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2018年 07月 19日 ()

【東北大学ALicE×宮城の新聞 ♯020】リケジョを増やす方策とは?/東北大学工学系研究科長と現役女子学生が座談会で議論 取材・写真・文/大草芳江

2018年05月17日公開


「将来や進路選択に悩む、すべての中高生たちへ。
男女問わず学問を追求できる東北大学工学系で、
自分の興味がある分野に、自ら足を踏み入れて欲しい。」

 女性研究者や女子学生の支援や男女共同参画の推進を行う東北大学工学系女性研究者育成支援推進室(以下ALicE)は、東北大学大学院の工学研究科、情報科学研究科、環境科学研究科、医工学研究科の各研究科長4名と現役女子学生2名を交えた座談会を同大キャンパス内で実施しました。座談会では、東北大学工学系における女性教員及び女子学生の比率が少ない現状に対して、どのような方策を取るべきかが議論されました。本稿では、座談会の内容を編集してご紹介します。

Q1 どうしたら女子学生が増えると思いますか?

鈴木(ALicE) 本日の司会進行役を務めるALicEの鈴木です。本日は大変お忙しい中、研究科長の先生方と現役女子学生にお集まりいただき、ありがとうございます。はじめに、研究科長の先生方へ質問です。どうしたら工学系の女子学生が増えると思いますか?そのための環境整備について、現在力を入れている取組や今後実践していきたい取組等もありましたらご紹介ください。

東北大学大学院工学研究科長・教授 長坂徹也さん

長坂 私の妻がフルタイム勤務の歯科医をしている関係で、男女共同参画は若い頃から身近なテーマです。昔に比べれば環境は随分よくなったと思います。妻が「あなたは女性だから、一定の仕事だけしてくれればよい」と上司から言われたなんて、今の時代なら考えられませんよね。工学研究科から授賞やポストの推薦を頼まれますが、今は女性研究者向けの様々な支援事業が豊富なので、「むしろ女性の方が有利だ」と男性から言われるくらいですから、あまり悲観的にならなくてもよいと思います。ただ、依然として男性の理解が足りないのは事実ですので、もう少し時間をかけて変えていく必要があると思います。

東北大学大学院情報科学研究科長・教授 中尾光之さん

中尾 女子学生を増やすための施策として、まず物理的にアメニティ(居住性のよさ)の整備は不可欠だと思います。我々も微々たる歩みではありますが、その環境整備を進めてきました。一方、情報科学そのものはジェンダー(社会的性別)やマイノリティ(社会的少数派)の枠にとらわれない学問領域であると思います。そのことにぜひ女子学生の皆さんが気付いて参入してもらえるとよいですね。また、本学で昨年度から始まった女性教員採用推進事業(※1)等のチャンスを我々も活用し、女性研究者のキャリアを積極的に支援していきたいと考えています。

※1 女性教員採用推進事業:東北大学は平成28年度文部科学省 科学技術人材育成費補助事業ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特色型)に採択され、「杜の都女性研究者エンパワーメント推進事業」を推進している。特に、優秀な女性研究者が長期に渡り安定かつ自立して研究を実施できる環境を整えることで、女性に特有のライフイベントも乗り越えて、多様な能力と発想を生かし、優れた研究成果の創出に繋げることを期待して、平成29年度から「女性教員採用推進事業」を学内経費により展開している。

東北大学大学院環境科学研究科長・教授 土屋範芳さん

土屋 私の専門である地質学系では国際的に見ると、男女比はほぼ1:1もしくは女性の方が多いのが一般的です。一方で日本において、地質学系のみならず理工学系に極めて女子が少ない現状は歪な状態だと私自身は思っています。外国で地質学を専攻する女子が多い理由は、「自然がどのように成り立ち、それをどう感じて考えたらよいか」に興味を持つ学生が多いからだと思います。一般的に日本の中高生がイメージしやすい"派手な科学"だけでなく、"和やかな科学"や"心を豊かにする科学"等々、科学には多様性があります。そのことに女子が気付いて目覚めてくれるとよいですね。その結果、リケジョの割合も少しずつ増えていくのではないでしょうか。その先の社会システムの問題については、大学の一研究科がなかなかアプローチできない領域ですから、我々ができることは科学の楽しさや多様性を女子学生に感じてもらうことだと思います。

