進学イベント20周年 学習塾から見る教育界の変化
2008年11月05日公開
激変する日本の教育界。学習塾が主催する進学イベントにも、時代の変化があらわれる。
私立中・高、国公立高校の入試担当者による学校別個別相談会のようす
私立中・高校や、国公立高校が参加する学校紹介イベント「第20回 進学フェスティバル in みやぎ 進学情報Can」が2日、社団法人全国学習塾協会によりアエル(仙台市青葉区)で開催され、受験を控える小中学生やその保護者ら約700人が参加した。
各校入試担当者による個別相談会や、私立高校在校生との交流コーナーの他に、協会会員塾による学習相談会や「高校入試重点講座」などがあった。第20回を記念した特別講演会も開催され、年間300回の講演をこなす実業家・中村文昭さんの講演に約500人の親子が聞き入った。
私立高校在校生との交流コーナー
協会会員塾による「高校入試重点講座」
第20回記念の特別講演会のようす
私立学校に加え、公立学校も参加
同イベントは「生徒・保護者らと各校との直接交流により、学校を深く知り、進路選択の幅を広げる」(全国学習塾協会会長 伊藤政倫さん)ことを目的に、20年前から開催されてきた。
「はじめは一部の私学のみの参加で、生徒もあまり集まらなかった」(北海道・東北支部支部長 村川隆さん)イベントであったが、現在は県内私立学校17校に加え、県外からも函館ラ・サール中学校・高等学校や那須高原海城中学校・高等学校が参加。さらに近年は、公立高校も参加するようになった。
「はじめは公立高校を入れることに私学から反対の声がありましたが、我々は公立・私立も関係なく、安心できる生の情報を子ども達に提供したい、という一貫した思いで動いてきました」と、村川さんは当時を振り返る。
「子ども達には、様々な人とコミュニケーションをして欲しいと思います。たとえ志望校ではなくても、それぞれの先生方の思いを感じることで、そこから新しく得られるものがあるでしょう」と村川さんは話している。
懇親会に90人参加
近年における少子化などの影響もあり、私学をめぐる経営環境は厳しさを増している。「生徒獲得のライバル」関係にある私学だが、「だからこそ、楽しいコミュニケーションを目指したい」(村川さん)と、同イベント後に懇親会が開催されている。実行委員会の努力の甲斐あって、今年は約90人の協会会員塾と私学関係者が参加する大規模な会となった。
約90人の協会会員塾と私学関係者が参加した懇親会のようす
懇親会では、校長や教頭、入試広報担当者らなど各校参加者からのあいさつの後、くじ引きによって決められた席で歓談。景品が当たる抽選会も行われ、会場は盛り上がった。
ある私学関係者によると、「これまで私学同士や塾関係者と、酒を酌み交わしながら、和気藹々と情報交換することはなかった」という。村川さんは、「オープンに情報交換できる関係になれば、お互いが高まり、延いては子ども達のメリットにも結びつくのでは」と意気込んでいる。
生き残りを賭け、学習塾などの民間教育機関と公教育が、相互補完的な連携を築くケースは、今後も増えていくのかもしれない。
全国学習塾協会会長 伊藤政倫さんに聞く 学習塾の「これまで」と「これから」
設立20周年を迎えた全国学習塾協会会長の伊藤政倫さんに、学習塾の「これまで」と「これから」を聞いた。
― 協会設立20年の歴史の中で、感じる変化はありますか?
