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2017年 08月 19日 (土)

生態適応GCOE『環境機関コンソーシアム』交流会2012「女川の現状と課題」 取材・写真・文/大草芳江

 東北大学生態適応グローバルCOE(GCOE)は先月、仙台国際センターで「環境機関コンソーシアム交流会」を開催した。同コンソーシアムは、環境先進企業・行政・NGO・生態適応研究者等の間での交流・情報交換の場として同GCOEが運営するもので、交流会は毎年この時期に学生委員によって企画・運営される。今年は「女川の現状と課題」をテーマに、学生や企業・NGOなど180名の関係者が参加した。


開催趣旨

 東北大学農学部「女川フィールドセンター」は、東日本大震災で甚大な津波被害のあった宮城県牡鹿郡女川町にある。司会進行の学生委員・三浦彩さんは、「我々も地域再生にむけて貢献したい意思は共通だが、当事者の実情を熟知した上で我々ができることを模索しなければ、実現不可能な、あるいはおせっかいな協力になる恐れがある」と話し、本会の開催趣旨を「女川町の復興の中心となる方々を迎え、女川の現状を知り、復興へ向けて解決すべき課題を産官学で共有したい」と述べた。


2011年度 活動報告

 続いて、本コーソーシアムの活動のうち「海と田んぼからのグリーン復興」と「生物多様性オフセット研究会」について、2011年度の活動報告があった。

■ 海と田んぼからのグリーン復興

 本GCOEでは、東日本大震災復興の際、地域の豊かさと強さにつながる生態系の回復力を助けることが、より確かで持続可能な復興につながるとの考えから、2011年5月2日の国連生物多様性の日に、大学・NGO・企業団体らと共同で「海と田んぼからのグリーン復興」を宣言した。主な活動としては、基礎調査やグリーン復興による町興しなどがある。

「プロジェクト説明および生態系モニタリング」
(東北大学生命科学研究科 占部城太郎教授 )

 沿岸や河川など、被害を受けた生態系の変化や、残された生態系の豊かさを把握するため、研究者と市民の共同でモニタリング調査を実施。調査結果を紹介するとともに、継続的な調査の必要性を語った。本プロジェクトの受け皿として寄付講座を開設予定。

「田んぼの復興」
(NPO法人田んぼ理事長 岩渕成紀氏)

 塩害被害を受けた水田を、生態系の力を借りて、「ふゆみず田んぼ」に復元する取組みについて紹介。復興と生物多様性の両方を支える安定的な資金メカニズムをつくるため、他地域からの長期購買予約や投資などのプロジェクトにも取組んでいる。

「田んぼの復興」
(NPO法人田んぼ理事長 岩渕成紀氏)

 塩害被害を受けた水田を、生態系の力を借りて、「ふゆみず田んぼ」に復元する取組みについて紹介。復興と生物多様性の両方を支える安定的な資金メカニズムをつくるため、他地域からの長期購買予約や投資などのプロジェクトにも取組んでいる。

「浦戸復興プロジェクト:持続的な『里山・里海」環境の構築を目指して」
(国連大学高等研究所SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ
 事務局プログラム・オフィサー 簑原茜氏)

 浦戸諸島(宮城県塩竈市)で里山・里海復興にむけてボランティア活動中、河田雅圭教授らによる「浦戸復興プロジェクト」と出会い、共同研究が始まる。浦戸の生態系や第一次産業などを活かした産業活性化により、住民生活にとって魅力的なモデルづくりを目指したい。


■ 生物多様性オフセット研究会

2011事業報告・2012事業計画
(株式会社レスポンスアビリティ代表取締役 足立直樹氏)

 生物多様性オフセットに関する海外事例を日本に導入する際、注意すべき事項を抽出・分析するための共同研究活動について報告。従来の活動に加え、オフセットの仮想実証実験や、オフセット国際的基準「BBOP Guidelines」の公式日本語版翻訳などに取組んでいる。


講演会 「女川復興の現状と課題」

次いで、「女川復興の現状と課題」をテーマに、女川町の復興を担う方々による講演会があった。

「復興における研究者の役割」
(東北大学総長補佐、大学院農学研究科 木島明博教授)

 女川フィールドセンターの津波被害の状況や、震災や復興に伴う海の環境変化について報告。「継続的かつ精密な海の環境調査が研究者の役割」として、東京大学や海洋研究開発機構と連携し「東北マリンサイエンス拠点形成事業(海洋生態系の調査研究)」に取組む。「包括的な研究を通じて海の復興を考えたい」。

「営みの復興を担う協議会の取り組み」
(女川町復興連絡協議会戦略室長 黄川田喜蔵氏)

 女川町の水産業・観光業など民間団体からなる「女川町復興連絡協議会」が提案する「100年先にむけた女川町のグランドデザイン」について紹介。人と自然に優しい住民主体の町づくりを通じて、人々が「住み残る、住み戻る、住み来たる」町を目指す。「一番大切なのは、できあがった町に命を吹き込む住民のマインド」。

「被災者・被災地が主役の復興とは何か、10ヶ月目の現状は」
(株式会社復建技術コンサルタント技術顧問 岩渕善弘氏)

 コンサルタントとして建築関係の復興に取組む立場から現状報告。住民意向調査では通常の意向調査ではありえない量の意見が寄せられ、その多くがポジティブな意見だったことが特徴的。行政都合でもコンサルタント都合でもない、被災者や被災自治体視点のコンサルティングが必要だが、多様なニーズを如何に技術として提供できるか、技術者の真価が問われている。

