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2016年 09月 28日 (水)

「コンパクト化学システム研究センター」って、そもそも何?:産総研東北センターコンパクト化学システム研究センター長の花岡隆昌さんに聞く 取材・写真・文/大草芳江

2010年11月30日公開

日本のグリーンケミストリーをひっぱる研究所

花岡隆昌さん
(独立行政法人 産業技術総合研究所 東北センター
コンパクト化学システム研究センター センター長)

 「社会」と言うと、あって当たり前のような"結果"のイメージがある。
しかし当然ながら、その"結果"が生まれる背景には、まず"人"がいて、
試行錯誤の"プロセス"があって、それらの結果の総和として、今がある。
その"プロセス"をつくる"人"から見える社会とは何かを探るインタビューシリーズ。

独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)東北センターにある、
旧「コンパクト化学プロセス研究センター」が今年4月、
「コンパクト化学システム研究センター」として新たなスタートを切った。

そもそも産総研が掲げる「コンパクト化学システム」とは何なのか。
単刀直入に聞くと、同センター長の花岡さんから出てきたのは、
「グリーンケミストリー」というキーワードだった。

化学製品に囲まれていながら、普段の生活で実感する機会の少ない、
化学の技術によるものづくり。わたしたちの気づかないところで今、
人や環境への負荷が少ないものづくりへのシフトがはじまっている。

<目次>
環境や人に迷惑をかけない化学のものづくり
部分だけでなく全体としてより良く
長期的視野に立ちグリーンケミストリーをけん引
国としての目標に向かって総合的に動く
グリーンケミストリーは世界的な流れ
使う側が意識しないものをつくる
有機溶媒の代わりに高温高圧の水や二酸化炭素を使う
高温高圧下でものを反応させる
アイディアで横方向に広げる
地球環境に対する影響を減らしていく
いろいろなつながりを想像して


環境や人に迷惑をかけない化学のものづくり

―そもそも「コンパクト化学システムセンター」とは何ですか?

 今は、いわゆる化学製品なしでは動かない世の中になっています。例えば、プラスチックや化学繊維、車で言えばタイヤから車体まで。いろいろなものが化学の技術を使ってつくられています。

 化学技術を使ってものをつくる歴史の中では、エネルギーをたくさん使ったり、原料として少々やっかいなものを使ったり、あるいは製品をつくる過程で環境に良くないものを大量に出したりしてきました。

 しかし約20年前から、化学でものをつくる際にも、環境や人に迷惑をかけないような方向でやりましょう、という流れが大変強くなってきました。その中から「グリーンケミストリー」というコンセプトが出てきたのです。

 もちろん、排出対策にお金さえかければ環境への影響を抑えることはいくらでもできるのですが、対策費用の方が高くなれば、ものをつくっても意味がありません。そうなれば産業自体が成り立たなくなります。

 ですから、製造のプロセスや製品自体を変えていき、環境に優しい方法で、しかも効率良くものをつくれるようにしていこうというのが、「グリーンケミストリー」のコンセプトなのです。

 わたしたち産総研は、日本における産業技術の開発を行っている研究所です。その中で我々の研究センターなどでは、化学産業におけるグリーンケミストリーの流れを、どのようにサポートするか、あるいはその新しい技術をどの方向にひっぱっていくかを考えた研究しています。

 そのような中で5年前、「グリーンケミストリー」を中心とする研究センターを、この東北センターにたちあげました。それが現研究センター(コンパクト化学システム研究センター)の前身である「コンパクト化学プロセス研究センター」です。

 そして5年間研究を続けてきた「コンパクト化学プロセス研究センター」の成果をもとに、新しく「コンパクト化学システム研究センター」としてスタートしたのが、今年の4月のことです。


部分だけでなく全体としてより良く

―名前が「コンパクト化学"プロセス"研究センター」から「コンパクト化学"システム"研究センター」に変わりましたが、そもそも何が違うのでしょうか?

