーズにはなかなかマッチングせず、製品化しても売れない場合が多い。大学関係のシーズと企業のニーズの出会いの場をつくることで、新製品を生み出すことにつなげ、地域経済の活性化を目指したい」と話していた。

―「みやぎ優れMONO」認定製品の紹介(一部)と中高生へのメッセージ:

◆機能絞りコストダウン/緊急地震速報機
 アイリスオーヤマ(仙台市青葉区)商品開発部の貫名明さんと菊池誠さん

アイリスオーヤマ(仙台市青葉区)商品開発部の貫名明さんと菊池誠さん

 気象庁から地元FM局を通して放送される「緊急地震速報」を自動受信し、緊急地震速報を大音量で知らせるもの。テレビやラジオなどをつけていない時でも、ラジオの電波をキャッチし、消音状態のスピーカーをON状態にして拡声放送を行う。検出に機能を絞ることでコストダウンを図り、6千円前後に設定。ラジオ放送からの緊急地震速報なので、契約料、月額使用料、管理費などのランニングコストはかからない。
 社内会議では社長に「売れないから中止」と言われ苦労したが、障害をクリアして社長を説得。店頭に並んだ商品を「いいね」と言っていただける時が、ものづくりで嬉しい瞬間。自分が面白いと思ったことを、辛くても諦めずに自信を持って、答えが出るまでやり抜くことが大切。

◆物質の劣化を検出/極微弱発光検出装置
 東北電子産業(仙台市太白区)代表取締役社長の山田理恵さん

東北電子産業(仙台市太白区)代表取締役社長の山田理恵さん

 物質が劣化(酸化)する際に発生する、ホタルの光の1万分の1ぐらいの微弱な光(光子レベル)を検出する装置。当初はインスタントラーメンに使われる油の劣化を調べるために、産学官連携で東北大学と共同開発した。油だけでなく、プラスチックや建材、血液など、あらゆる物質のごく初期の酸化劣化度を検出できる。
 昨今、安心・安全な品質への関心が高まるなか、製品の品質評価へのニーズが高まっている。他には真似できない極微弱発光の解析分析技術で、研究開発や品質評価に貢献する。今後、より幅広い分野で適用されることを期待している。
 子どもがものづくりに対する興味をなくしていると聞く。ものを0から1につくり出す営みは、様々な物事の基本であり、面白いこと。ものづくりの面白さを分かってもらい、ものづくりの分野にもっと入ってもらいたい。

◆電気使わず室内の温度ムラ低減/Wind Will(ウインドウィル)
 空調企業(仙台市宮城野区)取締役の鈴木康司さん

空調企業(仙台市宮城野区)取締役の鈴木康司さん

 特許の二重羽構造ファンにより、空調機器からの冷暖房風を動力源として、電気を消費せずに、温度ムラを低減させるサーキュレーター「Wind Will(ウインドウィル)」を産学官の連携で開発。「夏:エアコンから離れると暑い、冬:足元が温まり難く寒い」温度ムラを低減し、快適性が向上する。
 空調の修理点検業務が縮小するなか、自分たちの経験を活かした製品開発を目指した。製品化のヒントは、修理点検で得られた「冬場は足元が寒い。何とかならないか」という声。以前から温度ムラを低減させるサーキュレーターがあったが、動作には電気を消費していた。「二重羽にすれば空気の力を借りて、電気を使わずに空気を攪拌できるのでは」という一人の社員のアイディアを、ダンボールで型をつくり確かめることから開発をはじめた。今後の課題は、製品化した後の販売ルート開拓。
 昨今「何をやりたいのかわからない」中高生が増えたと感じる。様々な情報を収集しながら「自分が何をやりたいのか」を考えながら、進んでいただきたい。

―ものづくりのプロセスを支援する「シーズ」発表を一部紹介。

◆イオン液体でCO2回収 コストもエネルギーも節約
 産業技術総合研究所東北センター(仙台市宮城野区)主任研究員の金久保光央さん

産業技術総合研究所東北センター(仙台市宮城野区)主任研究員の金久保光央さん

 現在の化石エネルギーを基盤とした社会から低炭素化社会へ移行させる間に、少なくとも現時点で必要なことは、地球温暖化ガスである二酸化炭素の排出を抑制すること。その方法のひとつに、二酸化炭素を他ガスから分離回収し、地中や海中に貯留しようという技術があるが、コストやエネルギー等、そのプロセスには改良の余地がある。
 イオン液体は、室温以下に融点をもち、蒸気圧が非常に低い液体。そのためイオン液体は、大気中への放出がほとんどない、リサイクルが容易であるなどクリーンな溶剤である。それらイオン液体の中には、二酸化炭素を選択的かつ大量に吸収する特徴をもつものがあることが明らかにされた。本研究では、イオン液体を吸収液として利用することで、従来の方法で必要とされていたプロセスを簡略化し、低コスト、低消費エネルギーな二酸化炭素分離回収プロセスの開発を目指している。

