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2017年 09月 24日 (日)

東北工業大学高等学校 校長の久力誠さんに聞く:教育って、そもそもなんだろう? 取材・写真・文/大草芳江

2010年09月27日公開

勉強を通して、生活も変えていく

久力 誠  Makoto Kuriki
(東北工業大学高等学校 校長)

  【学校づくりのプロセスから見る教育】
学校も"人"によってつくられるプロセスがあり、常に変化している。
学校づくりのプロセスを担う"人"から見える、教育とはそもそも何かを探る。


「宮城県随一の私立高校を目指す」東北工業大学高校の久力誠校長は、
学力と生活の両面で生徒一人ひとりが満足し誇りに思えるような学校づくりを目指し、
教員の授業公開を盛り込んだ授業研修を進めると同時に、「朝の読書」を取り入れるなどして、
生徒が1日の生活の積み重ねをしっかりと行えるような環境づくりに力を入れている。

「生活と勉強は決して別のものではなく、授業の中でしっかりと学び、
新しいものを発見していくことが、学校で生活する意欲となり、生活もなおっていく」
と語る久力校長という「人」から見える、学校づくりの今を聞いた。

<目次>
50年間で大きく変化
宮城県「随一」の私立高校を目指すとは?
物事が変われる条件は整っている
今、一番力を入れていること
「朝の読書」で、落ち着いてものを考える習慣づけ
東北工業大学の一般入試に全員合格できる学力をつける
勉強を通して、生活も変えていく
部活動の活性化で、生徒のプライドを育てる
地域の「お助けマン」として学びを社会に役立てる
平成25年から新しい学校に生まれ変わる
自分の力を信じて一緒にやっていける学校に


東北工業大学高等学校 校長の久力誠さんに聞く


50年間で大きく変化

 本校は今年で創立50年を迎え、歴史的に大きな節目を迎えています。50年前の開校当時を振り返ると、私立の男子高校は、東北学院高校、東北高校、仙台育英高校、そして本校の4校だけでした。ですから男子生徒の受験生は、公立高校以外となれば、この4校のいずれかを選ぶかだったのです。

 当時の本校は、東北学院高校と並び「男子校の雄」と呼ばれていました。しかし50年の歴史は長く、どんどん状況は変わりました。やはり頑張り切れなかったところが、実はたくさんあります。ですから、それを取り戻そう、宮城県唯一の私立高校を目指そう、ということです。

 その頑張り切れなかったこととは、まず学校の数がどんどん増え、仙台市内は過剰状態になっていた。それと同時に共学化が進み、男子校・女子校というくくりがなくなって、皆が同じ競争にさらされた。さらにその一方で、少子化が進んでいった。これは本校だけでなく、すべての学校が苦しい戦いを強いられています。


宮城県「随一」の私立高校を目指すとは?

 そこで本校が掲げる一つのスローガンは、「宮城県随一の私立高校を目指します」。「随一」とは一体何かと言えば、学校の役割を考えると、ふたつあります。

 ひとつは学力の問題、もうひとつは生活の問題。このふたつについてNO1になるという意味ではなく、やはり生徒一人ひとりが満足し、この学校に入ったこと・この学校を卒業したことを誇りに思えるような、そんな学校になってほしいのです。

 そのためには、生徒も職員も保護者も、そして同窓会も、本気になって学校づくりをする。生徒を伸ばすこと、生徒が伸びていくことに対して、全力でバックアップしていく。そのような体制をつくらなければなりません。


物事が変われる条件は整っている

 もちろん学力面にも生活面にも、たくさん課題はあります。ただ、物事が変われる時というのは、やはり節目というものが必要です。何もない時には、なかなか変わることができません。

 ひとつは、創立50年という歴史の節目があります。それから、宮城県の教育そのものが大きく変わっていくという節目。全県一学区制や男女共学化、そして入試制度も変わり、高校教育の大きな変革の時期にぶつかっています。さらに全国レベルで言えば、新学習指導要領が平成25年から完全実施されます。

 このように、いろいろな要素がたくさん重なっています。そのような意味では、まさに大きな節目を迎えているのです。つまり、本校だけでなく、皆が変われる条件がある程度整っているのが、今なのです。


今、一番力を入れていること

―その中で今、一番力を入れていることは何ですか?

