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2024年 11月 21日 (木)

【オンリーワン企業がオンリーワンたる所以を探る Vol.02】革新的な液体容器を開発し次々とヒット商品を飛ばす研究開発型企業/悠心(新潟県)社長の二瀬克規さんに聞く 取材・写真・文/大草芳江

2017年10月30日公開

人々に喜んでもらえる商品を創造し送り出すために、
一生懸命頑張れば、できないことはない。
技術も会社も、とにかく人ですよ。

株式会社悠心(新潟県三条市)
代表取締役社長 二瀬 克規  Katsunori FUTASE

公益財団法人東北活性化研究センター『"キラリ"東北・新潟のオンリーワン企業』Collaboration連載企画 (Vol.02)
 新潟県三条市に本社を構える株式会社悠心(2007年設立、従業員18名、資本金1億4,310万円)は、革新的な液体容器とその製造システムの研究・開発を行い、次々とヒット商品を飛ばすベンチャー企業である。納豆のタレ袋でお馴染みの「アンプルカット」は同社が開発した液体包装容器で、従来品の使いにくさを解消し、開封しやすく注ぎやすい形状の新しい容器として業界の標準となる。さらに2009年には、開封後も内容物の鮮度を保つ新型液体容器「PID(パウチ イン ディスペンサー)」の開発に成功。PIDは同年8月にヤマサ醤油株式会社に採用され、「鮮度の一滴」の商品名で全国販売されヒット商品となる。「第4回ものづくり日本大賞 優秀賞」「2013年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)」等を受賞。そんなオンリーワン企業の悠心がオンリーワンたる所以を探るべく、代表取締役社長の二瀬克規さんに話を聞いた。


オンリーワン企業になるまでの軌跡

―はじめに、貴社がオンリーワン企業と言われる所以を教えてください。


◆ 人ができることはしない会社

 当社はオンリーワンだと思います。なぜならば、人ができるようなことはしない、という会社だからです。それはなぜか。人がやれることは、人にやってもらえばよい。反対に人がやっていて「困っている」「これは不可能だ」と言われると、技術屋としての"技術魂"がムラムラと燃え、「じゃあ、なんとかしてみよう」と考えるわけです。

 もちろん、会社を経営する以上、ビジネスをしなければなりません。ビジネスは経済活動ですから、難問題を解決するだけでは会社として成り立ちません。経営者として、ビジネスに乗るかどうかを即座に判断する必要があります。この時、現地点ではビジネスに乗らなくとも、従来のマーケットにプラスして潜在的なマーケットとしてあり得るか、未来志向も含めて判断します。もうひとつは、社会的意義を考え、お金にはならないかもしれないけど、これがうまくいけば皆がハッピーになる場合、やるという判断をします。そのような姿勢に役員も含めて社員は共感してくれているのではないでしょうか。

 ですから、我々の仕事はオンリーワンになると思います。人がやれる仕事はほとんどしないので、「こんなことはできないか?」「こんなことで困っている」と色々な方から相談を受けています。


◆ 大企業がリスクある中長期開発をできない今、むしろ中小企業に未来がある

 大企業は、そのようなリスクある中長期開発をできません。なぜならば投資対効果を計算するからです。はじめ仕事を受けるのは決定権のない立場の人ですから、上司の稟議書決裁が必要です。上司は必ず投資対効果を問いますが、未来のことなんてわからないわけです。ですから社員は絵に描いた餅を描かざるを得ないわけですが、それはサラリーマン人生を賭けることです。失敗すれば大企業は減点法ですからね。上司と部下は一蓮托生ですから誰も話に乗れず、リスクある仕事ができない、イコール、新しいチャレンジができないのです。

