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2024年 11月 21日 (木)

4.「太湖」周辺施設見学、日本企業の環境事業活動など




4.「太湖」周辺施設見学、日本企業の環境事業活動など

【写真】「中国環境科学研究院太湖研究基地」前で記念撮影

 20日(月)、東南大学のゲストハウスを早朝に出発した一行は、江蘇省と浙江省の境に位置する中国で3番目に大きい淡水湖「太湖」周辺施設を見学するために、江蘇省南部の無錫市へ移動しました。

 太湖では、湖周辺の経済発展に伴って水質汚染や富栄養化が深刻な問題となっており、湖沼生態系は壊滅的な打撃を受けています。

 富栄養化、藍藻の大発生(アオコ)は世界各国に共通する課題であり、さらに地球温暖化、水温上昇が富栄養化を助長する可能性があります。

 現地では引き続き、水処理と水環境修復がご専門で東南大学教授の李先寧さんにご案内いただき、まずは浄化槽など廃水処理装置を生産する会社「Yixing Yaohua Environmental Protection Equipment Co.,Ltd」の工場を見学。続いて、李さんが太湖の湖岸生態修復などを担当している国の実験設備「中国環境科学研究院太湖研究基地」を訪問しました。

【写真】浄化槽など廃水処理装置を生産する会社の工場を見学。浄化槽は、日本のように繊維強化プラスチック(FRP)製ではなく、コストの安い鉄製が多かった。

【写真】かつて日本式が売れた傾斜管沈降装置

【写真】質問に答える李先寧さん(写真右)

【写真】工場見学後は、中国環境科学研究院太湖研究基地を李さんの案内で訪ねた。

【写真】中国環境科学研究院は、中国中央政府の環境・省エネ担当部局である中国環境保護部の直轄事業部門。ここでは太湖富栄養化に関する数々の重要課題研究が行われている。

【写真】李さん(左写真)の解説を真剣な面持ちで聞く学生ら(右写真)

 太湖の湖岸生態修復などについて研究内容を紹介した李さんは、「太湖周辺は、工業的にも農業的にも中国政府の"財布"。ところが、太湖の富栄養化によって水が使えなくなってしまった。このことに中国政府は強い危機感を覚えており、様々な対策を講じている」と話していました。

 李さんの説明を聞いた学生は、「魚を放流し太湖のアオコを食べさせる方法や、長江から水を引いて太湖の水を希釈する方法は、現在も行っているのですか」「水質改善対策のために投じられた生物や水が、生態系に与える影響を予めどのように考えていますか」などと質問をしていました。

 それに対し李さんは、「魚を放流してアオコを食べさせる方法は、5年前に流行ったテクノロジー。しかし魚の肝臓がやられて食べ物にならないので、今はあまり行われていない」「長江から太湖に水を引く方法は効果的で、太湖の水質が最も悪い時に行っている」などと答えていました。

 続いて一行は、太湖地域の農村部における、人工湿地を用いた生活汚水処理施設を見学しました。農村部における生活汚水処理率は現在10%程度ですが、五カ年で60%まで引き上げる目標とのことです。

【写真】太湖地域の農村部にある、人工湿地を用いた生活汚水処理施設の外観

【写真】人工湿地を用いた生活汚水処理施設について、李さんから解説を受ける一行

【写真】この町は製陶業が盛ん。陶器をつくる時に型として使用した石膏(廃材)がろ材として再利用されていた。課題だったリンの除去率がこれにより大幅に向上したと言う。

 その夜、一行は李さんらと一緒に太湖のディナークルーズを楽しみました。料理のほとんどに「太湖名物」と言われる様々な魚などが入っていました。

【写真】夜の太湖
【写真】太湖クルーズから眺めた夜景

【写真】太湖ディナークルーズ。太湖名物と言う魚は小さいものから大きいものまで様々。

 最終日の21日(火)は、早朝に無錫を出発し、一行は新幹線で上海へ向かいました。上海では上海大学を訪問し、水処理を微生物学的に研究している丁国際さんに、研究内容や同大学について紹介していただきました。

 続いて、三菱総合材料管理(上海)会社部長の柴田耕作さんが「三菱マテリアルの中国での環境事業活動について」と題して講演。日本での環境に対する同社の取組みや、中国の現状と中国での取組みについてお話いただきました。

