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2017年 04月 25日 (火)

法曹三者から裁判員制度学ぶ 仙台一高で司法講話

2008年7月30日公開

 いよいよ来年5月からスタートする「裁判員制度」。成人なら誰でも選ばれる可能性があるとはいえ、まだピンと来ない人も多いだろう。法曹三者の話を聞くと、新制度の全体像が見えてくる。

宮城県仙台第一高等学校で法曹三者による司法講話が開催された

 裁判員制度への理解と関心を深めてもらおうと、宮城県仙台第一高等学校(仙台市)で法曹三者による司法講話が先月開催された。仙台地方裁判所、仙台地方検察庁、仙台弁護士会の三者が講師となり、3年生312名が、同制度の意義や問題点などについて学んだ。

 同制度は、国民から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加し、裁判官とともに被告人の有罪・無罪や刑の内容を決める制度。国民が刑事裁判に参加することにより、裁判の内容や手続に法律の専門家以外の感覚が反映されるとともに、国民の司法に対する理解と信頼が深まることが期待されている。

 授業は、まず仙台地方裁判所の遠藤啓佑裁判官が、制度導入の背景や裁判員の仕事、対象となる事件などについて紹介した。

 国民の参加対象となるのは殺人や強盗などの重大犯罪の一審のみで、選挙権のある20歳以上の人の中から、翌年の裁判員候補者となる人を毎年くじで選んで名簿を作り、その中から事件ごとにくじで裁判員候補者が選ばれる。

 裁判員に求められるのは、証拠に基づいて、被告人が有罪か無罪か、有罪ならば刑の重さはどの程度が妥当かの判断だ。仙台地裁で対象となる事件は年間60件程度とみられる。公判が結審すると、別室で裁判官3人と裁判員6人が非公開の評議に入る。全員一致の結論が得られない場合、表決は多数決により行われる。

左から、遠藤裁判官、大林検察官、齋藤弁護士

 また一般市民である裁判員の負担を軽減するため、初公判前に裁判所と検察官、弁護人が非公開で協議し、争点を絞って刑事裁判の迅速化を図る「公判前整理手続」により、数日程度で審理が終わることなどを説明した。

 次に、仙台地方検察庁の大林潤検察官が、検察官の役割に触れ、同制度の内容を説明した。刑事訴訟では検察官に立証責任があり、これまではある程度の証拠を開示してきたが、「公判前整理手続」により、検察官は公判前に「証拠の厳選」を行うことになった経緯を説明。

 「同制度に向け、裁判を分かりやすいものにしようと検察官も日々努めている。検察官は公益の代表者であり、一方に肩入れしている存在ではない。それだけは覚えて欲しい」と検察官への理解を求めた。

 最後に、仙台弁護士会の齋藤拓生弁護士が、弁護士の役割に触れた上で、同制度の問題点を指摘した。そもそも憲法では、多数者によっても侵しえないものとしての基本的人権を保障して、国家権力の暴走に歯止めをかけている。

 「司法には、少数者の人権保障の砦であることが期待されている。刑事裁判の目的は、無辜の不処罰。しかし同制度導入により、多数者の意見で人権保障が損なわれる危険性もある」と指摘。

齋藤弁護士は、同制度の問題点を指摘した

 他にも、公判前整理手続による公判中心主義形骸化への懸念、同制度が目指す迅速審理が拙速な審理になる恐れ、裁判員の精神的負担や重圧などの問題点を指摘した。

 「制度の概要を理解すると共に、問題点をきちんとおさえた上で、同制度をより良いものにしていくことが肝要。同制度の施行3年後の見直しに向け、関心を持ち積極的に評価するとともに、見守ってもらいたい」と話した。

 会場からは、「同制度はなぜ義務化されたのか」、「裁判員が参加するのは一審まで。二審、三審と進むうちに、民意とかけ離れた裁判になるのでは」、「政治へ無関心・無知な裁判員が選ばれた場合、どうなると思うか」などの質問が飛び交った。

 遠藤裁判官、大林検察官、齋藤弁護士の三者は、「いろいろな立場の人間がいて、いろいろな考え方がある。同制度に対する多面的な意見を踏まえ、自分はどう考えるのか、考えを深めてもらいたい」と話している。

【大草芳江】

取材先: 仙台一高      (タグ: ,

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