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2024年 10月 13日 (日)

「地球の大きなシステム」のなかで、海の役割とは?



「地球の大きなシステム」のなかで、海の役割とは?

―具体的には、どのように研究をしていたのですか?

地球のなかで、
いろいろものが変わりながら動いていく。

そのなかで海というものは、
陸でいろいろとやったものが必ず入ってくる。

海というものは、
単なるビーカーのなかの水とは違う。

海のなかには、生物もいる。

海に入ったいろいろなものは
生物によって、変わりながら、
またそのなかを動いていく。

この大きな地球のなかで、
いろいろな物質がぐるぐるまわるなかで、

一体、海というものは、
どのような役割を果たしているのだろう?

大学時代を含めて、自分で研究をしていたとき、
それが一番大きな課題だったんですね。

それを解き明かすために、
いろいろな考え方をしたり、いろいろな観測をするんです。


ある放射性物質を「時計」として見る

―どのような考え方、観測の仕方で、研究をしていたのですか?

地球上にはどこにでも、ごく微量ですが、
放射性の物質が含まれています。

放射性の物質とは、放射線を出すということですが、
その物質が「放射壊変」といって、
他のものに変わっていくわけですね。

ある放射性の物質(放射性同位体)は、他のものに変わるのに、
一定の時間で一定の割合で減って(壊変して)いきます。

海のなかで、その放射性のある元素が、
どのように分布しているかを測ることができれば、
その放射性同位体を「時計」として見ることができるのです。

―放射性同位体を「時計」として見るとは、例えば、どういうことですか?

例えば、10年で半分壊れちゃう物質があるとすると、
それは「半減期が10年」という言い方をするんですね。

もともと100あったものが、今は50になっちゃった。
すると、それは10年経った、ということがわかるわけです。

逆に、何年経ったかがわかれば、10年前の濃度がわかります。

そのような原理を利用して、
海水の動きの速さや、広がっていく速さなどを、
観測から出せないだろうか?ということを最初に研究していたのです。


海の水がぐるっと循環するのに2000年

このような研究は、決して私がはじめてではなく、
昔からある程度、研究されていました。

一番有名なのは、「炭素14」という、放射性炭素の分布。

炭素14の海水中での分布を測ることによって、
海の水がぐるっと大きな循環をするのに、
2000年以上かかることがわかってきたんですね。

つまり、ある表面にあった水が、ぐるっと海の一番深いところまで、
(深いところは数千メートル、海洋全体では平均3800メートルですが)
そういう大きな循環に2000年以上かかることがわかってきたわけです。

では、そのような大きな循環にのっかって、
いろいろなものが、どのように分布するだろう?

新しく人間がつくって海に入ってきたものが、
どのように広がっていくだろう?

そのようなことがわかるよう、努力をしてきました。


人間が出した二酸化炭素の半分は、森林と海水が吸収している

1950年代から、世界では、地球を知るために、
いろいろなところでいろいろな観測しましょう、
という動きが起こっていました。

そのひとつに、大気中の二酸化炭素を
ずっと測ることも、やっていました。

すると、大きな季節変化をしながら、
年々、二酸化炭素が増えていくことが、
事実として観測されました。

その原因とは何だろう?
ということが、もちろん一方では考えられました。

その結果、ほぼ間違いなく産業革命以降、
人間が石炭・石油を使うことによって、
大気中に二酸化炭素を放出していることが、
基本的には原因であることがわかってきました。

―二酸化炭素と、原田さんが研究していた海とは、どのような関係があるのですか?

二酸化炭素は、
とても水に溶けやすい性質を持っています。

溶けやすい二酸化炭素が大気中に増えれば、
それは海水にも溶けるということ。

すると、人間が大気中に出した二酸化炭素は
すべて大気に残るわけではないのですね。

森林や海水が、一生懸命吸収してくれるから、
人間が出した二酸化炭素のうち、
だいたい半分くらいが大気にたまっている。

それが、ちょうど今の、
だいたいのバランスなんですね。


ちゃんと知るためには、ちゃんと測らないといけない

―昨今、大気中の二酸化炭素濃度の増加が国際的な問題となっていますが、
 大気中の二酸化炭素濃度の変化を予測するためには、大気だけでなく、
 海や山のシステムとの関係性も考えなければならないとなると、とても複雑ですね。

大気中に二酸化炭素がたまると、
地球があたたまる方向へ行くというのは、
いろいろな方が仰っている通りです。

けれども、大気中の二酸化炭素がどのようにたまっていくのかは、
森林や海水がどのように変わっていくのだろう?ということを
きちんと知らなければ、予想することもできないわけです。

そこで私は、大気中の二酸化炭素が海に入って、
それがどのように広がっていったのかを、
ちゃんと観測して出しましょう、という仕事をやっていました。

ちゃんと知りたいとなると、
ちゃんと測らないといけないわけです。

―「ちゃんと」とは、具体的にどういうことですか?

海全体を一人の人間で測ることはできません。
ですから、みんなで測るわけです。

けれども、たとえば産総研で出したデータと、
日本のほかの機関で出したデータと、
アメリカやヨーロッパなどほかの国で出したデータが、
全部比較できないと、困っちゃうわけですね。

そのためには、みんなが正しい測り方を
できることも大切なんです。

そこで、その測定法を標準化したり、
測るときに正しい値がでるよう標準物質をつくったり。

そういうことを、国際的に共通してやりましょう、
というような仕事も、出てくるわけですね。

そのような仕事の広がりのなかで、
二酸化炭素の循環を理解できるようにしよう、
という研究を、ずっとやってきたわけです。


次へ 人間が出した二酸化炭素を海に貯蔵すると、どうなる?


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