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2016年 06月 27日 (月)

【東北大学ALicE×宮城の新聞 ♯003】工学の魅力知って/東北大工学部で女子高生向けフォーラム開催 取材・写真・文/大草芳江

2013年9月3日公開

【レポート】女子高校生のためのミニフォーラム
「工学にかける私の夢」(東北大学工学部)


【写真】7月30、31の両日開催された、女子学生のためのミニフォーラム「工学にかける私の夢」のようす=東北大学工学部

 女子高生のためのミニフォーラム「工学にかける私の夢」が7月30、31の両日、東北大学工学部で開催された。女子高生に工学の魅力を伝え、進路選択の参考にしてもらおうと、同大工学研究科・工学部がオープンキャンパス特別企画として実施した。

 フォーラムでは、工学研究科等男女共同参画委員長の横堀壽光教授が「近年、工学部に入る女子学生の数は増え、社会的にも工学部を卒業した女性の活躍の場は広がっている。ぜひ工学部を受験してほしい」と挨拶。工学系女性研究者育成支援推進室(ALicE)による女子学生・女性研究者支援の紹介もあった。

 続いて、同大在学中の女子学生、同大出身の女性社会人、同大の女性教員ら6人が講演。それぞれの立場から、工学部を選んだ理由や研究・業務内容などについて紹介し、工学の魅力や女子高生へのメッセージを語った。講演内容は、以下のとおり。


◆建築女子 -トンチクで学ぶ女子達の日常-
/今泉絵里花さん(都市・建築学専攻 学生)

 幼い頃から人形の家を使って、どんな家にしようかと想像して遊ぶのが好きだった。絵を描くことや物理が大好き。そこで、工学と美術を併せ持つ、建築学科を選んだ。

 東北大学の建築学科は、トうほくだいがく×けンチク=「トンチク」と呼ばれる。トンチク女子の日常は、よりよいものをつくるために、ほとんど寝ずに大学で作業する毎日だ。大変そうに見えるが、皆で助け合いながら、何かをつくる過程はとても楽しい。皆で一つのものをつくり、学年を超えて家族のように仲良くなるのが、トンチクの特徴。皆でお花見やランチパーティーなども企画する。

 卒業設計は、東日本大震災の年だった。津波で甚大な被害を受けた宮城県石巻市雄勝町に1年間通い、何もなくなってしまった瓦礫の中をひたすら歩き続け、改めて「つくる」ということを考えさせられた。そして、雄勝の人々を結びつけていたのは、地域に古くから伝わる神楽だとわかり、雄勝法印神楽をテーマにした作品を提案。本作品は卒業設計日本一決定戦で日本一になり、アジア大会でも高い評価を受けた。

 「何かをつくりたい」という小さな夢が、トンチクで助け合える仲間と出会ったことで「人をつなぐような建築をつくりたい」という思いになった。トンチクで得たものを活かし、これからスイスへ留学する。トンチク卒業生の進路は建築家だけでなく、家具デザイナーから編集者まで大変幅広く、たくさんの可能性がある。何より一番大切なのは興味。それさえあれば、トンチクで何かを得て卒業できるはず。


◆リケジョのススメ 私の生き方
/白石安代さん(ボッシュ株式会社)

 高校で理系を選択した理由は、メーカー勤務や研究者など、職業をイメージしやすかったから。大学は、せっかく進学するなら専門的なことを学びたいと思い、全国的にも数少ない、材料を専門に学ぶことができる東北大学工学部のマテリアル・開発系に進学した。

 就職活動では、選択肢が数多くあった。学校推薦で就職するのが主流で、当時、学生数に対する求人は約3倍もあった。研究室の先輩の勧めで、ボッシュ株式会社にエンジニアとして就職した。私が就職した当時は60名の同期のうち女性は2名だったが、現在はエンジニアの約半数が女性。結婚や出産等で退職する女性はほとんどいない。

 会社では、エンジニアだけでなくマネージメントも経験できた。これが私の人生のターニングポイントに。経営に興味を持った私は、働きながら経営大学院で学び、MBA(経営学修士)を取得。エンジニアからマーケティングマネージャーへ職種転換した。

