3.東南大学(南京)の学生たちとのディスカッション
19日(日)に行われる東南大学(江蘇省南京市)の学生たちとのディスカッションに向け、学生らは今回の見学地である「太湖」と「三峡ダム」をテーマに二つのグループに分かれ、プレゼンテーションや議題の準備を進めてきました。ディスカッションを目前に控え、学生らは空き時間を利用し、ホテルやカフェで熱心に打合せを繰り返していました。
【写真】東南大学の学生らとのディスカッションに備えて熱心に打合せする学生ら
そして18日(土)午後、一行は西安市を経ち、国内線で東南大学のある江蘇省南京市へ到着。同大学教授の李先寧さん(ご専門は水処理と水環境修復)と学生らと面会しました。その夜は歓迎会が開かれ、一行は江蘇料理に舌鼓を打ちながら、親睦を深めました。
【左写真】中国式乾杯。乾杯の文字通り、中国では基本的に全部飲み干すのが礼儀。
【右写真】江蘇料理。中央の魚はチョウザメ。
その夜は同大学のゲストハウス「榴園賓館」に宿泊し、翌日の19日(日)は、朝から三つの講義を受けました。まずは南京市環境保護局副局長の包洪新さん、次に中国科学院南京地理及び湖沼研究所教授の劉正文さん、そして江蘇省環境科学研究院科技実業会社主任の鄒敏さんが、行政・研究者・企業のそれぞれ異なる立場から、環境に対する取組みについて講演しました。
【左写真】南京市環境保護局副局長の包洪新さんによる講演「南京市における環境保護対策」
【中央写真】中国科学院南京地理及び湖沼研究所教授の劉正文さんによる講演「富栄養化湖沼の生態修復」
【右写真】江蘇省環境科学研究院科技実業会社主任の鄒敏さんによる講演「江蘇省の環境産業について」
講義後は、各大学の学生らによるプレゼンテーションが行われました。まずは東南大学の学生代表者5名が、それぞれ環境問題に対する考えや研究内容について発表しました。
【写真】東南大学の学生によるプレゼンテーションのようす
続いて東北大学の学生らが、「太湖」と「三峡ダム」をテーマに2つのグループに分かれ、それぞれプレゼンテーションを行い、東南大学の学生らに問題提起を行いました。
【写真】東北大学の学生によるプレゼンテーション(「太湖」グループ)
【写真】東北大学の学生によるプレゼンテーション(「三峡ダム」グループ)
発表後、「太湖」と「三峡ダム」をテーマに二つのグループに分かれ、東南大学の学生らとディスカッションを行いました。予定時間を大きく越えた活発な議論となりました。
【写真】東南大学の学生らとのディスカッションのようす(「太湖」グループ)
【写真】東南大学の学生らとのディスカッションのようす(「三峡ダム」グループ)
【写真】東南大学にて集合写真
集合写真の撮影後も、会場に戻った学生らは、南京大学の学生らと活発な議論を続けていました。その後、会場を移して、交流会が開かれました。
【左写真】ディスカッション後の交流会のようす
【右写真】メモ片手にお互いの話を聞いたり、一緒に記念撮影をするなどして、和気藹々とした雰囲気の中、交流を深めていた。
昨日は互いに緊張した面持ちだった学生らでしたが、議論を共にした後の交流会では、メモ片手にお互いの話を聞いたり、一緒に記念撮影するなどして、和気藹々とした雰囲気の中、交流を深めていました。
【写真】東南大学の学生らと記念撮影①
【写真】東南大学の学生らと記念撮影②
※ディスカッション概要については、東北大学「生態適応グローバルCOE」の報告ページでご覧下さい。
【学生インタビュー③】ディスカッションを終えて
ディスカッション後、学生らが率直に感じたことについて、インタビューしました。
◆ Japanese students are friendly and kind / Sheng Yi さん
【写真】Sheng Yiさん(写真右) (太湖グループ)
―What did you think of discussion with Japanese student?
Very interesting! They're friendly and kind, Open-mind. It's a very wonderful experience for me!
―Did you learn something new?
The culture of Japan and the difference mind between Japanese and Chinese. They're hard working,団結(←Chinese),友愛(←Chinese). And I have never saw Three Gorges Dam before, so the describing of Japanese students increased my knowledge and impressed me.
―Do you have a message for Japanese students?
Welcome to China again!
―Thank you very much.
◆ Japanese students cooperate with each other very well / Linyoug Yu さん
【写真】Linyoug Yuさん (三峡ダムグループ)
―What did you think of discussion with Japanese student?