◆卓上サイズの化学反応装置 欲しい人に欲しいだけ生産
 産業技術総合研究所東北センター(仙台市宮城野区)主任研究員の川波肇さんと石坂孝之さん

産業技術総合研究所東北センター(仙台市宮城野区)主任研究員の川波肇さんと石坂孝之さん

 ものづくりはプロセスが中心。環境に優しくエネルギーを使わない、コンパクトで効率的なプロセスの実現を目指している。従来のような大量生産ではなく、欲しい人が欲しいだけ生産できる、コンパクトなプロセスを工業化技術として確立することがミッション。具体的には、マイクロリアクターと呼ばれる卓上サイズの化学反応装置を、常温常圧のものから高温高圧のものまで揃え、要望に応じたコーディネイトなどをしている。
 今回紹介した技術は、マイクロリアクターを用いて、ポリイミド微粒子を簡単に短時間でつくれる新しい方法。ポリイミドは、その優れた断熱性、耐熱性、絶縁性などから、宇宙服や液晶テレビのフィルム、携帯電話やパソコンに使われる折り曲げられる基盤、燃料電池材料などで必要不可欠な材料である。従来からポリイミド材料のフィルム状、ファイバー状の製造はあったが、有機微粒子は加工に難があり、工業的な製造は確立されていなかった。例えばポリイミド微粒子で薬剤を封じ込み、患部に投与するドラッグデリバリーシステムへの応用など、ナノスケールのポリイミド微粒子開発により、多種多様な用途展開が期待できる。

◆光造形法で試作スピードアップ
 宮城県産業技術総合センター(仙台市泉区)研究員の伊藤利憲さん

宮城県産業技術総合センター(仙台市泉区)研究員の伊藤利憲さん

 ここ数年、携帯電話やパソコンなど、製品開発サイクルは従来より大幅に短くなっている。デザイン段階でスピードアップする技術が、それを支える側面もある。
 当センターでは、ラピットプロトタイピング(Rapid=高速に、Prototyping=試作する)方法のひとつである「光造形法」を使った試作の技術的支援を行っている。光造形法は紫外線が当たると固まる樹脂を使用、3次元CAD(コンピュータによる設計)データを元に紫外線レーザーを当てる位置を制御して立体物をつくる。従来のように金型などの費用と時間をかけることなく、正確な立体モデルができ、作業のスピード化に貢献している。
 例えば携帯電話は「スリムで格好が良い」というように、ユーザが直接触れることで確認する要素が大きい。光造形法で試作をつくれば、直接触って素早く確認できる。工業製品をいち早く世に出すために、技能研修の研修などもあわせて、県内企業を支援している。

◆世界トップクラスの放電プラズマ焼結機で製品化支援
 宮城県産業技術総合センター(仙台市泉区)上席主任研究員の斎藤雅弘さん

宮城県産業技術総合センター(仙台市泉区)上席主任研究員の斎藤雅弘さん

 放電プラズマ焼結機(SPS:Spark Plasma Sintering)とは、金属や樹脂などの粉末に真空中で高電流を流し、短時間のうちに効率よく焼き固める製法。この手法を適切に用いることにより、既存の方法では製造が困難だった様々な素材や部材を製品化することができる。
 例えば、携帯電話やパソコンなどに入っているハードディスクの磁気ヘッドをさいの目に切る工具は、中央の金属部を薄く綺麗に作る必要があるため、SPSでしかつくれない。車のギアなど複雑な形の部品は、これまでの製法で1週間かかっていたものを、SPSならわずか8秒で作れる。磁石は、固めるために樹脂を4%程度混ぜて製造するが、SPSなら樹脂2%で固めることができるため、磁石の特性を最大限活かすことができる。
 昨年、当センターで新型SPS装置を導入した。新型機は世界トップクラスの性能で、直径30センチの材料に3万アンペアの電流を加えられる。従来機と比べて大きな材料を加工でき、出力も3倍になった。加工時間も半分程度で済む。他県でできない製品を、県内企業に、世の中にいち早く出してもらいたい。

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