「臨時災害放送局としての1年の活動と今後の町づくりで果たす役割」
(放送作家・女川さいがいFMプロデューサー 大嶋智博氏)

 臨時災害放送局「女川さいがいFM」の活動を紹介。東京で放送作家としてラジオ・テレビ番組の制作に携わる中、女川町出身の友人の相談を受け、共同で女川町で臨時災害放送局開設を計画、コンセプトや放送局・内容の枠組みなどを手がけた。現在も月数回、東京と現地を往復しながら活動している。「ラジオを通して、町のコミュニティーをつないでいきたい」。


パネルディスカッション 「復興の今後の進め方」

 講演会に続いてパネルディスカッションでは、足立氏がファシリテーターを務め、占部城太郎教授、黄川田喜蔵氏、岩渕善弘氏、大嶋智博氏の4名によって、「復興の今後の進め方」をテーマにディスカッションが行われた。

 まず各パネリストからは、復興を進める中での懸念として、住民視点の生活や産業の復興が優先される一方、女川町の産業を支える豊かな自然環境を同時に守ることの難しさが挙げられた。また、放射線測定結果など復興に関する情報発信を急がなければ、風評被害や人口減少に拍車がかかり、復興が遠ざかることを危惧する意見もあった。

 次に、現場で求められている人材や大学へ希望することとして、生態学や農学などの専門的知識を活かした提案や情報発信を求める声や、専門分野のみに固執せず横幅を広げることの大切さなどが語られた。また、女川町は今後の日本社会が抱える課題の最先端事例という見方も示され、「研究や考え方を女川町で発揮して欲しい」といった声もあった。

 まとめとして足立氏は「本GCOEでは、専門的知識を活かし社会的課題を解決するための人材育成を大きな目標としている。実際に体験しなければわからないこともある。進路を変えるような発見や出会いもあるかもしれない。皆さんもぜひ現場に参加してみて」と述べた。


ポスター発表会・懇親会

 パネルディスカッション後は、コンソーシアムメンバーによる環境・CSRの成果報告や、博士過程の大学院生による研究紹介のポスター発表・懇談会が行われた。会場では、学生と参加者が熱心に質疑応答する場面があちこちで見られた。

 懇親会では、ポスター賞の授与式も行われた。本拠点リーダーの中静透教授が選ぶ「トロン賞」には、早坂瞬さんと平瀬祥太朗さんによる「被災地支援のための"エコツーリズム"-女川でのテストケース-」が選ばれ、中静教授から記念品が贈られた。参加者からの投票数が多かったポスター6件には「サラヤ賞」が授与され、サラヤ株式会社より賞品が贈られた。

 また「eco japan cup 2011」のパートナー・コンテスト「JNCみなまた環境大学カリキュラム提案賞」で、工学研究科の白川百合恵さんらによる「水俣のわざに学ぶ」が大賞を受賞したことも報告された。

 最後に学生委員長の佐藤光彦さんによる挨拶があり、大盛況のうちに閉会した。

<ポスター賞受賞者>
【トロン賞】(1件)

  • 早坂瞬、平瀬祥太朗「被災地支援のための"エコツーリズム"-女川でのテストケース-」

【サラヤ賞】(6件)

  • 阿部博和「女川湾に出現するスピオ科多毛類浮遊幼生」
  • 岩嵜航「進化の仕組みを学べる補助教材:仮想生物オリバミバード」
  • 大熊敦史「非免疫細胞の異常による自己免疫疾患の発症機構」
  • 渡辺千秋「Gravity affects the accumulation pattern of auxin efflux facilitator CsPIN1 in the endodermis of the cucumber seedlings」
  • 森井悠太「形態と系統の著しい不一致:北海道に産するエゾマイマイ群の例」
  • 野村直生「Developmental mechanism for determining the number of digits in chicken limbs」


懇親会のようす

本コーソーシアムを企画・運営した学生委員


学生インタビュー

やはり現地に行かなければならない
学生委員長・佐藤光彦さん

 今回の趣旨は被災地での取組みを知ることだったが、現地の方々や研究者それぞれの立場からお話を伺い、現状を知ることができたことがとても良かった。何よりも、現地に行かなければならないと強く感じたことが一番の感想。今度ぜひ女川町に行ってみようと思う。

専門的知識を活かし、女川の復興に貢献したい
「トロン賞」受賞・早坂瞬さん

 今回の受賞は、平瀬君ら博士学生5人で行った活動の結果であり、皆に感謝したい。東日本大震災では、学部4年から生活し研究を続けてきた女川町の被害の甚大さに、言葉にはできない気持ちを抱いた。女川の復興に貢献できることはないか考え、専門的知識を活かした"エコツーリズム"を実施した。今回のテストケースで明らかになった課題や意見などを活かし、女川の復興に貢献できるよう今後も頑張りたい。

本GCOE教育プログラムで学んだ知識を活かして
「JNCみなまた環境大学カリキュラム提案賞 大賞」受賞・白川百合恵さん

 竹本特任教授からの案内をきっかけに、本コンテスト応募のために調べて初めて水俣が環境先進都市であることを知った。そこで水俣の先進的な取組みと、本GCOE「生態環境人材育成プログラム」の授業で学んだ概念や知識をリンクさせ、プログラムの基本的な理念に反映できたことが、今回の受賞につながった。今後も授業で学んだ知識を色々な場面で活かしていきたい。

取材先: 東北大学      (タグ:

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