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        <title>宮城の新聞</title>
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        <language>ja</language>
        <copyright>Copyright 2012</copyright>
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            <title>海で放射性物質はどう広がる？／仙台市天文台アースデイ講演会</title>
            <description><![CDATA[<h1>海で放射性物質はどう広がる？／仙台市天文台アースデイ講演会</h1>
<p class="date">2012年5月5日公開</p>

<div class="rightPicture2" style="margin:20px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120221_00.jpg" alt="" />
<p>「アースデイ講演会」のようす＝２１日、仙台市天文台（仙台市青葉区）</p>
</div>

<p>
　毎年４月２２日の世界アースデイ（地球の日）にちなんだ「アースデイ講演会」が２１日、「海洋における放射性物質の広がり」をテーマに、仙台市天文台（仙台市青葉区）で開かれた。講演では、東北大学大学院理学研究科の花輪公雄教授が、昨年３月１１日に発生した地震と津波の概要を示した後、花輪教授が会長を務める日本海洋学会の活動を紹介し、さらに海洋における放射性物質の広がりの観測とシミュレーション結果について紹介した。
</p>

<br />
<h2>【講演】<br />海洋における放射性物質の広がり／東北大学大学院理学研究科　花輪公雄教授</h2>

<h3>地球はどんどん変化している</h3>

<div class="rightPicture2" style="margin:15px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120221_01.jpg" alt="" />
<p>講演する花輪公雄教授</p>
</div>

<p>
　昨年３月１１日に発生した地震は、太平洋プレートが東北地方を乗せた北米プレートの下に沈み込むことで起きた「プレート境界型地震」。北米プレートの先端部が引きずり込まれ、蓄積した歪みが限界に達し、はね上がることで地震と津波が発生した。今回の巨大津波は、２度にわたる海底地殻変動によって発生したと考えられている。<br />
<br />
　このとき北米プレートは最大で３０メートル、モデルによっては５０メートル以上滑ったとする評価もあるが、最終結論はまだ得られていない。衛星利用測位システム（GPS）で観測された位置変化のデータによれば、震源地付近の陸上では、東側に約５メートル、垂直で約１メートル沈下した。仙台市天文台においても、東に約２～３メートル、垂直に１５～２０センチ沈下したと言う。<br />
<br />
　過去６０年間、太平洋プレート周辺では６回も巨大地震が発生している。現在もなお太平洋プレートは年間約８センチの速度で陸側に移動している。どんどん変化し続けている地球に対して、私たちは如何に考えて対応するかが大事だ。
</p>
<br />

<h3>日本の海洋科学の専門家として</h3>
<p>
　今回の地震と津波によって、福島第一原子力発電所は制御不能となり、大量の放射性物質が大気や海洋に放出される事態となった。大気も海洋も世界中につながっている。日本だけでなく世界中の問題だ。我々は日本の海洋科学専門家として何をすべきか、有志で議論した。<br />
<br />
　日本海洋学会では、「震災対応ワーキンググループ（WG）」を設置して活動を開始した。しかし、会長として迷いはあった。迅速に実態と影響を正確に調査し世界に情報発信することが我々の責務。ところが任意団体である学会の総意を迅速にとることは、現実的に難しい。判断として、幹事会の下にWGをつくり、責任は幹事会がとるようにした。なお、サブWGには学会員以外も参加可とした。活動はすべてボランティアだ。<br />
<br />
　震災対応WGでは、行政に対する提言や、会員による独自の観測調査などを行った。NHKとの共同活動で、原発２０キロ圏内での海洋調査も実施した。ウェブサイトによる情報提供や公開シンポジウムへの参加など、広報活動にも力を入れた。専門家として海洋放射能汚染の現状を紹介すると同時に、社会のニーズを知ることが広報の狙いだ。
</p>