 特に上場企業である以上、経営者は株価を非常に気にします。実際、私は前職で上場企業役員を務めており、株価にぴりぴりしていました。すると中長期の成果よりも、足元の成果をどうつくるかにエネルギーを傾けざるを得ないのです。中長期投資は先行投資ですから、結果が出るのは5年、10年先の可能性があります。歳を取って役員になれば、その結果を見届ける前にお辞めになってしまう。そんな責任を持てない話に誰が乗れるでしょうか。だから大企業は、中長期で花咲く投資をできなくなったと私には見えるのです。大企業がリスクある中長期開発をできない今、むしろ中小企業の方に未来があると思っています。


◆ 会社とは、社員と取引先、最後に株主のためにある

 志のある若い人は、自己責任で自分の努力が通じるベンチャー企業や中小企業に入社し、頑張って自分が社長になればよいと思うのです。どんなに頑張っても、会社で一人しか社長になれませんから、大企業に入れば役員や社長になれる確率は極めて低いわけで、自分がその会社に影響をもたらすことで喜びを感じる機会はほとんどないでしょう。減点法ですから、転けたら終わりです。それよりも中小企業に入って大いに暴れまくり(笑)、評価され役員になればよいのです。あわよくば自分で会社を上場させればよい。私はそうやって前職の会社で役員になった人間です。実際にやった人間が言うのだから、恐らく間違いないでしょう。

 企業は何のためにあるのか。私は一貫して社員とお取引先、最後に株主だと考えています。上場企業の場合、「株主のため」と答えなければいけませんが、会社が成長するための再投資金も残らないほど株主に配当し、「配当性向が高いから我が社は立派です」という会社には未来がないですよ。我が社の事業を一生懸命伸ばしていこうというよい社員が集まってこそ、よい仕事ができ、よいお取引先のもとに業績が上がり、その結果が株主に還元されるという順番が、筋から言えばスタンダードな考え方だと思うのです。

 私は今年68歳で、34歳からずっと役員をやってきましたから、サラリーマン人生よりも経営者人生の方が長いのです。まだ道半ばではありますが、そのような結論に至ってきたと感じています。


社長が二十歳だった頃

― 次に、二瀬さんが二十歳だった頃について教えてください。


◆ 1万分の1の影響力なんて、つまらない

 二十歳の頃なんて何も考えていませんでした。ただひたすら、どうしたら勉強をしないで遊び歩けるかばかり考えていました(笑)。父親が官僚だったので、官僚になるのは嫌で、工学部に入りました。勉強嫌いだったので、大学の授業もろくに受けず、本能の赴くままに遊び回っていました。具体的なこと?それは言えませんよ(笑)。ただ、そのための努力はしました。例えば、車が欲しいと思えば土木作業員のアルバイトをしたり。商売をしたいと思ったので、資金を貯めるため、もっと稼げる鳶のアルバイトをしたこともあります。

 とりあえず大学を卒業しましたが、普通の大手企業には入りたくありませんでした。当時(1977年)は求人難で、ましてや工学部でしたので、大学の先生の推薦状ひとつでどんな企業にも就職できる時代でした。けれども大きな会社に入れば、所詮コマのひとつになっちゃうわけです。例えば、1万人の会社に入れば、1万分の1にしかならない。そんなの、つまらないでしょう。

 であれば、20人の小さな会社に入れば、自分の存在感は最初から20分の1あるわけです。確かに小さな会社だから倒産するかもしれないし、未来がないかもしれない。でも自分がその会社を選んで入ったわけだから、自分がその会社を大きくすればよいわけでね。自分の努力次第で早く偉くなって、立派な会社にするチャンスが与えられるかもしれない。20分の1ですから。

 ですから前職では、従業員18人、季節労働者を入れても27人の、今の会社より小さな、名も知られていない零細企業を選びました。


◆ 零細企業を東証1部上場企業へ成長させる

 こう言っちゃ悪いけど、会社の体をなしていないような本当にひどい会社でした。逆に、この程度なら、将来は色々なチャンスが与えられるだろうと思っていました。そうしたら、その通りになりました。34歳で役員になり、役員になると色々なことをやれるので、会社を立派にするため製造部長になって、会社を盛りたてるようなことを色々したのです。

