学校・家庭・地域つなぐ協働型「学校評価」へ理解を 仙台でシンポ
2009年12月17日公開
先月30日、仙台市太白区の文化センター楽楽楽ホールで開催された「仙台版・学校評価シンポジウム」のようす
学校・家庭・地域による協働型の学校評価への理解を深めてもらおうと、先月30日、仙台市太白区の文化センター楽楽楽(ららら)ホールで「仙台版・学校評価シンポジウム」(仙台市教育委員会主催)が開かれ、教職員やPTA役員、学校関係者評価委員など多くの学校関係者が参加した。
文科省学校評価の推進に関する調査研究協力者会議の座長などを務めた天笠茂さん(千葉大学教授)による基調講演が、「子供たちのよりよい姿の実現と学校評価」をテーマに行われた。
このほか、「学校・家庭・地域をつなぐ学校評価~子供たちの成長を支える学校評価にするために~」をテーマに、学校・保護者・地域住民・行政の4者によるパネルディスカッションが行われた。
※このうち、本記事では天笠茂さんによる基調講演の内容(要約)をご紹介します。
基調講演「子供たちのよりよい姿の実現と学校評価」
天笠 茂 さん(千葉大学教授)
◆学校評価=教育評価+経営評価
千葉大学教授の天笠茂さんによる基調講演のようす
「評価」という言葉から、皆さんは何を感じるだろうか。子どもたちに対するとりわけ勉強についての評価が一般的だろう。子どもたちの成長等々を確かめるための取組みを「教育評価」という。
もうひとつの「評価」がある。たとえば、会議の時間の使い方は適切だったか、遠足の経費の使い方は適切だったか。時間やお金など、組織運営に関わる評価を「経営評価」という。
「学校評価」とは、「教育評価」に「経営評価」をあわせたものを指す。では演題の「子どもたちのよりよい姿の実現」と「学校評価」は、どのような関係があるだろう。それを各来場者にイメージしてもらうことが本シンポジウムのねらいと考えている。
◆学校評価この10年―学校への説明責任から学校支援へ―
今回の会場には、先生方と地域の方々、保護者の方々が参加している。これはまさに学校評価の時代を象徴している。これまでは、教職関係者による自己評価が学校評価だった。地域の方々や保護者はその範囲外だった。
学校評価の歴史を紐解くと、海外の学校評価が紹介されたのは昭和20年代。その後、国が表に出て学校評価を推進することは全くなかった。教職関係者が自らを振り返り反省するための学校評価が続いた。
内部評価の公開を学校に求める声が顕著になったのが1990年代。それに応じて「開かれた学校」と言われるようになり、校庭や体育館など学校施設の開放は進んだが、内部評価は内部のままだった。
1998年に中央教育審議会が「今後の地方教育行政のあり方について」答申。学校の組織運営のあり方などが示された。「地域住民や保護者に対して、自己評価を説明する必要がある」と学校に対する「説明責任」を求めた。説明責任はひとつのキーワードである。
さらにもう一歩踏み込み、教職員による自己評価の説明責任に加え、外部評価の導入が2000年、教育改革国民会議報告「教育を変える17の提言」に下記のように盛り込まれた。
「各々の学校の特徴を出すという観点から、外部評価を含む学校の評価制度を導入し、評価結果は親や地域と共有し、学校の改善につなげる」。現在の学校評価の考えは、この辺りにある。
これら一連の動きを国としてまとめたものが、2006年の「義務教育諸学校における学校評価ガイドライン」。2008年には「学校評価ガイドライン」の改訂版が出された。仙台の実情にあわせた仙台版「学校評価ガイドライン」も2009年に出された。
◆内部評価・外部評価から、自己評価・学校関係者評価へ
2006年の「学校評価ガイドライン」が2008年に改訂された際、重要な修正がなされたと認識している。「外部評価」が「学校関係者評価」という言葉に修正されたことが、改訂のポイントだ。
「そもそも保護者は外部なのか」という素朴な疑問を持っていた。子どもを育てる前提に立てば、保護者は先生方と同じ立場に立ちうる。ところが内部評価・外部評価と位置づけることが、両者の間に深い溝をつくる結果を生み出す恐れがあると心配された。
「学校評価ガイドライン」の背骨となる部分は、「学校関係者評価」をどのように受け止め、機能させていくか。それが大きなポイントになる。
◆何のための学校評価か
この10年間、学校に説明責任を求める動きはますます強まっている。一方、学校にとっては常に求められ続けた10年であった。
子どもたちを評価するのは得意だが、評価されるのは苦手。そんな気質を持つ人が多くを占めるのが学校という存在。外部評価や説明責任を求められ、学校は守勢にならざるを得ない状況だった。
そもそも学校評価の目的は、学校の職員室のなかで共有されているか。「できれば遠ざけたい」と思う先生も多いと推察する。そのような先生方を糾合し、学校の目指す方向へつなげるとき、学校評価をマネジメントのツールとして活用することがポイントだ。
学校評価の目的は、ガイドラインに示す通りと認識している。下記三つが挙げられる。
一つ目は、学校をより良くするため。学校のまずかったことを見つけ出すことも、学校評価のプロセスである。利害関係のある人ならば当然「何とかしなければならない」となるはず。
評価に携わるとき「うちの学校をより良くしていく」という共通した基盤を持つことが大切。学校評価を保護者や地域の方々にお願いすることは、「共通の基盤に立ちましょう」というメッセージにもなる。
二つ目は、つながるため。先生方と保護者と地域の人々と、あるいは学校と家庭と地域と、つながる。一人ひとりがメッセージを寄せることも、ひとつの関係性づくりである。