<br />
<h3>海洋のシミュレーションは難しい</h3>

<div class="rightPicture2" style="margin:15px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120221_02.jpg" alt="" />
<p>海洋における放射性物質の広がりについて、複数の数値モデルが紹介された</p>
</div>
<p>
　では、海洋で放射性物質はどのように広がるか。基本的には大気と同じように、２つのプロセスで物質は広がると考えて良い。一つは「移流」で、流れによって物質が移動する。もう一つは「拡散」で、集まっていた物質が散らばっていく。<br />
<br />
　大気に比べ、海洋はシミュレーションが難しい。なぜならば、海洋への流入には、直接流入、大気からの流入、河川水・地下水としての流入など、様々なルートが考えられる。そのため、どこでどれだけ出たかは不確かな要素が多く、様々な仮定が必要になる。また、海洋の渦の大きさは大気の渦に比べ、ずっと小さい。さらに、結果が正しいかどうかを判断するデータが少ないことも挙げられる。<br />
<br />
　海洋における放射性物質を含んだ水が、長期的にどのように移動し、拡散していくかをシミュレーションした数値モデルがいくつかある。しかしモデルによって結果は全く異なるため、ベストモデルは無いのが現状だ。これを克服するために、今こそ観測が必要だ。すると、モデルを用いて過去に遡り、逆問題を解くことができる。どのモデルが合うかを検証することが重要だ。
</p>
<br />

<h3>この事故から冷静に学ぶことが重要</h3>
<p>
　３．１１以前は、私たちの国は原爆や水爆実験による被曝など被害者意識が強かった。しかし、３．１１以降、私たちの国が原因で海や大気を汚してしまった。加害国の海洋研究者である私たちがすべきことは何か？私たちの責務は、迅速に海洋汚染の実態と影響を正確に調査して、世界に情報発信することだと考えた。<br />
<br />
　今回の出来事は大変不幸なことだが、一方で、冷静にこの事故から徹底的に学ぶことが重要だ。長い時間スケールで影響をしっかり見つめ、私たちはありとあらゆることを学ぶ必要性がある。今まさに海洋汚染は現在進行形で広がりつつある。今後も様々な国に協力を依頼して、観測を続けていくつもりだ。
</p>

<br />

<h3>質疑応答から（一部抜粋）</h3>

<div class="rightPicture2" style="margin:15px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120221_03.jpg" alt="" />
<p>質疑応答のようす</p>
</div>
<p>
　「モデルによる結果の違いは、何によって決まるか？」―「いつどこでどれくらい放射性物質が海に放出されたかわからないため、条件の与え方がモデルによって異なる。また、海水の向きが一番（結果に）効くが、誰もがそうだという数値がない。観測結果はあるが、推定の仕方はばらばらだ。墨流しも、タイミングや速度を変えると、全く違う絵になるのと似ている」<br />
<br />
　「海は広く水量も多い。放射性物質は海水中で薄まるので、多少楽観視はできるか？」―「海水そのものは希釈され安全なレベルにあり、原発２０キロ圏内の海水もとても綺麗。しかし、問題は海底土の放射能汚染。生態濃縮による魚への影響も心配だ」<br />
<br />
　「海底土の汚染は、陸上のように浄化されるか？」―「わからない。一番気になるので、海底土のサンプルの回収・分析を提案中だ。しかし、海底土のサンプリング・分析の仕方は統一したやり方が決められていない。まずは共通ルールをつくり一斉に始めようと提案している」<br />
</p>

