科学のおもしろさ体験して 東北大でサイエンス・サマースクール開催
2011年08月12日公開
8月10日から3日間、東北大学工学部創造工学センター「発明工房」で行われている「たのしいサイエンス・サマースクール」のようす
中学生を対象とした「たのしいサイエンス・サマースクール」がこのほど、東北大学工学部創造工学センター「発明工房」で行われている。「光とエレクトロニクス」をテーマとした実験に、参加した子どもたちは、真剣な表情で挑戦していた。
子どもたちの「科学する心」を育もうと、東北大学などの教職員有志でつくる「たのしい科学企画委員会」が、KDDI財団の協賛を得て毎年開催しているもので、今年で18回目。
全3日間のプログラムに、県内や隣県から中学生約50人が参加。光と電波を用いた通信やロボットの制御など、6つのテーマに分かれて実験を行った。
ハンダゴテを使って電子回路を製作する子どもたち
このうち光の点滅と混合を利用する実験では、高速で点滅させたLEDを動かし空中に絵を描く装置を製作。赤色・緑色・青色を混ぜて白色をつくる原理は、テレビなどにも応用されていることが説明された。
ハンダゴテを使って電子回路を製作する作業では、初めて扱う工具に緊張した表情を浮かべる場面も。初めてハンダゴテを使ったと話す中学1年生は「初めてだったけど、思ったより簡単にできて楽しかった。ハンダがしっかり付いた時がうれしい」と満足げだった。
このほか、東北大学の研究室や、「全国高等専門学校ロボットコンテスト2010」で大賞を獲得した仙台高専のロボットの見学会もあり、子どもたちは興味深そうに見聞きしていた。
参加した中学2年生は「学校では、説明ばかりで実験がないのがつまらないが、実験はおもしろい。実験をすると、目で見て結果がわかるので、うれしい」と話していた。
大学の研究室見学で「超伝導」について説明を受ける子どもたち
「全国高等専門学校ロボットコンテスト2010」で大賞を獲得した仙台高専のロボット見学
「たのしい科学企画委員会」委員インタビュー
―「たのしい科学企画委員会」に、どのような思いから携わっていますか?
◆まずは実験を体験してみて
/委員長・校長の澤谷邦男さん(東北大学大学院工学研究科教授)
委員長・校長の澤谷邦男さん(東北大学大学院工学研究科教授)
科学技術立国日本にとって、理科離れは非常に深刻な問題。大学生からでは遅いので、中学生に対して何かできないかと思って始めた。限られた時間内で、どんな実験をやれば原理を理解してもらえるか、始めはゼロから考えたので特に苦労した。僕らが中高生の頃は、学校でも実験の時間がたくさんあったが、今はかなり減っている。中学生に対して難しいことを求めているわけではない。実験装置を自分でつくって測定し、結果についていろいろ考えてみるといった基本を体験してもらえれば。それで十分だし、体験して嫌いになるのは、僕の知る限り、あまりないと思う。
◆自分で疑問を持つような人間に
/初代校長・顧問の中鉢憲賢さん (東北大学名誉教授)
初代校長・顧問の中鉢憲賢さん (東北大学名誉教授)
スタート当時は、中学校の理科の先生たちを訪ねて説明するところから始まり、泉ヶ岳や川渡などで自然に親しみながら、2泊3日の合宿を行っていた。それから、東北大学やKDDI、地域の学会など、いろいろな方々にサポートしていただいて、発展している。今年は東日本大震災があったが、これからはサイエンスと平和、生活との関わりも大切だ。教科書だけが問題ではなく、自分たちで疑問を見つけ、質問する。質問する相手も、今回の出会いを今後の交流の機会にしてもらいたい。専門でなくても良いので、自分で疑問を持つような、将来の科学技術がわかった人間に育ってもらいたい。そして、中学校の理科の先生たちや、参加している大学院の学生や先生にとっても、良い影響があることを期待している。これらのノウハウを伝えたいし、広まってもらいたい。
◆若い人が科学に興味を持つきっかけに
/委員の岡謙次郎さん (KDDI東北総支社長)
委員の岡謙次郎さん (KDDI東北総支社長)
科学は理屈ばかりだと嫌いになるが、実験をすると楽しい。やはり楽しくなければ、好きにはならない。本企画では、とことん実験に取り組める。ぜひ楽しんでもらいたい。そのためには、自分が思っていることやわからないことを、隣の人と話すことが大切。上辺だけでなく本質がわかれば、応用が広がる。それは仕事でも同じなので、早くから身に付けておくと良い。資源がない日本では、科学を活用し産業をつくることが非常に重要になる。若い人たちが科学に興味を持つきっかけとなってほしい。
◆科学を楽しんでもらいたい
/委員の吉田真奈美さん(KDDI財団)
委員の吉田真奈美さん(KDDI財団)
今年は東日本大震災の影響で開催が危ぶまれたが、先生方のご尽力により例年通り開催することができ喜んでいる。参加者には実験を通し、仲間とのコミュニケーションをとることの大切さ、失敗から学ぶことの大きさを学んでほしい。
◆一生懸命取り組む子どもの姿に刺激を受ける
/委員の八柳善隆さん (仙台市立茂庭台中学校校長)
委員の八柳善隆さん (仙台市立茂庭台中学校校長)
科学工作好きな生徒を引率し参加したのが、本会に携わったきっかけ。長年続いた理由の一つは、科学館にいた頃からメカトロニクス入門ロボット「梵天丸」の開発に携わったこと。初期の梵天丸はキットではなくハンダ付けだったので、岩本先生や何人かのメンバーで、講座前には夜を徹してハンダ付けをした。そのうちに、梵天丸の講座も本企画に加わる形になった。ずっと興味があったので参加しているが、一生懸命取組む子どもたちの姿に、逆に刺激を受けている。
コラボレーション
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