私立学校「生の情報」紹介 学習塾協会が進学イベント
2009年11月12日公開
アエル(仙台市青葉区)で3日、開催された全国学習塾協会主催のイベント「進学情報Can」のようす
私立学校などを紹介するイベント「進学情報Can」が3日、アエル(仙台市青葉区)で開催され、受験を控える生徒や保護者ら約550人が参加した。「進学情報Can」は全国学習塾協会が毎年開催しているもので、今年で第21回を迎える。会場はこのほか、大崎や石巻でも開催された。
3日は、主に県内から私立17校と国公立3校が参加。各校がブースを構え、担当者が最新の入試情報や学校生活などを紹介し、進学に関する相談や質問に応じた。3日はこのほか、私立高生との交流コーナーや会員塾の講師らによる入試対策講座などがあった。
全国学習塾協会北海道東北支部長の大沼信雄さん(写真左)と同イベント実行委員長の小野寺和行さん(写真右)
同協会北海道東北支部長の大沼信雄さんは「学習塾業界が社会へ貢献するイベントで、会員塾がボランティアで準備を進めてきた。協会は公益法人であることを自覚して、これからも学校の生きた情報を生徒へ提供する活動を続けていきたい」と意気込みを見せた。
また、昨年より公立学校の参加が減少したことについて大沼さんは触れ、「公立学校も頑張らなければ、統合対象になる時代。ぜひ公立学校も積極的に参加してほしい」と呼びかけていた。
【関連記事】進学イベント20周年 学習塾から見る教育界の変化 (宮城の新聞 08/11/05)
―主催者の全国学習塾協会会長の伊藤政倫さんに、学習塾の役割について考えを聞いた。
◆消費者ニーズに合わせた教育提供 学習塾ならでは
全国学習塾協会会長の伊藤政倫さん
全国学習塾協会・会長の伊藤政倫さん(写真中央)、同協会北海道東北支部・副支部長の畠山篤さん(写真右)、後藤泰雄さん(写真左)
社団法人全国学習塾協会は、昭和63年10月に通産省(現・経産省)の認可を得て設立された、学習塾業界の公益法人。文科省ではなく経産省の管轄にある学習塾は、公平性が求められる学校教育とは異なり、消費者ニーズに合わせた多様な教育が提供可能である。
学習塾の教育に対するアプローチは、百花繚乱(ひゃっかりょうらん)で良い。そのうえで当協会としては、学習塾が正しく認識され信頼されることを目指し、自主規制規約を定め、誇大広告の自粛や契約関係の適正などに努めている。
「進学情報Can」は、生徒や保護者が求める私立学校の「生の情報」をまとめて提供できる、学習塾ならではのイベント。今後も会場数を増やすなどして、消費者ニーズに応えていきたい。
―「進学情報Can」に参加した私立学校の担当者(一部)に、各校の特色を聞いた。
【参加校】
・仙台育英学園高等学校
・東北学院榴ヶ岡高等学校
・東北学院中学校・高等学校
・仙台高等専門学校
・聖和学園高等学校
・宮城学院中学校・高等学校
・常盤木学園高等学校
・東北高等学校
・仙台白百合学園中学校・高等学校
・聖ウルスラ学院英智中学校・英智高等学校
・古川学園中学校・高等学校
・明成高等学校
・東北生活文化大学高等学校
・西山学院高等学校
・東北工業大学高等学校
・尚絅学院中学校・高等学校
・福島成蹊中学校・高等学校
・宮城県宮城野高等学校
※聖ドミニコ学院中学校・高等学校・・・こちらの特集記事をご参照ください。
※仙台青陵中等教育学校・・・こちらの特集記事をご参照ください。
◆目指す進路に応じたカリキュラム
仙台育英学園高等学校 教頭の佐々木豊さん
仙台育英学園高等学校 教頭の佐々木豊さん
・目指す進路に応じたカリキュラム
中学生が高校選択にあたり、目指す進路に応じたカリキュラムを持つことが本校の特色。「全日制課程普通科総合コース制」を導入、「特別進学コース」「外国語コース(女子のみ)」「英進進学コース」「フレックスコース」の4コースがある。それぞれ大学進学、専修・専門学校進学、就職といった目指す進路を達成させるため、特色あるカリキュラムを設定している。
・多賀城と宮城野、ふたつのキャンパス
多賀城と宮城野のふたつにキャンパスがある。多賀城キャンパスには「外国語コース(女子のみ)」「英進進学コース」「T-フレックスコース」、宮城野キャンパスには、「特別進学コース」「M-フレックスコース」がある。
