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2020年 10月 24日 (土)

IoT・AIのキーデバイス「MEMS」の世界的権威 江刺正喜さん(東北大学名誉教授)に聞く:科学って、そもそもなんだろう? 取材・写真・文/大草芳江

2020年6月1日公開(2014年4月取材・2020年5月追加取材)

役に立っていることに
誇りと喜びを感じられる生き方

江刺 正喜 Masayoshi Esashi
(東北大学 名誉教授)

 1949年仙台市生まれ。1971年東北大学工学部電子工学科卒。1976年同大学院博士課程修了。同年より東北大学工学部助手、1981年助教授、1990年より教授となり、2013年定年退職。現在 ㈱メムス・コア CTO兼 東北大学 マイクロシステム融合研究開発センターリサーチフェロー。半導体センサ、マイクロシステム、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の研究に従事。紫綬褒章(2006年)、IEEE Andrew S.Grove Award (2015)、IEEE Andrew Jun-ichi Nishizawa medal (2016)他を受賞。

IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、自動運転といった、
現在実用化が進む技術を支えるキーデバイスのひとつが、
「MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)」
と呼ばれる技術でつくられるセンサである。

MEMSとは、半導体微細加工技術を応用して、情報処理を行う電子回路だけでなく、
入力に用いられるセンサや出力に用いられるアクチュエータ、
あるいは微細構造体なども一体化したシステムである。

小型でも高度な機能を持ち、音や磁力、圧力や光といった
自然界のさまざまな現象を検知するセンサとして、
私たちの身のまわりから産業界まであらゆるところで役に立っている。

そんなMEMS研究の世界的権威である江刺正喜さん(東北大学名誉教授)に、
MEMSとは何かから、MEMSが切り拓く未来の世界、さらには研究スタンスまで聞いた。

※ 紙媒体版「宮城の新聞」(2014年夏号、全仙台市立中学校約3万部発行)の特集「ものづくりコンテスト世界大会が仙台にやってくる!~世界をより豊かにするアイディアとは?~」の巻頭記事「MEMSの世界的権威・江刺正喜さん(東北大学教授)に聞く」を再編集して公開しました。

◆ そもそもMEMSとは?

― そもそもMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)とは何ですか?

 スマートフォンに代表されるように、我々の身のまわりの電子機器はどんどん進歩していますよね。「スマートフォンがガラケイを破壊し、パソコンを破壊し、デジカメを破壊し、カーナビを破壊し、ゲーム機を破壊した」と表現する人がいるくらい、スマートフォンひとつで全部済むようになっちゃった。今、若い人たちが一日中スマホを見ているのは問題だとは思うけど、ある意味では、それくらい魅力的ということだよね。

【図1】LSIの集積度は30年で100万倍に

 そんな世界は、LSI(大規模半導体集積回路)の異常とも言える飛躍的な進歩によってつくられました。10年で100倍の進歩がもう60年以上も続いています(図1)。LSIの他にも通信容量や記憶(メモリ)技術なども皆そんなペースで進歩しています。

 LSIをつくる技術は、「シリコンウェーハ」(高純度のシリコンから切り出された円形の薄い板)という板の上に「トランジスタ」(電気的にON/OFFをコントロールできるスイッチのようなデバイス)をいっぺんに並べてつくる技術(半導体微細加工技術)です。その数は直径30cmの板に約一兆個。(わずか数ミリ角の)チップ(シリコンウェーハを小さく切り離したもの)の上に数十~百億個のトランジスタをいっぺんにつくるのです。そのためにすごく複雑なことができるわけです。その代わり設備投資や開発費にものすごくお金がかかるのね。

 LSIを人間で例えれば、情報処理をする場所なので、頭脳に当たります。けれども人間が脳みそだけで動いているわけではないように、目や鼻などの感覚器に相当する入力部分のセンサや、喋べったり体を動かしたりする出力部分のアクチュエータも重要ですよね。特に最近は、頭脳よりも入口や出口の方がシステム上ネックになっています。例えばスマホも「手でなぞると画面が動く」とか「傾けると画面が変わる」とか、皆そうなっているでしょう?そういった入口・出口の楽しさをもたらすのは、半導体と同じような技術でつくる「MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)」という部品なのです。

【図2】半導体微細加工技術を用いて作成されたギア(左下)とダニ(右上)の電子顕微鏡写真。(サンディア国立研究所 SUMMiTTM Technologies の好意による www.mems.sandia.gov)