 女子高生の皆さんに、私が「リケジョ」(理系女子)を勧める理由がいくつかある。まず、職業の選択肢が広い。理系の基礎力は幅広い職業に生かせ、職種転換にも強い。次に、企業や研究機関は今、専門性の高い女性を求めている。女性ならではの視点を活かす機会が、社会の中で増えている。それに女性は少ない故に目立ち、顔を覚えてもらいやすい等、メリットもある。皆さんもぜひ、リケジョを目指してもらいたい。


◆ガラスの「不思議」に魅せられて
/井原梨恵さん(応用物理学専攻 助教)

 幼い頃から、材料が好き。その中でも一番最初に材料として認識したのがガラスだった。4歳の頃、エレクトーン教室でガラスの置物に出会い、「なぜこんなに色々な形がつくれるのだろう?」と不思議に思って以来、ずっとガラスに魅せられている。子供の頃の夢は、「白衣を着る人」。

 音楽が好きで私立高校の音楽科に進学することも考えたが、材料が学べる高専に進学した。そして、研究室配属で偶然、ガラスを研究することになる。高専卒業後、もう少しガラスの研究をしたいと思い、長岡技術科学大学の学部3年に編入し、さらに大学院へと進学した。

 修士課程修了後、就職と進学で迷ったが、博士課程に進学し、結晶化ガラス(※)を研究。博士号を取得後も、企業に就職するか大学に研究者として残るか再度迷ったが、最終的には大学に残った。現在は、光を制御できるアクティブなガラスをつくり、光ファイバに応用しようと研究している。大学に就職しても、企業との共同研究などによって社会貢献ができ、自分の研究成果が社会に広く使われる可能性がある。また、無限の可能性秘めた学生を社会に送り出すという「一粒の麦」となれる。

 研究の楽しさは、世の中で誰も知らないことを自分が一番最初に知ることができること。世の中は、まだわからないことだらけだ。自分たちの研究で、世の中を変えることもできるかもしれない。人生やり直しはできないが、方向転換や学び直しは可能。理系は比較的、方向転換がしやすい分野だ。中高生の皆さんは、よく遊び・よく学び、文系・理系を問わず、今いる環境で最善を尽くし、色々な勉強をぜひ楽しんでほしい。

(※ 結晶化ガラスとは、ガラスと結晶の両材料の特徴を併せ持つ機能性材料)


◆「金属ってすごい」からはじまった私の研究生活
/草間知枝さん(金属フロンティア工学専攻 学生)

 すべての物質は、元素の集まりで表現できる。その元素の違いは、陽子・中性子・電子の数の違いだけだ。つまり、全然違うものなのに、よく見ると、実は、すべて同じものからできている!そう授業で習った時、すごく不思議で面白いと思ったのが、私が物質に興味を持ったきっかけ。

 すべての物質が元素の組み合わせなら、では、その組み合わせ次第で、新しい物質をつくれるのでは?と考えた。そこで元素を簡単に分類すると、周期表のほとんどは金属元素で、実際に私たちが使える元素もほとんどが金属元素だ。つまり、金属元素を含む組み合わせの数が、最も多い。「金属ってすごい」と思った。

 材料科学分野の業績は、東北大学が世界第3位で日本トップ。最先端の研究とその分野における第一人者の教授陣を求め、東北大学工学部材料科学総合学科へ進学を決めた。女子学生数は多くないが、みんな優しく、他研究室にも知り合いができやすい等のメリットもある。大学院修士課程を修了後、伸銅メーカーで2年間勤務し、現在は博士課程に在学中。

 就職について、工学系は非常に有利。必要とされる業種が幅広く、学校推薦も豊富。重要な研究は日本で行われており、企業は優秀な研究者を求めている。工業製品の性能は使用する材料に大きく影響されるため、すべての工業製品は材料と切り離せず、材料の知識はどの工学分野でも必要とされる。材料研究者の活躍の場は広い。

 材料の研究でできること。それは、新しい材料で新しい特性の発見ができると、優れた性能を持つ新しい製品をつくることができる。すると、私たちの生活スタイルが変化し、より豊かな生活、地球環境問題の改善などにつながる。つまり、地球全体、生命全体の利益につながっていく。材料から世界を変えることができる。

