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2024年 11月 21日 (木)

グールドよりも7ヶ月早い「西澤特許」



グールドよりも7ヶ月早い「西澤特許」

グールドが証拠として裁判所に持ち込んだメモ

今、たまたま問題になっているのは、レーザーです。

レーザーは、20世紀最大の発明と言われていて、
レーザーの発明者はタウンツだ、とされていたわけ。

ところが、当時タウンツの隣の部屋の大学院学生だった、
グールドという男が、裁判で訴えたんだよ。

「タウンズは、僕のアイディアを盗んだのだ」と。
そして、実験ノートの裏に書いてあったメモを、証拠として見せたわけ。

タウンズ先生とは違って、グールドは抜け目がないから、
「何月何日に書いてあった」と公証人事務所で証明してもらっていた。
証明してもらわないと「後で書いたんじゃないか」なんて言われるでしょう。

公証人という資格を持った人が、保障してくれると、
裁判所でもどこでも「やっぱり本当にそうだったんだな」と思う。

それから、だいぶ長い時間をかけて裁判をやって、
「グールドが言ったのは本当で、タウンズはそれを見たな」となったわけ。

そして、とうとうタウンズの特許は否決されてしまった。

一方グールドは、「お前が持っていたメモの範囲で、
特許を新しく出しなさい」と言われ、特許にしたわけだよね。

アメリカの裁判所はすぐに、タウンズを呼び出して、
「特許料をどれくらいとったのだ、全部出せ」と言った。

「裁判所へ書類を出すのにかかったお金分だけは、返してやるよ。
それ以外は、いくらお前が使っても関係なく、全部吐き出せ」と。

タウンズが持っていた特許料は、全部とられちゃった。
裁判所はそれをそっくりグールドに渡して、
「お前が使って良いよ」と言ったわけ。

それで結局、世界の歴史も、
20世紀最大の発明と言われたレーザーの発明者は、
タウンズと言われていたのが取り下げられ、
グールドということになりつつある。

タウンズのノーベル賞取り消しの話まで、あるのだから。

ところが、これまで黙っていたのだけどね、
「西澤特許」というのがあるんだよね。

それがグールドのよりも、7ヶ月早いのだよ。


またね、その前があるの。

20世紀最大の発明は、ひとつだけじゃない。
他にあるのは、電子計算機。

こんなに計算機が進歩したのは、
20世紀で非常に大きな成功例なんだよ。

今はとんでもないことまで、計算で分かっちゃうでしょう。

それを発明したのが、エッカートということになっていたんだよ。
ところが、それに対して訴えた人がいた。アタナソフという男だ。

「アタナソフが電子計算機を発明したのを、エッカートが見て、
自分がやったような顔をして、政府に届け出た」と言うわけだ。

それからいろんなことがわかってきて、
「本当はアタナソフが発明した、エッカートは盗んだ」となり、
エッカートは追放されちゃった。

20世紀最大の発明と言われていたものが、
ふたつも、ひっくり返ったわけだよ。

そのうちに、「本当にやったのは西澤だ」、
ということを知ってくれるかもしれないけどね。

―そうなる見通しはあるのですか?

あるわけよ。当時の特許が、残っているのだから。
当時から「西澤だ」と言ってくれた人もいるんだよ。

「特許とったから良いだろう」なんて思ったら、引っくり返されちゃったり、
「お金をもらって、なお良いだろう」と思ったら、吐き出されちゃったり。

とにかく、科学者の受難時代だよ(笑)
それくらい、科学が大事になってきたんだね。

―科学と社会が近くなってきたのは20世紀から。だからこそのお話なのですね。

その通りだよ。

まぁ、損することはあるよ(笑)。
こちらは「特許料よこせ」なんて、言わないけどね(笑)。


いつでも・どこでも・誰とでも

―レーザーは、どのような経緯で発明したのですか?

我々が大学に入ったとき、八木先生は大阪へ行って居られなかったけれども、
若い先生方から、「八木先生はこのようなことを言っておられたのだよ」と
聞かされていたんだよ。

例えば通信は、誰かの話を聞きたくなる、
ないしは誰かに話したくなるときに必要だ。

特定・不特定多数じゃないんだよ。
あの人の話を聞かせてもらいたいとか、
あの人に聞かせてやろう、というのが通信なんだよ。

そうすると、いつでも・どこでも・誰とでも、なんだ。

「いつでも」「どこでも」話ができる。それが相手が誰だろうと、
この人と話したいというときに、その人をとっ捕まえることができる。

それから「誰とでも」。
あの人とは話せるけど、この人とはつながらないというのでは困る。

いつでも・どこでも・誰とでも、というのは、通信の原則なの。

それをやろうと思ったら、一人ひとりに周波数をあげるわけだよ。
あの人に話をしたいときは、こういう周波数を出せば良い、とかね。

我々が研究生活に入った時、どんな周波数でも出してやろう、
というのが、ひとつの目的だった。

それで、レーザーを発明したのだ。

そのとき、お金を貰いに行こうとした。
大学のお金だけじゃ、足りないから。

けれども貰いに行くときに、下手すると、
そのまま盗られちゃうことがある。

誤解が生じることもあるから
だからその前に、特許を出そうと思った。

特許があるが故に、ちゃんと考えていたのだな、
ということを証明できるわけだし。

我々はやらせてもらえなかったけど、
アメリカでやった人は、それで、ちゃんと成功したわけだよね。

―結局、お金は貰えなかったのですか?

