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2024年 11月 21日 (木)

歴史的発明から最先端研究まで体験 東北大通研で一般公開

2010年10月10日公開

東北大学電気通信研究所で行われた一般公開のようす=同研究所(仙台市青葉区片平2-1-1)にて

 東北大学の電気通信研究所(仙台市青葉区片平2-1-1)は9・10の両日、研究施設や研究成果を一般公開した。子どもから大人まで多くの人たちが訪れ、同研究所の歴史的な発明品から最先端研究まで触れながら楽しんだ。

 現在も電子レンジに必ず使われているマグネトロンや、テレビやラジオの受信に欠かせないアンテナ、ビデオテープやハードディスクの開発につながった世界初の磁気記録方式、光通信や半導体素子など、数々の歴史的発明品を世に送り出してきた同研究所。

 一般公開では歴史的発明品の展示のほか、約30ある研究室・施設が公開され、研究者や学生らが最先端研究をわかりやすく紹介。実験や工作教室なども行われた。

岡部金治郎博士は東北大学在職中に、効率よく安定したマイクロ波を発振することが可能な分割陽極マグネトロンを世界で初めて発明した。この発明によりマグネトロンは実用化に向けて飛躍的な進歩を果たし、世界でも注目を集め、現在も電子レンジや警戒レーダなどにこの技術は広く使用されている。本装置は岡部博士が1927年、最初の実験に使用した2分割陽極マグネトロン。

八木・宇田アンテナは1925年に東北大学で八木秀次・宇田新太郎両博士によって考案された。現在では、テレビ受信用アンテナとして世界各国で広く使用されている。本装置はこのアンテナを初めて実用化した極超短波無線送受信機で、1929年に仙台‐大鷹森(奥松島)間約20kmの通信に成功したもの。翌1930年のベルギーのブリュッセルで開催された万国博覧会に出品された記念すべき装置である。


1032年頃、東北大学の永井健三博士によって日本初の磁気記録研究に使われた、鋼帯を用いた循環型磁気録音機。鋼帯の中の磁石の向きを変えることで音声信号を記録する。磁気記録はその後、カセットレコーダ、ビデオテープ、ハードディスクとして、広い分野で発展を遂げている。

当時の磁気ヘッドと鋼帯を用いた循環型磁気録音機の再現装置。2つのシリンダに巻かれた鋼帯が循環しており、手前に置かれた磁気ヘッドの前を通過させ、記録再生の実験を行った。らせん状に鋼帯を巻くことにより、約3分の長さの録音ができる。参加者らは再現装置で、自分の声を録音し、再生する体験を楽しんでいた。


通研の研究を支えるモノ作りを行う研究基盤技術センター工作部。工作部では情報通信の研究で用いられる様々な実験装置などの開発が行われている。一般公開ではこれまでの製作品が展示されたほか、フライス盤によるメダル作りの実演が行われた。循環型磁気録音機の再現装置も工作部で製作された。

約30ある研究室・施設が公開された。写真は、人との相互作用によって新たな価値を創造するインタラクティブなコンテンツに関する様々な研究に取り組む研究室のデモストレーションのようす。



ハイビスカスの花で発電

「ハイビスカスで作る太陽電池」の工作教室のようす

 「ハイビスカスで作る太陽電池」の工作教室では、火力発電ならぬ「花力発電」を体験。花力発電は、花などの色素が太陽光を吸収し、電子を酸化チタンに受け渡すことで電流が流れるしくみ。太陽光からエネルギーを取り出す植物の光合成に似ていることから「光合成型太陽電池」とも呼ばれている。

 参加者は、まず酸化チタンが均一に塗られた電気伝導性ガラスを、数分間ハイビスカス色素の液に浸けた。続いて、もう一枚の電気伝導性ガラス全体に、伝導性を上げるため鉛筆の芯を塗り付け黒鉛でコーティング。電解液を垂らし、2枚の電気伝導性ガラスを重ねてクリップで留め、電池が完成。電極をつないで光に当て、どれくらい発電したか確かめると、参加者らは「ちゃんと発電した」と声を弾ませていた。

完成した光合成型太陽電池を電極をつないで光に当て、どれくらい発電したか確かめたときのようす

 材料は安価で原料も充分にあることが光合成型太陽電池の特徴。太陽光を吸収する色素には、ハイビスカスのほかアメリカンチェリーなどの天然色素が使われ、電子を受取る酸化チタンは化粧品や白色顔料として身近に使われている。現在主流のシリコンを原料とした太陽電池は、高価で材料不足が心配されることから、光合成型太陽電池は次世代の太陽電池として注目されている。


電池不要のラジオづくり

電池不要のラジオをつくる工作教室のようす

 電池を使わない小型AMラジオをつくる工作教室には、大勢の子どもたちが参加した。子どもたちは、学生らの指導のもと、設計図と部品を見比べながら、6つの部品を慣れない手つきではんだ付けした。

 小型AMラジオは、電波が電線の周辺に集まる特性を利用するもの。はんだ付けが終わると、子どもたちは恐る恐るコンセントの穴にアンテナを差し込み、イヤホンを耳に装着。わずかながらラジオの音が聞こえると、「聞こえた!」と歓声をあげていた。仙台市宮城野区から参加した小学3年生の児童は「楽しかった。電池を使わないのに、本当にラジオが聞こえたのでびっくりした」と話していた。

同研究所所長の中沢正隆教授(写真右)と通研公開実施委員長の四方潤一准教授(写真左)

 同研究所所長の中沢正隆教授は、「一般公開では、通研で行っている最先端研究をできるだけやさしく伝えることで、通研の研究が有効で役立っていること、そしてそのおもしろみを皆さんに理解してもらいたい。説明する学生にとっても有意義で新しい展開につながるだろう。それが将来、子どもたちが科学者や技術者を目指すことの一助になれば嬉しい」と話していた。


取材先: 東北大学      (タグ: ,

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