東北大学大学院医工学研究科長・教授 厨川常元さん

厨川 内閣府では、男女共同参画社会の実現に向けて、「2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」という目標を掲げています。それを本学で実現するには、そもそもの女性の数が少ない中で、ハードルが高いのが現状ですから、女性の数自体を増やす施策が必要です。そのためにはまず、勉強や仕事と育児を両立できる環境の整備として託児所の充実が必要不可欠です。

【写真】2018年4月開設「青葉山みどり保育園」外観(複合施設3階および屋上が保育園)

 2018年4月、本学工学系キャンパス内に「青葉山みどり保育園」(写真)が開設されることは、非常によい取組だと思います。また、男女ともに育児や介護をしながら仕事を続けるためには、先行する企業の勤務時間管理や業務管理等の制度も参考にしながら、勤務時間の自由化や在宅勤務制の導入を検討すべきでしょう。さらに、これからの工学では技術の具現化から製品化までを念頭に置いた研究開発が求められます。我々の医工学分野では、"超高齢社会対応技術"や"癒やし"、"和"の具現化に、女性視点での技術開発が重要になると考えています。何よりもまず教員自身が楽しく研究している姿を見せなければ、男女限らず学生は入学してきませんから、我々教員にも課題があると言えます。

ALicE 室長/東北大学大学院医工学研究科 教授 田中真美さん

田中 各研究科の先生方から心強い言葉をいただきました。東北大学女性研究者採用促進事業では各部局で女性教員を増やす取組を積極的に行っていただいています。また、育児との両立に関しては、ALicEで設置しているキャンパス内の一時託児スペースに加えて、2018年4月に100人規模の青葉山みどり保育園が工学系キャンパス内に開園し、本学の女性教職員や女子学生が利用できるよう全学で取組んでいます。さらに2017年度からは、出産等を行う博士課程の大学院生に対しても長期履修制度が導入される等、環境は非常に良くなっています。その一方で、現状としては工学部に女子学生が少ないために、女子中高生からは「工学系は女性を歓迎していないのでは」と思われている節もありますので、東北大学工学系は女子学生をとても歓迎していることを先生方からも事あるごとに発信いただければ幸いです。

鈴木 現役女子学生の視点からも、コメントをいただければと思います。

東北大学大学院環境科学研究科 修士2年 野田千暁さん(平成29年度サイエンスエンジェル)

野田 私は学部時代、工学部の中でも女子が比較的多い化学バイオ系に所属しており、今の研究室でも日本人学生は皆女子という環境にいます。そのため、逆に男子が多い環境の方がうまくイメージできないところもあります。ただ、私自身も当時は、「男子は化学工学系、女子はバイオ系」という固定概念を持っていたようにも思います。実際は私の同期にはバイオ系でも男子が多く、工学部のWebサイトに登場していた工学部出身の女性の先輩は化学工学系というケースもありました。自分が想像しているイメージと実際とは異なる場合も多いので、ジェンダーに関する先入観がなくなるとよいと思いました。また、工学系には女子学生支援制度がありますが、教員だけでなく学生にも制度について広く周知してもらえると活用しやすいと思います。例えば、夜遅くまで研究をしていると、帰りの公共交通機関がなくなり困ってしまうことがありますが、女子学生支援制度の中には、そういった女子学生のためのタクシーチケット支援サービスがあります。こういった便利な制度を知らない女子学生も少なくないのではないかと思いました。育児については、学部生の頃はまだ先のことだと思っていましたが、大学院に進学すると、「何歳までには結婚したい」という話題と共に「博士課程まで進学すると、結婚が遅れるのでは?」という話が出て、今後の進路について悩むことはあります。東北大学工学系には、結婚や育児と研究を両立している先輩や先生方もたくさんいらっしゃいますので、そういった情報がもっと女子学生に伝われば、博士課程まで進学しやすくなるのではないかと感じました。