全国学習塾協会会長の伊藤政倫さん
社団法人全国学習塾協会が設立されたのは昭和63年ですが、それより前の時代、学習塾は学校の補助的な存在でした。しかし変化が生まれ始めたのは昭和55年から、特に急速な変化は平成14年度、完全学校週5日制が実施され、実質的なゆとり教育が実施された頃からです。学習塾は学校の補助だけでなく、学校では教えられない高度な学習を教えるような存在へと変わってきました。
平成17年度、内閣府が発表した学校制度に関する保護者アンケート結果では、学力向上で優れているのは「学校より学習塾・予備校」と答えた人が70.1%に上りました。塾の先生に対する期待は大きいと思います。その頃から、塾の役割は変わってきました。
補助的な存在から、学校と対等、もしくはそれ以上に学力をつける存在へ。学習内容がゆとり教育により変わると、よりレベルの高い勉強をさせてほしいというニーズが生まれました。もちろん学校の補習をするところもありますが、学校よりレベルの高い学習をしているところが大きいと思います。
さらに近年は、東京都杉並区立和田中学校に象徴されるように、学習塾と学校が連携する例も増えました。また東京都では、低所得者層を対象に、受験生を抱える世帯主に学習塾代や受験料を無利子で貸し、入学できれば返さなくてもいい制度などを始めています。そこでわたしたち協会が窓口となり、学習塾をご紹介することも増えてきました。
ゆとりのある時代から、世界的な不況へ。すると「国際競争力をつけるために、勉強させなければいけない」と思いますので、塾のニーズは今後も高まると思います。
― 学習塾の存在意義をどのようにお考えですか?
日本はこれまで、教育で世界をリードしてきたという、国家的な資産があります。人にものを教えるという資産です。しかしながら、ゆとり教育によって日本の教育レベルは下がり、特に最近の子ども達は勉強をしなくなりました。そのため、日本の国際競争力は弱くなっていることに、皆さんお気づきになっているのではないでしょうか。ようやく学習塾も含め、学校外の教育の重要性をわかっていただけるのではないかと思います。
それは勉強だけに限らず、例えば先日の北京オリンピックにもあるように、エキスパートになるには、学校外の訓練が必要です。学校が個別化・少人数化していく中、学習塾はある程度競争力を持った中で、子ども達が磨かれていくという環境を提供することができます。国際競争力強化のためには、民間の教育機関の重要性が今後も増すことでしょう。
グローバル化が遅れているのは、学校です。ゆとり教育のように、学校で教える内容をなるべく少なくするという発想は、グローバル化とは逆行しています。過度に受験競争をあおるつもりは全くありませんが、まわりの国が日本に追いつけ・追い越せとあんなに頑張っているのですから、ゆとり教育に甘んじていては、日本の子ども達の将来を奪うことになります。スポーツと同じように、教育も強化していくことが、教育者の使命ではないでしょうか。
そこには、学校も学習塾も関係ありません。双方は手を取り合いながら、連携していくべきです。
― これから、学習塾はどうありたいとお考えですか?
これまでもこれからも同じですが、「子ども達によりよい教育を提供する」ということが、一貫した考え方です。学習塾は、世の中のニーズに応えながら、一番端的な方法をこれからも教育していくことでしょう。
例えば、OECDによる国際的な生徒の学習到達度調査(PISA)の順位が、学力のひとつの目安となるのであれば、その基準に合わせて、学習塾だけでなく学校とも力をあわせ、皆でもう一度、世界一を奪還するくらいの勉強を教えていく連携をとりたいですね。日本の子ども達が勉強して、その先幸せになることが、我々の目的ですから。
もちろん、何を以って根本的な学力とするかは、それぞれで考え方が違うので一概には言えません。例えば、何を以って「走る力がある」とするのか。マラソンで早く走れる力、100Mを早く走れる力、様々な基準があるので、どれが一体「走る力」かとは一概には言えないものです。
ただしわかりやすい基準として、国際基準を目標にするのが、一番わかりやすかろう、ということです。世界に通用するような学力をつけ、自信を持って世界で活躍できるような子ども達になってもらいたいと願います。
その目標のためには、公立学校も私立学校も学習塾も関係なく、お互い協力できるよう、教育委員会がバックアップする度量がなければ、子ども達はどこへ行ったら良いのかがわからなくなります。一番は我々が動くことで、日本の子ども達にメリットが行けばいいという考え方です。
これまで水と油のような関係だった学習塾と学校ですが、お互い手を取り合うことで、より効率良く、子ども達が勉強できる環境を提供できるのではないかと考えています。
【大草芳江】
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