 一行はその夜、上海に宿泊し、22日(水)、無事に日本へ帰国しました。

【写真(左)】無錫と上海を結ぶ新幹線
【写真(右)】上海大学を訪問。広大な敷地と立派な施設に学生らは驚いた様子だった。

【写真】上海大学にて。電子パネルには「熱烈歓迎 日本東北大学西村修教授 来我院訪問」

【写真】研究室訪問。丁国際さんは上水道から検出される線虫について研究している。

【写真】丁国際さんによる上海大学の紹介
【写真】プレゼンテーションを聞く学生ら

【写真】三菱総合材料管理(上海)会社の部長の柴田耕作さんによる講演「三菱マテリアルの中国での環境事業活動について」のようす


【インタビュー④】中国での国際フィールド実習を終えて

◆ 現場でなければわからないことたくさん / 手塚あゆみさん(生命科学研究科)

【写真】手塚さん

 自分は中国を誤解していたと思う。中国に対して自分はこれまで切り取られた情報だけを見ていたのだなと感じた。日本にいる時は中国に対して違和感があったが、中国では、皆にとても親切にしていただき、中国の良い面も見ることができたと思う。将来の働く先の一つに海外も考えており、これまで中国は選択肢に入っていなかったが、中国もおもしろそう。今回の実習を通じて、中国に限らず、どの国に行ってもおもしろみがありそうだと想像できるようになった。
 日本にいる時の情報だけでは、自分は知らず知らずのうちに、これ程まで視点が偏ってしまうことに驚いた。自分自身で実際に現場に行ってみることは、とても大切なことだ。例えば、三峡ダムは観光地だったし、大量のゴミの前で記念撮影もした。太湖ではナイトクルーズもした。事前にいろいろと調べてきたのに、現場に行ってみなければわからないこともたくさんあることがわかった。大切なことは、現場の人と話すことだ。
 中国の環境問題は非常に深刻だと思ったが、一方で、中国人学生は三峡ダムを知らず、皆そこまで環境問題に関心がないように思えた。しかし良く考えて見れば、それは日本でも同じではなかろうか。日本でも「生物多様性」について話すと「それ何ですか?」と皆に聞かれる。皆エコバックは気にしているが、それがその先どうなるかまではあまり考えていない。環境問題は深刻だが、その中にいる人はそこまで考えておらず、それでいて「何かやらなきゃいけない」意識はある。スケールの違いはあるものの、日本と中国ではあまり違いがないように思えた。
 自分の研究の関連で言えば、自分の研究フィールドには、共同研究者がサンプリングを担当している関係で、実は一度も行ったことがない。しかし、現場に行くのと行かないのでは、やはり研究のやり方なども変わってくるだろうなと感じた。自分の研究フィールドにぜひ行ってみようと思った。

◆ 環境問題と専門分野のつながり感じた / 李尚龍さん(生命科学研究科)

【写真】李さん

 環境を壊すことは簡単だが、壊れた環境をもどすことはとても大変なことだと感じた。三峡ダムでは、ダムの水にゴミがたくさん集まっていた。皆が何も考えずに捨てたものだ。捨てる人もいれば拾う人もいる。しかし捨てる人がいなければ、本当は必要のないことだ。環境問題は人間と環境の関係。だから市民の意識は一番大切で、市民の意識が変わらなければいけない。しかし、それは本当に難しいことだと感じた。
 法律やルールをつくるのは簡単だが、守る人がいなければ意味がない。そして、市民の環境に対する意識の違いが、先進国と発展途上国の違いだと思う。やはり貧しい人は環境への意識を持つことが難しい。自分の生活が一番のため、環境問題は大切でないからだ。一方で、先進国はお金のことがあまり心配なので、ほかのことも考えられる余裕がある。
 祖国・韓国の現状は、未だお金(経済成長)が重要だという価値観。しかし2002年から国家プロジェクトとして、経済と環境の両立を打ち出したことで、環境に対する政策や研究が始まり、環境に対する関心が高まりつつある。けれども韓国は遅れていると思う。環境問題はお金に関係していないので、優先順位が低いためだ。
 本実習を通じて、専門分野以外の環境問題に興味が湧き、専門とのつながりを感じた。自分は植物分類学の専門だが、新しい植物を発見したり、サインをつけたりする専門の研究以外のことも、これから考える必要があると感じた。例えば、人工湿地を用いた水質改善法では、どんな種類の植物が良いのだろうと考えた。目的の微生物が集まりやすいような植物の種類を研究できれば、もっと効率が良くなるかもしれない。また、自分は理論家だが、環境問題に直接的に貢献できそうな実際の現場を見ることができておもしろかった。
 環境問題に対しても、いろいろな知識を持っていることが必要だし、持っていなければ恥ずかしいと感じた。これから研究者として、環境問題に貢献することもできるかもしれない。多様な知識を吸収して、博士号取得後は研究者として、環境問題に貢献できるような研究もしたいと改めて思った。