東北大学大学院情報科学研究科 修士2年 栗本優美さん(平成29年度サイエンスエンジェル)

栗本 私は学部時代、工学部の中でも女子学生が少ない電気電子系に所属していました。私は女子学生の少なさは気にせずに入学しましたが、オープンキャンパス等で女子高校生からは「女子が少ないけど大丈夫ですか?」といった質問を受けます。実際に入学すれば、大学は人数が多いので、全員と関わる機会があるわけではなく、普段は男女比がほとんど1:1のグループで行動したりするので男子の多さは気にならないですが、入るまではわからずに不安だと思うので、女子が少なくてもこれまでと別に変わらず生活ができることを発信できるとよいと思います。また、私の研究室には女性の助教がいるので、進学や将来に対する色々な助言をもらえて助かっています。女性教員が増えれば女子学生も増えるのではないかと思います。

長坂 私の研究室に松八重先生が准教授として在籍していた時、女性の研究者がいることで女子学生が来る求心力になると思ったのですが、あまり来なかったですね。意外でした。

栗本 もし、多くの女性教員が在籍していれば、女子学生にとって、研究室選択の先にある「その後の進路選択」の参考にできるロールモデルとなり、大きな影響を与えるのではないかと思います。しかし、前提としては、「女性の先生がいる」ことよりも、「自分の興味がある分野」を優先して選ぶと思います。

長坂 そうですよね。女子学生の比率を見ると、化学・バイオ系と人間・環境系に多く、一方で機械系と電気系と材料系は少ない傾向で二極化しています。この差を議論するわけではないですが、「女子はどのような分野に興味があるか」について、ぜひ聞かせて欲しいです。研究室の女子学生と話をしていると、卒業後にどんな職業に就くかをイメージしていて、肉体的にハードな業種は避ける傾向にあると感じます。私の研究室では色々なことをやっていますが、基本は鉄鋼なので、職業としては製鉄所のイメージがあると思います。それが恐らく女子の仕事のイメージとは一番遠いところにあるから、いくら松八重さんがいても求心力がなかったのではないかという気がするのです。実際に松八重さんを慕ってきた女子学生は、実験ではなく計算の仕事ができるのがよいという理由の学生が多かったです。女子学生は、将来の結婚や出産・育児、旦那との同居等々を頭の中で漠然と考えて分野を選んでいるという印象があります。そのあたりをぜひ聞かせて欲しいですね。

鈴木 キャリアプランについては、後半でぜひ女子学生に直接聞いてみましょう。

ALicE 副室長/東北大学大学院環境科学研究科 教授 松八重一代さん

松八重 私が専門とする持続可能性科学の分野は、海外では女性教授の比率が高い領域ですが、私が日本から学会等に参加すると「日本でも女性で教授になれるんだね」と驚かれるほど、日本と海外では男女の比率にギャップがあると感じています。もともと私は経済学部出身で、私が専門とする計量経済学は比較的女性が少ない分野でした。私自身は男女比が自分のやりたい学問分野の選択に影響を与えることはありませんでした。ただ、海外では工学系の分野を選択することで、将来のキャリアの選択肢が広がるポジティブなイメージを女性も持っているのに対し、日本では女性のポジティブな将来像が見えづらい現状が工学系に女性の比率が低い一因ではないかと、感じています。また、大学の環境について、ハードとソフトの両面で整いつつあることは、実際にその通りで、そのおかげで自分の選択肢を閉ざさずに済むようになってきたと思います。私自身も結婚して出産し育児との両立が必要になった段階で「学内に保育園があるから、少し休んで保育園に預ければ、すぐ仕事に復帰できるな」と楽観的に考えることができました。実は、田中真美先生は同じく男の子を持つママ友なのです。大学の業務と育児を両立する身近なロールモデル(行動や考え方のお手本となる人)の存在は、自分の将来像をイメージする上でもよいと感じています。