 その中で大事なのは、基礎研究なしに明日はないと思い、小さな会社ながらも研究部門をつくったことでした。大手企業と競争する中、独自の商品をつくり上げるためには、やはり基礎からやるべきと感じたからです。そして、他社とは異なるアプローチを世の中に出していったら、それが付加価値となって評価され、それなりの会社になり、東証2部に上場し、最終的には1部に上場しました。1部上場したら「会社は誰のもの?」「株主のものだ」と言われ、そのために私は働いたわけではないと思い、ここに悠心というオーナー企業を設立したわけです。


◆ 圧倒的な競争力を持つ商品は基礎研究から生まれる

 前職の会社で、基礎研究によって圧倒的な競争力を有する技術と商品が次々と生まれることをよく知っていましたので、悠心は基礎研究からきちんと積み上げていく企画開発型の会社です。新しいことをやる時も、市販のものを集めて組み合わせることはやりません。人のできることはしないのです。

【写真】PIDが採用されたヤマサ醤油株式会社の「鮮度の一滴」。

 当社の主力製品は、PID(パウチ イン ディスペンサー)という次世代型液体容器とPID自動充填機システムです。PIDは独自開発の逆止機能により開封後繰り返し注いでも空気が入りにくく、鮮度を保つことができます。PID自動充填機システムも、自社開発しています。材料や機械のみならず、例えば、品質管理の検査に必要な画像処理ソフトも、メーカーの商品を買ってアッセンブルする(組み上げる)のではなく自社開発しています。また、性能試験を行うために、無菌室を設けて微生物の培養もしています。その他にも新しい柱として、工業用途で包装技術を巧みに使う新たな技術を現在開発中で、もう少しで商品になるところです。

 「今こういうものがあるから、これを利用して何かできないかな」という考え方ではなく、「こんなスペックのものがないかな」と世界中を探して歩く会社です。必要なものがわかっている、ここが大事です。必要なものがわかっていて総合的につくり上げられたシステムと、今あるものをうまく利用してつくられたシステムとでは、最終的な性能差が際立って違うからで、そこを狙っていくのです。

 それも無謀なくらい大変ですが、実は、基礎的なことがきちんと理解されていれば、探すこともそんなに難しくないですよ。その分野の専門家がうちには何人もいるのです。100回くらい同じようなことを言っていれば、人間、できるようになるものです。

【写真】社員と活発にコミュニケーションをとる二瀬さんの姿を取材中何度も見ることができた。

【写真】微生物管理設備。このほかにもレーザー顕微鏡や電子顕微鏡など研究・開発に必要な設備が整えられていた。


【写真】液体容器の外袋を生産するための自社開発の装置。

【写真】液体容器の内袋を生産するための自社開発の装置。


― 納豆のタレ袋でお馴染みの、業界標準になった「アンプルカット」についてはいかがですか?

【写真】納豆のタレ袋等に採用されている「アンプルカット」。手で簡単に切れて、中の液が袋に付かず、狙ったところにかけやすい。

 前職の会社で、個人で半分特許を持っています。珍しいんですよ、交渉上手ですからね(笑)。重要なユニットは当社が持っていますが、争うのも嫌なので前職の会社で製造しています。開発動機は、おばあちゃんが「納豆のタレ袋をハサミで切って使っている」と聞いて、手で切れたらよいと思ったから。動機は社会のためなのです。

― 一見すると難しそうなことができる前提とは何でしょうか?


