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2016年 07月 24日 (日)

【東北大学ALicE×宮城の新聞 ♯006】育児と研究の両立、悩みやコツを語り合う/東北大学工学系の女性研究者たちが座談会 取材・写真・文/大草芳江

2014年3月28日公開

育児と研究の両立、悩みやコツを語り合う/
東北大学工学系の女性研究者たちが座談会


東北大学工学系女性研究者育成支援推進室(ALicE)は2月27日、育児中の女性研究者による座談会を同大のカフェ「BOOOK」で開催した。同大工学系の女性研究者たち6人が参加し、お茶を飲みながら、育児と研究の両立を主なテーマに、悩みやアドバイスなどをさっくばらんに語り合った。

 同大工学系の女性研究者や女子学生はわずか1割未満と、とりわけ少ないのが現状だ。少数派であるが故に、ロールモデル(お手本)となる女性研究者の姿が見えにくく、出産や育児などのライフイベントによって、女性がキャリア継続をあきらめるケースも多いという。

 そこでALicEでは、女性が安心してキャリアを継続・発展できるよう、女性研究者同士の情報共有の場づくりを重要な役割と位置づけており、同会はその一環として開催された。主なやり取りは、以下のとおり(敬称略)。


◆6名の育児中の女性研究者たち

―まずは、自己紹介をお願いします。

①橋爪 圭 (女性研究者育成支援推進室、医工学研究科 助手)
 女性研究者育成支援推進室に着任して5年。現在、1歳2ヶ月の子どもがいます。仙台市の認可保育園に運良く入ることができました。

②沼山 恵子 (医工学研究科 准教授)
 大学院修士2年生で第1子を出産し、その子どもは、高校2年生になりました。第2子は、小学校5年生です。二人とも橋爪先生と同じ仙台市の認可保育園でお世話になりました。

③安孫子 聡子(工学研究科 機械システムデザイン工学専攻 助教)
 第1子が3歳、第2子が昨年7月に生まれたばかりで0歳です。上の子は出産後5ヶ月で保育園に入ることができましたが、下の子は年度の途中のために入れなかったため、現在、学内保育園の一時保育の利用と、母に預ける体制の半々です。4月からは下の子も上の子と同じ保育園に入れる予定です。

④李 渊 (Li Yuan) (工学研究科 ナノメカニクス専攻 助教)
 2歳7ヶ月の一人娘がいます。4月から仙台市の認可保育園に入れることが決まったのですが、自宅から遠いため、どうしようかと悩んでいます。

⑤松八重 一代  (工学研究科 金属フロンティア工学専攻 准教授)
 4歳半の男の子がいます。学内保育園「川内けやき保育園」に通っています。

⑥ガヴァンスキ 江梨  (工学研究科 都市建築学専攻 助教)
 6ヶ月になったばかりの第1子がいます。子どもが生まれる前から「青葉区の保育園は入るのが難しい」と聞いていたので、太白区に引っ越しました。太白区の「せんだい保育室」(※)に空きが出たため、子どもが3ヶ月の頃から入れています。

※「せんだい保育室」:仙台市では、独自に保育料・保育環境・保育時間等に一定の基準を設け、それらの基準を満たす認可外保育施設を『せんだい保育室』として認定し、助成を行っている。


◆研究と育児、協力者を増やしながら両立

―お子さんを産んでから、一番困ったことは何ですか?

⑤松八重 :
 私は出張が多いので、出張時に子どもを預けるのが大変です。ちょうど妊娠している年から、東京の大学で非常勤講師を週1で務めることになり、毎週、東京で講義して仙台に帰る生活を続けています。
 夫は東京で働いているため別居中で、仙台には親戚もいないので、頼れる人が近くにはいません。そのため出張時は、子どもを保育園に預けた後、東京で講義して、すぐ仙台に戻り、ギリギリ保育園のお迎えに間に合います。うちの子どもはあまり熱を出さない方ですが、もし子どもが熱を出せば、出張は諦めざるを得ません。
 子どもが6ヶ月と小さな頃は、保育園に長時間預けることができないため、お迎えは、ベビーシッターにお願いしました。そんな時、大学のベビーシッター利用料補助制度は、有り難いですね。ただ、ベビーシッターはできるだけ毎回同じ人にお願いしたいのですが、そのような方を見つけるまでが大変でした。

⑥ガヴァンスキ :
 私も松八重先生と同じように、近くに親戚がおらず、4月からは夫が単身赴任のため、別居の予定です。保育園に子どもを預けても、「子どもが病気になったらどうしよう」と、不安ですね。

③安孫子 :
 ベビーシッターさんに、子どもはちゃんと慣れますか?

