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2020年 07月 13日 (月)

「次世代放射光施設と食・農の未来」日本農芸化学会と東北大学がシンポジウム開催

2020年01月10日公開

「次世代放射光施設と食・農の未来」のようす=1月8日、東北大学青葉山新キャンパス(仙台市)

 東北大学青葉山新キャンパス(仙台市)内に建設が予定されている次世代放射光施設の食・農分野への活用の可能性を探るシンポジウム「次世代放射光施設と食・農の未来」が1月8日、東北大学青葉山新キャンパスで開催された。日本農芸化学会東北支部と東北大学大学院農学研究科、同大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター、同大学食と農免疫国際教育研究センターによる共催で、大学や企業、自治体等の関係者らが参加した。

 はじめに日本農芸化学会東北支部長の中山亨さんが「世界最高レベルの軟X線向け高輝度放射光源として各分野から期待を集める次世代放射光施設が、食・農分野の未来に与えるインパクトを探りたい」とあいさつ。次に、東北大学理事・副学長(研究担当)の早坂忠裕さんが、世代放射光施設誘致の経緯や産学官連携による取り組み等を説明した。

東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター長の村松淳司さんによる同センターの事業紹介

 続けて、同大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター長の村松淳司さんが、昨年10月に新設された同センターのミッションや事業内容等を紹介した。同センターは、次世代放射光施設の活用による学術研究、産学連携、国際連携、人材育成を行う、同大学の分野横断的な研究開発拠点となる。村松さんは「次世代放射光施設をどう利用するかよりも、何を可視化したいかを投げかけてほしい。そうすれば我々は実現のための方法やツールを提案できる。そこから新たな計測技術やサイエンスが生まれれば、我々としても喜ばしい」と呼びかけた。


◆ 次世代放射光で期待できうる研究の展開

光科学イノベーションセンター理事長の高田昌樹さんによる講演「次世代放射光施設の特徴と利活用」

 講演の第一部では、はじめに次世代放射光施設の建設や運営を担う一般財団法人光科学イノベーションセンター(仙台市)の理事長で東北大学多元物質科学研究所の高田昌樹さんが登壇し、次世代放射光施設の特徴や利活用事例、同施設運営の特徴であるコウリション(有志連合)コンセプトという産学連携の新しい仕組み等について説明した。

 次に、秋田大学理工学研究科の尾高雅文さんが「次世代放射光を利用した酵素反応の可視化への挑戦」と題して酵素の触媒機構に関する研究を発表し、次世代放射光の利用で期待できうる研究の展開について紹介を行った。

東京大学物性研究所の原田慈久さんによる講演「次世代放射光で水と泡の謎にせまる」

 また、東京大学物性研究所の原田慈久さんは「次世代放射光で水と泡の謎にせまる」と題して講演し、軟X線を使えば水素結合に寄与する水の価電子状態を直接観測できることを解説。分析事例として「お酒のまろやかさの分析」や「目に見えない微細な泡を見る」等を紹介した。原田さんは「次世代放射光施設では、これまで1時間必要だった分析が、1分で済む。放射光の使い方も変わるだろう」と次世代放射光施設への期待を語った。


◆ 放射光を用いた食・農分野の分析事例紹介

高輝度光科学研究センターの八木直人さんによる講演「放射光を用いた食品科学・農学研究~海外放射光施設における動向~」

 講演の第二部では、兵庫県にある大型放射光施設(SPring-8)の運営を行う高輝度光科学研究センターの八木直人さんが、SPring-8や海外放射光施設での放射光を用いた食品科学・農学研究の動向について紹介。チョコレートの美味しさ(食感)を決めるテンパリングという操作の中で油脂の結晶構造がどのように変化するかや、パンの膨らみ方(空胞の大きさ)が塩分濃度によってどのように変化するか等、放射光によって分析された事例を多数紹介した。

マルセ秋山商店の秋山繁さんによる講演「企業の放射光利用例:冷凍食品の放射光CT測定」

 次に、東北大学大学院農学研究科の日高將文さんが、同研究科で次世代放射光ワーキンググループを設置し、SPring-8での研修や、産学連携に取り組んでいること等を紹介した。続けて、同研究科が支援し、仙台市の既存放射光施設活用事例創出(トライアルユース)事業に採択された、水産加工業のマルセ秋山商店(宮城県石巻市)の秋山繁さんが、冷凍食品の放射光利用例を紹介。「冷凍水産物組織内部の氷結晶を可視化することで最適な冷凍条件を見出し、宮城県水産物の美味しさを世界に届けたい」と意気込みを語った。

 このほか、冷凍食品の品質変化のメカニズムを研究している日本大学生物資源科学部の小林りかさんによる講演もあり、SPring-8のX線CTを用いて「過冷却によって冷凍イチゴの品質は向上するか」や「凍り豆腐はなぜ貯蔵中に硬くなるか」を研究した結果の発表があった。

 最後に、東北大学大学院農学研究科長の阿部敬悦さんがあいさつし、「次世代放射光は産業界がアクセスしやすい施設になる。東北地方には農林水産食品業の中小企業が多く、国際競争力の高い農産物も多い。次世代放射光の活用により、標準化や海外市場開拓等につながると期待している。大学にも気軽に相談してほしい」と呼びかけた。


【主催者インタビュー】
「農芸化学分野での次世代放射光活用に大きな期待」
/日本農芸化学会東北支部長 中山亨さん

 私自身は専門外だが、どの発表も大変興味深く、次世代放射光のポテンシャルの大きさを感じた。農芸化学は、化学と生物に関連した事柄を基礎から応用まで幅広く研究する学問分野で、産業・学術・官公庁すべてに関わるが、どの業界にとっても次世代放射光は重要な技術になると強く期待している。当学会としても、本領域をさらに拡大して貢献していきたい。


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