◆ 技術は人

 経済的に考えれば、要は、開発時に投入したものがどれくらいでリターンできるかを単位時間あたりで計算し、短時間で勝負をつけた方がよいわけです。では時間をどのようにして短くするかというと、やはり誰がやるかでほとんど決まりますよね。例えば、センスのある人がやれば1週間でできることを、センスがない人がやれば1年かかってもできない場合があります。基礎研究だって、ほとんどが着眼点です。残すは汗をかく努力ですが、それも解がわかっていれば、まっすぐ進めます。解がわかっていないと、いくつもの経路を迷路のように辿って答えが出ないのです。

 つまり誰を選ぶか。特に技術は、人ですよ。突出した人間ならば1対1万人でも戦える。それが技術の世界です。答えがわかっている人間にとっては、そんなに難しくないのです。私以外に大勢そういう人がいるので、誰が適任かを選べばよいのです。社内だけでなく外も含めて世界中の人から選ぶ。あとは情熱を傾けて説得するだけです。「何とかお願い、手伝って!」と(笑)。目的が単なるお金儲けじゃなく、世の中のために役立たせたいという志で接すれば、多くの人がOKを出してくれます。

 人類のために役立たせたいという志、野心が大事だと思います。野心が人を成長させるし、野心がないと成長しません。年を取って、野心が無くなったら駄目です。私は諦めるのは嫌だし、しぶといのですよ。それで後は何とかなるだろうというところがあります。一生は一回しか無いですから、思う存分やることがあるのです。


◆ 打ちのめされ鍛えられ、強くなっていく

 会社に入ってから、ちゃんとしなきゃと思ったのです。今考えれば情けない話だけど、自主的に勉強したくて大学に入ったわけではないのです。今年94歳になる父親は戦争に行った人で、大学に行きたくても行けなかった人だから、「せめてお前だけは大学に行きなさい」と言われて、行ったようなものだから。

 私も長いこと生きてきてわかったことは、本当に必要なことは人間、一生懸命頑張りますよ。必要なこととは、自分が興味を持ったことや、「こういうことをやってみたい」「こんなことができたらいいな」と思うこと。それを感じることができれば、それが目的になって、一生懸命頑張ります。

 例えば、前職の会社で「基礎研究なしに明日はない」と思い、基礎研究を物理から考えるようになりました。そうしているうちに「論文にまとめなさい」と言う先輩がいて、論文を書くうちに「学会で発表しなさい」と助言する人がいて学会で発表しました。そして「沢山発表したのだから、投稿論文にしなさい」と言われ、形に残すのが大事と思い論文にしたら、リジェクト(不採択)されたのです。査読者からは一般性がないから基礎研究と言えないし、分野の技術資料として残したらどうかと、それとなく言われました。

 すごく悔しいでしょう?こっちは基礎研究で一般性があると思って一生懸命やっているのに。人間、悔しいと思うから頑張るわけで、頑張れば、それだけの成果が出るわけです。その結果、何本かの論文が採択されました。すると私を可愛がってくださっていた先生が、論文博士で審査をしてくださることになり博士号を取得できました。人間、打ちのめされて、強くなるものです。

 企業も同じで、打ちのめされて鍛えられて強くなっていきます。まさにベンチャー企業はその渦中にいます。人生、楽して得られるものなどひとつもなく、一生懸命頑張っているうちに身につくものです。

 その代わり、実力はつきますよ。だって遠回りですから、人の何倍も努力する必要があるから、自信がつくのです。それがうちの会社の技術的背景になっていると思います。だから、「できないことはない」と思っていますよ。自分ができなければ、できる人を探して教えを請いますから。その人のつながりは、いっぱいあります。逆に、その謙虚さが人を育てると思うのです。そんな人生を生きていれば、得られるものは大きいと思います。全部が全部、完璧でないですから。死ぬまで勉強ですよ。

 会社もそうですが、人のために何かの役に立てることは素晴らしいことで、結局それが、自分に返ってくるものなのです。ですから、もし自分が幸せになりたければ、まわりの人が幸せになることを一生懸命努力することで、最終的には、自分にも戻ってくると思います。ですから、どんな人にも存在意義ってあると思うんです。それがちゃんと見つかれば、人のために役に立てて、自分もハッピーになれる人生を歩んでいけると思います。