⑤松八重 :
 赤ちゃんのうちは大丈夫ですが、少し大きくなって、人を認識できるようになった時、子どもが寂しがるので大変です。でも、そこは同じベビーシッターさんに依頼をしているお子さんと一緒に我が家でご飯を食べるなど、「外から人が来る日は、楽しい日」というイメージを子どもに植えつけるといった工夫をすることで、何とかなりますよ。

②沼山 :
 協力者を増やす必要性が出てきますよね。例えば、子どもが鍵を忘れた時、ご近所さんに子どもが自分でお願いして、そのお宅で待たせてもらうとか。そんな感じで、いろいろな人を巻き込まざるを得なくなります。

―東北大学工学系の女性研究者の中で16人のうち11人が配偶者と別居中(夫婦で別々の勤務地となるため)というデータがあります。この中で、配偶者と同居されている先生はいらっしゃいますか?

◯(沼山さん、李さんが挙手)

◯一同:
 え、半分以下?!恐ろしい・・・

④李 :
 そうなると、親戚かベビーシッターさんに子どもを預けるしかないですね。

②沼山 :
 ベビーシッターは日本ではあまり浸透しておらず最初は抵抗もありましたが、大学でもベビーシッター利用料補助制度ができて、助かっています。私がベビーシッターをお願いした会社は毎回同じ人をつけてくれたので、安心して自宅で待ってもらうことができました。

④李 :
 宿泊を伴う出張の時、子どもはどうしていましたか?

②沼山 :
 研究室のボス(教授)が、育児と研究の両立に理解のある方だったので、子連れでの研究室出勤や出張も歓迎してくれました。だからこそ、育児と研究を両立しながら何とか続けてこられたのだと思います。周囲の理解に恵まれ、本当に幸運だったと思います。


◆生まれたら何とかなる。身近なロールモデルも大切。

⑥ガヴァンスキ :
 出産して約半年ですが、本当に眠いし、産休でずっと休んでいたせいか、頭もボーっとしています。正直、出産後の記憶が全くないくらいなんですよ。

◯一同:
 私も!!(全員が頷く)

①橋爪 :
 子どもが生まれたばかりの頃は、本当に記憶が抜けますよね。子どもの成長が早すぎて、追いつくので精一杯でした。

―お一人で育児と研究を両立するというのは,すごく大変そうなイメージがありますが・・・。

◯一同:
 大丈夫!大変だけど、生まれたら何とかなる!!

③安孫子 :
 「生まれたら何とかなる」と仰る先生が周囲にもいて、「意外と自分だけではないのだな」と思えたことが大きいですね。まだまだ工学系に女性研究者は少ないとはいえども、同じ立場の人が集まれるコミュニティの存在は、大きいと思います。

②沼山 :
 私の場合、第1子を出産した当時(修士2年生の時)は、女性で博士課程に進む人すらほとんどいない状況で、周囲にロールモデルが全くいませんでした。けれども、たまたまボスの前の職場で、育児と研究を両立した方がいたそうで、ボスの頭にロールモデルのイメージがあったのが良かったのだと思います。

⑤松八重 :
 ボスの理解は、本当に大事ですよね。うちのボスも、同じような経験を積んでいました。まわりの人達がロールモデルのイメージを持っていたことが良かったのだと思います。


◆出産前後で、仕事の進め方は変わった?

―出産前後で、研究や仕事の進め方が変わったりしましたか?

