(9258)
2017年 05月 23日 (火)

「エネルギーの地産地消」挑む魚のまち塩竃 「新エネ百選」記念セミナー

2009年11月17日公開

塩竃市の取り組みが「新エネ百選」に選ばれたことを記念して12日、市内で開催されたセミナーのようす

 大量発生する揚げかまぼこの廃食用油を精製し、軽油の代わりとなるバイオディーゼル燃料(BDF)として活用する塩竃市の取り組みが「新エネ百選」に選ばれたことを記念して、12日、市内でセミナーが開催された。

 新エネ百選は、地域にマッチした地産地消型の新エネ導入事例を評価するもので、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と経済産業省が今年初めて創設。他の地域でも参考にしてもらい、新エネルギーを全国に広めるのがねらい。

 セミナーには、BDFに関心のある民間事業者や行政担当者ら約80人が県内外から参加。新エネ百選に選ばれた全国のBDF事業5つが紹介され、続いて市内にあるBDF関連施設の見学会が行われた。


◆魚のまち塩竃ならではの「エネルギーの地産地消」評価

塩釜市団地水産加工業協同組合が運営するBDF精製施設

 生メバチマグロ水揚げ日本一を誇る塩竃市は、水産練り製品も生産量日本一の「魚のまち」。かまぼこを揚げた後に出る大量の廃食用油を、BDF事業によって資源へ転換し、地域で消費する「エネルギーの地産地消」を推し進めている。

 BDF事業は、市内の水産加工業者でつくる「塩釜市団地水産加工業協同組合」が主体となり、市や公的な研究機関などと一緒になって進めているもの。

 組合が国の補助を受け、1億3千万円で建設したBDF精製施設は、2006年度から本格稼動。月産約3万6千リットルの精製能力は、東北最大規模を誇る。

BDFが実験的に導入されている市営渡船の見学会もあった

 製造したBDFは、事前登録制で販売。市内の運送業者や市の公用車などが、施設内に設置された専用スタンドから給油。07年度からは実験的に市内の離島を結ぶ渡船へ導入、「地域の足」としての活用を進めている。

 BDFは地球温暖化対策に有効とされ【参照:バイオディーゼル燃料とは?】、力を入れる自治体も多い一方、原料の安定確保やコストの面で課題も多いという。

 面積わずか17k㎡の塩竃市内に、水産加工業者が集まってできた組合は、組合員から月間約3万リットルに及ぶ大量の廃食用油を効率良く回収できる。そのため原料の回収にコストと時間がかからないことが強みだ。

BDF精製施設にて、事業説明を行う組合の渡辺信哉業務部長

 一方で、競合関係にある軽油価格の変動が、BDFの販売量に大きく影響することが課題だ。昨年の原油価格高騰時は、軽油より安くなり販売は好調だった。しかし今年は軽油価格が下がり、「現在はコスト割れの経営だ」という。

 組合は販路拡大に力を入れ、市は側面支援を続ける。組合の渡辺信哉業務部長は「BDFの利用促進につながる施策を国に求めている」とも話していた。

 新エネ百選に選ばれた兵庫県加西市から参加したバイオマス課の田中忠彦さんは、「塩竃市の地域特性を生かした本格的な事業で、技術的にも確立されている印象を受けた。回収コストがかからないのが素晴らしい」と感想を語った。

 また田中さんは「(課題である)BDFの販路拡大方法に着目している。BDFを使ったエコキャンドル作りなどの普及啓蒙は、すぐに真似できそうで参考になった」と話していた。

 東北経済産業局エネルギー課長の泉秀明さんは、「導入プロセスの苦労や事業化への課題など、ざっくばらんに語ってもらい、地域にマッチした更なる新エネ導入につなげていきたい」と話していた。

【バイオディーゼル燃料とは?】
バイオディーゼル燃料(BDF:Bio Diesel Fuel)は、植物性油脂などを加工したディーゼルエンジン用燃料の総称。植物性油脂などにメタノールを注入し、グリセリンを取り除くことでつくられる。原料となる植物が吸収していた二酸化炭素を燃料にして排出するため、大気中の二酸化炭素濃度は理論上「プラスマイナスゼロ」と計算される。


◆担当者のNEDOエネルギー対策推進部の楠瀬暢彦さんに聞いた

―本セミナーの開催趣旨について聞かせてください

NEDOエネルギー対策推進部の楠瀬さん

 今年4月「新エネ百選」を選定して経産省へ発表、東京の会場で表彰式は行ったものの、地域への情報発信はまだ足りない。一つ目のねらいは、選定地域で記念セミナーを開催することで、地域の協力を得て事業がスムーズに進むようサポートすること。二つ目は、他地域の取り組みを互いに知ることで、事業をランクアップしてもらうこと。三つ目は、同事業者同士のネットーワークをつくることで、事業が「点」から「面」に広がることを期待している。

―「新エネ百選」に塩竃市が選定された理由は何ですか

 大量に油が発生するため、地域として事業を行う必要性がある点。それを地産地消型で地域に還元しようと多大な努力をしている。経済的なハードルが高い中、その努力が実りつつある。モデルケースとして他地域に普及させることが「新エネ百選」のねらいだが、その可能性が高い。

-最後に、中高生へメッセージをお願いします

 最近の中高生は、環境やエネルギーに対する意識が高い。けれども多くの情報が発信されている分、自分で体験する前に、わかったつもりになってしまうところがある。当たり前のようにいつでも使えるエネルギーだが、実際に自分でつくってみると、エネルギーをつくることは大変なことがわかる。それを実際に体験してもらうと興味も湧くのでは。何でも自分でチャレンジしてみることが大切だ。

【新エネルギーとは?】
 新エネルギーとは、「技術的に実用化段階に達しつつあるが、経済性の面から普及が十分でないもので、石油に代わるエネルギーの導入を図るために特に必要なもの」と政策的に定義されている。そのため、実用化段階に達した水力発電などや研究開発段階にある波力発電などは、自然エネルギーであっても新エネルギーには指定されていない。
(参照:財団法人エネルギー財団 新エネルギーとは

取材先: 塩釜市      (タグ: , , ,

▲このページのトップHOME


コラボレーション

ハワイ惑星専用望遠鏡を核とした惑星プラズマ・大気変動研究の国際連携強化)×宮城の新聞
東北大学工学系女性研究者育成支援推進室(ALicE)×宮城の新聞
宮城の新聞×東北大学理学部物理系同窓会泉萩会
KDDI復興支援室×宮城の新聞インタビュー
宮城の新聞×東北大学大学院 理学研究科 地学専攻 塚本研究室
宮城の新聞×生態適応グローバルCOE

おすすめ記事

【特集】宮城の研究施設

一般公開特集

【特集】仙台市総合計画審議会
参加レポート

仙台の10年をつくる

【社会】社会って、そもそもなんだろう?





カテゴリ の記事一覧

同じ取材先の記事

取材先: 塩釜市 の記事一覧


▲このページのトップHOME

社会って、そもそもなんだろう?
最新5件



カテゴリ


取材先一覧

■ 幼・小・中学校

■ 高校

■ 大学

■ 国・独立行政法人

■ 自治体

■ 一般企業・団体


宮城の新聞
仙台一高
宮城の塾
全県一学区制導入宮城県内公立高校合同説明会をレポ
宮城の人々