◆ 中学生の頃は「不良」と言われ

 私、二十歳より前の中学生の頃は「不良」と言われていたのです。なぜかというと、先生の言うことを聞かなかったから。なぜ先生の言うことを聞かなかったかというと、先生たちは矛盾することをいっぱい言うので、「おかしい」と反発していたのですね。すると先生方からすれば、「あいつは言うことを聞かないから不良だ」となるのです。「不良」とレッテルを貼られると、ますます不良になっちゃうものでね(笑)。反骨精神といいますか。子どもの頃から、そんな子だったのでしょう。

 勉強ができなかったわけではないのですよ。ちょちょっとやれば、できたのですけど(笑)。けれども、興味がなかったんですよね。興味があることは一生懸命やっていましたよ。何をやっていたかというと、記憶が無いんですよね。とにかく自分が好きなことを、本能の赴くままにやっていたのでしょう。

 私が若かった頃は、自由な、希望を持てる時代でしたからね。団塊の世代のど真ん中ですから、戦後の日本の黎明期をずっと見てきました。今日より明日がよいと信じられる時代で、事実そうなってきたのです。今の若い人は可哀想ですよ。今日より明日がよくなるとは思えないでしょう。だったら、自分でよくすればいい。大人になったら何かのせいにしては駄目。自分で自分の人生を切り拓いていかないとね。

 多分、子どもの頃からずっと変わっていないと思います。変えたくないのかもしれません。正しいと思っている自分の正義みたいなものが子どもの頃からあって、今でもその正義は変わっていないのでしょうね。例えば、人が幸せになる嘘はよいけど、人を困らせるような悪い嘘はつかないとか。そういうのはありますよね。


【写真】インタビュー中も機械部品の加工をあっという間にこなす二瀬さん


我が社の環境自慢

― 続いて、貴社の環境自慢をいくつか教えてください。


◆ 定年退職がない

 当社を設立して2年目の2008年、定年退職制をなくしました。日本人の平均寿命は年々延びており、男性で81歳、女性で87歳です。国民年金が始まった1961年当時は、男性の平均寿命が65歳、女性が70歳でしたから、年金を貰い始めて数年でお亡くなりになるため、定年退職は60歳で問題なかったのです。ところが現在は、60歳で定年退職されると、残り20年以上も国が補助しなければいけない。そんなことは絶対に成立しない無理な話ですから、これからは長く働く時代になるでしょう。ですから、うちの会社では75歳くらいまではできたら頑張って皆で働こうと話しています。その代わり定年退職制をなくそうと。ただ単に会社にいればよいわけではないですよ。会社のためにプラスになる仕事をしてもらうことが大前提です。


◆ 大手企業OBや大学教員等が若手に勉強会

 年齢を重ねた方の知恵は決して無駄にならず、プラスになることが多いです。それを若い世代に伝えるためにはどうするか。若い人たちと接触するチャンスが大事です。では、そのチャンスをつくるにはどうすればよいか。社外にも、高度な技術や知見を有する方たちは、定年退職してたくさんおられます。そういう人たちを連れてきて、顧問にしています。月1~2回ずつ来ていただき、就業時間内に勉強会を開いていただいています。会社としては忙しいから辛いけど(笑)、先生方の知識や経験を若い社員に吸収してもらうためです。

【写真】「梅崎塾」講座のようす。取材日のテーマは「基礎から学ぶ機械工学」で材料力学の基礎が指導されていた。

 ちょうど本日、私の友人である日本工業大学の梅崎栄作教授が勉強会を開催中です。その他にも、東証1部上場企業で技術本部長や役員を務めていた方々から、開発の手伝いや経営のアドバイス等をしていただいています。その方たちは、お金じゃないんですよ。自分の経験や知恵等を若い世代へ伝承したい気持ちが非常に強いので、そこに甘えて、やっていただいている会社です。ですから、お金がかからないですよ。そういう方たちは皆お金持ちですから。交通費と月固定で数万円、当日は謝礼1万円を差し上げる。あとは飯付・温泉付で私とお話をする(笑)ということをずっと何年もやっています。