 「コンパクト化学"プロセス"研究センター」では、様々な化学製品をつくる流れの中で、まずは一つひとつの"プロセス"を最適化していきましょう、という立場から研究をすすめてきました。その方向で5年間研究開発をおこなって、いろいろな形である程度成果が出てきました。またもちろん、これからさらに研究を進めようというテーマもあります。

 そこで次に目指すものとしては、個別のプロセスを最適化する研究開発ももちろん大切なのですが、全体として効率が良くなり、環境にいっそう優しいケミストリーの開発を目指しましょう、という考え方で「コンパクト化学"システム"研究センター」という名前にしました。

 実際には、たとえ一つのプロセスだけがとても良くなっても、他の部分が悪ければ、トータルではあまり良い結果となっているとは言えません。ですから全体としても良くなるようにしたい、というのが我々の目標となっています。その意気込みを名前に表しました。

 ただ、研究センターの名前がよく変わるのも皆さんに対して親切ではないので、極端には変えていません。でもやはり、だんだん進歩していきたい、という意気込みは表したつもりです。でも「じゃあ次はどうなるの?」って聞かないでくださいね(笑)


長期的視野に立ちグリーンケミストリーをけん引

―化学産業におけるグリーンケミストリーの流れをサポートあるいは牽引することが同研究センターの目的とのことですが、産総研がそれを研究する背景として、逆に言えば、個々の企業等ではなかなかそこまで研究できない背景があるということでしょうか?

 もちろん今は、少なくとも日本では、環境に対する影響を考えずに技術開発をすることはあり得ないという時代になっています。ですから企業でもそれぞれに、環境への問題の無いように対策や研究を行っています。

 ただ企業の場合、比較的短い期間での成果を求めます。さらに研究開発には、うまくいくかどうかわからないというリスクもあります。国の研究機関としては、もう少し長い期間にわたって、より新しい、大きな効果のある技術開発を進めていく立場にあります。

 もうひとつは、「こちらの方向に進んでいくと、いろいろな産業全体として、よりうまくはずです」という、これまでにない新しい分野をつくっていく。それも我々の仕事だと思っています。

 つまり、新しい技術や新しい分野について、今はまだ海か山かわからない技術も含めて、幅広く産業に役立つグリーンケミストリーに関する研究をしっかりと進めていきましょう。そして、少し大げさに言えば、そのような方向に産業をひっぱっていき、日本全体として良い方向に行きたい。それが国の研究機関として研究を進めていく理由のひとつです。


国としての目標に向かって総合的に動く

―そのような意味では、大学での研究に近い部分もあるかと思われますが、大学との違いはどのようなところにありますか?

 それは難しい質問ですね。なぜ難しいかと言えば、最近は大学の方が大きく変わってきている、という印象があるからです。僕らが学生の頃と今の大学では、大学での研究に対するイメージは随分変わっていますね。

 理学部を中心に、大学における研究の目的は真理の探究が第一でした。もちろん、それが明らかになれば皆さんに使われていくわけですが、大学の目的としては、自然の原理を明らかにするために研究活動があったと思います。

 けれども今は、社会に対してどのように役立てるか、という方針に大学全体の重心が動いていると思います。我々産総研のような国の研究機関がこれまでにやってきた研究の方向に、だんだん似てきていますね。

―では、今の大学とはどのような違いがあるでしょうか?