⑤松八重 :
 保育園に預けて研究室に行き、また保育園に戻るまで、どれだけ濃密な仕事ができるか、強く意識するようになりました。出産前は仕事を家に持ち帰ることができましたが、出産後はそれができないためです。

③安孫子 :
 自分の持ち時間は、トータルでは変わりませんよね。研究テーマも、競争が激しく変化が早い分野はやりにくいですから、基礎的で、皆があまりやりたがらないようなテーマを探すことが多くなります。

⑥ガヴァンスキ :
 私が毎回指示をしなくても、学生だけで実験が進められるよう、以前にも増して、学生を教育するようになりました。また、パソコンでもできる仕事を考えるなど、実験班から離れる努力もしています。研究テーマも選ぶ必要がありますよね。

②沼山 :
 私は生物系なので、細胞やマウスの面倒をみる仕事は、休むことができません。すると、子どもを研究室に連れて行くしか、手段がなくなります。それを受け入れてくれる研究室だったのが、本当に良かったと思います。

―育児をしていて、「研究者で良かった」と思うことはありますか?

③安孫子 :
 やはり、自分で時間をマネージメントできることが、一番ではないでしょうか。

⑤松八重 :
 出張を入れるのもスケジュール管理も、自分ですものね。もう一つは、子どもにとって、大学が身近に感じられるようです。うちの子どもにとって、大学は楽しいところ。私自身、父が大学教員だったので、たまに大学に遊びに行った時、大学は楽しいところだと思っていました。


◆家事はどうしている?

―ALicE室長の田中真美先生曰く「お掃除ロボット・乾燥機付き洗濯機・食器洗い機は、仕事と育児を両立する女性にとって、三種の神器」と。皆さんもお持ちですか?

⑥ガヴァンスキ :
 家にいる時間は、家事で終わってしまいます。乾燥機付き洗濯機は、洗濯物が縮んだり、シワシワになりませんか?

⑤松八重 :
 ものややり方によりますね。私は毎日の洗濯とは別に、おしゃれ着洗いの日を決めて、乾燥機を使わない洗濯はまとめ洗いをしています。

③安孫子 :
 私も第2子出産をきっかけに、乾燥機付き洗濯機を購入しました。シワシワは私も最初、抵抗がありましたが、最近の高性能な洗濯機は、なかなか良いですよ。

②沼山 :
 私の場合、「物干し竿に手が届くようになったら、洗濯物を取り込むのは、君の仕事だよ」と話し、小学生の子どもが洗濯物を取り込んでくれています。前は夜まで干していました。

③安孫子 :
 我が家に食器洗い機はありませんが、おそらく、食器洗い機は、旦那さんも家事に協力しやすくなるのではないでしょうか。

⑤松八重 :
 我が家にお掃除ロボットはありませんが、私より几帳面な夫が掃除をしてくれます(笑)。

⑥ガヴァンスキ :
 子どもがハイハイを始めた頃の掃除はどうしていましたか?掃除機をかけなくても済むような掃除の仕方が必要ですか?

③安孫子 :
 フロア用ワイパーやコロコロで、それなりにゴミは取れますよ。大丈夫、床くらいじゃ、舐めたって死にませんから(笑)。世の中そんなに綺麗じゃないし、子どもは落ちたものを平気で食べているし。ちょっと汚いくらいの方が、子どもも強くなります!大丈夫。


◆子どものしつけはどうしている?

①橋爪 :
 子どもが何歳の頃から叱りますか?

③安孫子 :
 うちは3歳くらいから。2歳くらいで言われている意味を認識している感じがしますね。

⑤松八重 :
 保育園では「順番に」「静かに」など集団ルールを教えてくれます。けれども家に帰った時は母親の前で甘えたいのか、子どものいたずらに困っています。最近は、子どもが散々あおった後に「まあまあ、そんなに怒らずに」と私に言ってくるんですよ(笑)。

③安孫子 :
 私も、子どもを叱った時、「お母さん、耳が痛い」と耳を塞がれたことがあります(笑)。

②沼山 :
 私も、子どもが「自分が、自分が」と何でも自分でやりたがる時期に、「よし、君のやりたいことはわかった。でも今回はこんな事情でできないよ」と、まず子どもを認めることが大事だと気づくまでが、大変でした。頭ごなしに「ダメ」と言うのは逆効果ですよね。

③安孫子 :
 頭ごなしに「ダメ」と言うと、結局、かえって時間がかかるんですよね(笑)。だから、まず子どもを認めてあげて、抱っこして、ぎゅっと抱きしめてあげると、大丈夫ですよね。

⑤松八重 :
 今思えば、授乳期の方が、まだ楽でした(笑)。小学校にあがれば、また違ってきますか?