 感謝の環境ですが、求人すると、若くて優秀な人材がたくさん来てくれて、申し訳ないのですが、選ばせてもらっています。博士号取得者が3人、修士号取得者も5人いる技術屋の集団で、和気あいあいとやっていますよ。


若者へのメッセージ

― 最後に、これまでのお話を踏まえ、若者へのメッセージをお願いします。


◆ 一生懸命打ち込んだことが報われる経験を

 自分が一生懸命打ち込めることを、若いうちにできるだけ早く探した方がよいです。その達成感を感じた時、自分が成長していく過程の中で何をすべきかが見えてくると思います。些細なことでよいですが、一生懸命打ち込んだことが報われる経験をしていくことが大事で、それがやり抜く勇気につながります。途中で諦めないことです。

 「難しい」と思うことや悩みもたくさんあるとは思いますが、いざ行動を始めてしまえば、そんなに難しいことは世の中にないと思います。行動する前にあれこれ悩んで考えるから答えが見つからないのであって、一生懸命行動するうちに答えが近づいてきます。ですから、行動する前からできない言い訳をするのはよくないです。やれる方法を考えた方がよい。

 やるために必要なお金や時間を会社で差し上げるわけだから、どんどんやってください。うちの会社では、一生懸命やって失敗しても減点はつきません。何もやらないで結果が出なければ、ずけずけと言われます。

 果敢に前向きなことをやる力のある人は、場合によっては、失敗しないようフォローして導きますし、結果として失敗するようなことにはならないです。見えない力でやりますから(笑)。そのうち勘違いして、自分の実力になっていくものですよ。

 とにかく、人ですよ。

― 二瀬さん、ありがとうございました。


社員に聞く、我が社の環境自慢


◆ 経営者や各部署と活発に意見交換できるよい会社
/井口大亮さん(37歳、大阪府出身)

 北海道大学で流体力学を専攻し、博士号を取得しました。二瀬社長が日本実験力学会の副会長を務めていた時、私の研究を見に来てくれたことがきっかけで入社し、今年で入社10年目です。会社の規模が小さいので経営者や別の部署との距離が近く意見をストレートに言える、よい会社だと思っています。


◆ 材料と機械どちらもつくれることが強み
/取締役の本間克美さん(61歳、新潟県出身)

 当社の強みは、材料と機械どちらもつくれることです。一般的なフィルムメーカーでは機械をつくれないので、例えば「ちょっとフィルムの角を取りたいのだけど」と仕様が変更になった時、機械メーカーに外注します。機械メーカーはそれを忠実に再現しようとするので、機械も複雑になるし、価格も高額になり、稟議にかけなければいけません。当社では材料と機械の両方ができるので、お互いにキャッチボールしながらブラッシュアップできます。さらに商品としても、お客様にロール状フィルムと、そのフィルムを液体容器に加工して充填する機械のふたつを供給できます。例えるならば、プリンターとトナーの両方を売るビジネスモデルと同じですね。普通の材料屋さんにはできないことができるのです。

 創業者4名のうち、社長が材料系、役員3名が機械系だったことが、その始まりでした。もともと社長のいた会社が食品用フィルムを製造する会社で、我々がいた会社から液体充填包装機を買い、お客さんにフィルムと機械を納めるビジネスをしていました。我々3人が会社を辞めた時、社長も会社を辞めたので、4人で会社をつくることになったのです。この新潟県三条市に会社を設立した理由は簡単で、創業者4人のうち3人が新潟県出身で、うち2名が三条市出身だからです。社長だけが埼玉県出身で、今も旅館に泊まりながら埼玉から通勤していますよ。

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