 大学全体の方向性には変化があると思いますが、研究の現場である大学の研究室では、良いにつれ悪いにつれ、研究室や講座を単位として、最先端の研究を深く詳しく掘り下げていくところがあります。それに対して国の研究機関では、もう少し総合的な組織の力で、違う分野の専門家が一緒になってやっていくところに、まず一つの違いがありますね。

 産総研では、約2300人余りの幅広い分野の研究員が全国の研究拠点で働いています。例えばバイオテクノロジーや地質学の研究をしている人もいます。専門が全然違うので同じ組織でも一見関係なさそうに見えるのですが、あるところでは一緒にやっていくと、新しい研究開発につながっていく部分があるのです。産総研ではそのような連携がやりやすいし、実際にも行っているのが特徴ですね。

 それに、大学には教育という非常に大事な仕事があります。我々にもないわけではないのですが、基本的には教育とは切り離した形です。その点では、例えば産業界と一緒に共同で研究開発する中では、大学とは違った活動の仕方があるかと思います。

 僕らがやっている研究開発の分野では、大学とどう違うかを競うより、どう互いに補い合って社会に役立っていくのかという形になっていると思います。

―今のお話をまとめますと、国の研究機関として、共通する一つの目的・目標に向かって、個々ではなく組織全体として動けるだけの前提があるということでしょうか?

 仰る通り、そういうことだと思います。我々は国の独立行政法人という形の国の研究機関なので、国としての目指すべき政策目標があります。国民にどのようなサービスを提供できるのか、あるいはどうやったら国民が幸せになるのかということですね。それをもとに、この分野の研究開発を組織的にやりましょうという方針で進むところが、大学との研究機関との違いでしょうか。


グリーンケミストリーは世界的な流れ

―では、今お話いただいている「グリーンケミストリー」という流れも、「国としての目標」の一つとして、
 グリーンケミストリーを日本で根付かせる方向に持っていきたい国の意向があるということですか?

 そうですね。国でもそうですし、世界的な流れとしてもそうなのです。

 そもそも「グリーンケミストリー」という言葉は、アメリカからはじまった言葉です。ほぼ同時期にヨーロッパの方では、「サスティナブルケミストリー(sustainable chemistry:持続可能な化学)」という言葉ができました。少々ニュアンスは違いますが、大体同じような意味です。

 日本では、それを両方取り入れて、「グリーンサスティナブルケミストリー」と言っています。いずれにせよ、世界中の化学産業が皆同じような方向へ進んでいるということです。

 化学産業は、過去にいろいろな問題を起こしてきた歴史があります。ですから国民の目から見ても、「変なことはないか」と非常に気にされています。そして何かが起こった場合、企業としても大変負担が重くなるものです。ですから、何かが起こらないようにするために、極力変なものは扱わない方向にどんどん持っていこう。それが今の流れですね。


使う側が意識しないものをつくる

―仮に、化学産業のすべてがグリーンケミストリーに置換されたとすると、どのような社会的インパクトがあると、わたしたちはイメージすれば良いでしょうか?

 グリーンケミストリーは概念ですので、「これがグリーンで、これがグリーンではない」というはっきりした仕分けがあるものでは無いと思います。目指す方向がグリーンだ、という意味なのです。

 ですから「グリーンケミストリーになった時となっていない時では、インパクトはどう違いますか?」という質問は難しいですね。けれども製品を使っている一般の人の側からすると、「あまり変わらない」ということが目標でしょうね。

―それはなぜですか?

 例えば、ここに化学繊維でできた洋服があるとします。これがグリーンケミストリーでつくった新しい材料に変わって、「着心地は悪いけれども環境にいいから我慢してね」では駄目なのです。

 グリーンケミストリーは、製品の後ろに隠れていて、使っている人にはあまりそれを意識させてはいけないものかもしれません。


有機溶媒の代わりに高温高圧の水や二酸化炭素を使う

―グリーンケミストリーの流れをけん引するために、具体的にはどのようなことをしているのですか?