 MEMSの技術は、普通のトランジスタをつくるのではなく、感じるセンサや動くアクチュエータなども一緒に入れてつくる点に特徴があります。トランジスタを100億個もいっぺんにつくれてしまう半導体微細加工技術のおもしろさを活かし、センサやアクチュエータなども100万個いっぺんにつくることができるので、それを動かすための回路やトランジスタも一緒につくるわけです(図2)。そんな世界が今どんどん進歩しています。

 人間で言うと頭脳に当たる部分にはわりと共通性があって、トランジスタを組み合わせることによっていろいろなものを実現できます。一方でMEMSの技術は、例えば人間の感覚器も目や鼻の形がまちまちなように、多様性があるために共通化(標準化)が難しく、なかなかつくりにくい面もあります。それでもMEMSの技術はとても重要な役割を果たしているのですよ。

― MEMSは、特にどのような場面で重要な役割を果たしているのですか?

 MEMSは、特に通信技術や情報処理技術と結びついて役立っています。例えば、スマホに内蔵されている「シリコンマイク※1」というセンサに話しかけると、音声認識で人間が何をやって欲しいかをスマホが理解したり、翻訳してくれたりするようになりましたね。シリコンマイクには通信機能が付いていて、その情報をネットワークでクラウドに送り、いろいろなコンピュータを使って、そんな仕事をあっという間にしてくれているわけです。このように通信や情報処理の技術とMEMSセンサが一緒に役立って、いろいろ面白いことをやってくれています。センサと通信や情報処理で判断すると、大情報量も怖くないですよね。今はそんな世界なのですよ。

※1 携帯情報機器で複数使われているマイクロフォンはMEMSによるシリコンマイクロフォンである。これは、電話のために音声を入力する指向性マイクロフォンや、周辺の音を検知して雑音を除去する無指向性マイクロフォン、ビデオ画像撮影の時に高品質の音を録音する高性能マイクロフォンなどである。音声認識では、認識率を上げるのに雑音が少ないことが要求されるため、マイクロフォンには電話の会話の2倍以上の高性能が求められる。


◆ 自動車とともに発展してきたMEMS

【図3】リーンバーンエンジンに用いる各種センサ(トヨタ自動車)

― スマホ以外では、MEMSは何に使われていますか?

 MEMSの技術は、自動車に使われて発達してきました。1980年代から始まった自動車の排気ガス規制に対応するために用いられた「圧力センサ」は、MEMSの技術を用いてつくられました(図3)。山を登ると空気が薄くなりますが、(気圧の低下を圧力センサで検知し、それに合わせて)燃料も減らせば不完全燃焼せずに済みますよね。昔は日本でも大気汚染問題が深刻でしたが、そのような技術のおかげで排気ガスの問題が少なくなったわけです。

【図4】衝突時の衝撃を加速度センサが検知した瞬間、車体内部に搭載されているガス噴出機に点火してエアバックにガスが送られる。

 1990年頃から、事後が起きた際の被害を軽減するための「パッシブセーフティ(受動安全)技術」として自動車にエアバックが搭載されました。衝突時の衝撃を「加速度センサ」(単位時間あたりの速度の変化率を計測するセンサ)で検知し、即時エアバックを作動させる仕組みです(図4)。そのような技術や救急医療の進歩、警察など、皆の努力のおかげで自動車事故によって亡くなる人は50年前より少なくなっています(1970年:1万6765人、現在:約3,000人)。

【図5】ジャイロセンサを用いて自動車の横すべりを予防(トヨタ自動車)

 2000年頃からは、我々も関わったのですが、「ジャイロセンサ(角速度センサ)」(基準軸に対して1秒間に角度が何度変化しているかを計測するセンサ)など、さらに高級なセンサが自動車に搭載されるようになりました(図5)。ジャイロは車体のスピンを検出するセンサで、これによって車の異常なスピンを検出します。また同時に加速度センサで車の横滑りを検出できるようになっています。昔の車はスピンや横滑りをしましたが、今の車は安全に制御して「走行安定性」が向上し、運転手の思った通りに動いてくれるようになったわけです。このように、事故などの異常を未然に防ぐ技術を「アクティブセーフティ(能動安全)」と言います。

 2010年頃からは自動車に「プリクラッシュセーフティ」が搭載されるようになりました。自動車にレーダーやテレビカメラが搭載されていて、前方に車や障害物を見つけると衝突する前に止まる機能です。さらに今後新しく登場する自動車には通信機能が搭載されて、例えば、人間には見えなくとも向こうから自動車が来ていることをお互いに電波で連絡し合って、出会い頭の事故を未然に防げるようになるでしょう。

 その他、「ヘッドアップディスプレイ」や「ウインドシールドディスプレイ」といいますが、自動車のフロントガラスに情報が表示される技術も実用化されています。そのような技術がどんどん自動車に入っています。

 自動車の例で言いましたが、もちろん言うまでもなく、スマホを始めとするいろいろなものが同じようにどんどん進化しています。


◆ 思いっきり高機能なことができるおもしろさ

― 江刺先生たちの研究内容について、もう少しご紹介いただけますか?

