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2024年 11月 21日 (木)

応用物理学会東北支部が70周年記念講演会を開催

2020年03月23日公開

人数制限を設けてのリアル会場とオンラインのハイブリットで開催された応用物理学会東北支部70周年記念講演会のようす=3月6日

 応用物理学会東北支部(尾辻泰一支部長)は同支部発足70周年を記念した講演会と祝賀会を3月6日、人数制限を設けてのリアル会場(仙台市)とオンラインのハイブリッドで開催した。同会は物理学と工学を結ぶ「応用物理学」に関する学会として1946年に創立。その後、全国に7つの支部が発足し、東北支部は全国で2番目となる1951年に発足、学術講演会や啓蒙活動等を行っている。

尾辻泰一東北支部長による開会挨拶

 記念講演会の冒頭で尾辻支部長(東北大学電気通信研究所教授)は「新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けながらも、何とかハイブリットでの開催にこぎつけた。記念講演会では、各分野で世界を牽引する中沢正隆先生と城戸淳二先生にご講演いただく。特に青少年に対する啓蒙活動や若手研究者の人材育成が東北支部の活動の大きな柱。若い世代のエンカレッジになれば嬉しい」と挨拶した。

東北大学の大野英男総長による来賓挨拶

 次に来賓として東北大学の大野英男総長が挨拶し、「東北支部は70年の長きにわたり、青少年に対する啓蒙活動、若手研究者の人材育成、最先端研究の推進と産業技術の発展に多大な貢献を果たしている。西澤潤一先生、岩崎俊一先生、舛岡富士雄先生をはじめ、世界に誇る卓越した多くの研究人材が東北の地から輩出され、私自身も応用物理学会に育てられた。資源の乏しい我が国がこれから大きく発展し、持続的で明るい社会の実現に貢献するには、応用物理学の発展が大切だ」と語った。

応用物理学会の波多野睦子会長による来賓挨拶

 続けて、来賓の応用物理学会の波多野睦子会長(東京工業大学教授)がオンラインで挨拶。応用物理学会の歴史や活動について述べた後、「特に東北支部の長きにわたる青少年への教育活動は目を見張るものがある。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、いち早く教材を配布する策に転じ、500を超える教材を地域の親子に提供したことは、ニューノーマル時代の特筆すべき活動として、学会のみならず社会からも大きく評価されている」と称えた。

中沢正隆特任教授(東北大学電気通信研究機構、東北大学ディスティングイッシュトプロフェッサー)による特別講演

 記念講演会では、光ファイバー通信の高度化の研究で世界的に著名な中沢正隆特任教授(東北大学電気通信研究機構、東北大学ディスティングイッシュトプロフェッサー)が「超高速・高効率コヒーレントナイキストパルス光伝送と最近の話題」と題して講演。中沢特任教授らが発明し、超高速光通信の伝送効率を向上させることに成功した光パルス「光ナイキストパルス」の研究が「昔から原理と言われていたことが少し違うのではないかと気づいた瞬間から始まった」ことを語り、その解説を中心に、最近の研究活動も含め「1時間でわかる最近の光通信」という話題で講演を行った。

城戸淳二教授(山形大学)による特別講演

 次に、世界で初めて白色有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)の開発に成功したことで知られる城戸淳二教授(山形大学卓越研究教授)が「有機半導体デバイスの開発と地域活性」と題して講演を行った。発光材料の研究を始めたきっかけが、大学の指導教官から「君は城戸(きど)くんだから、希土類(きどるい)はどうだ」と言われたエピソードも交えながら、今やスマホや大型テレビなどディスプレイ技術として広く実用化されている有機EL材料及びデバイスの研究開発の道のりを解説。さらに、開発してきた技術を基に複数のベンチャー企業を立ち上げ、大学を中心に地域活性化を目指す取り組みについて熱く語った。

 講演会後は、新型コロナウイルス感染症対策を徹底した上で祝賀会が開催され、歴代の支部長らが支部長当時の思い出やエピソードを披露した。


応用物理学会東北支部長 尾辻泰一さんインタビュー

 本日、支部発足70周年を記念する講演会・祝賀会をつつがなく開催できたことを本当に嬉しく思っています。応用物理学会は、日本の学術団体の中でも比較的大きな会員数約2万名の組織で、そのうち東北支部会員は約1千名。端的に申しますと「小粒でもぴりりと辛い」東北支部は、これまでの歴史の中でも幾多の世界的に著名な研究者を輩出し、本日の記念講演会でも、光ファイバー通信で世界を牽引する中沢正隆先生と、有機ELを中心とした有機半導体デバイスの産業開発イノベーションを牽引する城戸淳二先生に講演いただきました。東北発の研究者に貴重な講演をいただいたことを大変嬉しく思っています。

 東北支部の活動は、次代を担う青少年に対する教育・啓蒙活動を中心に、若手研究者の研究支援、世界最先端の研究のさらなる牽引と産学連携の推進です。特に「リフレッシュ理科教室」は東北6県で開催して久しいですし、NPO法人ナチュラルサイエンス主催で東北支部共催の「学都仙台・宮城サイエンス・デイ」も大きな活動に成長しています。これからも次代を担う青少年の皆さんに新しい発見や驚きをもって科学に親しんでもらえるよう、我々は引き続き活動を続けていきます。

取材先: 応用物理学会     

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