取材・写真・文/大草芳江
2009年7月22日公開
宮城県は、経済の牽引役となる可能性がある地域
村井 嘉浩 Yoshihiro Murai (宮城県知事)
1960年大阪府生まれ。84年防衛大学校(理工学専攻)卒業後、陸上自衛官に任官。ヘリコプターパイロットとして、東北方面航空隊(仙台霞目駐屯地)ならびに広報班長として宮城地方連絡部募集課にて勤務。92年自衛隊を退職、財団法人松下政経塾へ入塾。95年より3期連続で宮城県議会議員当選。自民党宮城県連幹事長を経て、05年11月宮城県知事に就任、現在に至る。
「社会って、そもそもなんだろう?」を探るべく、【社会】に関する様々な人々をインタビュー
わたしたちは「宮城県」という地方自治体に住んでいるが、
普段の生活において「県」を実感する機会はそう多くはない。
そもそも「宮城県」とは何かを、教科書的な知識にとどまらず、
実感を伴って理解していくには、どうすればよいだろうか。
そこで、宮城県知事の村井嘉浩さんという「人」の認識を通して、
宮城県とはそもそも何かを探る。
宮城県知事の村井嘉浩さんに聞く
パイロット時代、空から見た宮城県
―「宮城県」について、村井さん自身がこれまで見て・感じてきたことを中心にお話いただくことで、
村井さんという「人」を通して見える「宮城県」とはそもそも何かを探りたいと思います。
僕は、経歴が変わっていましてね。
もともと僕は、大阪生まれの大阪育ちで、
女房は、福岡県の小倉生まれの小倉育ち。
防衛大を出て、自衛官になって、
はじめて赴任したのが、宮城だったのですよ。
霞目駐屯地(宮城県仙台市若林区)って、あるでしょう。
あそこで、ヘリのパイロットをやっていたのです。
自衛隊をやめて、松下政経塾(※1)で政治の勉強をして、
県議会議員になって、知事になった、という変り種なのです。
(※1)松下政経塾...松下電器産業の創業者・松下幸之助が私財を投じて1979年創設。塾生は、全寮制で3年間の研修を受ける。理想の国家はどうあるべきか、仮説を立て、現場での体験を重ね、仲間と研鑚を積みながら自得していく「自修自得」「現地現場」「切磋琢磨」などを研修の基本方針とする。
自衛官時代、ヘリで空を飛んでいたので、
北海道から九州まで、いろいろなところを見ていました。
そこで東北というところは、
非常に魅了ある場所だな、と思ったのですね。
なぜかと言うと、関東や関西などは、主だったところにはもう、
工場や家が立ち並んでいて、立錐の余地もないような状況。
それに比べて東北は、今まで発展してこなかった分、
将来の発展の可能性が非常にある場所だな、と思いました。
今までは、雪が発展を阻害していたのですが、
雪があまり降らなくなってきたことと、
新幹線や高速道路が走り、港や空港が整備され、
非常に便利な場所になってきたな、と。
将来、この東北というのは、
日本の中心になるんじゃないか、と感じました。
その中でも宮城というのは、これから発展する東北の中でも、
経済的に最も中心となる役割があると、空から見ていて感じたわけですよ。
つまり、私から見る宮城というのは、将来発展する可能性のある東北の中で、
経済の牽引役になる可能性のある地域だ、ということかな。
宮城県は、暮らしやすく、人生を楽しめる場所
―実際に活動する中で、他県生まれ他県育ちの村井さんは、
宮城に対して、どのようなことを感じていますか?
宮城県は、非常に暮らしやすいということですよ。
良い意味でも悪い意味でも、仙台に一極集中しています。
例えば、いろいろな道路を見てみても、仙台へ如何にアクセスしやすいか
という風につくられているのですよ。
気候も夏は涼しく、冬は寒いのですが、あまり雪は降らない。
どこに行くにしても便利ですし、非常に都会なのですが、
それでいて、田舎の部分もあります。
海があり山があり、泳ごうと思えば泳げるし、釣りをやろうと思えば釣りもできる。
山に登ろうと思えば山に登れるし、スキーをやろうと思えばスキーもできる。
要は、生活をする上で非常に暮らしやすい、人生を楽しめる場所ですよね。
特に僕の場合は、大阪から来たから、余計によくわかるのです。
自衛隊から政治家へ転身した理由
―そもそもなぜ村井さんは、自衛隊を辞めて、政治家を目指したのですか?