【図6】テレビの使われてないチャネルを用いたコグニティブ無線

 スマホの例で言うと、2011年の東日本大震災の時、肝心な時に使えませんでしたよね。無線通信のトラフィック(通信量)は、スマホなどを使う人が増えるにつれ、毎年約2倍の勢いで増えています。すると10年後は、2の10乗で1,000倍にまで増えるわけですね。電波帯を上手に使わなければ通信が混雑し、災害時に通信できなくなってしまいます。そこで、複数の無線方式を利用できるようにしておき、通信の混雑状況を把握して最適な無線方式を選ぶ「コグニティブ無線」の研究に、MEMSの技術を用いて取り組んでいます。テレビのチャネルは仙台の場合、図6の赤色で示す電波帯しか使っていません。空いているチャネルを災害時に使うことで、より安全になるでしょう。そのための高機能な部品をMEMSでつくっています。小さくつくらなければ、高度な機能でもスマホに入らないですからね。そのようなものをつくるのにもMEMSは役に立っています。

 また、トヨタ自動車と共同で「触覚センサネットワーク」の研究も行っています。例えば、高齢者が増えて病院などで介護して欲しいと思っても、他の人に頼むのはちょっと遠慮するじゃない。そこでロボットに助けてもらいたいと思うけど、ロボットはまだ賢くないところがあって、具体的には、ロボットはぶつかっても感覚がないから危ないわけですね。ロボットが接触したことをリアルタイムで認識できるようになれば、そばで助けてくれる介護ロボットもできるでしょう?そんな触覚センサネットワークをつくっています。

【図7】共通2線式触覚センサアレイ(ポーリング型)(1990年)


【図8】人と接触する安全なロボット用の触覚センサネットワーク(イベントドリブン、割込型)


 それで面白いのはね、30年前(1990年)に、村田製作所の方が来て、同じような目的のものをつくったのです(図7)。当時は2本の共通線にぶらさげた複数の触覚センサを一個ずつ呼び出し、そこでぶつかっているかどうかを順次調べる方式(ポーリング型)でした。けれども、あまりたくさんセンサを並べると時間がかかるので、これでは役に立たないと思っていたのね。

 けれども、人間の体はぶつかればすぐ感じて動くでしょう?人間の皮膚の触覚と同じように、どの場所のセンサがどのような力を感じたかを即時に検知して動ければいいと思ったのね(イベントドリブン、割込型)。幸いなことに今は集積回路やトランジスタがひとつのチップの中に約100億個入るから、昔はできなかったイベントドリブン方式が今ならできるわけです。ぶつかれば即わかる、本当に役立つシステムをつくろうと研究しています(図8)。

 こんな風にたくさん安くつくれて、トランジスタもいっぱい入って小型で、思いっきり高機能なことができるおもしろさが、この世界にはあるので、楽しいんですよ(笑)。


◆ 「おたくあがり」で趣味がそのまま仕事に

― 江刺先生がMEMS研究の道に進んだ経緯を教えてください。

 僕は自分のことを「おたくあがり」って言っているんだけどね。「おたく崩れ」と言ってもいいかもしれないけど(笑)。趣味の世界から、そのまんま仕事になっているんですよ。

 高校生の頃はアマチュア無線に夢中で、資格を取ったり、真空管の回路をつくったりしてました。小さな頃は東北大学の近くに住んでいたから、キャンパスでよく遊んでいてね。大学祭にも潜り込んで、南極観測船「宗谷」や黒四ダムの映画を楽しみに見ていたの。

 その延長で、そのまま東北大学に入学したんだけどね。それで工学部の電気系に入って、「メディカル・エレクトロニクス」という、医療用の電子工学が専門の研究室に入ってね。そしたら、趣味でやっている回路技術がすごく活かせてさ。皆の手伝いをすると、すごく喜んでもらえてね。例えば、西澤潤一先生とかにわかられて、「よかったら、ドクター(大学院博士課程)に残って、うちの実験室を使わない?」と言われてね。別の研究室だったけど、頼まれていることをこなすうちに自分の勉強にもなるし、拓けていくこともあってさ。音楽家やスポーツ選手って、だいたい趣味の延長でそのまま仕事になっているじゃない。僕もそれと似ていて、おたくあがりなんですよ(笑)。