<br />
<h2>花輪公雄教授インタビュー</h2>

<p class="q">
―講演で一番伝えたかったことは何ですか？
</p>

<div class="rightPicture2" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_hanawa-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
<p>花輪公雄教授</p>
</div>
<p>
　まず一つは、陸上とは違って、大気や海洋における放射性物質は、まさに今、広がりつつあるということ。私たちにとって、それは心配な対象であり、現在進行形で観測しなければならない対象であり、もう終わったことでは決してないことを伝えたい。<br />
<br />
　もう一つは、私たち研究者も研究者なりに精一杯努力したことを、理解してもらいたい気持ちが多少あった。今回の事態に対して、学会も研究者もどう考え行動するかを突き付けられた。本当に私たちのベストを尽くせたかは検証されるべきものだが、私たちなりに精一杯努力したことは確かだ。<br />
</p>
<p class="q">
―実際に、市民の方とコミュニケーションをとった感想はいかがでしたか？
</p>
<p>
　皆さん大変強い興味を持っており、とてもやりがいがあった。私たち研究者は皆さんの血税で研究しているので、アウトリーチ活動は当前の責任と考えている。また、日頃科学をしていない方は何を知りたいのか？という視点を学べる貴重な機会と考えている。
</p>
<p class="q">
―最後に、中高生も含めた読者へメッセージをお願いします。
</p>
<p>
　今はインターネットなどを利用して情報をすぐに集められるが、問題はその真偽を自ら判断しなければならない点にある。そのためには、単純に言われたことを信じるのではなく、自らデータを集め、常に検証しながら、その中で生まれた疑問は、積極的にぶつけていくことが大切だ。そうやって、自分で見て聞いた情報を、自分なりに判断して、自分の頭の中でもう一度つくり直しながら、一つの世界をつくっていく。それを本当に自分のものにしていく努力が大切だと思う。
</p>
<p class="q">
―ありがとうございました。
</p>

<!--
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">仙台市天文台</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学理学部物理系同窓会 泉萩会</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">アウトリーチ</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">天文台</category>
            
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">理学部</category>
            
            <pubDate>Sat, 05 May 2012 09:02:48 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>鈴木厚人さん（高エネルギー加速器研究機構長）に聞く：科学って、そもそもなんだろう？</title>
            <description><![CDATA[<h1><img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111205-top.jpg" alt="鈴木厚人さん（高エネルギー加速器研究機構長）に聞く：科学って、そもそもなんだろう？" style="margin:0px 0px 5px 0px" />
<span style="padding: 5px 0px 0px; font-size: small; font-weight: 600;">取材・写真・文／大草芳江</span>
</h1>
<p class="date">2012年4月25日公開</p>
<div id="subject">
<p id="t">プレハブも、ニュートリノも、<br />
単に対象が違うだけで、思考方法は同じ
</p>
<p id="n">鈴木 厚人　Atsuto Suzuki<br />
（高エネルギー加速器研究機構 機構長）
</p>
</div>
<p style="font-size:x-small;">
　1946年新潟県生まれ。素粒子物理学・ニュートリノ物理学が専門。1969年新潟大学理学部卒業、1974年東北大学大学院理学研究科修了（理学博士）。高エネルギー物理学研究所（現・高エネルギー加速器研究機構）助手、東京大学理学部助手、高エネルギー物理学研究所助教授、東北大学教授、東北大学附属ニュートリノ科学研究センター長、東北大学副学長などを経て、2006年から高エネルギー加速器研究機構長。2003年仁科記念賞、2005年紫綬褒章、2006年学士院賞など多数の賞を受賞。
</p>
<p style="padding:10px;border:1px solid gray;font-size:small">
<span style="font-weight: 600; font-size: small;">一般的に「科学」と言うと、「客観的で完成された体系」というイメージが先行しがちである。　<br />
しかしながら、それは科学の一部で、全体ではない。科学に関する様々な立場の「人」が<br />
それぞれリアルに感じる科学を聞くことで、そもそも科学とは何かを探るインタビュー特集。<br />
</span><br />
<br />
私たちの世界をつくる素粒子の一種「ニュートリノ」。<br />
ニュートリノは、宇宙の至る所に莫大な数で存在し、<br />
今この瞬間も、地球に降り注ぎ、私たちの体を貫くが、<br />
他の物質と極端に反応しづらい性質を持つために、<br />
なかなか正体を表さない幽霊のような粒子である。<br />
<br />
この不思議な素粒子の正体をつかまえることに情熱を燃やすのが、<br />
高エネルギー加速器研究機構（ＫＥＫ）機構長の鈴木厚人さんだ。<br />
<br />
2002年ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんの助手として、<br />
「カミオカンデ」「スーパーカミオカンデ」実験で活躍した鈴木さんは、<br />
ある想いを胸に、東北大学へ戻り、「カムランド」実験を提唱。<br />
<br />
カムランドでは、消えた太陽ニュートリノの謎を解明したほか、<br />
2005年には地球ニュートリノの検出に世界で初めて成功し、<br />
ニュートリノ地球科学という新しい研究分野の道を切り拓いた。<br />
<br />
激しい国際競争の中で、世界のトップを走り続ける鈴木さんが<br />
リアルに感じる科学とはそもそも何かを聞いた。<br />

