社会を生き抜く「応用力」育成へ検討会議設置/仙台市教委
2009年12月14日公開
7日、市役所で行われた仙台版『応用力』育成プログラム開発検討会議のようす
変化の激しい社会を生き抜く「応用力」を子どもたちに身に付けさせようと、仙台市教育委員会は今月、「仙台版『応用力』育成プログラム開発検討会議」を設置した。
実社会の様々な課題に対して、教科書の枠を超えて応用できる力を育成することが目的。市独自の学習プログラム開発に向け、具体的な内容や手法を検討する。
開発チームは、企業の経営者や研修担当者、学識経験者ら7人と、教育長や学校教育部長など市教委の職員ら7人の計14人で構成。
月1~2回のペースで理論研究を進め、年間30時間程度の学習プログラムを各学年ごとに作成。2011年度にはモデル校で、12年度には市内各校で実践する計画だ。
7日に市役所で行われた初会合では、市教委の担当者が、検討会議設置の趣旨などを説明。続いて、子どもたちや若者の現状について、意見交換が行われた。
『宮城の新聞』の大草芳江は「仙台版『応用力』育成プログラム開発検討会議」コアメンバーとして、検討会議に参加します。『宮城の新聞』では「教育って、そもそもなんだろう?」特集において、教育のこれまでとこれからを探るべく、検討会議の議論のプロセスを中高生へ広く伝えます。
そもそも「応用力」とは
市教委が今年3月に策定した「確かな学力育成プラン」(※)では、テストの点数を上げるといった目先の学力ではなく、社会で生き抜く力の育成を目標として、「確かな学力」を「基礎的知識・応用力・学習意欲」の三つと位置づけた。
同プランでいう「応用力」とは、ペーパーテストの「応用問題を解く力」という狭い意味ではなく、「思考力・判断力・表現力」などを指している。
市教委によると、「応用力」を育む授業力向上のために、思考力や表現力の基盤となる言語活動に焦点を当てた施策を進めており、一定の成果はあったとしている。
しかしながら、「教科を超えた力を身に付けたいが、教科固有の目標や内容に埋もれてしまう」といった課題を挙げ、「そもそも社会を生き抜くために必要な力とは何か。教育関係者や公務員以外の視点も求めたい」として、検討会議を設置した。
教育長の荒井崇さんは「社会の急激な変化に伴い、子どもたちに必要な力も変化している。①そもそも『応用力』とは何か、②どのようにして学校教育に取り入れるか。以上2点について、今年度内に議論したい」との方向性を示した。
学校教育部参事で確かな学力育成室長の庄子修さんは、「学習指導要領の枠にとらわれず、その先の生き方につながる本物の学力を子どもたちに授けたい」と、検討会議に対する意気込みを述べた。
※【関連記事】
仙台市教育委員会 教育長の荒井崇さんに聞く:「確かな学力育成プラン」って、そもそも何ですか?
子どもたちや若者の現状は
◇対人関係能力の低下、学力の二極化など/近年大きな変化
市教委が昨年と今年、市内各校に実施したヒアリングによると、子どもたちの精神面で近年大きな変化を感じる教職員が多かった。
特に、コミュニケーション能力の低下、人間関係の希薄化といった、対人関係能力の低下を指摘する声が多かった。また、そもそも問題行動の自覚がないなど、問題行動の現れ方が多様化し、対応が困難になっているという。
子どもたちの学力面においては、計算能力や暗記などの能力に変化はない一方で、近年、思考力や作文能力の低下が見られる。学力は確実に二極化しており、クラス全体の指導に悩む教員も多いという。
授業は基礎中心で、なかなか応用力まで育成できないのが現状。教員の意識を変える必要性も指摘された。また、総合的な学習の時間は、教員や学校間で活動内容の差が大きいとしている。
◇目的意識どう持たせる
教職員の研修を行う市教育センター所長の熊谷和彦さんは、「正しい答えを出す方法さえ教えれば良いという指導のあり方が、子どもたちの知的な活動を奪っている」と指導力の要因を指摘。「原理原則から考えないために、違う形で問題が出されても応用できない」との見方を示した。
宮城大学助教の田代久美さんは、ヨーロッパの例え話を紹介しながら、「何のために学習させるのかを子どもに持たせることが大事。それが見えなければ、意欲も湧かないし定着もしない」と話した。
「数年前から学校に文句言うのはやめた」と話す、日東イシダ代表取締役社長で宮城県中小企業家同友会代表理事の鍋島孝敏さんは、社会や家庭の教育力低下を指摘。「学校だけで子どもは育てられない。社会としての問題、企業としての問題だ」との認識を示した。
懇親会も兼ねた検討会議第2部では、視点を変えて多角的な議論を行った
鍋島さんは「自社の存在理由を一生懸命考えなければ生き残れないのが企業。社員に目的意識を持たせる必然性がある」としたうえで、「そのような環境がない学校で、進学以外の目的意識を持たせることは本質的に難しい」と指摘。「最低限、人と関わる力を身に付けてほしい。それが何かの突破口になるのでは」と話していた。
学校教育部長の菅野茂さんは、「本来、子どもは学ぶことが好き。ところが『社会を生き抜く力』の素地を涵養する環境が、社会全体でなくなりつつある。相手の立場の疑似体験などを通して、子どもたちが学ぶ意義を見出し、自ら学んでいけるきっかけづくりをしたい」と話している。
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