 高校生に教える機会もあるのだけど、皆すごく喜んでさ、それで教えた高校生がうちの研究室に二人くらい入ったりしてね。機会をつくれば、そんな世界も拓けて、皆楽しくやってくれるんじゃないかと思ってね。ただ残念なことに、昔は僕らがラジオをつくったら、売っているものと似たようなものができて感激を味わったけど、今は売っているものがあまりにも立派だから、なかなか感動は味わえないかもしれないね。

 けれども今なら今で、スマホのアプリをつくって役に立ったとか、より発展した段階で自分の興味を活かす方法はあると思うんだよね。そうやって役立つ人間になってほしいと思うんです。将来は、せっかくできた高度な機械を使いこなす人になって、さらに発展してもらわないとダメなわけだから。


◆ 進み過ぎてしまった技術を、如何に使えるようにするか

 LSIは高度化して、つくるのにめちゃくちゃお金がかかるようになっています。今は、そんな中で如何に新しいものをつくっていくかに興味を持っているのです。例えば、3Dプリンタでオリジナルの人形やプラモデルをつくれるようになったように、昔はできなかったことが、今はDIY(Do It Yourself)でできるようになったこともあります。コンピュータがあるから、それが可能になったわけね。

【図9】半導体集積回路(LSI)

 そこで今、「超並列電子線描画装置」を開発しています。先程、LSIをつくる時、トランジスタがたくさん入ったものがいっぺんにつくれるとお話しましたね。ガラスの板の上にトランジスタの形状を描いておき、光を照射して一括転写してつくる技術(フォトリソグラフィー)ですが(図9)、実は、そのフォトマスクという原版が何億円もするのね。一方、(チップを実装した)集積回路(IC)自体は100円程度で売っていますよね?携帯電話に何個も入っているわけだから。すると、よほど数が出る時だけそんな技術が成り立って、数が出ないと途端にできなくなるわけです。

【図10】超並列電子線描写装置の開発

 そこでLSIも、3Dプリンタのように工作機械を使わずにコンピュータから直接つくれる「デジタルファブリケーション(デジタル製造技術)」へ持っていこうというのが僕らの考え方です。電子ビームを100×100の計1万本出るようにしておき、その後ろにLSIをつけ、電子ビームで直接描写しLSIのパターンを形成する「マスクレス描画」と呼ばれる方法です。皆が使うスマホもテレビも今は後ろに(画素ごとに)皆トランジスタが付いて(選択した画素ごとに信号のオン・オフを制御して)いるのね(アクティブ・マトリックス)。4Kなら800万個くらいかな。それと同じようにコンピュータでコントロールして、テレビなら光を出すわけですが、こっちは電子を出して直接LSIをつくる装置を開発しています※2(図10)。

※2 江刺正喜、宮口裕、小島明、池上尚克、越田信義、菅田正徳、大井英之, 「超並列電子ビーム描画装置の開発-集積回路のデジタルファブリケーションを目指して-」, 東北大学出版会 (2018)

 それから、そのマスクだけあっても、LSIやMEMSをつくる工場にもすごくお金がかかるわけね。それで今どうなっているかと言うと、日本で半導体をつくる工場がだんだんなくなっちゃって、例えば、台湾で世界中のものを一括してつくるようになるなど、どんどん変わっています。

【図11】会社が来て使う試作コインランドリ(東北大学マイクロシステム融合研究開発センター)

 試作設備にお金がかかるので、昔の設備とか、要らなくなった装置を集めて、設備を持っていない会社でも開発できるように、「試作コインランドリ」というオープンアクセス施設を、戸津君(東北大学マイクロシステム融合研究開発センター副センター長)を中心に運営しています(図11)。ここでつくられたデバイスを市販させてほしいとの要望に応え、東北大学が文部科学省や経済産業省と交渉し、2013年より製品製作が認められました。2019年末までのユーザは323機関 (企業267社)、毎月延べ800人ほどに使われ、独立採算に近い形で運営されています。またMEMS技術は様々な知識を必要とするため、医科にして多様な知識にアクセスするかが大きな課題です。会社の相談に乗り、無料セミナーなどを開催して知識提供に努めてきました。文献ファイルや関連する学会の予稿集などを整理し、探しやすくして利用いただいております。また4部屋の展示室(http://www.mu-sic.tohoku.ac.jp/nishizawa/)を整備し、サンプルなどを直接見ていただけるようにもしています。ぜひ多くの方や会社にお使いいただきたいと思います。

