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2024年 11月 21日 (木)

ものづくりやITのプロが企業や学校で若者育成を支援、好事例を発表

2018年11月30日公開

仙台国際センター(仙台市)において11月13日に開催された「生産性向上のためのIT活用の現状とものづくりマイスターに係わる好事例発表及び意見交換会」のようす

 「生産性向上のためのIT活用の現状とものづくりマイスターに係わる好事例発表及び意見交換会」が11月13日、仙台国際センター(仙台市)で開かれ、県内の企業や工業高校、行政の関係者ら約80人が参加した。厚生労働省の若年技能者人材育成支援等事業を受託している宮城県職業能力開発協会の宮城県技能振興コーナーが、IT活用や技能伝承に取り組む企業の好事例を普及させようと開いた。同事業では厚生労働省に認定された「ものづくりマイスター」「ITマスター」が企業や学校などに派遣され、若者への実技指導を行っている。

青木製作所副工場長の古山茂和さんによる発表『ものづくりマイスターを活用した人材育成について~技能五輪選手育成を通して~』のようす

 好事例発表会では、はじめに青木製作所副工場長の古山茂和さんが「ものづくりマイスターを活用した人材育成について」をテーマに話をした。技能競技大会を通じて若手社員の育成を行う同社が、高齢化による指導者不足などの問題を解消しようと、ものづくりマイスター制度を導入した経緯や効果を説明。古山さんは「マイスターの指導を受け、若手社員は技能向上のみならず人間的にも成長した。今後も同制度を活用して社内のレベルアップに努め、世界中から仕事が集まる会社を目指したい」と語った。

コー・ワークスCTO白田正樹さんによる発表『生産性向上のためのIT活用の現状について~弊社プロダクト「Tibbo-Pi」を活用したIoT事例~』のようす

 続けて、コー・ワークスCTOの白田正樹さんが「生産性向上のためのIT活用の現状について」をテーマに講演した。白田さんは「IoTとは今までインターネットにつながっていなかったモノがつながることで付加価値を生み出す便利なツールと考えればよい」と説明し、同社製品の産業用IoTエッジデバイスについて概説。さらに古い装置の稼働情報の見える化などに導入された事例なども紹介し、「パソコンプラスアルファの知識があればIoT活用は可能。必要性を見極めた上で、まずは小さなことから取り入れてみては」と話した。

意見交換会のようす

 その後、意見交換会が行われ、宮城県ものづくり企業コーディネーター設置事業統括コーディネーターの八島和彦さんがコーディネーターを務め、宮城県第二工業高等学校校長の今野好彦さん、ものづくりマイスターの安部隆雄さん(アンテック代表)、ITマスターの樋口祐紀さん(ナナイロ執行役員)、古山さん、白田さんが、同制度の意義などを語った。

 今野さんは「教員だけでは無理だった課題も、プロの力を借りて指導いただき、ありがたい。ものづくりマイスター・ITマスター制度は学校の教育力を補完する意味でも有効」と話した。ものづくりマイスターの安部さんは「若者自ら上手になりたいと思える環境を如何につくれるかが重要で、それが指導的立場の人の役割」と語った。コメンテーターを務めたみやぎ産業振興機構シニアアドバイザーの白幡洋一さんは「ものづくりマイスター・ITマスターは優れた制度で、幅広い業種業態に活用できる。ぜひ多くの好事例をつくってほしい」と同制度への参加を呼びかけた。


◆ 産学官が力を合わせ、日本の将来を担う若手人材育成を
 /宮城県職業能力開発協会 宮城県技能振興コーナー所長の曵地信勝さん

― 「ものづくりマイスター」「ITマスター」とは、どんな制度ですか?

宮城県職業能力開発協会 宮城県技能振興コーナー所長の曵地信勝さん

 厚生労働省が平成25年度から始めた「若年技能者人材育成支援等事業」で、申請要件を満たす方が、高度な技能と経験を有する「ものづくりマイスター」「ITマスター」として厚生労働省から認定される制度です。認定されると、依頼があった企業や学校に派遣され、若年技能者への実技指導を行います。

 工業系の高校生は、1日最大3時間を上限に年間10回、のべ30時間まで指導を受けられ、材料費も一回につき一人あたり最大2,160円が補助されます。企業については年間20回まで指導を受けることができます。ものづくりマイスターやITマスターへの謝金や旅費については、当事業を受託した当コーナーが負担するため、原則発生しません。

― この制度の趣旨や意義は何ですか?

 その道で長年仕事をしてきた方から知識・技能・技術を直に教えていただける、若い人にとって最高の学びの場です。若い人には、新たな技能と知識を身に付けて自身のスキルアップをしていただくと同時に、「将来は自分が指導者になる」という意識で指導を受けていただきたいというのが、この制度の趣旨です。それが技能の伝承につながります。

― この事業が目指すものは何ですか?

 工業立国日本の中心をなす製造業に関わる若手人材の育成が当制度の大きな目的です。そのような流れで技能を継続していけば、日本からものづくりが消えることなく、材料資源に乏しい日本が新たな付加価値をつけて生産力を上げ、日本の国全体も豊かになっていくはずです。そのためには、学校だけ、企業だけ、行政だけが頑張っても駄目ですから、産学官連携が第一条件になります。そのためのつなぎ役をするのが、我々職業能力開発協会だと考えています。

― 最後に、次世代を担う中高生へのメッセージをお願いします。

 この事業では、これまでお話した企業や学校などの若年技能者に対する実技指導のほかにも、小中学校や普通科の高校でも、ものづくり体験教室や事業所見学などを行うことで、ものづくりやITの魅力発信を行っています。小さな頃のものづくりの経験が将来の進路選定のひとつのヒントになると考えるからです。ものづくりに興味を示す児童・生徒が増えれば、日本のものづくり人口も減らず、ものづくりの伝統・文化の継承につながります。

 宮城で育った人材が、宮城の企業で活躍いただき、宮城の経済発展に貢献いただく。ひいては宮城県民一人ひとりの豊かな生活を実現していく。そのプロセスのひとつを踏むことができる制度ですので、ぜひ多くの子どもたちや若い方に活用いただきたいです。

― ありがとうございました。

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