取材・写真・文/大草芳江
2014年12月2日公開
【写真1】11月21日に開催された「アリスのぶっちゃけトーク -工学女子の現実と本音-」のようす=東北大学青葉山キャンパスあおば食堂DOCK
「アリスのぶっちゃけトーク -工学女子の現実と本音-」と題した茶話会が11月21日、東北大学青葉山キャンパスのあおば食堂DOCKにて開催された。工学系の女子学生や女性研究者23人が参加し、進路や結婚、仕事と育児の両立などについて、ざっくばらんに語り合った。
女性研究者や女子学生のキャリア継続を支援する「東北大学工学系女性研究者育成支援推進室(アリス)」が主催した。同大工学系に占める女性研究者や女子学生の割合は、わずか約1割と少数派。普段なかなか異性には打ち明けにくい悩みや不安を、一人で悩む前に女性同士で気軽に情報共有しようと、アリスでは女子学生・女性教員の交流会を定期的に開催している。
【写真2】お茶やお菓子を片手にざっくばらんに語り合う女性研究者や女子学生たち
挨拶にたったアリス室長の田中真美教授は「辛いこととやうまくいっていないことも、ざっくばらんに話して。どうすれば支援制度として昇華できるかを考え、問題解決につなげたい。一緒に頑張って、成長しよう」と述べた。続いて参加者の自己紹介を行った後、お茶やお菓子を片手に茶話会がスタート。参加者たちは、「大学院博士課程に進学すると、婚期は遅れる?」「子どもが急病になった時や長期出張の時は、どう対応している?」など、日頃抱いている不安や悩みを、なごやかな雰囲気の中、語り合っていた。主なやりとりは、<参加者の声>の通り。
【写真3】女性研究者から女子学生にアドバイスする姿もよく見られた
参加した女子学生は「大学院修了後は企業に就職し、将来は結婚と出産を考えている。先輩方は育児と仕事を両立し、様々な苦労を乗り越えた上でそれぞれ自分に合ったペースを見つけていた。私も経験を重ねながら自分のペースを見つけることが大切だと思った」と話していた。
参加した育児中の女性研究者は「研究と育児の両立で毎日苦労しているが、育児経験者と交流し、大変なのは私だけじゃないとわかった。皆も頑張っているから、私も頑張ろうと励まされた」と話している。
<参加者の声(一部抜粋)>
■研究と育児の両立
・夫と勤務地が異なるため(東北大学工学系の女性研究者の中で、16人のうち11人が配偶者と別居中)、一人で育児と家事をこなしており、毎日が本当に大変。実家や親戚とも離れて暮らしており、いざという時に頼れる人がいない。特に子どもが急病の時、とても苦労している。研究と育児の両立の苦労を、先輩たちがどう乗り越えたか、ぜひ知りたい。
・研究と育児の両立に困っているが、何が必要かが自分でもわからない。経験を共有することで、不安をなくしたり、本当のニーズとサポートをつなげたい。
・大学のベビーシッター利用料補助制度は知っていたが、ベビーシッター利用そのものに不安や引け目があった。しかし状況が突然変わり、ベビーシッターが急に必要になった時、アリスに相談できてよかった。皆に背中を押してもらい、情報収集ができて助かった。
・現在は夫と別居中だが、これから同居して夫婦で育児ができるよう、ポストと勤務地を変えることにした。引っ越し先の地域は、子どもの教育環境を考慮して選びたいと考えており、いろいろと情報交換したい。
・職場や親戚などまわりの理解も重要。相手が仕事と育児の両立に理解がある人かどうかで、話しかけ方も変わる。顔に「イクメン」とでも書いてあれば、話が通りやすいのに...。
■博士課程に進むと婚期が遅れる?
・日本はまだまだ男性中心社会で、男性より高学歴の女性は敬遠されがち。海外の場合、むしろ「ラッキー」と思われるのに...。育児参加についても、男性の役割・女性の役割、という固定概念がまだ日本には残っていると思う。
・全ての男性が高学歴の女性を敬遠するわけではない。同じ研究職同士の結婚も多いし...。
・学生たちは育児よりも結婚をリアルに考えてるようだ。しかし一方で、育休を取得できる会社かどうかや、出産後に仕事をセーブしながら働けるかといったことは、かなり気にしており、詳しく調べている。
■育児経験者からのアドバイス
・育児中は思ったように研究ができず、イライラすることも多かった。しかし「できる範囲でやるしかない」と悟ってから、楽になった。
・若いうちに出産をした方が良い。若い頃の方が体力はあって、責任は小さいから。学生結婚もお勧め。高齢になるほど二人目以降の出産はだんだん難しくなる。
・将来の配偶者は、家事ができる人にした方が良い。
■茶話会に参加して
・普段なかなか女性研究者の方にお会いする機会が少ないため、参考になるお話が聴けてよかった。お互いの経験を共有し情報交換する女子会は、とても重要だと思う。
・将来の道は、自分が思っていた以上に多様であることを学ぶことができた。将来のことも焦らずに、様々なことに挑戦していきたい。
・育児と研究を両立する同じ立場で、悩みも一緒。同じ悩みの仲間がいると、同じ苦労の中にも明るさがある。
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