◆ 大きな刺激で視野広がった /高野成央さん(生命科学研究科)

【写真】高野さん

 三峡ダムに対しては日本人学生内でも賛否両論あり、議論する前までは自分たちの意見が中国人学生らにどのように受け入れられるか全く見当もつかなかった。けれども中国の学生らは僕らの意見を受け入れ、中立的に議論してくれた。中国人内でも「中国の発展のために多少の犠牲は仕方ない」「環境破壊は問題だ」と意見が分かれた。意見が分かれたのは日本人でも同じ。僕らが考えていることが伝わったことが嬉しかったし、仲良くなれて本当に良かった。一言で言えば、すごく楽しかった。結論まで辿りつかなかったのは残念だったが、中国人学生の三峡ダムに対する考え方がわかった気がした。
 正直に言うと、中国に来るまで、中国に対して良いイメージはなかった。けれども中国では皆、本当に親切にしてくれて、とてもありがたかった。これから会った中国人に、それを返していかなければならないなと思った。
 また、英語をもっと流暢に喋れたら、もっと楽しかっただろうと普段よりも強く感じた。ディティールをもっと議論できたら、もっと相手も本音を言ってくれ、もっと良い話ができたと思う。そう実感できたことが、今回大きいのだと思う。仮に言葉の壁がなければ、中国のあり方や彼らが描く将来像を、若い彼らに聞きたかった。
 本実習を通じて、中国に対するイメージが大きく変わり、中国への興味が湧いた。そして、日本がこれまで辿ってきたであろう道を、大規模な形で、中国で見ることができた。普段は研究室の中におり、どうしても腰が重くなりがちだが、本実習を通じて、知らないことを知り、考え方のひとつが変わった。もっともっと広い目で見ることができるようになったと思う。もちろん頭ではそうやってきたつもりだったが、今思えば、やっていなかったに等しい。そう思えるものを中国という国から感じ、大きな刺激があった実習だった。

◆ 持続可能なアプローチは金ではなく人 / Hernando Bacosaさん(環境科学研究科)

【写真】ヘルナンドさん

 環境問題に対する対策には様々なアプローチがあり、例えば工学的なアプローチはお金をかけることで早くて効果的だが、お金がなくなればストップしてしまう。一方で、市民参加は(効果が出るまでに)時間はかかるが、行動や習慣の変化につながるため、お金がなくても、持続可能なアプローチだと思う。政府と市民、それぞれに役割があるはずで、どちらも大切だ。
 東南大学の学生らとのディスカッションでは、日本人も中国人も「市民参加が一番大切」との考えだった。環境問題の解決は、政府や法律、企業だけでなく、市民参加をより促すことが重要だと思う。しかし中国では、NGOやNPOなどの市民活動が政府によって厳しく抑制されている上に、中国人学生の中には「環境問題の解決は、政府がやるのが一番だ」という意見もあった。中国ではそのように考えている人も多いのが現状ではなかろうか。
 とは言え、今回のディスカッションで学んだことは、国際交流が環境問題に対する重要なアプローチになるということ。例えば、アジアの学生同士、技術や経験を持つ先進国とこれから発展する国とで、意見交換する機会がもっとあれば良い。交流すれば「そうなんだ」と納得できることも、交流しなければ差別が生まれる。学生の時はこれまでの歴史もあまり関係なく交流ができるし、後々偉くなった時にまた交流できる。
 このPEMプログラムに参加することによって、専門以外の経験をすることができ、環境に対する深い興味が湧いた。自国の環境を守るため、祖国であるフィリピンに何ができるのだろうと常々思いながら、いろいろなものを見ることができた。東南アジアなど、これから発展する国の学生たちにも、是非PEMへの参加を勧めたい。

◆ 問題の難しさ改めて認識 / 尾﨑洋史さん(生命科学研究科)

