大震災を超えて大学がなすべきことは 仙台でシンポ
2011年08月06日公開
東北学院大学土樋キャンパス(仙台市青葉区)で2日に行われたシンポジウム「東日本大震災を超えて:大学がなすべきこと、できること」のようす
シンポジウム「東日本大震災を超えて:大学がなすべきこと、できること」が2日、東北学院大学土樋キャンパス(仙台市青葉区)であった。
日本私立大学団体連合会と日本私立短期大学協会の主催で、私学関係者や一般市民など約350人が参加。被災地の支援復興、日本社会の回復発展への貢献について意見交換が行われた。
未来を担う人材提供こそ私学の使命
来賓挨拶をする村井嘉浩宮城県知事
同連合会の大沼淳副会長(文化学園大学理事長・学長)は「被災地の復旧復興は、長期的に日本が目指すべき社会構造を先取りし、日本の再生モデルとなることが期待されている。我々私学が貢献できることは少なくない。有意義な意見交換とネットワーク形成の場になれば」と挨拶。
続いて、来賓の鈴木寛文部科学副大臣、村井嘉浩宮城県知事から挨拶があり、復興にかかる私学への期待が語られた。
同連合会の清家篤会長(慶応義塾塾長)は基調講演で、福沢諭吉の「実学・公智・徳心」をキーワードに挙げながら、「単なる復旧ではなく、被災地や日本全体をより良い社会にするための復興を担う人材提供こそ我々の使命」と述べた。
東北学院大学の星宮望学長は特別講演で、被災地の歴史的実績を「世界三大漁場・江戸を支えた本石米・世界のエレクトロニクス先進地」と3つ挙げ、「これら実績の継承発展に人材育成は欠かせず、人材育成こそ天然資源のない日本が世界と戦う鍵。教育の復興なくして地域の復興はありえない」と訴え、学費免除の「特区」設置を提案した。
宮城県商工会議所連合会の渡辺静吉副会長は、被災状況を報告しながら、政府の対応の遅さを厳しく批判。「節電や風評被害などで被害がさらに拡大し、企業の倒産や失業問題などへの影響が心配される。国を挙げて過去最大級の金融支援を」と訴えた。
それぞれの役割を再確認し、復興を教育機会に
パネル討論のようす
続いてパネル討論では、石巻専修大学の坂田隆学長や、東北工業大学の沢田康次学長ら7人が登壇。坂田学長は大学が災害対策拠点となり得ることを実証的に話し、復興支援プロジェクトなどを立ち上げたことを報告した。
沢田学長は、学都仙台コンソーシアムで検討中の人材育成拠点「復興大学」を紹介。講義以外にも被災地現場実習などを取り入れ、「答えのない問題に即応できる現場に強い人材」の育成を目指すと述べた。
このほか、福島県にある桜の聖母短期大学の橋谷田恵子教学係長から、震災後の学生支援や学生ボランティアなどについての報告があった。
会場からは「長期的な学生ボランティア活動を支援するためのシステムづくりをどうすべきか」「復興を如何に学生や教員の教育機会にするか」「各私学の建学の精神を踏まえた復興や新しい教育を展開する良い機会だ」などの意見があった。
最後に、同連合会の納谷廣美副会長が「全国各地に所在する多様で多層な私学は、我が国の将来を見据えて、それぞれの役割を再確認し、大学の人材力とそのネットワークを活用して、この難局を克服する」と決意を表明した。
インタビュー
―「東日本大震災を超えて、なすべきこと、できること」とは何ですか?
学問を通じて自分の頭でものを考えられる人に
/清家篤さん(日本私立大学団体連合会会長、慶応義塾塾長)
清家篤さん(日本私立大学団体連合会会長)
被災地の復興、日本の回復発展を担うのは人材。人材とは、学問を通じて、自分の頭でものを考えることができる人のこと。私ども大学では、幅広い学問を学び、奥の深い研究をし、そして課外活動を思う存分する中で、自分の頭でしっかりものを考えられる人を育てたい。そんな学問の意欲に燃えた高校生の皆さんが大学に来てくださることが、被災地の復興には欠かせない。皆さんに期待している。
「震災後」の主役は若者
/星宮望さん(東北学院大学学長・学院長、仙台学長会議代表)
星宮望さん(東北学院大学学長・学院長)
宮城の人でも、先人が英知を結晶化した成果を意外と知らないでいる。しかし、それらを学び、次の世代に何を残すか、責任がある。これまで「戦後」という言葉が使われてきたが、これからは「震災後」という言葉が使われるだろう。その主役は、大学生や中高生の皆さんだ。私は65年前に仙台の大空襲を経験した。仙台の中心部はがれきの山、白いご飯を食べることができなかった。その後、我々の先輩たちが頑張って復興させ、今の日本をつくった。「震災後」を担うのは皆さんだ。ぜひそれをメッセージとして伝えたい。
大自然災害を超えて進化しよう
/沢田康次さん(東北工業大学学長)
沢田康次さん(東北工業大学学長)
2億3000万年前から生存した恐竜が、6500万年前に突然絶滅し、鳥類に進化した可能性が検討されている。組織の進化論も同様で、大自然災害により既存の枠組みが外れた時、少しの差が将来の大きな差となる。実際に今回の大災害で「学生は変わった」という声をよく聞く。大隕石が地球に落下した時の恐竜のように唖然とするのではなく、恐竜に羽をつけて飛び立った鳥類のように、進化しよう。大学ではそのお手伝いをする。
被災地で一人二役を担える人材に
/坂田隆さん(石巻専修大学学長)
坂田隆さん(石巻専修大学学長)
大学は教育機関である。高等教育を通じて、社会の屋台骨を支える人材を育成することが、我々にとって最大の社会貢献だ。今回の震災を受けて、少なくとも教職員は変わった。また、様々な研究プロジェクトも立ちあがり、学生は学部・学科関係なく参加し、他にはない体験をしている。なお、自治体への施設提供や産業支援などの社会貢献も、結果的に学生へ還元されることを前提に行っている。人口が減少した被災地には、一人二役を担える人材が必要だ。この震災を経験した人は何かが違うはず。彼らこそ大学を卒業し、社会の屋台骨を支える人材になってほしい。我々はこの程度のことでへこたれてはいられない。
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