【図12】乗り合いウェハ

 あと、もうひとつは「乗り合いウェハ」といって、例えば台湾の工場に頼んで30cmのウェハをつくってもらうと何千万円もかかりますから、約16社乗り合いでウェハをつくる取り組みも行っています(図12)。それから、仙台市にある「MEMSコア」という会社で、本間孝治さんという人が中心となって、中古の設備で開発請負も行っています。これも先述の「試作コインランドリ」が利用できるのでやっていくことができます。

 このように、めちゃくちゃ進みすぎてしまった技術でも如何にして使えるようにするかが、僕らが今、最も力を入れていることです。おもしろいことはおもしろいけど、めちゃくちゃお金がかかるのじゃしょうがないからね。このようにいろいろ工夫しながら、微細化・高密度化した集積回路の経済性での行き詰まりを打破しようとしているわけです。

― 技術が「進み過ぎている」というのも大変なんですね。

 そうそう。おもしろいのはおもしろいのだけど(笑)。最初に話した通り、10年で100倍のものすごいペースで進歩しているからね。

 この前、東芝とサムスン電子の人が隣に座って「お互いに価値を下げ合っているよね」と言うんだよね。どちらの会社も半導体メーカーでフラッシュメモリをつくっているのだけど、お互いに向こうが安くつくったら、こっちはもっと安くと、競争しているわけね。つくる人は競争の中で大変な思いをしながら努力して、使う人だけがいい思いをしているわけね。アホらしいよね、と言っていました。

 だいたい、普通、こんなに速く進む技術はないですよ。自動車だって10年で100倍速くなれば、とっくに光の速さを超えていますからね。

― なぜ半導体業界だけ、そんなに進歩しているのでしょうか?

 米テキサス・インスツルメンツという世界的な半導体メーカーの社長さんが1963年頃に「将来、世界中の半導体は数社で供給するようになるだろう」と予言し、実際そうなっています。なぜ半世紀も前に予言できたかと言うと、この技術には変なところがあってね。先程、LSIはフォトマスクという原版を光で転写し一括してつくる、と説明したでしょう?それは、一個つくるのも一兆個つくるのも同じ手間ということを意味するんです。つまり、もともと数が増えてしまう宿命を負った(極端に大きな設備投資が必要な)技術なんですよ。半導体を使う人はそんなに有り難いとは思っていないかもしれないけど、そんなむちゃくちゃな中で恩恵を皆が受けているわけね。さらに20年後、若い人たちが働いてくれて、今までのペースで10年に100倍の割合で進歩すると、さらに1万倍技術が進歩したところでやることになるわけです。

― その進歩に、人間はついていけるのでしょうか?

 もちろん人間の能力はとっくに超えて、コンピュータで設計するわけね。コンピューティングの指数関数的な成長を書いた本には、コンピュータは2020年代にはネズミ一匹分の脳程度の能力を持ち、2030年代には人間一人分の脳を超え、2040年代には全人類の脳を超える、とありました。でも例えばGoogleなんか考えただけでも素晴らしいじゃないですか。キーワードを入れるだけで教えてくれるわけだから。


◆ 技術を役に立つ形にまでしていく

【図13】プライバシーを侵害しない熱画像による転倒見守(介護者用トイレ)


【図14】建物にMEMS加速度センサを取り付けた構造物ヘルスモニタリング(富士電機株式会社)。東日本大震災発生前と発生後及び耐震工事後の建物の固有振動数の変化

 山形のチノーという会社がつくった赤外線のイメージセンサを使った転倒見守りシステムの場合(図13)。普通のビデオカメラでトイレの中を監視したら問題ですよね。けれども赤外線のイメージセンサなら、人が倒れているシルエットはわかるけど見えないからプライバシーを守れます。

 図14は富士電機という会社が、建物に加速度センサを取り付けた結果です。東日本大震災の発生時、共振周波数を測ってみると、地震後に下がったと言うわけね。なぜかと言うと、共振周波数はバネの強さとおもりの重さで決まりますよね。このため地震後にバネが弱くなって、つまりは折れて共振周波数が下がり、それで耐震工事をしたら直って共振周波数が上がったという結果です。このように振動を測るセンサを建物や橋などに付けておけば、どこかに傷がついて壊れそうになった時にわかるようになり、事故を未然に防ぐことができます。今いろいろなインフラが傷んできて危ないと言われているけど、技術で解決できるでしょう?だからMEMSは安全にもとても役に立つのですよ。

