環境配慮と経済成長を両立させるには?
―経済成長と環境配慮の両立は難しい、といった課題は最近よく聞かれますが、
科学を切り口にしたとき、その両立について、どのようにアプローチできるとお考えですか?
産総研の大きな研究の考え方として、お話しますね。
これまでは環境配慮をすることによって、
製品の生産コストが上がった。
製品コストが上がるということは、
ほかと比べて高くなれば、それは競争力を落とす、ということ。
ですから、環境へ配慮することと、産業の競争力を高めることは、
「反比例している」という言い方を、よくされてきたわけですね。
けれども、その両方を満足させることを考えるのが、
これからの科学技術でしょう。
ということで、環境配慮と産業の競争力強化を両立させる。
これが産総研の大きなミッションのひとつになっているわけです。
―具体的には、どのような切り口で両立させようとしているのですか?
私の専門ではないのですが、今、
この産総研東北センターで研究していることをお話しますね。
人間は、このような生活をしていくうえで、
いろいろなものづくり、いろいろな化学製品に頼った生き方をしています。
そこはそう簡単に、自然回帰すればよい、という話ではありません。
より安全安心で便利というように、人間にとってよりよい環境をつくるためには、
いろいろな化学物質がこれからも必要になってくるだろう、と思うのですね。
それらを生産する段階、あるいは使い終わった後、
いわゆる人間のまわりの環境に出されたときに、
その環境を悪くするようなことがない技術にならないといけない。
―人間のまわりの環境を悪くしない技術とは?
いろいろなものの反応は、今までの化学物質をつくるプロセスを、
より「効率が良い」方向にすることで、省エネ化を図ることができます。
―「効率が良い」とは、別の言葉で言うと、どういうことですか?
化学反応に適した条件を瞬時につくることで、副生成物を減らし、効率化を図る
ある物質とある物質を反応させて、
何かほかの物質をつくろうとしたときに、
その効率、別の言葉で言えば「収率」を上げるわけです。
AとBからCをつくるときに、
100%Cになることは少ないわけです。
どうしても途中の副生成物はできてしまう。
その化学反応に一番適した(温度や圧力などの)
条件であれば、例えば100%いくものも、
その条件にするまで時間がかかったりすると、
その途中でいろいろな副生成物ができてしまうわけです。
それを、一番良い状態にパッとするような条件で、
いろいろなものの生産をしようという考え方のひとつが、
「コンパクト化学プロセス」です。
―具体的には、どのような技術開発をしているのですか?
具体的には、非常に狭い空間で、
圧力の変化、温度の変化を瞬時に行います。
すると、通常の反応速度よりも速い速度で
その条件にもっていけるので、
合成の途中段階で、副生成物がほとんどできずに、
その製品がすべてできてしまうわけです。
そのためには、合成のプロセスの環境を
瞬時に変えるという技術がないとできないわけですね。
そのような技術開発をしています。

高温高圧な条件で利用できるマイクロリアクター(化学反応に用いる反応空間の幅が非常に狭い化学反応器)を用いた化学反応実験のようす
化学反応の途中段階で、化学物質の代わりに、特殊な二酸化炭素や水を使う
もうひとつは、水や二酸化炭素など、通常そこらにあるものを、
ある温度・圧力の条件にもっていくと、
通常我々が接しているものとは、全く違った性質を持ちます。
「超臨界水」や「超臨界二酸化炭素」が、その代表例ですね。
―特殊な温度や圧力下にある水や二酸化炭素は、どのような性質を持つのですか?
通常、水には油が溶けにくいわけだけども、
そのような状態では、油を非常に良く溶かすことが起こったりします。
すると、今までは化学物質を合成するのに、
ほかの化学物質(有機溶媒)を使わざるを得ず、
それが廃棄物として出ていたわけですが、
その代わりに、水や二酸化炭素を使う条件でやれば、
途中段階で使う化学物質は、一切使わなくて済む。
その化学物質が、廃棄物として環境に出て行くこともない。
そういうことが、考えられるわけですね。
―今までの化学合成に比べて、コストはかからないのですか?
今ですと、圧を変えたり温度を変えたりするところに、
逆にコストがかかるところがあります。
そのため、全体として現在のプロセスを、
経済的にも有利な条件にできるよう最適化して、
開発していくことが必要になってくるわけです。
不必要なものはつくらないで、
必要なものだけを必要な量つくる。
そういうことによって、経済性も環境配慮も両方、
満足した製品になっていくでしょう。
外に出て、もっと遊べ
―最後に、中高生へメッセージをお願いします。
仮に、中高生時代の原田さんが、今この目の前にいたとして、
一言だけメッセージを送れるとしたら、何と言いますか?
う~ん、なんでしょう・・・
「外に出て、もっと遊べ」ってことだと思うんですね。
山に行ったり、海に行ったり。
そこには、いろいろな不思議なことが、
そこらにたくさん転がっているから。
そこで見た不思議さを、
不思議なことは不思議として感じて、
何でも調べてみる、聞いてみる。
そういうことをやるとおもしろいな、と思いますね。
―そういったところが、今の原田さんのベースとなり、原動力になっているのでしょうか?
それは、わかんない。
中学生のとき、そうだったかなぁ?
―冒頭、「海に遊びに行っていた」と仰っていました。
それはだいぶ、大きくなってからですからねぇ(笑)
―じゃあ、もし中高生の頃にそうだったとしたら?
そんなことがあったら、
もっとすごかっただろうな、と思いますよ(笑)
―それだけ、五感で自然を見て不思議だなと思うことが、
結果として大きな力になる、ということなのですね。
その通りですね。
―原田さん、本日はどうもありがとうございました。
コラボレーション
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