②沼山 :
 子どもにやらせてみると、自分で大体できるようになります。やらせないと不安ですが、「うまくできたね」と褒めると、子どももその気になりますし(笑)。子どもたちは、自分で夕ごはんをつくれるようになりました。下の子が米を研いで、上の子が調理します。

③安孫子 :
 確かに、自分たちが子どもの時も、そうしていましたよね。「あ、お米を炊くの忘れてた!お兄ちゃん、待っていて!」とか(笑)。子どもも自分でできるようになりますものね。


◆大学による育児と研究の両立支援について

―大学の支援制度で、「あって良かった」と思うものはありますか?

⑤松八重 :
 学内保育園は良いと思います。ベビーシッター利用料補助制度も助かっています。

⑥ガヴァンスキ :
 病後保育もあるのが良いですね。また、育児期の女性研究者を対象とした、事務補佐員の派遣による両立支援も助かっています。研究時間確保の大きな助けになっています。

③安孫子 :
 機械系には静養室があるのが良いですね。妊娠中のつわりがひどくて横になりたい時、静養室で休めるのが良いです。

―逆に「もう少し、こんな支援をして欲しい」と思うことはありますか?

⑤松八重 :
 学内保育園は大変有り難いのですが、欲を言えば、園庭が広ければいいなと思います。もっと外遊びができる環境を整備してくれたら嬉しいですね。あとは学童が欲しいです。

③安孫子 :
 子どもが小学校にあがった後のことを考えると、学童保育はとても気になりますね。


◆研究と育児を両立して良かったことは?

―「研究と育児を両立していて良かった!」と思った瞬間ってありますか?

①橋爪 :
 今は育児に必死ですが、かけがえのない経験をさせていただいていると思っています。これは男女関係ないと思いますが、毎日、新しい発見があるんですよ。うちの娘が今朝、「くちゅした」(靴下)って言った!とか(笑)。ただ、お子さんを産むか産まないかは、家庭の事情が異なると思うので、それぞれの家庭のスタイルがあって良いと思います。

②沼山 :
 自分の仕事を子どもが誇りに思ってくれている感覚が、すごく有り難くて、嬉しいです。子どもたちの成長は、私自身の歩みよりずっと速く、あっという間に大きくなって、達成感を感じます。育児中の先生方が周りに増えてきたのも、良いと思います。

③安孫子 :
 まさしく只今「ザ・子育て中」です。研究のペースは、出産前より落ちてはいますが、かと言って、育児が嫌ではないのですよね。毎日決まった時間だけれども、研究して家に帰れば、自分を求めてくれる子が待っている。そんな喜びがあります。

④李 :
 私はラフな性格ですが、子どもがいるおかげで、限られた時間を有効活用するために、以前より計画的になりました(笑)。

⑤松八重 :
 子どもがいると、否が応でも頭が切り替りますよね。それが楽しいです。どんなに仕事でストレスを感じても、良くも悪くも、育児中は仕事のことをスパンと忘れるので、それはきっとプラスになっています。

⑥ガヴァンスキ :
 子どもができると、限られた時間の中でいろいろやらないといけないので、何が大事で何が大事でないかわかるようになりました。仕事は大変ですが、私にとっては、精神的にはこれが良いバランスですので、仕事と育児を両立して良かったと思っています。


◆育児と仕事の両立は、何とかなる。生き方も多種多様。

―出産や育児をしながら、女性が研究を続けることはできますか?

◯一同:
 できます!研究職にかかわらず、育児をしながら、仕事はできます。

②沼山 :
 育児と仕事の両立は確かに大変ですが、何とかなります。何より子どもが成長するのは、楽しいですよ。

⑤松八重 :
 両立できることを知らないから、ますます怖く感じてしまうのでは。「こうでなきゃ」と最初から決めない方が、良いですよ。何とかなる、と思って欲しいですね。

③安孫子 :
 生き方の種類が色々あって良いのだ、という認識ができますよね。

―出産する・しないだけではなく、研究や仕事と個人の時間とのバランスなど、その人それぞれの生き方・働き方の選択肢が広がり、社会に多様性が生まれるのですね。本日は皆さん、ありがとうございました。

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