 例えば、薬や服などの材料をつくる際、原料を溶媒の中に溶かした状態で反応をし、材料をつくります。そのような原料は有機溶媒にしか溶けないものが多いので、従来は有機溶媒の中で反応させて材料をつくるのが基本でした。

 大ざっぱなイメージとしては、大きなタンクの中に有機溶媒と原料や触媒が入っており、それを加熱したり冷やしたりしながら、何時間もかけて反応させ、その中から必要なものを分ける、ということが基本です。しかし大量の有機溶媒を使うとは、外に漏れ出さないように厳重な管理が必要ですし、使った後に多くの処理が必要になったりと、いろいろな問題がありました。

 そこで我々は物質を合成するのに、例えば、高温高圧の水を溶媒にして水の中で反応をさせたり、あるいは高圧にして液体のようになった二酸化炭素の中で反応させたりという方法の研究をしています。そのような手段によって、有機溶媒の使用量や排出量を抑えることを試みています。


高温高圧下でものを反応させる

―同研究センターならではの切り口とは、どのようなものでしょうか?

 有機溶媒を使わないという点では、普通の水の中で新しい触媒を使って化学反応をさせる方法などについて、大学などで非常に良い結果が数多く出ています。我々のところでは少しそれらとは違い、高温高圧の水の中などで、しかも極めて短時間に、ものを変化させることを中心課題の一つにしています。

 従来も、そのような反応はいろいろ試みられてきましたが、なかなかうまくいきませんでした。なぜかと言うと、高温で高圧ですから、物質が分子レベルでばらばらになり、分解されてしまうために制御が難しいのです。

 また、完全に分解されないまでも、途中でいろいろな反応が起きて、利用しにくい複雑なものができてしまう。すると、それを完全に分けて使えるようにするために、手間も、エネルギーも、お金もかかっていました。

 そこで我々は、欲しいものだけをつくることができる、あるいは、欲しいものを効率良くとれる方法を目指して研究開発をしているところです。

―具体的には、どのような方法で制御しているのですか?

 いくつか方法があります。ひとつは、非常に短時間だけ加熱して反応させる方法です。例えば、従来の有機溶媒の中では10時間で反応させていたものを、高温高圧の水の中で0.1秒だけ反応さ、その後に生成物を急速に冷やします。

 一般に化学反応は温度が高いほど早く進みます。ですからこの方法では、高温で短時間の間に原料が反応した後、次に別な反応が起こる前までに瞬時に冷すことで、できた物質を固定することができます。このような手段を使って、高温高圧の水という条件を使っているにも関わらず、欲しい物質を選択的につくる技術がいくつもできてきています。

 あるいは二酸化炭素を使う場合、高圧下の二酸化炭素は超臨界という状態になって、有機物をある程度溶かすことができます。そこで、高圧の二酸化炭素の中では、有機物の化学反応をさせることができます。

 こちらの場合は、高圧の二酸化炭素の中に、その条件に適した触媒などを入れることで、反応の効率を良くすることができています。

 また、化学反応でものをつくる話とは別ですが、有機溶媒を使う量を減らすことに関連したお話をもうひとつ。例えば皆さんがペンキを塗る時、塗りやすくするためにシンナーを混ぜて薄めてから使いますね。このシンナーは有機溶媒です。ガソリンの友達みたいなものです。

 しかしペンキを塗った後には、シンナーは蒸発して空気の中に出て行ってしまいます。シンナーは体と環境に良いものではありません。そこで我々の研究センターでは、別のものに置き換えましょうという技術の開発も、塗装関係の企業などと一緒にやらせていただいています。

―シンナーの代わりに何を使うのですか?

 ここでも二酸化炭素を使います。高圧にした二酸化炭素と塗料をうまく、素早く混ぜてからスプレーすると、いろいろと開発の途中苦労したところは全部省略しますけれども、材料をきれいに塗ることができました。塗料を塗った後に時に蒸発して出てくるのは、二酸化炭素と少しのシンナーだけです。この方法では、シンナーとして空気中に出ていたものが、とても少なく済むのです。

 二酸化炭素と言うと、「なんだ、気候変動の原因じゃないか」という話になるかもしれません。けれども、もともと別の所にあった二酸化炭素を詰めて、またこちらに出しただけなので、全体での排出量は変わっていません。むしろシンナーを作ったりするエネルギーを考えると、全体での二酸化炭素の排出は少ないと言えます。