鈴木 先程「女性ならではの視点が活きる分野があるのでは」というお話がありましたが、その辺りについては如何でしょうか。

中尾 基本的には、学問的な興味に性差は存在しないと私自身は考えています。そのような意味では、「男性だから」「女性だから」という理由で学問を選んでほしくないですし、そうすべきではないと考えています。また、「女性ならでは」という言い方は本当によいのだろうかと感じます。ジェンダーはダイバーシティのひとつだと思いますし、当然ながら、ひとつの視点しか持たないグループはクリエイティブ(創造的)ではなく、ましてやイノベーション(技術革新)などは起こり得ません。できるだけ多様な視点が入ることが社会的にも研究やものづくりにおいても必要です。その多様性のひとつとして、性差以前に、「自分自身が如何に個性的であるか」の方が重要ですし、そのような個性的な人がグループ内にいることが、どの領域においても大切なことではないでしょうか。

土屋 私も研究室で学生と話をする時、基本的には男女分け隔てなく議論し、切磋琢磨していくので、男女差を考えたことはありませんでした。また、基本的に大学にいる限り、男女差をほとんど意識していません。例えば、約50年前の大学の建物には6個あるトイレのうち女子トイレは1個だけでしたが、約20年前に立替えた時、男子トイレ3個と女子トイレ3個に身体障害者用トイレ1個が加わる等、大学の環境整備も進んでいます。その一方、厳然として女子学生が少ない事実があります。その理由のひとつとして、将来に対する漠然とした不安があるのではないかと考えています。もうひとつは、女子中高生が自分自身で、「自分にできそうなこと、できそうなこと」といった"枠"を決めてしまっているような気がするのです。少なくとも大学では男女差がない社会がほぼ出来上がっています。あとは、女子学生がそこに飛び込んでくるか・飛び込まないかというところまで、環境整備は進んでいると思うのです。その後の将来に対する不安については社会システムの問題なので、すぐに解決することは難しいですが、それは男子も同じです。女子は結婚や育児で将来に対する不安を持っていると思いますが、男子も同じように将来に対する不安を抱えているために、博士課程への進学がなかなか進まない現状があるのだと思います。これは何とか変えていく必要があるでしょう。諸外国では、実は学問を志向するのは女子の方が多く、どちらかと言えば、男子はビジネス思考の傾向があります。博士課程に進学するのも女子の方が多い印象で、真摯に学問に取組みたいという意識を持っていると感じますね。男女共に将来に対する悩みを持っているという意味では同じスタート地点に立っています。だからこそ、そこから一歩前へ進むのに必要なのは自分自身の意識ではないでしょうか。

厨川 現在、私の研究室にいる約40人の学生のうち、女子学生は3人です。多い時には女子学生が6人在籍していましたが、入る時はまとまって入ってくる傾向があります。私の専門分野は「油まみれ」になって「ものを削る」という、どちらかと言えば男性的なイメージと言われる分野ですが、一方で、歯や骨を研究テーマにすると女子学生が関心を持つので、研究テーマの設定が非常に重要だと思います。ただ、東北大学に入学する段階で女子学生の数が多くない現実があります。その理由のひとつに、まず入試科目に物理があると女子が少ない傾向にありますね。さらに、これは男子学生も該当しますが、進路決定には保護者、特に母親の影響力が大きいので、母親に対して工学系の楽しさや格好良さを伝えることが効果的だと考えています。実際、小学校高学年向けに我々が実施している体験型科学教室は、母親に対する広報・PR活動という目的もあります。おかげさまでお母様方からは「工学部って格好良いのですね」という反応が割りと多いのですよ。浸透するまでに時間はかかりますが、直近ではその小学生たちが大学を受験する6年後に成果が現れてくると思います。

