なぜ「節水・汚濁負荷の軽減」は必要なのか?:宮城県下水道課に聞く
2011年05月17日公開
宮城県土木部下水道課の高橋一朗さん
宮城県が節水・汚濁負荷の軽減を県民に求めている。先の地震・津波被害により、県の下水処理場が甚大な被害を受け、その処理機能が低下したためだ。復旧に全力を挙げているものの、全面復旧までには2年の歳月を要すると言う。そもそもなぜ節水や汚濁負荷の軽減が必要なのか。県土木部下水道課の高橋一朗さんに聞いた。
◆微生物による下水処理が不可能に
そもそも下水はどのようにして浄化されるのか、皆さんはご存じだろうか。わたしたちが流した下水は、下水処理場にいる微生物の力によって、汚れ(有機物)が分解されることで浄化される。
しかし先の地震と津波により、県が持つ7つの下水処理場のうち、沿岸部にある「県南浄化センター(岩沼市)」「仙塩浄化センター(多賀城市)」「石巻東部浄化センター(石巻市)」が大きく損傷。微生物を保持する設備がすべて壊れたことで、従来の処理が不可能になった。
失われた処理機能を回復するには、微生物を育て、微生物に空気を送る装置などもつくりなおす必要があり、「その復旧には2年の歳月がかかる」と高橋さんは話す。
では復旧までの2年間、どのようにして下水処理を行うのか。「生物処理ができないため、汚れを沈澱させて上澄みを消毒し、放流するしかありません。しかし、環境に対する負荷が大きくなるため、汚れものや油ものを極力少なくする必要があるのです」。そのため、汚濁負荷の軽減を県民に求めているというわけである。
◆なぜ下水はマンホールから溢れ出したのか
ところで、震災直後はマンホールから下水が溢れ出す現象が見られ、驚いた人も多いだろう。なぜ下水はマンホールから溢れ出したのか。
地図を見てもわかるように、下水処理場は下流域に設置されている。それは上流から自然な勾配で下水を集めるためで、結果的に下水管は地下深くに入っていく。そのため集まった下水は、処理場のポンプで汲み上げる必要がある。
このポンプは地震などの揺れがあると、安全装置が働いて安全ゲートが緊急遮断される。そして一端停止し、中の施設に異常がなければ、安全ゲートが再び開く仕組みになっている。
ところが先の震災によって、中の施設が壊れたため安全ゲートが開けられず、下水が管の中にどんどん溜まる状況が起こった。「すぐに断水しましたが、それでも下水が流れてくるので、震災直後、下水がどんどん溜まり続けてしまったのです」
そのため県では、下水を仮設ポンプで汲み上げ、処理場内につくった仮設の沈澱地に入れて、汚れを沈澱させてから放流する措置を取った。しかし仮設ポンプは小さく、10台、20台入れても、なかなか汲み上げ能力が追いつかない。
「汲み上げ能力の増量を急いだものの、震災直後は燃料やポンプなどの入手が困難な状況が続きました。そうこうしているうちに、多賀城市ではマンホールから下水が溢れる影響が出てしまい、公衆衛生上、危機的な問題となってしまったのです」
現在は仮設ポンプを増量し、仙塩浄化センターや県南浄化センターについては、平常時並みの汲み上げ能力が確保されている。そのため、地震直後のような溢水の危険性は回避しているそうである。
ただし心配なのは、これから訪れる梅雨だ。「大雨が降ると雨水が下水道に入りこみ、下水量が3~4割増えてしまいます。現在の仮設ポンプは本来の能力までには届かないことから、心配な場合があります。そのため下水道を使う皆さんに、節水を呼びかけ続けなければならない状況です」。県では現在、「梅雨前までには何とか間に合わせよう」とメインポンプの早期復旧を急いでいる。
「そもそも下水道の原点は、人々を伝染病から守ることでした。下水道の使命とは公衆衛生の確保であることを、今回改めて思い知らされました」と高橋さんは話している。
◆節水・汚濁負荷軽減のための具体策は?
微生物たちが下水処理場で元気に汚れを分解してくれる日が戻ってくるまで、あと2年。では、それまでわたしたちは具体的にどのような工夫をすれば良いのだろうか。
県は「油ものや食べ残しなどを、下水道に流さない工夫をしましょう」「食器の汚れは紙などで拭き取り、ゴミとして出しましょう」「水道の蛇口は、こまめに閉めましょう」などと呼びかけている。小さなことでも多くの人が行うことで大きな効果があると言う。節水の具体策については、環境政策課のホームページからも閲覧可能だ。
普段はなかなか実感できない下水処理のプロセスを想像することで、わたしたちに今できることは何かを考えたい。
【参考】宮城県ホームページの「対象地域早見表」から、自分が住む地域の下水処理場名と、現在の状況概要を確認することができる。
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