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2017年 07月 20日 (木)

まわりも一緒にハッピーになることに科学技術を使うことが大事




「なんでだろう?」と興味を持つことが基本

―個人的な経験を言うと、高校時代まで、教科書の世界から見る科学は、
 完璧で美しすぎて、ガチガチに固まって完成されたイメージがありました。
 既に出来上がった体系ならば、自分の付け入る隙などないと思い込み、
 科学を柔軟性のあるものとして捉えることができませんでした。
 今思えば、「教科書の世界の科学」だけではない科学を、
 臨場感を持って伝えられる人がいなかったことが、影響しているのかもしれません。

今、巨大な誤解がありますよね。

ひとつは、例えばアメリカの場合、教養中心の大学をまず卒業してから、
法律の方に行くか、技術の方に行くか、医者の方に行くかなどを選択します。

すると非常に幅広いバックグラウンドを持っている方が、例えば医者になる。
そのような方は、幅広い判断ができるでしょう。
それくらい、もうちょっと広くやっていかなければ、駄目だなと思います。

もうひとつ、伺っている範囲としては、小学校の先生になっておられる方は、
理数系を大学でやっている方が比較的少ないと聞いています。

理科実験が億劫になっているとすると、
世の中のおもしろい現象に興味を持つチャンスが減りますよね。

ほんのちょっとのことだけれども、おもしろいことに興味を持って、
「なんでだろう?」というクエッションマークを持たない子どもが増えています。
皆「わかってる」という顔をして、実際は、わかっていない。

教科書に書いてあることが正しく、問題に対して解答(こたえ)があることを前提に
教育をやってきて、大学の入学試験があるわけですが、

実際の社会はそうではなくて、こたえがないことが普通であり、
いろいろなアプローチがあるし、いろいろなこたえ方があります。

それを学ぶのが大学なのです。
大学では答えを学ぶのではなく、どのようにして解決に至るのかという方法を
少なくとも、いろいろな手を変え、考えながらやることが良いのですよ、と申し上げた。

ところが案外、そうでない風に思っている方が、いらっしゃる。
しかしながら「なんでだろう?」と興味を持つことが、基本ではないでしょうか。

―大学は、自分で疑問に思ったところから考えても良い場所で、自由を感じました。
 逆に言えば、高校までは、思考が教科書の世界に閉じ込められ、
 特定の答えがあることを無意識に期待していたように思います。

それを、なるべく早く気づいて、
自分の学びに生かせる人の方が、伸びるわけです。

それは私も、西澤先生をはじめ、多くの先生方から、
オリジナルのもの以外は、価値をあまり置かないという心構えを持つよう
指導していただきました。

とにかく、「何がオリジナルなの?」ということを、
マスター論文でも、ドクター論文でも聞かれるわけです。

「それであんた、他の誰もやっていないことをやったのですか?」

最終的な質問に、そこで、ぐっとつまったら、駄目なわけです。
「じゃあ、また来年来なさい」となるわけですね(笑)。

―「なんでだろう?」の先に、オリジナリティがあるのですね。

そうだと思いますよ。

何もないところから、いきなりオリジナルなものは、ぽんと出てこないですから。
積み上げですからね。

いろいろな訓練を多面的にやっていって、
常に新しいことをやって試行錯誤して、失敗して。

失敗が不可欠ですよね。
失敗を恐れずに、とにかくどんどんチャレンジできるのは若いうち。

年を取って、かなり偉くなって、部下がたくさんいるところで
「失敗しても平気だ」と言ったら、大変なことになりますから(笑)。
歳をとって、責任があればある程、失敗は許されません。

充分に調査をしながら、自分でよくよく考えながら、
チャレンジするのは、若いうちですね。


あなたがたは地の塩である

―星宮さんにとって、失敗とは?

「失敗学」を提唱されて有名な方はいますが、そのもっと前に、
私の恩師である松尾正之先生の兄貴分に、阿部善右衛門先生という方がいました。

東北大学電気通信研究所の助教授や、日立製作所中央研究所の部長をされた方で、
失敗ということについて、いち早くから、言っておられましたね。

現在、世界的に広く使われている画像診断装置である
MRIの発明とその開発を行ったのが、
アメリカのローターバーという人であることが知られています。

けれどもそれより少し前に、
人間の体の中の、がん組織とそうでない組織を、
核磁気共鳴(NMR)で測れば検出できる可能性があると、
世界ではじめて言った方が阿部先生です。

この方が、おそらく失敗学の先達だと思うのですけどね。

阿部先生は日立を定年後、北海道大学の教授になり、
NMRの医療診断への応用研究を
北海道大学の研究所における自分の研究室のテーマにしました。
これが原理的には、MRIのさきがけとなる研究でした。

しかし残念ながら阿部教授に大きな科学研究費がついたのが、
北大を定年退官される2年前。
NMRの本格的研究をはじめたのですが、すぐに定年になっちゃった。

その頃、アメリカの競争相手は大きな研究費を得ていて、
かなり良い成果を出していて、わっと進んだ。

アイディアは阿部先生が最初に出しましたが、
それを活かすシステムではなかったため、駄目でした。

やはり科研費の申請の方法、評価の方法が、日本はちょっと遅れていると、
彼が最終講義で話していましたね。これが「失敗学のルーツ」とも言えます。

最近では、東大名誉教授の畑村洋太郎先生が、「失敗学」を提唱されています。

東海村の臨界事故、三菱自動車のリコール隠し、
雪印乳業の食中毒事件、六本木ヒルズの回転ドア事故などを分析されて、
ほとんどの失敗には、許される失敗と、許されない失敗がある、と仰っています。

これは畑村先生が主張しておられることですが、
失敗には、許される失敗と許されない失敗があり、
前者は、個人や組織が成長する間に通らなければならない失敗であり、
後者は、ひとつの失敗が起こった時にそれを隠し、
知識をゆがめ、次に伝えないために必要に繰り返される失敗である。

すなわち、今まで誰もやったことがないものについて、
今まで自分が持っている知見や、そこから見て可能性が高いことについて、
慎重の上にも、やれるときにはチャレンジすることは許されることで、
むしろ勧められることです。

それは失敗しても許される失敗です。
そういうことを積み上げていくことから、
今までできなかったことが、できていくわけです。

大きな事故に至るときの失敗は、大抵、隠しているのです。
そして、でかいのがどん、と来ると、大変なことになります。

それはやはり、責任感なのでしょうね。
責任感なしでやっている失敗は駄目でしょうけど、
若い時に責任を持って慎重にやって、挑戦するのは良いのではないでしょうか。

キリスト教で言えば、神を恐れ、人を愛するのが基本ですよね。

「あなたがたは地の塩である」

塩というのは、自分自身の味はしょっぱく、
自分を主張しないが、まわりの味をひき立てる。
あなたがたは、そのような存在なのだよ、と仰っている。

地の塩の働きをするものとして生きたいと思いますし、
そのような人材を育てたいといます。

―星宮さん、本日はどうもありがとうございました



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