・平成22年度IT系「英進進学コースⅡ類」誕生
平成22年4月には宮城野キャンパスに、IT系の「英進進学コースⅡ類」が誕生。情報処理教育を専門に行うコースで、「Microsoft Office Specialist」の資格取得なども目指す。
・授業料など減免制度あり
生徒や保護者のニーズに合うようコースを細分化し、新しい特色をコースに取り入れることに苦心している。また厳しい経済状況のなかで、保護者の負担を軽減できるよう、本校独自の授業料減免制度を平成22年度も実施。専願で希望する生徒には入学金などの減免特典あり。
◆「自学自律」 生徒の自主性重んじる
東北学院榴ヶ岡高等学校 副校長の湯本良次さん
東北学院榴ヶ岡高等学校 副校長の湯本良次さん
・「自学自律」がスクールモットー
キリスト教主義の学校。「自学自律」がスクールモットー。「自学自律」とは、自ら勉強して、やって良いことと悪いことの区別を自ら考え行動するという意味。聖書の言葉から来ている。毎日授業前に礼拝があり、命や愛の問題などを聞いてから授業に入る。他校で言えば、毎日朝礼があるようなもの。
・バランスのとれた人材育成
勉強と課外活動(主に部活動)のバランスが取れた教育を実践。偏った教育を行うのではなく、当たり前のことを当たり前にやっている。生徒の自主性、先生と生徒のふれあいを重んじている。
・高大一貫教育
同敷地内に東北学院大があるため、約3年前から高大一貫教育を実施。大学の先生が高校で授業をしたり、高校生が大学へ授業を聞きに行くなどしている。
・第二外国語
本校生の約半数は東北学院大へ進学する。東北学院大へ進学する生徒のクラスでは、幅広い教養を身につけてもらおうと、英語だけでなく選択必修で第二外国語(フランス語・ドイツ語・中国語のいずれか)を学ぶ。授業はネイティブと日本人教師の二人で行う。
・生徒の自主性重視
校則も制服もない。また高校2年生からバイク通学を認めている。「3ない(免許を取らない・バイクを買わない・バイクに乗らない)運動」が昔からあるが、規制するよりもルールをきちんと教え、交通社会の一員として生活してほしいということ。何でも「だめ」と規制するのではなく、ルールに則った生活ができるよう、生徒の自主性を重んじた教育を実践している。
◆文武両道を推進し、進路希望達成を支援
東北学院中学校・高等学校 大友正昭さんと菅野寛子さん
東北学院中学校・高等学校 大友正昭さん
・県内唯一の男子校 文武両道目指す
キリスト教主義の男子校。併設型の中高一貫教育校。文武両道を旨とし、部活動に力を尽くしながら、ほぼ全員が4年制大学を目指して勉強に打ち込んでいる。
・進路希望に合わせてコース選択
それを可能にするのが、コース制。自分の進学希望に合わせてコースを選ぶことができる。コースを選ぶ際には進路指導を行い、生徒に合ったコースを先生が一緒に考えている。
・塾へ行かずに大学合格
進路指導に関しては、放課後や長期休暇に講習を実施。そのため部活動に参加しながら、学校の講習を両立させて活動することも可能。塾に行かずに学校の講習だけで大学合格を決めている生徒も多い。
・希望者対象に「学習ボランティア」
併設型の中高一貫教育校であることを活かし、約5年前から高校生が中学生に勉強を教える「学習ボランティア」を実施。放課後に週1回ほどのペースで、希望者対象。高校生は教えることで教科の内容を深めることができ、教わる中学生も勉強だけでなく先輩から様々なアドバイスをもらうことができる。
・研修旅行で進路学習と平和教育
修学旅行に代わるものとして、高校2年生に研修旅行を実施。進路学習と平和教育を、3泊4日の日程で、沖縄・長崎・広島方面から選択する。
◆ものづくりの英才教育を実践
仙台高等専門学校 准教授の小林仁さん
仙台高等専門学校 准教授の小林仁さん
・ものづくりのカリキュラム充実
ものづくりに携わる人づくりを行う学校。早期からインターンシップや実験実習などを多く取り入れるなど、ものづくりのカリキュラムが他校に比べて充実している。実験設備も大学に負けないくらいの施設。ものづくりに対する英才教育が行われている。