【写真】尾﨑さん

 実際に三峡ダムを見学することができて良かった。三峡ダムについて事前にいろいろ調べて頭では知っていたが、環境に良いか悪いかは別にして、そのスケールに圧倒された。そして、人間が快適に過ごすうえで、治水・利水という利を得るためには多少の環境破壊も仕方ないとも感じた。中国人だって環境を破壊しようと思って環境を破壊しているわけではない。環境のことを考えていないわけではないことは、評価すべきポイントだと思う。
 日本のダムだって昔、全く環境のことを考えていない時もあっただろう。環境破壊は、フェーズとして通過儀礼のようなもの。むしろ、チョウザメ研究所やカワイルカ保護区等の取組みは、日本が辿った道よりもマシなのではとさえ感じた。
 日本のレベルで中国を考えても仕方ない。相手の中で最善を尽くしているなら、それで良いのではないか。貧富の差や教育制度など、中国と日本の違いを考えるときりがなく、日本と比較しても仕方ない。とは言え、愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。他の国で失敗している例も学んだ方が良いのではないかとも思う。今回の実習を通じて、やはり難しい問題だと改めて認識した。

◆ リーダーシップを意識したことが収穫 / 津田真樹さん(生命科学研究科)

【写真】津田さん

 東南大学との学生らとのディスカッションで、オーガナイザー役としてグループワークをリードしたことが今回、最も勉強になった。グループワークは、多様な人との交わりの中で新しいものが生まれる思考をテンポ良く進める手法。これまでPEMで学んだことを、見様見真似で行った。その中で、リーダーというものを意識したことが一番の収穫だった。リーダーの言葉通り、能力よりも、「前に進もう」という意志を持っているかどうかが大切なのだと思う。

◆英語のコミュニケーションに自信 / 荒井重行さん(工学研究科、三菱マテリアル株式会社)

【写真】荒井さん

 国際フィールド実習での東南大学学生とのディスカッションをはじめ、本GCOEでは、国際学会での発表など、英語によるコミュニケーションの機会を数多くいただいた。これからは会社でも英語によるコミュニケーションが求められる。以前は、英語が苦手で外国人から逃げていたけれども、拙くても、外国人と向き合って話ができるようになれたことから、将来、国際的な場に立っても、なんとかできるという自信につながったと思う.

◆ 百聞は一見に如かず /坂本裕紀さん(生命科学研究科)

【写真】坂本さん

 本実習を通じて最も実感したことは、直接見たり聞いたりすることに勝る勉強はない、ということ。もちろん事前に勉強することも重要だが、現地の人の話を聞くことも重要。どちらも重要で、どちらかが欠けても駄目だと感じた。インターネット等はもちろん利用はするし、情報は簡単に手に入る。しかし、それで知ったつもりになっていたと痛感した。フラットな視点を心がけてきたはずなのに、気づかぬうちにフィルターがかかっていた。
 中国は「すごい」、と目で見て肌身で感じた。とにかくすごい、でかい、これから伸びる。中国の一挙手一投足、国際的な注目を集めるようになるだろう。同時に深刻な問題も抱えている。中国への興味は、これまで以上に湧いた。
 中国経済がものすごいスピードで成長する一方で、日本経済は衰退を始めてきている。そのうち中国は発言力を強めてアジア1位となるだろう。中国から強い負の要求をされたとき、果たして日本はNOと言えるのだろうか。これまでの日本は経済大国だったから、発言が下手でも大目に見てもらえた。けれども、日本がこれから経済に強くこだわるのは難しい。これまでとは別の戦略で国際的な立ち位置を強くつくっていかなければならない。
 中国に経済成長では抜かれたものの、日本はアジアの中で唯一長老的な立場ではないか。成長しそれなりの立場を経て衰退を始めている日本だからこそ言えることがあると思う。中国と同じように張り合うのではなく、お金はなくても皆に尊敬されるような、国際的な立ち位置で発言権を強めるしかない。要求することは要求してNOはNOと言うだけの立ち位置をつくると同時に、やはりお互いの国への尊敬がないと駄目だと今回強く思った。やっぱり人と人とのつながりで、人があっての国だから。
 これから研究者を志すにあたり、世の中の動きを研究分野に関わらず、もっと見ていく必要がある。中国に限らず、そこでしか感じられないものがあるにせよ、もっと視野を広げていかなければならないと感じた。本実習前までは正直、専門外で面倒くさいと思っていたが、実際に来てみたら、環境問題だけでなく政治や経済など幅広くおもしろかったし、日本と関係なくはなかった。単に知識として知っているだけでなく、実感としてつながっていることに憧れる。多少はバランスのとれた見方もできるようになったと感じている。

