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2024年 11月 21日 (木)

ノーベル賞受賞・天野教授が仙台で講演、高校生と対談も

2015年1月5日公開

 青色発光ダイオード(LED)の開発で2014年のノーベル物理学賞を受賞した天野浩さん(名古屋大学教授)の特別講演会が12月26日、仙台市民会館で開かれた。東北大学多元物質科学研究所と東北大学知の創出センターの主催で、宮城県内の中高生や大学関係者など約1,200人が来場した。


■松岡隆志さん(東北大学教授)による講演
「白色LED光源の発光原理、開発経緯、そして、その意義」

【写真1】松岡隆志さん(東北大学教授)による講演「白色LED光源の発光原理、開発経緯、そして、その意義」

 講演会では、まず松岡隆志さん(東北大学教授)による、LEDの発光原理や関連技術の開発意義などについての解説があった。

 青色LEDの材料となる「窒化ガリウム」の結晶は、そのまま使うと、青色の光ではなく紫外線が出てしまう。青色の光を出すには、ガリウム原子の一部をインジウム原子に置き換える必要があった。

 松岡さんは、NTT光エレクトロニクス研究所の研究員だった1989年に、青色発光の発光層として必須の窒化インジウム・ガリウム単結晶の作製に世界で初めて成功。この技術は、市販のLEDに活かされており、今回の青色LEDのノーベル賞受賞に大きな貢献をしている。


■天野浩さん(名古屋大学教授)による講演
「明るく省エネ効果抜群の白色LED光源を可能にした高効率な青色LED 
プラス 10月7日から12月16日までに起きたことなど」

【写真2】天野浩さん(名古屋大学教授)による講演「明るく省エネ効果抜群の白色LED光源を可能にした高効率な青色LED プラス 10月7日から12月16日までに起きたことなど」

 次に、天野さんによる講演があった。天野さんは、ノーベル賞の受賞が決まった日から受賞式の日までの様子をユーモアを交えながら紹介した後、青色LED開発の経緯を説明。

 「テレビのブラウン管は大き過ぎる。もし自分が青色LEDを作れれば、世界を一変できるかもしれない」と夢を描いた天野さんは、1982年から名古屋大学赤﨑研究室で、他の研究者が青色LEDの材料としてセレン化亜鉛を選択する中、窒化ガリウム結晶の作製に挑戦。

 1,500回を超える失敗を経て、当時大学院生だった1985年、基板の上に緩衝材となる物質を吹き付ける「低温バッファ層技術」により、高品質な窒化ガリウム結晶 の作製に世界で初めて成功した。

 さらに1989年にはLEDに必須のp型伝導を実現したが、当時は学会発表時に1人しか聴衆がなかったなど、あまり関心を持たれなかったエピソードなども語られた。

 最後に若い研究者へのメッセージとして「集中しなければできない仕事は、若い時が大切。夢を持っている人はそのまま突き進み、そうでない人は自分の頭で考えて夢を見つけて。そうすれば、夢が 実現するまで道半ばで諦めることもない。夢は裏切らない」とエールを送った。


■天野浩さんと高校生10人のトークセッション/夢描く大切さ語る

【写真3】天野浩さんと高校生10名とのトークセッションのようす

 続いて、天野さんと東北の高校生10人のトークセッションが行われた。高校生たちからは「物理が好きになった経緯は?」「研究者になった理由は?」「世間で不可能と言われた壁を乗り越えるのに必要なことは?」「研究者に必要な素質は?」などといった質問が出た。

 これに対して天野さんは「なぜ勉強をしなければならないか、高校生の時まではわからなかった。しかし、大学の講義で工学とは人のためになる学問と聞いて以来、視野が広がり、どんな学問も好きになり、何でも頭の中に入るようになった」

 「私は研究者になろうと思ったことは一度もなく、今でも研究者だと思っていない。私の原動力は人の役に立つこと、世の中を変えることで、その実現のために何をしなければいけないか、それを考えるのが研究者といえば、研究者。なぜ研究者になりたいのかを突き詰めて考えると、自ずと自分の立つ位置がわかるのでは」

 「不可能と決めるのは、多くの場合、やってきた人たちの言い訳に近い。当時の人たちが諦めた理由をよく突き詰めて考え、まだ試されていない方法を自分で見出すことが大切」

 「青色LEDが開発できれば、世の中の役に立つというイメージを持っていたことが、ずっと続けられた理由。研究者に大切なことは、楽観的であることと、成功イメージを常に持ち続けることだ」などと答えていた。

 参加した高校生たちは「将来は天野先生のように、人のためになるような研究をしたい」と夢を膨らませていた。

取材先: 東北大学      (タグ: ,

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