・バラエティに富んだ進路先
就職に関しては、就職環境が厳しいと言われた昨年度も、就職希望学生への求人倍率は約10~18倍で、就職率は毎年100%。進学については、編入学制度を活用できるため、理論上は国公立大学を何十個も受けることができ、チャンスが多い。実際は3~10校受験している。進学先は理工系が中心だが、文系にも編入学可能。進路はバラエティに富んでいる。
・専攻科修了で大学卒業と同等の学士取得可能
5年間の高専を卒業後、さらに学業を続けたい学生のために2年間の専攻科が設置されている。平成21年度の統合で重点化されたのは専攻科。7年間で大学卒業と同等の学士(工学)を得ることが可能。
・複合融合分野に強い人材を育成
統合により人材育成センターも重点化。ひとつの分野だけでなく他の分野も勉強して、幅広い分野の知識や技術を備えた人間をつくろうというのが特徴。
・国際交流も盛ん
普通高校に比べ、国際交流の機会も多い。ドイツやフィンランド、韓国など、世界各国の大学と交流を行っている。
・出場できる大会が多い
クラブ活動は、高等教育機関のため、高校生対象の大会、大学生対象の大会、高専対象の大会と、出場のチャンスが多い。
・大学と高校の中間のような学校
寮が充実しているため、遠方からも生徒が来ている。制服はなく私服。大学生ほど自由ではないが、普通の高校生よりも自由。ちょうど大学と高校の中間のような学校。
◆文武両道 進路指導に重点
聖和学園高等学校 副校長の白鳥修一さん
聖和学園高等学校 副校長の白鳥修一さん
・文武両道
2010年で創立80周年を迎える。目標は文武両道。「何をやったか」だけでなく「何をできるか」を自己主張できるような自律ある人間、社会から求められるような人材の養成を目指している。
・7年前からコース制と男女共学制を導入
3年後の進路達成を意識しながら、将来様々な職業や進学に対応できるよう、7年前からコース制を取り入れている。7年前から男女共学制を導入し、キャンパスは薬師堂と三神峯のふたつ。薬師堂キャンパスには女子がやや多く、三神峯キャンパスには男子が多い。
・進路指導に重点
特に進路指導に力を入れている。進路達成100%を目指し、1年生時から進学ガイダンスを実施。各種入試に対応できるよう小論文指導や面接指導、外部講師による講習などを行っている。また学園内の幼稚園や短大との連携などもあり。
・部活動は全国大会レベル
伝統的に部活動が盛ん。全国大会を目指すレベルが主。薬師堂キャンパスでは女子中心に、例えばバスケやハンドボール、新体操や空手などが活躍しており、毎年のように全国大会へ出場している。三神峯キャンパスでは男子中心に、主にサッカーや硬式野球、硬式テニス、バスケや吹奏楽部が盛ん。他キャンパスの部活に参加することも可能。キャンパス間を結ぶ通学バスあり。
・仏教系の学校
仏教系の学校。お釈迦様の教えを通して人間の生きる道を教えている。週に1回の宗教の授業や「勤行(ごんぎょう)」のほかに、「花まつり」「成道会(じょうどうえ)」「涅槃会(ねはんえ)」などの宗教行事や、「座禅会」や「写経(しゃきょう)」なども定期的に実施。
・生活指導に重点
規範意識の乏しい子どもは、何をやっても駄目。ちょっと厳しいくらい生徒指導には力を入れている。例えば朝と帰り、校門での声掛け指導。挨拶ができない人間は、大人の資質として疑問。皆で挨拶しよう。挨拶しない子はこちらから挨拶をする。
・地域との連携
清掃活動や文化祭などでは、町内に声をかけさせていいただく。地域と連携しながら、地域に根ざした、地域から信頼される学園づくりを目指していきたい。
・教員の指導力向上
職員の資質を向上させるために、様々な研修を行っている。私立は公立に比べ研修の機会が少ない。そのため研修の機会を与えて、指導力の向上を図っている。
◆キリスト教の精神に基づく女子教育
宮城学院中学校・高等学校 校長の石井道夫さん
宮城学院中学校・高等学校 校長の石井道夫さん
・キリスト教の精神に基づく女子教育