 この技術は、あまり化学っぽくないイメージかもしれないですが、その考え方や解決の方法は、化学工学の技術とグリーンケミストリーの考え方を使っているということですね。このように、違う分野で化学技術を使うための技術開発にも力を入れています。


アイディアで横方向に広げる

―「高温高圧の水の中などで極めて短時間にものを変化させることは、従来いろいろ試みられてきたけれども、なかなかうまくいかなかった」と先ほど仰っていましたが、そもそもなぜ他の人はなかなか真似できないのですか?

 うーん、なぜでしょうね(笑)。高温高圧の中でいろいろな化学反応させるのは非常に新しいサイエンスで、とてもエキサイティングでした。そこで広く研究されてきたわけですが、では実際に産業で使いましょうとなると、やはり多くの難しさがありました。

―どのような難しさがあったのですか?

 ひとつは、高温高圧の状態ですから、反応する場所の材料が腐食して弱くなってしまう問題がありました。また、これを短時間で反応させるとなると、非常に速く流したり、混ぜたりする必要があるのですが、ではそれをどのように実現するのかといった問題もありました。このほか、どのようにして狙い通りに急に温度を上げるのか、冷やすのか、という問題もありました。

 そのような問題に対して、なかなか解決策が見つかりませんでしたが、我々は組織的な協力関係や広い分野のコラボレーションで新しい方法を提案し、なんとかクリアすることができたのです。

―今までのお話を例にすると、具体的にはどのように解決したのですか?

 では、有機溶媒の代わりに水を溶媒に使って短時間で反応させることで、効率よくものをつくるという話を例にしますね。

 例えば、こちら(横側)から物質を溶かした高温の水が入って来ます。こちら(下側)からもっと高温で圧力の高い水が入ってきます。一緒にして混ぜてしまうと、ぱっと温度は上がりますよね。

 それを、非常に短時間に効率良く混ざるような方法と装置を考えて、そこから少しだけ時間が経ったところで、今度は冷たい水を同じように効率よく混ぜてやると、すとんと素早く温度が下がります。

 このような手順をまとめてうまく出来る装置を開発しました。もたもたと混ぜていると、せっかく反応を短時間にやろうとした意味がなくなってしまうためです。

 そのためには、化学反応の知識だけではなく、材料を選定したり機械をつくったり設計したりする、いわゆるエンジニアリングという部分やシミュレーションの技術も大変重要になってきます。その辺りの技術でも、研究員が協力し合いながら並行して進めることができたのが、開発がうまくいった理由のひとつだと思います。

―同じような発想をもって、取組んだところは他にないのでしょうか?

 世界でライバルはいくつもありますし、同じような取り組みも当然あります。しかしが、今のところは我々が一歩進んでいるかなと思っています。新しい技術の開発によってうまくいったわけですが、みんなの様々なアイディアが実を結んだと言うことですね。

―化学反応とエンジニアリング、平行して進めたとのことですが、それは先ほどのお話にあった、一つの共通目的に向かって組織全体として動く強みが発揮されたということなのでしょうか?

 まさにそうですね。それぞれの専門家が一緒に同じ目標に向かって研究開発をして、まさに人間のシステムという感じで、プロジェクトをすすめていったところに強みがあったのではないかなと思います。

 大学では、ひとつの重要なところをどんどん深くやることが大切な仕事ですね。我々も深く掘り下げるところももちろんありますが、横方向にも視野を広げて、目的達成につなげていくことも強く意識大事しているので、取り組み方に少し違いはあるかと思います。


地球環境に対する影響を減らしていく

―最後に、将来のビジョンをお聞かせ下さい。同研究センターの研究開発を通じて、どのような将来像を描いていますか?

