高校入試や大学入試も、PISA型の時代へ
―基礎的な計算技能を試す従来型のTIMSSと、これからの社会で求められる応用力を試すPISA、
具体的にはどのような違いがあるのですか?
こちらの図は、パブリックコメントという形で、
「教育委員会はこのように考えていますが、皆さんはどうお考えですか?」
と聞いたときに用いた資料です。
PISA型の問題と、従来型の学力検査であるTIMSS型の問題を比較したもの。
非常に対照的ですね。
【図1】PISAと我が国の全国学力・学習状況調査で出題された、応用力を専ら問う問題例の比較
※図をクリックすると、別ウインドウで図が大きく表示されます。
―PISA型は、実生活の中にある事柄をそのまま問題にした印象を受けますが、
TIMSS型は、問題としてはかなり整理整頓された後の印象を受けますね。
そうですね。
TIMSS型は、基礎的な技能を機械的かつ的確に適用できるかが重要です。
一方、確かにPISA型は、実生活の中で必要な情報を取り出し、
それに対して基礎的な技能を適用させ、適用させた内容を自分で表現する
一連のプロセスが必要になります。
実は、県立高校の入試問題も、どんどん変わってきています。
すべての問題ではありませんが、当然、学習指導要領が変わったので、
このようなPISA型になりつつあるのです。
―答えがひとつではないため、採点する先生の力量も問われそうですね。
先生によって、採点基準が異なったりすることはないのでしょうか。
例えばPISAでも、答案例がたくさんあります。
満点の場合でも答案例は5種類、部分点でも3種類あります。
答えはひとつではなく、ただ、筋が通っていれば良いのです。
世の中、答えはひとつではないので、
世の中に合わせた試験となると、当然そうなってくるのではと思います。
少なくとも中3になれば、多くの子ども達は高校に行くので、
教育委員会として、このようなことも念頭に置く必要もあるかと思います。
大学入試も、だんだん変わりつつあります。
大学入試でも、後期課程の試験は、随分、複合的な問題を出していますよね。
前期過程も、どんどん変わりつつあるなと感じています。
もちろん、進学のためだけではないですが、
少なくとも仙台の子ども達が、他の地域に住んでいる子ども達と比較して、
高校入試や大学入試で不利にならないようにしなければならないと考えています。
より進学に対応しなければならないと思う理由のひとつとしては、実は大学でも、
PISAのような学力検査「AHELO」(※3)の導入が検討されています。
(※3)経済協力開発機構(OECD)が行う高等教育における学習成果アセスメント
「Assessmentof Higher Education Learning Outcomes, AHELO(高等教育における学習成果の評価)」
PISAと同様に、各国の各大学において、
高等教育を通じて、どのような能力を身につけたかを調査するものです。
PISAが出てから、各国の教育成果が目に見えて比較できるようになったように、
今度は大学間に関しても、明確な基準によって比較される形になっていきます。
そうなると、日本の大学もランキングを上げようとしてきますので、
AHELOで求められる力を、大学入試で求める可能性が高くなると予想されます。
すでに、日本の大学はそうなりつつあるかもしれませんが、
そのような意味でも、仙台の子ども達が不利にならないように、と考えているのです。
それぞれの課題への個別対応では意味がない
―そのような現状認識を踏まえた上で、プラン作成にあたり心掛けた点は?
今回のプランにおいては、それらの課題に対して、対応できる施策を考えました。
その際に気をつけたのは、とにかく、それぞれの課題への個別対応では意味がない。
それらの課題に対して、総合的に対応する必要があるだろう。
そのような根本的な考え方のもと、体系的にプランをまとめました。
―なぜ「個別対応では意味がない」と考えたのですか?
なぜかと言うと、仮に二つの課題を挙げたとします。
ひとつは、「子ども達が授業で落ち着かない」、
もうひとつは、「応用力育成のための研修の少なさ」とします。
仮に、「応用力育成のための研修の少なさ」に対応し、
先生が非常に高い授業技術を身につけたとしても、
実際に教室で「子ども達が授業で落ち着かない」状態であれば、
身につけた授業技術を発揮することはできないわけです。
もうひとつ例を出しますと、仮に思考力を高める授業技術を身につけたとしても、
大人数の教室では、それを発揮できないこともあるかと思うのです。
少人数でやるべきもの、少人数でしかできない指導方法もあるかと思います。
つまり、これらは同時に解決しなければなりません。
そこで、プランとして、体系的にまとめたわけです。
地域の人々に、学校へどんどん入ってもらう
―具体的にはどのようなプランを打ち出したのですか?
今年の4月から、いろいろな事業が動いています。
その中のひとつの柱として、地域の方、保護者の人と一緒に、
これから学校へ、どんどん参画して頂くことが必要だと思っています。
子ども達にいろいろな体験をさせる上でも、
地域の方々の様々な知識や技能がとても必要になります。
思考力・判断力・表現力・学習意欲と、学力を広く見た場合、
それは、机の上だけで育まれるものではないと思うからです。
具体的には、地域との窓口になる担当の先生を、
各校毎に一人ずつ配置しています。
それに加えて、「学校支援地域本部」設置校では、
学校のことを理解してもらう意味も含め、
地域の方に学校へどんどん入ってもらっています。
―教育現場を直接見ていないと、社会で何かしらの問題が発生した際に、
「悪いのは学校のせい」と思う風潮が、確かにあると感じています。
しかしながら実際に教育現場へ入り、各自が教育に対して当事者意識を持てば、
自ずと考え方や行動も変わっていくのでしょうか。
荒井さんも、自らの足で現場に行き、その辺りをお感じになったのですか。
実際に学校現場で、先生や子ども達が、授業やいろいろな活動をしているところを
見てもらえると、「あぁ、学校というのは、思ったほどひどい状況じゃないな」と
わかってくれるでしょうし、先生達も大変だなとわかってもらえるのではないでしょうか。
やはり学校という空間の中に、社会というものが入ることは、
学校にとっても必要なことだと思います。
学校はどうしても、ひとつの世界になりがちなので、
地域の方が入ってくることで、学校の幅がより広がるのではないでしょうか。
―社会からある程度切り離されたところで、独自の世界観を持ちながら教育する大切さもあるかとは
思いますが、一方で、その世界観とは異なる多様な人たちの集まり、すなわち社会が入ることで、
子ども達が思考力・判断力・表現力・学習意欲を育む必然性が生まれるのですね。
そうですね。
また先生方にとっても、良い刺激になると思います。
それを、抽象的な表現で「学校の活性化」と言っています。
先生方も色々な考え方を持っているとは思うのですが、
学校以外の視点も入れることは、自分の考え方を相対化する意味でも良いのでは。
―諸課題に対して総合的に対応していく、その大きな軸のひとつが、
地域との連携と考えてもよろしいでしょうか。
そうですね。
今回のプランにおいて、それがひとつの大きな軸となっています。
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