田中 最近のオープンキャンパスでは学生と一緒にご両親も参加する傾向にあり、ご両親の方から「女子学生が生き生きと学生生活を楽しんでいることがわかり、とても安心した」という感想をよく聞きます。私も学問には性差がないと考えています。一方、女子学生が多い研究室にまた女子学生が入る傾向が見られるので、女子学生が一人でもいると入りやすい雰囲気になるようです。土屋先生のおっしゃっていたトイレ問題も、私が学生だった頃と比べて環境が非常によくなりました。今度は私たち世代が保護者になりますので、自分たちの時代とは異なり、大学の環境が改善されたことを広くアピールする必要があると思います。また女子学生の進路選択については、保護者の方や高校の先生など、周囲の方の言葉が非常に大きく影響しているようです。そのため、保護者に加えて高校の先生方にも、東北大学工学部は女子学生を歓迎していることをアピールする必要があると考えています。

鈴木 実際に東北大学工学系研究科に所属している女子学生の皆さんはどのように感じていますか? 長坂先生から質問いただいたキャリアプランについても、ぜひ意見を聞かせてください。

野田 研究室に女子学生がいると入りやすい傾向は確かにあります。歳の近い人の方が、親近感を抱きやすいと思うので、私達サイエンスエンジェル(※2)が出張授業で高校を訪問し、理工系の楽しさを伝える活動は効果的だと思います。また、キャリアプランについて、私は大学院に進学する時も母親の影響が強かったです。私が「まわりの友達も大学院に進学しているから私も進学しようかな」と両親に相談すると、父は「いいと思うよ」と言ってくれたのに対して、母は「将来、結婚はどうするつもりなの?大学院に進学する意味はあるの?」と否定的な反応で、さらに博士課程への進学の話になると、「卒業する時には何歳になると思っているの?」という反応でした(笑)。ですから、先生方が仰っていたように親の固定概念を解消する必要もあると思います。私が将来のキャリアプランについて考え始めたのはつい最近のことで、きっかけは企業のインターンシップに参加したことでした。仲の良い女友達は皆インターンシップに参加しており、7人のうち3人は「企業に就職するよりも、大学で研究をする方が向いている気がするから、博士課程に進学しようかな」と進学を決めていました。そういった機会に積極的に参加することは将来を考えるきっかけのひとつになると思います。

※2 東北大学サイエンスエンジェル:次世代の研究者を目指す中高校生に「女性研究者ってかっこいい!」、「理系進学って楽しい!」という思いを伝えるために結集した、東北大学の自然科学系女子大学院生。

栗本 大学に入るまでは、私も親の影響が大きかったと感じています。私の場合は父親の影響力が大きく、進路選択についても父親から理系を勧められて工学部に進学しました。ただ、私も大学院に進学した時、母から「私があなたの歳の頃には結婚していた」と言われました(笑)。実際に高校の頃、周りには「女の子は資格がなければ駄目だから」と親から言われ、何らかの資格の取れる学部に進んでいる友達が多かった印象です。私の場合は、「工学部からの就職は工場勤務の人が多く、研究内容も似たような感じなのだろう」というイメージがありましたが、実際にきちんと調べてみると、どんな研究をしているかがよくわかり、分野によって研究内容も様々であると理解しました。自分の持っている固定概念や周りからの意見を鵜呑みにするのではなく、中身をきちんと自分で調べることが大切だと思います。