 この前、あるお客さんが「安全はハードウェアで、安心はソフトウェアで」と言っていました。もちろんハードウェアがなければダメだけど、それによって得た知識で教えてくれたりするアプリケーションがないと、人間には役に立たないでしょう?ちょっとうまいアプリを考えて「何かおもしろい商売ができないかな」と考えている人はたくさんいると思うけど、ソフトウェアだけではアイデア勝負だけであまりおもしろくないし、ハードウェアだけでも生きないし。やっぱりソフトウェアとハードウェアの両方とも進歩して役に立つものができていく。卵が先か鶏が先かだけど、いろいろな形で技術を役に立つ形にまでしていくのです。

 それに、皆で外国の人たちとも協力し合って、いろいろな情報を教え合ったりしないと、人材が育たないよね。だから社会人向けにMEMSのセミナーを開いたり、MEMSデバイスの学生向けコンテスト「国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト(iCAN)」を運営したり、いろいろなことをやっているんですよ。仙台市はそれを一生懸命サポートしてくれてね。そんな感じで皆がんばっているわけです。


◆ できるだけ完成度の高い仕事を、ある程度リスクをかけられる場所でやる

― 進化しすぎた技術を皆が使えるようにして、さらに役に立つ形まで持っていくまで、新しい技術の開発から施設の整備、さらには人材育成まで、いろいろな面からトータルに取り組まれていることに感銘を受けました。

 あとは、いろいろ制度的な問題もあるでしょう?例えば宅配便だって昔は郵政省が独占していたのを、クロネコヤマトの社長さんが開放して効率的な方法を行ったために、今、皆がすごく便利な思いをしているわけですね。今だって既存のシステムを何処かで壊して新しいものをつくる時には、いつも障害があるわけだよね。だから、そういう風にやってみせて実際にうまくいくようにやれば、仕組みもどんどん変わり、社会も受け入れてくれるわけでしょう?皆が受け入れなければいけないし、仕組みとしても変わらないといけないし。いろいろなことがあって、とても大きな話なんですよ。

 そのためにはやっぱり見せないとね。「おもしろいでしょう?」って。できるだけ完成度の高い仕事を、ある程度リスクをかけられる場所でやるのが僕は大事だと思っているのね。会社って、完成度が高いことはできても、リスクをかけることってなかなかできないじゃない。逆に大学だと、ダメ元でいろいろやってみることはできても、論文で終われば役に立たないじゃない。やっぱりそれは改良して実際に使えるように如何にするかが大切なのですよ。

 ですから、ここ(東北大学マイクロシステム融合研究開発センター)について僕の考え方は、工場みたいな設備を抱えて、でもあまりお金をかけるわけにはいかないから、落ちている設備や装置を拾ってきて(譲ってもらって)、それで皆が安く使えるようにして、けれども、完成度の高いものをつくって見せられるよ。そうすれば、世の中に出ていくでしょう?だいたいここは幸いなことにちょうどよく半導体の工場が落ちていた(※3)わけですから(笑)。あと、もう会社の活動だけでは新しいことってなかなか出していけないでしょう?例えば、会社を辞めた人やベンチャー企業がファブレス(自前で生産設備を持たない)で新しいことをやれる場所も必要ですしね。我々の建物はモノづくりのベンチャー企業などにも利用されています。

※3 東北大学マイクロシステム融合研究開発センターは、西澤潤一元東北大学総長の半導体研究所を引き継いだもので、トーキンのパワートランジスタ工場が移設されていた。


◆ 科学技術で進んだ社会を、よりまともにするには科学技術しかない

― MEMSが切り拓く未来のイメージとは?

 誰かが俯瞰的にちゃんと見られるようにするのがいいよね。鳥の目で上から見ることも大事だし、だけど小さいところは見えないから、それは現場で虫の目で見る必要もあって。その両方が必要だけど、周りのことを見るのは皆やっているから、虫の目はよいとして、鳥の目ってなかなか持てないですよね。より多くのデータがあるほど情報が集まって正しい判断ができることにつながるでしょう。

 今だってデータが集まって利用されています。例えば、米ゼネラル・エレクトリック(GE)というトーマス・エジソンによって創業された会社は、昔は機械をつくっていましたが、最近はメンテナンス技術で儲けています。世界中で飛んでいるジェット機などのエンジンの情報を無線でGEのコンピュータに取り込み、そのデータを次の飛行機の設計やメンテナンスに活かしているのです。IBMも同様の方向に戦略が変わり、昔は大型コンピュータをつくっていたのが、今は環境ビジネスなどいろいろなことを請け負っています。日本のコマツという建設機械メーカーも、どの機械がどのような使われ方をしたかを情報管理することで経歴がわかるので、中古品が高く売れるビジネスにつながっています。自動販売機だって「ジュースがない」という情報も自動的に集まって配送しているわけでしょう?皆すべて採算が合う形で無駄なくやって、どんどんデータが集まっています。

