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2024年 11月 21日 (木)

環境配慮と経済成長を両立させるには?




環境配慮と経済成長を両立させるには?

―経済成長と環境配慮の両立は難しい、といった課題は最近よく聞かれますが、
 科学を切り口にしたとき、その両立について、どのようにアプローチできるとお考えですか?

産総研の大きな研究の考え方として、お話しますね。

これまでは環境配慮をすることによって、
製品の生産コストが上がった。

製品コストが上がるということは、
ほかと比べて高くなれば、それは競争力を落とす、ということ。

ですから、環境へ配慮することと、産業の競争力を高めることは、
「反比例している」という言い方を、よくされてきたわけですね。

けれども、その両方を満足させることを考えるのが、
これからの科学技術でしょう。

ということで、環境配慮と産業の競争力強化を両立させる。
これが産総研の大きなミッションのひとつになっているわけです。

―具体的には、どのような切り口で両立させようとしているのですか?

私の専門ではないのですが、今、
この産総研東北センターで研究していることをお話しますね。

人間は、このような生活をしていくうえで、
いろいろなものづくり、いろいろな化学製品に頼った生き方をしています。

そこはそう簡単に、自然回帰すればよい、という話ではありません。

より安全安心で便利というように、人間にとってよりよい環境をつくるためには、
いろいろな化学物質がこれからも必要になってくるだろう、と思うのですね。

それらを生産する段階、あるいは使い終わった後、
いわゆる人間のまわりの環境に出されたときに、
その環境を悪くするようなことがない技術にならないといけない。

―人間のまわりの環境を悪くしない技術とは?

いろいろなものの反応は、今までの化学物質をつくるプロセスを、
より「効率が良い」方向にすることで、省エネ化を図ることができます。

―「効率が良い」とは、別の言葉で言うと、どういうことですか?


化学反応に適した条件を瞬時につくることで、副生成物を減らし、効率化を図る

ある物質とある物質を反応させて、
何かほかの物質をつくろうとしたときに、
その効率、別の言葉で言えば「収率」を上げるわけです。

AとBからCをつくるときに、
100%Cになることは少ないわけです。
どうしても途中の副生成物はできてしまう。

その化学反応に一番適した(温度や圧力などの)
条件であれば、例えば100%いくものも、
その条件にするまで時間がかかったりすると、
その途中でいろいろな副生成物ができてしまうわけです。

それを、一番良い状態にパッとするような条件で、
いろいろなものの生産をしようという考え方のひとつが、
「コンパクト化学プロセス」です。

―具体的には、どのような技術開発をしているのですか?

具体的には、非常に狭い空間で、
圧力の変化、温度の変化を瞬時に行います。

すると、通常の反応速度よりも速い速度で
その条件にもっていけるので、
合成の途中段階で、副生成物がほとんどできずに、
その製品がすべてできてしまうわけです。

そのためには、合成のプロセスの環境を
瞬時に変えるという技術がないとできないわけですね。
そのような技術開発をしています。


高温高圧な条件で利用できるマイクロリアクター(化学反応に用いる反応空間の幅が非常に狭い化学反応器)を用いた化学反応実験のようす


化学反応の途中段階で、化学物質の代わりに、特殊な二酸化炭素や水を使う

もうひとつは、水や二酸化炭素など、通常そこらにあるものを、
ある温度・圧力の条件にもっていくと、
通常我々が接しているものとは、全く違った性質を持ちます。

「超臨界水」や「超臨界二酸化炭素」が、その代表例ですね。

―特殊な温度や圧力下にある水や二酸化炭素は、どのような性質を持つのですか?

通常、水には油が溶けにくいわけだけども、
そのような状態では、油を非常に良く溶かすことが起こったりします。

すると、今までは化学物質を合成するのに、
ほかの化学物質(有機溶媒)を使わざるを得ず、
それが廃棄物として出ていたわけですが、

その代わりに、水や二酸化炭素を使う条件でやれば、
途中段階で使う化学物質は、一切使わなくて済む。

その化学物質が、廃棄物として環境に出て行くこともない。
そういうことが、考えられるわけですね。

―今までの化学合成に比べて、コストはかからないのですか?

今ですと、圧を変えたり温度を変えたりするところに、
逆にコストがかかるところがあります。

そのため、全体として現在のプロセスを、
経済的にも有利な条件にできるよう最適化して、
開発していくことが必要になってくるわけです。

不必要なものはつくらないで、
必要なものだけを必要な量つくる。

そういうことによって、経済性も環境配慮も両方、
満足した製品になっていくでしょう。


外に出て、もっと遊べ

―最後に、中高生へメッセージをお願いします。
 仮に、中高生時代の原田さんが、今この目の前にいたとして、
 一言だけメッセージを送れるとしたら、何と言いますか?

う~ん、なんでしょう・・・

「外に出て、もっと遊べ」ってことだと思うんですね。
山に行ったり、海に行ったり。

そこには、いろいろな不思議なことが、
そこらにたくさん転がっているから。

そこで見た不思議さを、
不思議なことは不思議として感じて、
何でも調べてみる、聞いてみる。

そういうことをやるとおもしろいな、と思いますね。

―そういったところが、今の原田さんのベースとなり、原動力になっているのでしょうか?

それは、わかんない。
中学生のとき、そうだったかなぁ?

―冒頭、「海に遊びに行っていた」と仰っていました。

それはだいぶ、大きくなってからですからねぇ(笑)

―じゃあ、もし中高生の頃にそうだったとしたら?

そんなことがあったら、
もっとすごかっただろうな、と思いますよ(笑)

―それだけ、五感で自然を見て不思議だなと思うことが、
 結果として大きな力になる、ということなのですね。

その通りですね。

―原田さん、本日はどうもありがとうございました。



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