松八重 私の親は工学部電気系の大学教員で、小さな頃から、親がわくわくしながら大学に通う姿を見ていたので、「大学は楽しいところで、工学部の研究はおもしろそう」というイメージがありました。私自身は進路選択において両親に賛成されたことはないですが、一向に気にせず、自分の意志で進路を選択しました。親との関係性は人それぞれだと思います。
 研究者になって海外に行くと、自分で論文を執筆して研究の成果を発信する喜びに性差はなく、学問の世界は男女関係なく楽しめるところだと私自身は感じています。とはいえども、女性特有のライフイベントとして出産や育児等の心配はあります。女性の存在が周囲によい影響をもたらすためには、周りを含めて「ゆるさ」が必要ではないかと思います。「多様性の許容」と言いますか、「多様な人がいて、そんな生き方も"あり"だよね」と周囲が思わなければ、たとえ自分のやりたいことがあっても、周囲の思う"正しさ"から自分だけが外れる恐怖があります。大学の研究で「この目的達成のために皆で一丸となろう」という文化の中、そこから外れることを許容するのは、研究室を管理する立場の先生にとってもなかなか難しいことですが、それを受け止める文化の醸成が必要ですし、多様な人が存在することによって多様性に配慮する文化が自然と育まれていく効果があると思います。

鈴木 オープンキャンパスでは女子高生から「工学の中に女性でも活躍できる分野があることを知り安心した」という声をよくいただきますが、皆様のお話を伺い、大学では男性・女性の垣根を越えて「一人の"個"としての人間性を見てもらえる環境にあるということ」が一番の強みだとわかりました。自分の興味があることには思いきり挑戦してもらうことが、結果的に中高生の皆さんにとってよいことにつながるということを、私たちALicEも積極的に発信していきたいと思います!


Q2 今後、ALicEに期待することは何ですか?

鈴木 ひとつの研究科だけでは難しいことでも、4つの研究科で力を合わせ、そこにALicEが加わることでできることがあるかもしれません。今後、ALicEに期待することはありますか?

長坂 このような活動は地道にやっていただくしかないので、ALicEが一生懸命取組んでいることに対して、最大部局である工学研究科として少しでも力になりたいと思いますし、やらなければいけないことだと思います。ただ、根本的には雇用という難しい問題があると考えています。せっかく東北大学でよい知識を身に付けた、将来の伴侶になる研究者を育成したとしても、大学のポストの数には限りがあるのが現状で、そのポストが空くまで待つわけにもいきません。ALicEの活動は下支えだとしても、どうしたら東北大学として、女性が活躍できる環境を安定して生み出せるかという根本には雇用の問題がありますので、ロングスパン(長い期間)の思考で物事を考える必要があると感じています。

中尾 いわゆる"マッチョな働き方"は高度成長期につくられた慣習だと思うのですが、今では実際に働き方や雇用形態もフレキシブル(柔軟)になり、多様化しつつあります。その多様性をALicEの活動を通じてぜひ伝えて欲しいです。"マッチョな働き方"が優先される雇用形態では、育児期間がキャリアにとってデメリットになる考え方になってしまいますが、フレキシブルな働き方の中では、それもひとつのキャリアアップの機会と捉えられると思います。また、ALicEでは女性を意識した取組を展開していますが、ダイバーシティという視点で考えると、他のマイノリティや男性の働き方そのものを解放する動きにもつながると思いますので、広い視点で活動していただけるとよいですね。勿論、ALicEの活動だけに大層なことを期待するのはよくないですが(笑)、我々も組織として考える必要があると考えています。

土屋 我々環境科学研究科としても、ALicEの活動を支援していきたいと考えています。工学部は、大学院になると4つの研究科に分かれてしまい、研究室中心の生活になるので、それを横につなげられるALicEの存在は、もともとの目的である女性参画推進のみならず、さらに色々なコミュニケーションを取れる場になっていると思います。ぜひ横のつながりの場を今後もつくってもらうことを期待しています。またダイバーシティは大事なことで、その実現には積極的に多様な人を入れていく努力も必要だと思います。そのアイディアのひとつとして、女子学生のみならず男子学生の支援も考えていただけるとよいのではないでしょうか。女性と男性の悩みは質的な違いもあるとは思いますが、男子学生も将来に対する悩みを抱えているので、ALicEのような場があると、色々な意見を聞けるチャンスになると思います。

