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2017年 06月 26日 (月)

みやぎの日本酒を美味しく飲める理由

取材・写真・文/大草芳江 2008年3月11日公開

 宮城県酒造組合が、「日本酒サポーターズ倶楽部」という会員限定の利き酒会を開くということで、一地酒ファンである私は早速取材に行ってきた。会場には、宮城県純米酒推奨審査に出品された市販酒108点がずらりと並んでいる。参加者は皆真剣な面持ちで、黙々とお酒の香味を確かめている。

 この利き酒会、ただの利き酒会ではない。宮城県酒造組合の伊藤謙治参事によると、この会員限定の利き酒会、昨年11月にオープンしたばかりの組合のHP「みやぎの酒選り取りナビ」への掲載商品すべてを、消費者に体験してもらう目的で開催されていると言う。伊藤参事いわく、「ファンへのサービスイベントの第1弾」だとか。

 いわゆる試飲即売会とは異なり、純粋に選ぶ体験のみの利き酒会は、全国的にも珍しいそう。つまり「購入しないと悪いかなぁ...」という強迫観念ゼロの、いろいろ試してみたい消費者心理にぴったりな利き酒会なのである。

 しかもこの利き酒会には、さらに奥深い関係者側の意図が。そのキーワードとなるのが、組合HP「みやぎの酒選り取りナビ」。このHP、ただのHPではない。


主観的表現に、客観的データのメス

 少し前の話になるが、昨年11月、国税局酒モニターの仕事で清酒製造技術研究会へ視察に行ったときのこと。清酒製造関与者が鑑評会出品酒の官能検査を行うため、会場には、東北各地から出品された約450点もの吟醸酒・純米酒が県別に所狭しと並べられている。

 鑑評会出品酒をひたすら利いていく。日常で経験できるレベルを遥かに超える種類だ。これだけの数があると、なぜか不思議と無心となり、ラベル等の表示が気にならない。酒の香味にピンポイントで集中できる。すると「このお酒はこういう傾向、そのお酒はああいう傾向」と、なんとなくではあるが、もやもやと自分の中で、香味をプロットしたい気持ちが生まれてきた。

 しかし悲しいかな、感じたままを表現できるボキャブラリーと、立体的に認識できる体系が自分の中にはない。言語化できない悔しさをかみ締めていたその時だった。

 品質評価員として参加していた宮城県産業技術総合センターの橋本研究員を偶然発見。早速その悩みをぶつけてみると、例のHPの話が出てきたのである。

 橋本研究員曰く、これまで日本酒の商品情報は、根拠のない主観的なものだったと言う。そこで宮城県酒造組合では、酸度、日本酒度など一般には分かりにくい表示方法を使うことなく、客観的なデータに基づいて、製法や香り、味の濃さなどで評価し、独自のガイドラインを策定したらしい。

 そのガイドラインに基づいて、幅広い日本酒の楽しみ方を提案するツールが、「みやぎの酒選り取りナビ」というわけなのだ。


3ヶ月に一度、利き酒会が開催される理由

 特筆すべきは、このガイドライン、主観的な印象と客観的なデータを近づけるために、3ヶ月に一度は見直されるそう。その見直しの時期に合わせて、毎回この会員限定の利き酒会を開催する予定だと言うのだから、宮城の地酒ファンとしては感激だ。

 「お酒の美味しさ以外のプラスアルファの部分で、ファンに還元できるものをつくりたい。そんな思いで、日本酒サポーターズ倶楽部を立ち上げました。HPに掲載している情報は3ヶ月に一回更新されますが、それをお客様にダイレクトに見てもらう場がこの利き酒会です。情報と酒を見比べて、こういう味、香りなんだと、体験を通して、情報を有効に利用して欲しいと思います」と伊藤参事。

 ちなみに、「日本酒サポーターズ倶楽部」は、20歳以上で日本酒がお好きな方なら、メールアドレスを登録することで誰でも入会可能。今後も会員対象に、組合は様々な提案をしてくれるそう。


みやぎの日本酒は全国最高レベル

 宮城県が全国の都道府県で唯一、 2006年度の清酒販売量が前年度を上回ったというニュースは記憶に新しい。このような取組みを積極的に推進されている同組合を見ていると、一消費者として、その結果にも納得がいく。

 ちなみに宮城は、特定名称酒(純米酒や吟醸酒などいわゆる高級酒)の製造が盛んで、2006年度の特定名称酒の醸造割合は酒造全体の、なんと、83.4%を占めているというから、驚きだ。ちなみに東北平均は41.2%、全国平均は26.4%。宮城のお酒は、全国的に見ても最高レベルであることがわかる。

 こんなに美味しいお酒を頂けるのも、蔵元さん方の努力の賜物。ご縁あって県内の蔵元を訪問する機会も多い。その度に、まるで我が子を育てるように手塩をかけて造られていく、本来の日本酒の姿を見る。「宮城県産酒は県民の宝です」という名店「一心」(青葉区国分町)のモットーが、恐れながら、しっくりと馴染む。

 そもそも、このように宮城で純米酒造りが盛んなのは、同組合が1986年、「みやぎ・純米酒の県宣言」を行い、他都道府県と差別化を図り、重点生産する方針を打ち出したためだそう。

 表面的なPRだけに留まらず、草の根的ではあるが、真の地酒ファンができていくような宮城県酒造組合のこの取組み。本当に良いお酒を提供したいという思いが強いからこそ為せる業だ。

 これからも、安心して宮城の地酒を美味しく頂けそうである。


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