<br /><br />
＜目次＞<br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_1">人間に生まれたからには、しょうがない</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_2">湯川博士や朝永博士に憧れて</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_3">素粒子物理って、シンプルなんですよ</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_4">自然は絶対に嘘はつかない</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_5">ニュートリノを突き詰めて</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_6">ようやく正体を見せ始めたニュートリノ</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_7">ニュートリノは日本人が好きなんだ！</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_8">何も考えていない人がパッと浮かぶことはない</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_9">スーパーカミオカンデができないことをやりたい</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_10">なぜ「先陣を切る」ことができたのか</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_11">カムランドが水ではなく油を使った理由</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_12">すべての原点はカミオカンデ</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_13">お釈迦様の掌の上から逃れたい</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_14">消えた太陽ニュートリノの謎を解決</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_15">最初は神岡でなく釜石につくろうと思った</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_16">地球ニュートリノを世界で初めて検出</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_17">３つの狙いすべてが当たる</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_18">定年者のニュートリノ物理学</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_19">毎日が新しい日</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_20">単に対象が違うだけで、思考方法は全く同じ</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_21">「今が大切」の積み重ね</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_23">先のわからない研究も、車の両輪のように必要</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_26">学問の自由と大学の自治</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_27">日本とは何かを知らずに、世界はわからない</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_30">【見学記】ＫＥＫを見学しました</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20111205.php#p1_31">誰も知らないことは、楽しいこと</a><br />
</p>

<br /> 
<div class="interview"> 
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/kagaku_interview.gif" alt=""> 
<p>高エネルギー加速器研究機構長の鈴木厚人さんに聞く</p> 
</div> 
<br />



<br />
<h2 id="p1_1">人間に生まれたからには、しょうがない</h2>
<p class="q">
―鈴木厚人さんがリアルに感じる科学とはそもそも何ですか？<br />
</p>
<p>
　難しいなぁ、そんなこと、言われたって（笑）。<br />
<br />
　でも「科学」と言えば、「自然科学」もあれば、「人文科学」や「社会科学」もありますね。「科学」の前にいろいろな言葉がつきますから、必ずしも我々が研究している自然科学だけではないですね。すると科学とは、ものの道理を学ぶこと・突き詰めること、ではないでしょうか。<br />
<br />
　「科学」って、何だろう？広辞苑で科学を引くと、「体系的であり経験的に実証可能な知識」とありますけど。うーん...でも我々のは、知識だけではないですね。「学」という文字がありますから、能動的行為もありますね。未知の事象の道理を求めることではないですか。<br />
<br />
　そもそも「道理」って、何だろう？道理とは、ものごとがそうあるべき道、正しい道。そうですね、自然科学なら、自然の真理を探求する。人間科学なら、人間の真理を探求する。科学とは、そういうことではないですか。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ鈴木さんはそう思うようになったと思いますか<br />
</p>
<p>
　科学は、普遍的なものだと思うから。先ほどお話したような細かい定義ではなくて、一般論として、科学は人間の営みなのですね。<br />
</p>
<p class="q">
―「人間の営み」とは？<br />
</p>
<p>
　どうしても人間が逃れられない、いつも背中に背負っている疑問、というものがあるのですよ。しがらみのように、こびりつかれて、どうしても離れない疑問（笑）。それらを解き明かすのです。<br />
<br />
　ハーバート・サイモン（米国のノーベル経済学賞受賞者、1916年-2001年）が言うように、宇宙の起源・生命の起源・物質の根源・心の働き。この４つの疑問は、人間が振り落とそうとしても、つきまとわれる疑問で、どうしても人間はそこに向かってしまう。これが「人間の営み」ではないでしょうか。<br />
<br />
　「なぜ素粒子のような目に見えないものを、そんなに一生懸命やるのですか」とよく聞かれますが、「それは『人間の営み』、すなわちＤＮＡに書かれているのですよ」と答えます（笑）<br />
<br />
　「どうして？」と言われても、しょうがない。ＤＮＡに書かれていて、人間が絶対に逃れられないものだから。というわけで、最初に「科学とは？」と聞かれたとき、このことを思い出したのです。<br />
</p>
<p class="q">
―もう人間として生まれながらにある本性だ、ということですか？
</p>
<p>
　とりつかれてしまって、好かれてしまって、逃れられない。そういうものが、あるのですねぇ（笑）<br />