 生徒の学力については、やっぱり僕らの授業力があってこその学力でしょう。そこで昨年から本格的に授業研修を進め、先生一人ひとりに授業公開をしてもらいながら、授業分析を進めています。これは一朝一夕に力がつくものではないけれども、この姿勢はずっとどんな時でも崩さずに続けていく、という決意でいきます。

 もうひとつは、生活面。一日の流れをしっかりと行っていきます。朝は時間通りに学校に来て、ホームルームをやって、授業を受けて、帰りのホームルームに出て、部活動に出て、家に帰っていく。このような単純な流れを、きちっとやっていくことに、今、全力を注いでいるのです。

 その入口が、朝の読書。今年から、朝の読書は全員一斉に行っています。これは当たり前のことですが、今まではどうもバラバラでした。けれども今年からは、遅刻した生徒は、教室に入れません。入れないのはペナルティとしてではなく、静かに読んでいる教室の雰囲気を守るためです。8時半に朝の読書が始まると、全校舎、本当に音が消えていくまでになりました。


「朝の読書」で、落ち着いてものを考える習慣づけ

 この間、校舎の中を歩いてたら、3年生の生徒二人が廊下に立っていました。朝の読書が終われば、ホームルームが始まるので、教室に入れることになっているのですが、(ホームルームが)始まっても廊下にいるのです。「どうしたの?」と僕が聞くと、「ホームルームが始まっているので、入れないです」と答えるのね。

 だから「でも、それでは連絡事項がわからないでしょう?教室に入りなさい」と僕が言うと、「いや、みんな静かにやっているので、入りにくいです」と言うのね。今までなら、いつでも構わずにガラガラと扉を開けて、「よーっ」なんて言っていたのが。

 「それで、どうするの?」と僕が聞いたら「いいです、あとから、ちゃんと友達に聞きますから」と答える。「そう、今日はね。明日からは、どうするの?」と聞くと、「明日からは遅刻しないようにやってきます」ということを言うようになった。これはもちろん全部じゃないのだけど、そういう意味では、今までとだいぶ雰囲気は変わったかな。

 ただ、朝の読書が変わったからと言って、全部が変わるわけじゃないのでね。特に夏休み明けからは、朝の読書を生徒の力でやれるようにしようと考えています。こちらが管理してやっていくという体制から、生徒たちの力でやっていく体制へ。例えば、どんな本で実施しているかを交換し合うとか、発表し合うとか。そのような活動も含めて、定着させていきたいと考えています。

 というのも、静かな時間の中で、しっかりとものを考える。そのような習慣付けをしていかなければ、年中落ち着かない状態では学習というものは成立しないんだね。朝の読書をしっかりやる、ホームルームをしっかりやることが、1時間目をしっかり始めることにつながる。それを6,7時間目までつなげていきたい。そう考えています。


東北工業大学の一般入試に全員合格できる学力をつける

 本校から毎年130~140人程度の生徒が、東北工業大学に進学します。ただ、ほとんどが推薦で行くこともあり、どうしても学力的な部分に課題がありました。そこで今年は、推薦で受かった生徒にも全員、一般入試を受けてもらうようにしました。当然、これで不合格になったりはしませんが、学力を担保するという意味で、一般入試をやってもらうのです。

 もちろん、他の受験生と同じ時間に同じ場所で受けることはできないので、会場や採点はこちら(高校)でやることになりますが、学力をきっちりチェックします。東北工業大学の一般入試に全員合格できる学力をつけよう、というのが今、本校の学力目標です。

 この目標は実際、そんなに簡単なことではありません。けれども一般入試を受けた時、「全然できていませんでした」とわかってしまうことは、生徒本人にとっても、指導する教員にとっても苦しいことです。それを少しでもクリアできるよう、授業の目標をしっかり持とう、ということです。

 今まではどちらかと言うと、先生が生徒に(授業を)どんどん合わせていたので、どうしても(授業が)質的に落ちていってしまう傾向がありました。生徒に合わせるが故、生徒を引っ張り上げる部分が希薄になっていたのです。けれども授業というのは、先生が生徒を引っ張って行くもの。ですから、そこのところを明確にしたいということです。

 当然、一般入試を受けて成績が厳しい場合には、3月31日まで、こちらで責任を持って指導することを続けていきます。それが、将来の(東北工業大学との)付属化(構想 ※後述)にもつながっていくことだろうと私は思っています。


勉強を通して、生活も変えていく

 要するに、基本的にはきちっと勉強することを通して、生活も変えていく。生活と勉強は決して別のものではなく、授業の中できちっと学んでいく、新しいものを発見していくということが、学校で生活する意欲になるし、やはり生活もなおっていくのだと私は思うのですね。