Very happy! I'm glad to communicate with Japanese students. The topic is good.
―Did you learn something new?
I think the Japanese students cooperate with each other very well. Every group member prepare materials for the same topic.
―Do you have a message for Japanese students?
I hope they will come China again.
―Thank you very much.
◆The differences among us provided us many special methods. / Chen Mingさん
【写真】Chen Mingさん (三峡ダムグループ)
―What did you think of discussion with Japanese student?
By exchanging opinions with Japanese students, I widen my horizon and learned their attitudes about Chinese environment problems. Meanwhile, they also provided some news of contribution. The differences among us provided us many special methods of studying and thinking.
―Did you learn something new?
I learned Japanese student's idea about Chinese environment issues. They are more active and originative, which supplied us good examples.
―Do you have a message for Japanese students?
I want to learn more about Japan, which can promote the understanding and eliminate the misperception.
―Thank you very much.
◆ 価値観に違いないこと意外だった / 手塚あゆみ さん(生命科学研究科)
【写真】手前中央が手塚さん(三峡ダムグループ)
三峡ダムは「国家の威信をかけた中国人の誇り」と聞いていたが、東南大学の学生らは三峡ダム自体を知らないようだった。三峡ダムのポジティブな側面とネガティブな側面についてお互いの考えを出し合ったが、中国人の学生たちはその両面の意見を出してくれ、議論にとても協力的だった。しかし、解決策はなかなか見つからなかった。(三峡ダムのポジティブな側面とネガティブな側面について)どちらが大切とも言えないし、部分的にはそう言えても、全体ではそう言えないこともある。
中国人学生の環境に対する価値観は、私たち日本人学生との違いを感じなかったことが意外だった。日本で報道などから受ける中国人とのイメージとはかけ離れていた。中国に漠然と悪いイメージがありやや警戒もしていたが、それは誤解だったと思った。もちろん現地で驚くこともあったが、慣れれば「そんなものかな」と思った。むしろ普段あまり聞く機会のない環境工学の人と話すことができて勉強になった。その一方で新たに生まれた疑問としては、今回議論した学生たちの価値観は中国では一般的なのかそれとも一部なのか、それを知りたいと思った。
議論自体は、つくった言葉ではなく、本当に楽しかった。その一方で、言葉の壁も感じた。言葉の壁がなければ、議論はもっと楽しいものになっただろう。
◆ 中国人も日本人も問題意識は同じ /早坂瞬さん(農学研究科)
【写真】早坂さん(太湖グループ)
「太湖を綺麗にするために、自分たちは何ができるだろうか?」がディスカッションのテーマ。「太湖という環境において、最も重要だと思うステークホルダー(利害関係者)は誰か?」という問いでは、「市民が一番大切」という意見が中国人も日本人も多く、環境に対する問題意識は意外と同じなのだと思った。社会システムは違っても、やはり人は人。中国人も日本人も、普段の生活では同じように感じるのだなと納得した。
もし中国人と日本人で違いがあるとすれば、それを解決するためのプロセスが違うのかもしれないと感じた。ステークホルダーに「農民」を挙げた人は双方にいたが、中国人は税金免除など政府側の補償を期待する意見が多かったのに対し、日本人は個人単位の農業ではなくグループ農業のような助け合いをする方法などを挙げていた。この違いは社会システムというより、もっと根本にある主義や思想、民族性の違いによるものかもしれない。
ただ、お互いに言葉の壁があり、ディスカッションでは自分の言いたいことがなかなか伝わらなかったことがとても残念だった。
◆ 問題意識の共有が解決への第一歩 /平瀬祥太郎さん(農学研究科)
【写真】平瀬さん(太湖グループ)
中国人学生と中国の環境問題について意識を共有できたことが良かった。中国の人は自国の環境問題について深刻に考えているが、彼らは「経済成長のフェーズが日本と中国では違う。我々は発展途上だから、しんどい問題だ」と言っていたし、僕もそうだと思った。
その状況を知った上で、(一度壊した環境は)もとに戻すことが難しいことも僕らは知っている。だからこそお互いの国の人のことを考えて問題意識を共有することが、環境問題を解決するための第一歩だと思う。そうでないと何も始まらないし、否定するために僕らは来たのではない。環境問題を真剣に考えているのに、それでお互いの仲が悪くなったら嫌だと思う。
個人的な感想としては、大学4年生の頃、中国に来た時よりもコミュニケーションをとれるようになったと感じた。今回は日本を代表してお金をもらって来ているし、僕らが日本の顔になる。その自覚があるせいかもしれない。
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