</p>

<br />
<h2 id="p1_2">湯川博士や朝永博士に憧れて</h2>
<p class="q">
―これまで研究してきた原動力も、ずっとそんな感じですか？<br />
</p>
<p>
　いや、ただ単に、その日何をしたいかを考えているだけです。そんなに高等なことを、いつもは考えていません。<br />
</p>
<p class="q">
―１日１日は何をしたいか考えることの積み重ねだけど、後になって振返ると、「ＤＮＡに書かれている」という感じですか？<br />
</p>
<p>
　そうですね、それもあります。けれどもその前に、我々の世代は子どもの頃から、湯川先生や朝永先生への憧れがあったので、あまりぶれずに、この道に来られたのでね。<br />
</p>
<p class="q">
―そもそも鈴木さんが研究者の道に進んだのは、湯川博士や朝永博士への憧れからですか？<br />
</p>
<p>
　そうですね。中学生の頃に図書館へ行き、２０巻ほどのシリーズの科学の歴史の本を読みました。ギリシャ時代に始まり、錬金術や産業革命、湯川先生やアインシュタインまで。「あぁ、こういうことをやってみたいな」と思ったのです。<br />
</p>
<p class="q">
―「こういうこと」とは何ですか？<br />
</p>
<p>
　いろいろな物質は、何からできているのだろう？古代ギリシャ時代では、土・水・空気・火の４つでできている、と考えられていました。それが原子・分子になり、今では素粒子やクォークにたどり着いています。「僕もそういうものを研究してみたいな」と思ったのです。物質の根源：素粒子物理ですね。<br />
</p>
<p class="q">
―「物質の根源とは何か？」を知りたいと思って、今でもそういう研究をずっとしているのですか？<br />
</p>
<p>
　今は研究をしてないです。「人が足りない、どうしよう」「お金が足りない、どうしよう」とか、今はそういうのばっかり（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―やっぱり偉くなると、そういう意味では、寂しいですか？<br />
</p>
<p>
　偉くはありませんが、しょうがないですねぇ（笑）<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_3">素粒子物理って、シンプルなんですよ</h2>
<p class="q">
―では、「物質の根源とは何か」を研究する中で、見えたものは何ですか？<br />
</p>
<p>
　何も見えない、真っ暗闇ですよ（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―それくらい、わからないものだ、という意味ですか？<br />
</p>
<p>
　わからないと言うんじゃなくて、素粒子物理って、シンプルなのですよ。シンプルなはずが、そうではないので、先が見えないのです。<br />
</p>
<p class="q">
―どのような意味で「シンプル」と言っていますか？<br />
</p>
<p>
　例えば、文学の研究では、歴史から、文明、民族など、すべてを知らないといけないですね。ですから昔は、文学の博士号を取得するには、年数がかかりました。<br />
<br />
　一方、素粒子の場合、ドクター（大学院博士過程）を卒業する頃には、世界の研究はどの方向に進んでいて、何を狙っていて、どうすればすごい発見が期待できるか、皆わかってしまうのです。古い話を勉強する必要がないのです。また、進歩も早いです。<br />
</p>
<p class="q">
―けれども逆に言えば、皆同じ方向にむかって競争するから、すごく大変では？<br />
</p>
<p>
　そうそう。問題は、世界中の人が同じ方向を向いているから、その中でどのようにして、大勢から抜け出るか、それが大変なわけです（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―では、どうやって「大勢から抜け出る」のですか？<br />
</p>
<p>
　如何に人より早く発見するか、その競争ですね。昔のことを勉強する必要がないから、若い人でも成果が出せます。<br />
</p>