 反対に、生活指導をやって授業が駄目では、何のために学校に来ているかわからないことになります。やはり学校に来て「学んで良かったな」ということで、生活も変わっていくし、服装も変わっていくし、言葉遣いも変わっていく。そのようにしていきたいと私は思っています。


部活動の活性化で、生徒のプライドを育てる

 ただ、いずれにせよ、それだけでは駄目です。当然、大的なものも考えていかなければならないし、生徒が誇りに思うものも大事です。そこで、部活動も活性化させようと、今、野球部やサッカー部に良い指導者を招聘して指導に力を入れているところです。

 もちろん空手部だって全国ベスト8に入ったし、レスリング部も毎年全国大会に出場しています。文化部では、吹奏楽部が全国のジャズコンクールに出場しています。

 今秋から学校の工事も始まります。校舎の周辺を全部壊し、少々わかりづらかったアプローチや門もちゃんと付けていきます。このあたりが整備されると、学校らしい雰囲気が出てきます。それから、現在の駐車場がある場所に、フットサルができるくらいの屋根付きの屋外運動場もつくります。

 と言うのは、本校には現在、敷地内に運動場がないため、サッカー部も野球部も、むこう(東北工業大学)で活動しているのです。体育館だけはあるのですが、敷地内に入らないと見えない場所にあるのですね。生徒が頑張って部活動をしている姿が、どこからも見えないのです。ですから、敷地内に運動場があることは、雨が降った時の対応策も含めて必須条件です。

 一生懸命活動している組織された子どもたちが目の前にいて、きちっと学校の中で生活することで、締まりのある学校の雰囲気もつくられてくるし、生徒の帰属意識も増していくと考えています。


地域の「お助けマン」として学びを社会に役立てる

 それと同時に、地域から信頼される学校というのは、子どもたちにとっても非常に大切なことです。夏休みや春休みに行う学校開放にも、たくさんの小学生やお年寄りの方々が来てくださいました。

 今秋には、電気工事士コースの生徒が、地域の「お助けマン」として簡易の電気工事を行う予定です。コンセントや照明器具などの点検・交換や、火災報知機の設置などを、八木山地区の町内会の要請に基づいて、チームで動いていく計画です。

 生徒にとっても、自分たちの学んでいることが実際に役立ち喜ばれることは、学習意欲につながっていきます。これは偏差値の問題ではなく、やはり自分たちが役に立っている喜びというのは、どんな仕事でも基本中の基本ですからね。そのような意味では、これもまた楽しみな活動の一つで、皆さんに好意をもって迎えられています。

 もちろん、よその家に入っていくことになりますので、礼儀や会話ということも求められるでしょう。そして当然、失敗も起こるでしょう。けれども、そこは指導の中で乗り越えてやっていくことで、子どもたちも鍛えられていきます。それがさらには、就職試験時の力にもつながっていくのではと考えています。


平成25年から新しい学校に生まれ変わる

 平成25年から、東北工業大学高校は、新しい学校に生まれ変わります。学科も含め、カリキュラムも全部見直します。基本的には、大学と接続した新しい教育システムを提供することがコンセプトです。

 そのために今年から、法人・東北工業大学・高校の三者が一体となった「東北工業大学高等学校 将来構想審議会」が発足しました。既に2回の審議を終え、今年10月上旬には、基本方針が公に出される方針です。

 25年は、今度(23年度に)入学してくる生徒が、ちょうど卒業する年に当たります。ですから今の中学3年生は、本校が本格的に変わる礎をつくる、大変大事な学年になります。当然、その時に結果を出していなければ、何だろうとまわりに思われますからね。

 そのような意味では、(来年度入学する生徒を)非常に大事な入学生と位置付け、これまで以上に力を入れて指導していきたいと考えています。


自分の力を信じて一緒にやっていける学校に

―最後に、中学生へメッセージをお願いします。

 本校の一番のキャッチコピーは、「3年後のキミが自慢・出口指導に自信あり」。「3年後のキミが自慢」というのは、やはり自分自身が何をするか、ということだからね。本当に自分の力を信じて、一緒にやっていける。そのような学校に必ずしていくので、安心して素直な気持ちで入ってきてほしいと思います。そうすれば、必ず伸びていくでしょう。

―久力さん、本日はありがとうございました。

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