 しかし一方で、農業や橋の劣化などの情報は必ずしも採算が合わないために、集まらないわけです。採算の合わないデータも集まるようになれば、危ないこともなくなるし、気象や地震の予知もより正確にできるようになるし、科学技術だって発達するわけですよね。ですから、今までは採算が合わなかったためにデータを集められなかった部分を安く開発し、ビジネスモデルが成り立つように持って行く。それでデータが集まれば、「鳥の目」ができて、皆がより正しく理解できるようになる方向へ向かうと思うんですよね。

 やっぱり悪いことは無知から起こることが多かったと思うのです。ある人がよく言うのだけど「乱心の殿様より、衆愚政治の方がよい」。民主主義は必ずしも効率はよくないけど、乱心の殿様がいると、もっとおっかなくて、やってられないからね。その時に「鳥の目」の情報が民衆に伝わって、例えばネットで、怪しい情報もたくさんあると思うけど、より正しそうなことに皆がアクセスできれば、よい方向にだいたい行けると思うんですよね。

 いろいろな意味で、情報が多いことはよいことだと思うのです。どんどん世の中、複雑になって、情報もより必要になります。要は、科学技術で進んだ社会をよりまともにするには、やっぱり科学技術しかない、という話なんですよね。当たり前のことですが。

― 今はネットを一般の人もよく使うようになってから、ちょうど10年くらいですね(2014年取材時)。ネット普及前はある特定の人しか知らなかった情報が、今はネットからいろいろな情報を得られるので、私たち一般市民も多様な情報を比較して、これは尤もらしい、これはガセではと、判断できる材料ができました。大きな変化と感じています。

 僕もそう思うね。第二次世界大戦が終わった時、日本の人たちは負けて皆がっかりしたかと言えば、必ずしもそうではなく、軍部などの圧政からの開放感の方が大きかったのでは、という話もよくあるんだよね。つまり昔、普通の人は情報を持っておらず、そんな「乱心の殿様」から開放されていくのはよい方向だと思うのだけど。今まではどちらかと言うと、インターネットは十分発達して、人間の考えていることは集まったけれども、それ以外に客観的なデータの集まる世界が、これからは必要だと思うのです。

― これまで採算の合わなかった領域の客観的な情報も集まるようにすることで、より多様な情報の中からよりよい判断ができるようになる、つまり民衆が「鳥の目」を獲得する社会につながっていくということですね。「情報が諸資源と同様の価値を持ち、それを中心として機能する」という「情報社会」の意味をしみじみと感じます。

 基本的には、そういう方向って間違っていないと思うけどね。僕はやっぱりITのおかげで、昔よりもよくなっていると思っています。でも、こんなことを言っていて、実は僕、スマホを使っていないんですよ(笑)。PCは使うけど、PCで十分満足しているから。

― 西澤潤一先生を以前インタビューさせていただいた時も、「自分は通信の研究をしているけど、携帯電話は使わない」と仰っていました(笑)。つくることと使うことは全く別物なんだと改めて感じました。


◆ ニーズに応えて何でもやりなさい

― 江刺先生にとって、そもそも科学とは何ですか?

 どの研究分野でも、将来のために基礎を研究している部隊もいれば、僕らのように現場に近いことを研究している部隊とか、いろいろな部隊がいて、僕らが極端に応用に近いところにいるのです。ですから、こういう話を特にするわけだけど。科学と言ってもすごく広いので、なかなか言えないと思うけど、少なくとも言えることは、こういう応用に近いことをやる人がもう少し多くてもいいかな、ということ。あと、今は論文数のような形で業績を評価される傾向にあっていろいろな問題が起きているから、論文の数ではなく、本当に役立つかどうかで評価し、役に立つ方向に仕事をしたらいいんじゃないかと僕は思うのだけどね。

― 「役に立つ」が江刺先生のお話で大事なキーワードと感じているのですが、そもそも「役に立つ」ということを江刺先生はどのように捉えているか、もう少し詳しく教えていただけますか。

 僕は「ニーズに応えて何でもやりなさい」と皆に言っています。それでうまくいって、役に立てば、褒められたり自己満足もできて、自分のインセンティブになるしさ。あと、僕は「試験がないと勉強しないよね」とも言っていて。講演とか、多少、自分の専門ではないことを頼まれた時も引き受けているのだけど、そのためにいろいろな分野を勉強することになるからね。損とか得とか言ってないで、何でも引き受けるのがよいと思っているですよ。