<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111020_10.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>小林・益川理論を高エネルギー加速器研究機構（ＫＥＫ）が実験的に証明した関係で、２００８年ノーベル物理学賞の受賞対象になった論文がＫＥＫに展示されている。</p>
</div>
<p>
　湯川先生、小林先生、益川先生もそうですね。「小林・益川理論」の論文は、小林先生が２８歳、益川先生が３３歳の時に書いたものです。<br />
<br />
　理論の業績を振り返ると、若い時の方が、いろいろなアイディアが出てくるように見受けられます。知り過ぎても駄目。知り過ぎるとそれに邪魔されてしまうから、知らない方がいいのかもしれない。<br />
<br />
　それくらい素粒子物理は、ある意味では、とっつきやすいのだけれど、世界中の皆がとっつきやすいから、なかなか大変です（笑）
</p>

<br />
<h2 id="p1_4">自然は絶対に嘘はつかない</h2>
<p class="q">
―鈴木さんは、理論ではなく実験ですね。なぜ実験の方に？<br />
</p>
<p>
　まず一つは、成績が悪かったから（笑）。一般に成績の良い人は理論に行き、そうでない人は実験に行くのです。私もしかりで、実験に行ったのです。<br />
<br />
　実験の良さは、実験を始めてしばらくしてから、わかりました。理論は、それが正しいかどうかは、自分ではどうにもならないわけです。実験で実証されなければなりません。<br />
<br />
　一方、実験は、その実験方法が間違っていなければ、そこで得られる結果は、全て正しいのです。相手は自然でしょう？自然は絶対に嘘はつかない。自然から返ってくる答えは、全て正しいのです。<br />
<br />
　そういう意味では、理論よりも実験の方が、単刀直入に真実に触れることができる、と感じています。<br />
</p>
<p class="q">
―鈴木さんは「自然科学とは自然の道理を探求すること」とお話されていましたが、実験という形で自然と直接関わることができるのですね。</p>
<p>
　そう思います。実験が間違っていなければ、自然から言葉が返ってくるわけですから。「お前は俺をつついたな」と（笑）。すると相手は、「つついたことは、こういうことだよ」と、データに示してくれるわけです。<br />
<br />
　もちろん間違った実験をしたら、自然も間違った答えしか、出してこないので駄目ですよ。自然は絶対に嘘は言わない。それが実験のおもしろさです。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_5">ニュートリノを突き詰めて</h2>
<p class="q">
―これまで何度も実験を繰り返した結果、自然からいろいろな返事が返ってきたと思うのですが、それらを通して見えてきた自然は、どんな姿をしていたのですか？<br />
</p>
<p>
　私は1980年頃からほぼ２５年間、素粒子の一種「ニュートリノ」を研究してきました。東北大で博士号取得後、約６年間、ＫＥＫで加速器を用いた素粒子の研究をしていましたが、小柴昌俊先生から「今からカミオカンデの実験準備を始めるから来ないか」と誘われ、東大に行きました。<br />
<br />
　小柴先生の助手になって以後、神岡で「カミオカンデ」実験（※）に携わってきました。後述するように最初に狙ったもの（大統一理論から予測される陽子崩壊）は検出されず、小柴先生が「太陽ニュートリノを検出しよう」と言って、ニュートリノの研究に切り替えたわけです。<br />
</p>
<p style="font-size:small">