キリスト教の精神に基づく女子教育。東北学院とは姉妹校。中高一貫教育校だが、高校生の約半分は外部からの入学。最終的には女性の自立を考える学校。そのためには、しっかりとした教科教育を中心とした知識の確立あるいは習得、そして人間性の確立を目指している。
・建学の精神は「神を畏れ隣人を愛する」
「神を畏れ隣人を愛する」が建学の精神。これをキリスト教的な言葉ではなく、一般的な言葉で言い表せば、真に自由で(特定の価値観に縛られない)謙遜な女性をつくり出して社会に送り出す、ということ。宮城学院の123年の伝統の中で育んだものだろう。
・卒業生は多方面で活躍
卒業生は多方面で活躍している。特には海外で活躍するような人材を、歴史のはじめから輩出している。キリスト教の教育そのものが、「地の塩」:社会の一員として共生し、「世の光」:世のリーダーとなるような模範となる女性を社会に送り出す、というもの。それが結果的に、社会の多方面で活躍する人間をつくるのではと考えている。
◆生徒の希望を実現できる環境づくり
常盤木学園高等学校 教諭の岸宣弘さん
常盤木学園高等学校 教諭の岸宣弘さん
・生徒の希望を実現できる環境
自分がやりたいことを実現できる学校。勉強したい子には勉強できる環境を、部活動であれば部活動を。ほかにも行事や資格など、生徒の希望を実現できる学校だという認識だ。
・平成22年度「スーパー両立コース」誕生
来年度から新しく「スーパー両立コース」という特進コースができる。勉強と自分のやりたいことを両立できるコース。授業内でハイレベルな内容や受験対策を行い、放課後は自分がやりたいことを自分で選んで行える。例えば部活動やボランティア活動、習い事や勉強など。
・音楽科のある学校
音楽科があるのが本校の特色。学校全体が音楽に包まれている。合唱祭の歌詞や曲も生徒自らつくる。音楽関係の部活動も豊富。チャイムも鐘ではなく音楽が流れる。
・「伸ばす常盤木」
「伸ばす常盤木」を目指し、進路指導にも力を入れている。進路実績にも伸びがある。学力を理由に夢を諦めないよう支援したい。
・「生きた英語」
国際コースでは、「生きた英語」を目指している。知識としての英語だけでなく、日常会話で使える英語の習得を目指す。カリキュラムも変更し、授業内で英検やTOIECの力がつくような授業づくりを実践。難関私大への入学者も増えている。海外の姉妹校との交換留学制度あり。
・感動できる行事
「感動は人生の宝物」との考えから、学校行事にも手を抜かない。感動できる本格的な行事を多数用意。例えば劇団四季のミュージカルを、生徒・保護者・卒業生で見に行く。旅行も国内だけでなく、希望者にはカナダの大自然を味わえるよう海外旅行も用意。音楽科はオーストリアで本場を体感、刺激を受けて帰ってくる。
・学校の雰囲気が良い
一番の財産は生徒。すばらしい生徒が集まってくる学校。挨拶はきちんとするし、けじめはあるし、明るくて元気で頑張り屋が多い。そのような生徒達が多く集まってくるため、学校の雰囲気としては良い。最近特にそのような傾向を感じている。
◆4コースへ再編成 きめ細やかな教育システム
東北高等学校 次長の柴田茂春さん
東北高等学校 次長の柴田茂春さん
・今年度から4コースに再編成
きめ細やかな教育システムを持つ高校。今年度から9あったコースを4コースに再編成。小松島キャンパスに3コース、泉キャンパスに2コースとなった。
・小松島と泉、ふたつのキャンパス
大きく分けると、小松島キャンパスに特別進学コース、泉キャンパスにスポーツコースの二つ。そして普通科にあたる文教コースは、小松島・泉両キャンパスで同カリキュラム。そのため通学距離や部活でキャンパスを選択可能。
・各コースの特徴
特進コースは、国公立大や有名私大を狙う大学進学に力を入れている。一日8時間授業に放課後の講習があり、部活はなし。文教コースでは、部活動や生徒会活動、資格取得など、総合的なことができることに力を入れている。スポーツコースでは、全国制覇を狙うアスリートを育てることに力を入れている。
・きめ細やかな指導
不登校になった生徒を中心に、きめ細やかな教育をしていく総合学習センターもある。
コラボレーション
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