政治家を目指そうと思ったきっかけは、
やはり、政治に不満があったから。
ところが自衛官というのは、
政治活動に関与してはいけないことになっています。
ならば、自分が政治家となってなおしていく、
というのが良いのでは、と思ったからです。
政治というのは、「誰がやっても変わらない」とよく言われますが、
それは全く違っていて、やる人によって全く結果が変わってきます。
しかも、社会全体が変わってくるのです。
大変大きな影響力があるのですよ。
政治とは、会社で言うと経営です。
日本国の経営、宮城県の経営ですので、
宮城県民全体が幸せになるのか、不幸になるのか、
それをすべてコントロールする立場にあるのが政治です。
ですから非常に、政治が重要なのです。
当時も、割とお互いを罵り合って、駆け引きばかりを
やるような政治がずっと続いていたので、
そのような政治に、憤りを感じていたのですね。
政治はやる人によって結果が変わる
―国民・県民の視点から見ると、政治家によって社会が変わることに、あまり実感が湧きません。
どこからどこまでが政治家の違いで社会が変わっているのかが、あまり見えないためなのかも
しれませんが、村井さんは知事という立場から、その違いをどのように感じていますか?
いや、全然違いますよ。
前の知事さんは、福祉に力を入れていて、
「日本一の福祉先進県」を掲げていました。
その結果、財政が非常に厳しくなってしまった。
浅野さんがやっていた12年間で、宮城県の借金が、
7千億円から1兆4千億円へと、倍になったのです。
それでもう、二進(にっち)も三進(さっち)もいかなくなってから、
僕はバトンを譲られたわけです。
当然、行政の役割としては、福祉・教育・環境が
非常に重要なのだけれども、財源がないんですよ。
すると、最低限のルーティンワークしかできない。
けれども、それじゃあ、うまくいかない。
そこで、まずはやはり、県民の皆さんに豊かになってもらい、
税収を上げることが一番大事じゃないかということで、
経済政策に、力を入れるようにしているのです。
今、宮城県には大きな企業がどんどん進出しています。
数日前も、経団連の御手洗会長さんが来られて、
「宮城は非常に元気がいいですね」というお話をされていました。
僕は、知事になってまだ4年目ですが、そういったところに、
僕が力を入れてきたことが、結果になって少しずつあらわれているのですよね。
もしも私じゃなくて、前の知事が引き続き4年間をやっていたら、
おそらく大きな企業は、来ていなかったと思いますよ。
それはやはり、私がトップをきって、
職員の皆さんと一緒になってやらないといけないこと。
もし私が何もしないでこの部屋にずっといたまま、職員に「行って来い」と言ったって、
当然、会社の偉い人たちは会ってくれません。
知事だから、会ってくれるのです。
私が行って直接お願いし、会社から「こういう条件ならどうですか」と言われたものを、
宮城県としてできることを進め、またお願いしての繰り返しで、ものすごく足を運びました。
もちろん、すぐには変わりませんよ。
知事になって、次の日に変わるということはありません。
けれども、5年、10年経つと、大きく変わってくると思います。
それは、やはりリーダーによって、また変わってきますよ。
国会で言えば、総理大臣は日本の国の経営者ですから、
誰がなるかによって、全く変わってくるでしょうね。
知事ですら、それだけの影響力を行使できるのですから。
やはり知事が誰になるかによって、
全く結果が違ったと思いますよ。
企業誘致なんかは、間違いなく、です。
私がそれを最優先の政策にしたからです。
やはり若い人たちが、宮城県で働ける場を
つくりたいな、と思ったのですよ。
―若い人たちが働けない現状が、宮城県にはあるということですか?
そうですね。
特に、東北大学の理科系の卒業生は、
ほとんど宮城県に残りません。
宮城県で働きたくても、宮城県で働く場所が無いのです。
ですから、働く場所をつくらなければいけないと思うのですよ。
それにはやはり、ふさわしい会社を持ってくるしか、
方法が無いわけです。
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