貰いに行ったけど、貰えなかった。

そのときに、何と言われたか。
「ものができてから、貰いに来い」と。

「だから、その金がないから、貰いに来たんだよ」と、
水掛け論になったわけだ(笑)。

―お金を出す側は、価値として認識しなかった。

そうは思わなかったのでしょう。
だけれど、それは、ひとつの例ですよ。


これからの人間の価値は、どこから自分でやってみせるか

―これからの日本は、科学技術の種を外国から輸入して親木にするのではなくて、
 オリジナルの種子を日本からつくって、産業をつくらなければ、
 日本は生き残っていけないと、西澤さんは著書でも仰っていました。
 東北学院大学学長の星宮さんへのインタビューでも、学生時代、西澤先生から
 「オリジナルを大切にする」スタンスを指導して頂いた、というお話がありました。
 西澤さんにとって、オリジナルの価値とは何でしょうか。

科学者だったら、オリジナルなことをやらなきゃ。

人が言っていることを受け売りしてたら、
それでも科学者なんだけども、価値は半減していますよね。
いや、半減どころじゃない、9割引きですよ。

人がやっていたものだけをやっていたって、
そんなにお金、取れないよ。

やっぱりこれから人間の価値というのは、
どこから自分でやってみせるか、やった人達なのか、ということなんだよ。

アメリカ人がやったことを見て、やる人もいるだろうし、
アメリカ人がやる前に、やる人というのもいるだろうし。

アメリカ人がやる前に、やった人たちというのは、
非常に、希少価値があるわけだ。

―人がやっていることを受け売りする人は、多いと感じていますか?

多いです。
特に日本なんかは、そういう人、多かったんだから。

―なぜ受け売りをしてしまうのだと思いますか?

ちゃんとはじめから、自分で考えていないからですよ。

人がやっているのを見て、「あんなことができるんだ」
と思うから、真似になっちゃうのでしょう。

何も見ないうちから、そういうことに気がつけば、
誰もものをつくっていないうちから、それをやれる。

だから、はじめからその人のやったことになっていくわけだ。


自然科学を人間生活に役立てられることが、科学者の特権

今、炭酸ガスが出て、困っているでしょう。
炭酸ガスを出さないで、エネルギーを得る方法は、水力発電です。

水力で水車をまわして、それで発電機をまわすわけだ。
すると、電気が出てくるでしょう。
そうすれば、炭酸ガスを出さないで、電気が出るじゃない。

ところが、火力発電機を使う人もいる。
炭酸ガスが、いっぱい出てくるわけだ。

だからこちらは早く、水力発電を普及させたいと思っているわけ。
この間、アメリカの雑誌に、論文を書いて出したんだよ。

世界中に水がどれくらいあるか、何メートルの高さに水があるかを調べると、
そこから水を落とせば、発電機をまわして何Wの電力、と計算ができる。

そういう値を実際に計算してみると、世界中の人間が欲しいだけの
エネルギー量をつくってあげても、まだゆとりがある、という結果を発表したわけ。

だから、もっと勉強しなきゃ駄目だよ、と言っている。
水力発電をまわせば、炭酸ガスを出さずに、電気がとれるんだよ。

これはだから、人類愛に、科学を使うわけだ。
炭酸ガスを出したら、人間が死んじゃうでしょう。

炭酸ガスを出さないで、エネルギーを使わせてあげましょう、ということを考える。

人類愛に基づいて、自然科学を人間生活に
役立てることができるというのが、科学者の特権なんだよね。

これからも、そうしないといけない、と思っているのよ。

つまり、お金儲けているわけじゃないのだ、ということがわかってくれれば、
もうちょっと皆も、尊重してくれるでしょう。

―尊重されていないのですか?

だってこの間、青色発光ダイオードをつくった人が、
会社に200億円、要求したじゃない。
我々、10万円も貰っていないよ。

―なぜ逆に、そう思われてしまうのでしょうか?

そうね、逆にね。

だからやっぱり、人間を生かしておくには、
自然科学者がしっかりと仕事をしなければ駄目なんですよ、と言っている訳だ。

―そういうものを、ずっとつくられてきた。
 そして今のわたしたちの社会もある。

これからも、眼の黒いうちは、
また、いろんなものを、つくっていきますよ。

―西澤さん、本日はどうもありがとうございました。

次へ 西澤潤一先生の研究と教育の現場を訪ねて


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