なかには辛らつなメッセージもあるだろう。距離を置きたくなる気持ちもわかるが、回を重ねるごとにメッセージを発する側も、考えを深め広げるスタイルを持ってもらいながら、関係性をつくっていくことが大切だ。
三つ目は、質の確保。「何のための学校評価か」をどれほど共有できるかで、その学校の学校評価で得られる豊かさの程度は異なる。学校を核にして「うちの学校をより良くしていく」マインドを共有できれば、その学校は良い基盤を手に入れている。
学校の立場からは、「自己評価」と「学校関係者評価」をどのように切り盛りして主導権を握るか。保護者や地域住民の立場からは、学校とどのような形でつながるか。
それらが今、大きなテーマとなっている。保護者や地域住民と学校・教職員をつなぐ手法として、学校関係者評価を使いこなすことが大切になる。
◆学校評価のとらえ方
学校評価は、細かな項目をチェックするやり方だけでなく、いろいろなやり方がある。学校等々の動きと重ね合わせながら紹介する。
一つ目は、目標に着目する考え方。学校には、「学校教育目標」など様々な目標が掲げられている。学校が掲げた目標がどの程度実現しているか、具体化しているかを見定めることが学校評価になる。
二つ目は、ヒト・モノ・カネの手配に着目するやり方。例えば、運動会などで必要なヒト・モノ・カネが適切に手配されて運営されているかを見る。これについて目配せすることも、学校評価の取り組みとしてとらえてよい。
三つ目は、授業の評価やカリキュラムなど、日々の具体的な教育活動を見聞きすることから学校評価に関わること。学校評価は抽象度が高く入り込みにくい印象を持つ方も多いだろう。地域の方々や保護者が評価に携わることができるよう、学校は機会や場を用意するなどの配慮をすることが大切だ。
学校評価の細かな事項をチェックすることに距離を感じる人も出てくるだろう。学校教育活動の現場で、具体的な現象を直接見聞きすることに加わってもらうことからはじまり、続いて目標、そしてヒト・モノ・カネの手配、という段取りになると考える。
◆第三者評価の試行事業に参加して
教職員が内部で評価する「自己評価」、その結果を受けて保護者や地域住民がその評価を下す「学校関係者評価」、さらにその学校に直接利害関係を持たない専門家が行う「第三者評価」。以上三つが学校評価の全体像である。
第三者評価の試行事業に参加した。100を超える細かいマニュアルに沿って学校を見るが、おおよそ下記三つのポイントで学校の現状が見えると考えている。参考になるとよい。
一つ目は、学校は子どもたちを育てているか。子どもが育たないことが改善の最大の対象。子どもが育っている学校は、先生も育っている。保護者や地域住民とつながっている場合も多い。学校は人を育てて何ぼのところ。人が育とうとしている、育てようとしている意欲をインタビューや授業の有り様から見ている。
二つ目は、先生方がつながっているか。私の学校の見方として、一人ひとりの先生方は頑張っている。一方で、もっと先生同士でつながったら良いのではと強く思うことも少なくない。学年の先生方がチームになって動いている学校は、子どもたちも育っている。
三つ目は、地域の信頼を得ているか。かつて日本の学校は親方日の丸。お上が学校をつくり、学校が機関車の役割を担い地域を引き上げ、日本の近代化に貢献した。しかしながら、その考え方で21世紀を生き残っていけるだろうか。地域からの支持をどれだけ獲得できるかが、これから大きな基盤として必要だ。
◆学校評価に関係する評価者に対する研修機会の必要性
学校評価に関係する研修の機会は、とかく中堅あるいは管理職の立場の先生方が持てばよい、という状況が続いている。しかしながら、学校評価をめぐる今日的状況を見ると、学校評価に対する基本的な考え方や知識等々は、それ以外の人でも共有すべきというところまで来ている。
もちろん学校の先生方がポイントになるが、学校評価の鍵は、地域の方々や保護者が握っている。「学校関係者評価」が重要だと言われているが、そもそも何が重要なのか、どのように評価すれば良いのかを、地域住民や保護者に伝えている自治体が少ない。一方で、それにすでに気づいている地域もある。
今回の講演は技法よりも概念的な話が中心だったが、これが次第に、項目の有り様やチェックの仕方、技法の世界に入ると、ワークショップ的な有り様もありうる。
地域住民と先生方が一堂に会する有り様をつくることが、協働的な学校評価を進める具体的な動き、そして学校と協働の地域づくりにつながっていく。これから学校評価に携わり、皆様で共有されていくことを期待している。
講演者インタビュー
千葉大学教授の天笠茂さん
―なぜ今、学校評価がテーマになるのですか?
先生方が自己評価をしたり、自ら反省することは、これまでずっと取り組まれてきた。これからはもっと学校の現状を、複数の外からの目で見つめて、学校をより良くしよう、となった。そこに地域の方々や保護者、生徒・児童も加わる。その加わり方、関わり方がこれからのテーマになるだろう。
―中高生へメッセージをお願いします
生徒の立場として、今置かれている状況を良くしたい思いがあるだろう。その思いを自分の中に留めるだけでなく、どのように伝え、意思としてまとめていくか。これをどのような仕組みとしてつくっていけるかがテーマになっている。
例えば、授業についての思いを先生に伝える。どのような声の伝え方があって、どのような形で生かせるだろう。生徒にも加わってもらいアイディアを出していただく。
生徒は受身の立場だが、そのような形で一人ひとりが主体的に関わることで、重要なメンバーの一人として学校をより良くしていく。そのような思いで進んでいる。
―天笠さん、ありがとうございました
コラボレーション
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