 他にも皆に言っているのは、「バーチャルではなく、リアルにやりなさい」。どうしても論文数とか要求されると、我々みたいに設備を抱えて「あっちが壊れた、こっちが壊れた」と工場を運営しながらやる研究より、コンピュータの前に座ってやる仕事の方が楽だから、そうなりがちだよね。それで論文だけで終わってしまっても、実際に役立つにはもう少しリアルでないと、それだけでは危なくてね。実際に実感を持ちながら、いろいろなことを体験しながらやっていくことを大切にしています。

 それから「アウトソーシングしないで自分でやりなさい」と言っています。それが実感を持つことにもつながるし、「ニーズに応えて何でもやりなさい」ということにつながっています。どうしても世の中、複雑になって分業の世界になっているでしょう?それはそれで仕方がないけど、必要以上に分業せず、自分でできることはやれるようにしないとね。

 今、日本の半導体がどんどん弱くなって潰れているのも、昔、進歩した時に装置メーカーに皆頼んでつくってもらうようになり、自分たちは実質、装置メーカーに頼むことしかしなくなっちゃってさ。すると、やっぱり実力がなくなり日本の会社が潰れてきたのです、だから、いくら分業の時代とはいえ、安易に人に頼んでばかりいたら、中身がなくなっちゃうからね。

― いろいろな方から「江刺先生は偉くなってもずっと現場で作業着姿でいらっしゃって、お客様が気づかないくらいだ」とよく伺うのですが、その話ともつながりますか?

 でも実はここのクリーンルームでの仕事はやっていなくて、地震の時、復旧作業をやったくらいでね。僕は装置の自作をずっとやってきたから、売っている装置を使ったことがあまりないのね。ここは売っている装置を使った工場だから、あまり得意じゃないの。誰でもそうだと思うけど、ある程度、自分の得意なところでやるわけね。そんな意味では、分担はある程度しているわけです。その程度のことで、何でもかんでも自分でやっているわけではなくてね。

 ただ自分の守備範囲が狭いのは問題で、できるだけ広めに守備範囲をとってやった方が役に立つよね。大体ここ(マイクロシステム融合研究開発センター)は戸津君が担当していて、僕の最近の仕事はお客さんが来た時にわからないところの資料を出して教えること。それは長年の蓄積が活きるでしょう?だから自分の役に立つところで活躍できればいいなと思っているわけです。それをできるだけ広げながらね。

― 秘書さんからは「江刺先生は道路掃除までやっている」と伺いました。

 道路掃除...、あぁ、それは体を動かすのが好きだからなんだけど(笑)。最近ずっと雨で水たまりがあってさ、水たまりがなくなったから、そろそろやろうかなと思って。僕、いつも車にスコップ積んでいるんですよ(笑)。それで車を止めて、日曜日にスコップで泥掃除をしていたら、いろいろな人が通りかかって「仙台市に頼めばいいのに」と言う(笑)。でも自分でやれるのだから、仙台市に頼むよりも自分でやったらいいのにな、と思ってさ。

― スタンスとしてはつながっているところ、ありますよね。

 あぁ、そうね。「アウトソーシングしないで自分でやる」というところに似ているよね(笑)。道路掃除だけじゃないんだよ、不法投棄の片付けもやっているんだよ(笑)。秘書さんとはこの間、落ちていた椅子とかも運んだのだけど、歩いて持っていったら重くて大変だった。


◆ 楽しんで勉強や仕事ができるように、やりたいことを見つけて

― 最後に、今までのお話を踏まえて、次世代を担う中高生へメッセージをお願いします。

 やっぱり楽しんで勉強や仕事ができるように、やりたいことを見つけてくれるといいと思うんだよね。僕も自然にそういう感じでやってきて、あまり悩みはしなかったのだけど。早めに何かこれをやりたいということを決めて、途中で変わってもいいけど、目的をつくってやると楽しいと思うのだよね。

 今、大草さんがやっている科学教育活動とか、活かしてもらうのがいいと思うのです。普通、授業だけではどうしても試験目的になっているところがあるからね。僕なんか、国語は不得意だったけど、国語も研究室で書類を書くと先生に直されたりして、そうやって現場で覚えた方が楽しいよね。だから、少し傾斜をかけて勉強してもいいと思うの。苦手なものが多少あっても必要になればその時に勉強して埋まるものだから。

― 江刺先生、ありがとうございました。

電子技術のルーツを逆上り実物とポスターを展示している近代技術史博物館(東北大学マイクロシステム融合研究開発センター内)にて。ここにある資料はすべて江刺先生が集めて整理したもの。「僕はおねだりが得意でね(笑)」。

取材先: 東北大学     

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