厨川 ALicEには、女性のアクティビティの「見える化」に引き続き取組んでいただきたいです。「東北大学工学系=女性教員・女性研究者・女子学生がたくさんいる」ことが簡単にイメージされるよう、「見える化」により東北大学をブランド化していただきたいのです。女性の先生方が楽しく活躍している姿を、特にお母さん方にぜひ見せてください。ただ、ダイバーシティが推奨される環境下において、女性しか登場しないのも変な印象を受けますので、土屋先生のコメントにもありましたように、「男性と女性が一緒に活躍している姿」を見せるのもよい気がします。

【写真】ロボットの機構について積極的に議論する学生たち。東北大学工学系では真に豊かな社会の実現のために多様性を尊重している。

田中 各研究科の先生方からは、ALicEの活動を支えていただき、ありがとうございます。長坂先生がおっしゃっていた雇用の問題は根本的に難しい問題ですが、厨川先生がおっしゃっていたブランド戦略で、我々教員が楽しく研究に取り組む姿を「見える化」していくことにより、少しずつ現状を変えていけるのではないかと期待しています。


Q.3 中高生へメッセージを!

鈴木 最後に、中高生の皆さんへのメッセージを一言お願いします。

長坂 女子中高生の皆さんが、どんな意見を持っているのか、どんなことでもいいので、率直な意見をぜひ聞かせてください。東北大学工学系に進学してよかったと思われるよう、できる限り反映させていきたいと思います。

中尾 情報技術が世界を席巻する中、情報リテラシー(情報活用能力)はどの分野においても益々重要になっています。何をするにしても将来のポテンシャル(可能性)が広がると思いますので、ぜひ我々情報科学研究科に学びに来てください。

土屋 少なくとも大学の世界は、性差がないフラット(対等)な状況にあります。色々な問題点は残されてはいるものの、形式的にはその問題はかなり改善されています。すると、自分が興味を持ったことにまず一歩踏み込むのは、当事者である中高生の皆さん自身だと思いますので、ぜひ親の意向や既成概念を破っていく勇気を持って、頑張ってもらいたいです。そこから何かが開けてくると思います。

厨川 東北大学の女子学生や女性研究者が楽しく活躍している姿をぜひ見てください!

野田 自分のやりたいことをやりたいと思った時に、まわりは協力してくれるはずですし、東北大学にも色々な環境が整っていますので、自分がやりたいと思ったことは躊躇せずに、どんどん進んでください。

栗本 外から見ているだけではわからないことも多いですが、できる限りの情報を集めて、自分が「いいな」と思えるところに飛び込んでみれば、そこに楽しい世界が待っているはずです。まずは一歩踏み出してみてください。

松八重 自分がやりたいと思ったことは諦めず、やりたいままに進むのがよいと思います。社会が望む"よい女性像"や"よい母親像" を演ずることなんて、自分の一度きりの人生にとっては何の役にも立ちません。あくまで自分のやりたいことをやった上で、「私、少しこうしてもらえないと、前に進めない!」と声をあげていただければ、周りの人たちも東北大学もALicEもあなたを支えることができるので、自分のやりたいことにむかって躊躇せず進んでください。

田中 男女関係なく自分がやりたいことをやっていただき、後悔のない人生を送ってほしいと私も願っています。そのためにALicEでは、先生方から本日ご意見いただいたことや、工学系で活躍する女性の「見える化」を今後もさらに進めていく所存です。本日はありがとうございました。


ALicEキャラクター『ずんだぬき』

東北大学工学系女性研究者育成支援推進室(ALicE)×「宮城の新聞」のコラボレーション連載として、女子学生・女性研究者や育児を行う研究者の研究生活や活躍、男女共同参画への取り組みを紹介しています。
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