 まずはグリーンケミストリーを、社会的に広く使われるような技術にしていくことです。それによって、世の中の化学技術を使ったものづくりの中で、環境中に排出される有害物質や、使うエネルギーをなるべく減らしたり、効率良くものつくったり、あるいは将来的に資源が心配な石油や石炭をあまり使わずにものをつくったり。そのような社会の実現に役立っていきたい、というのが一番の目標ですし、我々の研究センターのミッションでもあります。

 それをどうやって実現していくのかは、先述の通り、ひとつ目には、化学のプロセスで使っている有機溶媒を使う量を減らそうという研究や、石油にかわる資源や原料を利用しようという研究などのそれぞれの技術開発を、今も活発に進めています。

 二つ目は、開発リスクの高い、新しい技術を実用化につなげるためにはどうするか、といった立場からの仕事をいくつかやっています。グリーンケミストリーを実際に使われる形に持って行くための、システムを作るため研究開発がこの部分だと考えています。

 三つ目は、化学的なものづくりの中で、新しい材料の開発や触媒の開発が非常に重要なキーワードになります。新材料の技術や新らしい触媒の開発を他の技術と組み合わせて、やはり世の中に出していきたいですね。

 以上は、我々の研究センターが7年間の計画の中で、思い描いていることの一部です。

―では、究極の目標は何ですか?

 先ほど、グリーンケミストリーが進んでいくと、どれくらいインパクトがあるのか?という質問がありました。グリーンケミストリーが進むと、我々の暮らしは変わりませんが、化学の産業構造は全く変わってしまうかもしれません。

 例えば、石油を製品のベースにしないことがひとつでしょう。原料が全く違うもの、例えば植物に由来するものになります。それから、製品のつくり方としても、一カ所で大量につくり、運んで大量に消費するのではなく、必要なだけ必要な場所でつくる、となるでしょう。

 そのような中で、実際の産業の形はいろいろと変わっていくと思うのです。そして、より環境に優しい産業になっていく。その実現に研究センターが僕らがどれだけ役に立てるか、ということだと思います。

 物質的にも精神的にも、より豊かな生活の実現をサポートする中で、地球環境に対する影響を減らしていくことを実現する、ということでしょう。


いろいろなつながりを想像して

―今までのお話を踏まえて、中高生へメッセージをお願いします。

 世の中では、ひとつの物事や現象は単独では存在しておらず、周りのいろいろなものと関連があり、どこかでつながっています。そのつながりを、いろいろと想像しながら勉強して、自分と社会の将来のことを考えほしいなと思いますね。

 これまで化学技術の話をしましたが、製品の原料(という入口)から(製品という)出口までの道のりは大変長く、いろいろな部分で横方向にも広がってつながっています。

 例えば、製品の原料が石油からトウモロコシになったとき、その時に一体何が起こるのだろう?皆が畑でトウモロコシをつくるようになっていくだろうか?けれども、実際はそういうことにはならず、きっといろいろな問題が起こるでしょう。

 つまり、あるものを新しい技術で変えた時、一体どのような影響が周りにあるのだろう?あるいは他のいろいろな条件の影響で、実はこういう風になっていくだろう、という物事のつながりや関わりを考えることが重要だと思います。その広がりを想像しつつ、自分の将来を考えほしいということでしょうか。

―花岡さん自身、研究する時にそのようなつながりを、強く意識しているということですか?

 そうですね。我々で言えば、何かの問題の対策としてこの研究をやりましょう、となります。その中で(研究開発を)はじめる前に、技術としていくつかの候補は当然ありうるわけです。

 では、この技術を中心にやりましょうとなった時には、技術の優劣だけではなく。その他の条件もできるだけ考えた上で、選ばれるわけです。その中では、技術単独の優劣だけではないつながりについて、強く意識しています。

 最後に、この記事を読まれる中高生の皆さんへ。毎年の一般公開などもありますので、ぜひ産総研へ見学にいらしてください。

―花岡さん、ありがとうございました。

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