◆ これからの自分の生き方は / 木村幹子さん(生命科学研究科)

【写真】木村さん

 中国はこれから発展する強みを活かし、(環境を破壊した)昔の日本と同じ道を辿らずに発展できる良い方法はないのだろうか、というのが自分のテーマだった。本実習では中国の国家プロジェクトなどを多く見てきたが、中国も起きている問題に対しては国家レベルで先を見据え、良く考えているのだなと感じた。
 このように来る前には見えなかったところが見えたところもあるが、一方で農村部など、見えていないところがあることにも気が付いた。実際に見てみなければわからないことを痛感したからこそ、もっと見てみたかったという思いが強い。今回はオーガナイズしてもらったが、自分で何かしようと思った時は自ら計画を立てて行かなければならないだろう。このほか政治も見てみたい。本実習を通じて、それらの事柄についても興味が湧いた。
 これまで研究者として、学術的な真理を目指そうとする一方で、この研究が実際に世の中を動かす力になるのか常に疑問に感じながら研究をしてきた。純粋科学として最先端を目指す道だけでなく、農業や環境工学、あるいは起業などの道もある。どちらも重要だが、自分のモチベーションや性格を考えると、現場で起こっている問題を考えて行動していくことの方が、自分の生き方としては向いているのではないかと最近思い始めていた。今回の実習を通じて、そのような思いがとても強くなった。

※早坂さんと平瀬さんのインタビューはこちら(早坂さんインタビュー平瀬さんインタビュー)をご覧ください。

◆ 互いに尊敬の念持つこと前提/西村修さん(工学研究科教授、本実習コーディネーター)

【写真】西村さん

 中国人も日本人も同じ人間。日本と中国、先進国と発展途上国という関係でなく、人間と人間の交流が大切だ。相手のことを理解すると興味が湧き、自分のことも理解してもらいたくなる。お互いに尊敬の念を持つことが大切だ。
 共同研究をする時も、あるいは環境問題などグローバルな問題を議論する時も、お互いに尊敬の念を持っていなければ、一緒にやることはできない。逆に言えば、その後のことはやろうと思えばいくらでもやれる。そう簡単に意見は合わないもの。日本人同士でさえそうなのだから、考え方や文化、伝統が違えば尚更だ。今回の実習では、学問的なところは少ないものの、そのようなことを学生の皆さんには一番伝えたい。
 嫌いなものは大切にできない。しかし好きになれば大切にできる。これは、環境保護や生物多様性の考え方にもつながる。考え方やルール、習慣の違いをお互い理解していれば、あまり腹も立たない。それは、まさに多様性を認めるということだ。
 経済発展は人のため。しかしながら、経済発展が未来永劫続くわけではない。おそらく経済発展のために何か新しい問題が起こるだろう。これから中国は、世界に強いインパクトを与える、特に大切な国になる。経済は競争だが、環境はそうではない。その時に日本が手伝ってあげることができれば、中国と良い関係を築くことができるだろう。
 地球規模の環境問題では、日本が果たす役割も大きいと思う。環境を大切にしてきた日本独自のDNAを発揮し、学生の皆さんには地球レベルでものを考えることを期待している。また今回の実習は、いろいろな先生方との関係で成り立っている。次の時代を担う学生の皆さんには、そのまた次の世代にそれをお返ししてほしい。将来像を描きづらい今、次の世代を意識し、その次の世代が生態サービスを享受できるよう、リーダーとして将来像をイメージしながら、激変する環境に対応できる人間になってもらいたい。

◆研究とのつながり実感持って/中静透さん(生命科学研究科教授、本GCOE拠点リーダー)

【写真】写真左が中静さん

 国際フィールド実習の目的は3つ。一つ目は、現場でものを見ること。二つ目は、いろいろな立場の人の話を聞くこと。三つ目はそれらを問題解決していくこと。普段の研究生活では、そのようなことと接する機会が少ないため、それらを感じて、自分がやっている研究がどのようなことに結びつくのか、学生らには本実習を通じて実感を持ってほしい。このような本実習の目的を参加者が良く理解してくれていて嬉しく思った。



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