 自分が何を好きか、もう気づいていますか?Yes.なら、それを一生懸命やってほしい。No.なら、とにかく色々なことを試してほしい。大学はそれができる場所。つまらないことより好きなことの方が楽しいし、自ら頑張れる。その結果、上達し、優れた成果も出る。すると、自分も嬉しく、社会の利益になり、全体のHappyになる。だから、自分が何を好きか必死に考えて、わかったら実行してほしい。それがもし、工学部でできることなら、仲間が増えて、私も嬉しい。


◆心を豊かにする「モノづくり」を目指して
/中村友香さん(花王株式会社 香料開発研究所)

 高校の時、何となく国語や社会より数学が好きで、衣食住全てに関わる化学に興味があった。まだ将来のことは決めていなかったが、選択の幅が広そうな理系を選択した。

 大学で化学を学ぶには工学以外にも理学・農学・医学など、色々な学部の選択肢があったが、「人や社会に役立つ、新しいモノづくりをしたい」「学んだ知識を社会貢献につなげたい」と工学を選択。オープンキャンパスで研究スケールの大きさと、そこで楽しそうに研究の話をする白衣姿の先輩たちに憧れ、東北大学工学部化学バイオ工学科に入学した。

 学部4年生の研究室配属時、化学の中で何を専門に学ぶか、悩んだ。学生実験を通じ、ビーカーの中で色や匂い等が変化する反応に興味があったため、応用有機合成化学を選択。自分の手で新しいものを生み出せる研究は楽しく、発見の毎日だった。これをきっかけに、就職活動では「もっと身近に感じられるモノづくりをしたい」と、メーカーの研究職を希望。女性の研究者も多い花王株式会社に就職した。

 会社では、香料開発研究所に所属。普段何気なく使用している日用品の多くに香りが関わり、香りを作る過程には様々な科学が関連する。科学と感性の融合をどう研究するかが面白く、自ら手がけた製品を店舗等で見て、お客様の喜びを実感できることがやりがいだ。これからも香りを通じ、人の心を豊かにするモノづくりを目指したい。

 女子高生の皆さん、今できること・自分がやってみたいことに、どんどん挑戦して。挑戦して失敗した分だけ、成長につながる。笑顔を忘れず、今ある状況を楽しもう。


◆過去と未来の災害をみつめて -ある女性土木研究者の日常-
/有働恵子さん(災害科学国際研究所 准教授)

 専門は、海岸工学。砂浜侵食によって海岸線が後退すると、国土が縮小するだけでなく、災害増加の原因にもなる。現在、東日本大震災による砂浜侵食被害の全容把握と被災メカニズムの解明を目指している。研究を通じて長期的なスパンでの津波後の湾岸管理を行政に提言することも、土木研究者の大事な仕事だ。

 また、気候変動に伴う海面上昇による、砂浜の大規模な侵食が懸念されて久しい。観測や実験、数値計算を通して、砂浜が変形していくメカニズムを解明し、これらの知見を考慮したシミュレーション予測技術を開発することで、海岸保全に役立てたい。

 土木の魅力は、理学的な面白さも、工学的な社会貢献も、どちらも満たせること。また、数学から文学まで多岐にわたる分野融合的な研究課題が多いのも魅力。土木は、長期的に人々の生活や産業を支える重要な役割を担っており、使命感を持てる魅力的な仕事だ。

 自分が「面白い」「大切だ」と思える仕事に携わることが大切。私は、何となく大学・大学院に進学したダメな学生の典型だった。しかし、目の前にあるものには、一生懸命取り組んできた。結果的に「面白い」「大切だ」と思え、今、それが仕事になっている。

 プライベートについては、結婚後、双子を出産。生後2ヶ月半で職場復帰し、研究と育児を両立中。今は、出産・育児と仕事の両立をあきらめる時代ではなく、自分の望むワーク・ライフ・バランスを実現できる。工学部に女性は少ないが、例えば、土木における社会基盤整備のように、男性的視点だけでなく女性的視点が求められる分野も多い。皆さんにも、女性であることを活かした役割をぜひ果たしてもらいたい。

取材先: 東北大学      (タグ: ,

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