※【カミオカンデ】神岡鉱山（岐阜県神岡町）の地下1000メートルの場所につくられた素粒子の観測装置<br />
</p>
<p>
　その結果、超新星爆発で生じたニュートリノを世界で初めて検出し、小柴先生が2002年にノーベル物理学賞を授与されました（授賞理由：宇宙物理学に先駆的に寄与したこと、とくに宇宙からくるニュートリノの検出に対して）<br />
<br />
　その後、カミオカンデは、太陽から来る（核融合反応で生成される）ニュートリノが少ないことを、世界で初めて実証しました（太陽ニュートリノ消失現象）。最初に太陽ニュートリノを検出し、消失現象を発見したのは、ノーベル賞を小柴先生と同時受賞した米国のレイモンド・デービス博士です。そして、約２０年後にそれが正しいことを、カミオカンデが実証したのです。<br />
<br />
　カミオカンデの後継としてつくられた「スーパーカミオカンデ」では、故・戸塚洋二先生が責任者で、私は副責任者の一人を務めました。スーパーカミオカンデでは、宇宙線（陽子やヘリウムが主成分）が大気に突入した際に生成する大気ニュートリノの観測数が、予測と異なることを発見し、ニュートリノに質量が存在することを突き止めました。超新星ニュートリノに次ぐ大きな発見です。<br />
<br />
　このように超新星ニュートリノ・太陽ニュートリノ・大気ニュートリノを通して、だんだんニュートリノがその正体を現しはじめました。カミオカンデやスーパーカミオカンデが、その牽引者でした。<br />
<br />
　そういうことを私はやってきたのですが、もっと違うことをやりたい、と思い始めました。スーパーカミオカンデが稼働しだすと、カミオカンデが不要になるので、これを再利用しようと考えたのです。<br />
</p>
<p class="q">
―「もっと違うこと」とは？<br />
</p>
<p>
　カミオカンデを続けてきて、スーパーカミオカンデでできる物理が何かは、大体見通しが立ちます。そこで、スーパーカミオカンデではやれないことをやりたいと思い、東北大に戻りました。そして「カムランド」という、新しい実験を提案したのです。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_6">ようやく正体を見せ始めたニュートリノ</h2>
<p class="q">
―「だんだんニュートリノの正体がわかってきた」ということは、それまで自然はあまり返事をしてくれなかったのですか？<br />
</p>
<p>
　昔、ニュートリノ研究はこう言われていたのです。「Neutrino Physics learns from nothing」。何をやってもニュートリノからは何も返答がない、何かを測ろうとしても、見つからないのです。<br />
<br />
　例えば、質量を測定しようとしても、当時の検出技術をもってして測れないくらい小さく、「それ以下」、「それ以下」、「それ以下」の結果が出るのみでした。ニュートリノは反応が弱くて、応答してくれないのです。ニュートリノは正体を見せない。けれども、そこまで応答しないのなら、「素粒子物理は、こうでなければいけない」ということを学んだのです。<br />
<br />
　ところが、カミオカンデの頃から、実験装置が大型化し、さらに検出器の性能が向上してきました。そして、ニュートリノはようやく正体を見せ始めました。それらが、カミオカンデの超新星ニュートリノや太陽ニュートリノ、スーパーカミオカンデの大気ニュートリノ、カムランドの原子炉ニュートリノや地球ニュートリノの検出結果です。<br />
<br />
　つまり、カミオカンデから「from nothing」じゃなくて、やっと「from finite」（有限値）になったわけです。ようやく「見つかった」「見つかった」「見つかった」のですよ。それくらい、日本のカミオカンデ・スーパーカミオカンデ・カムランドは、世界のニュートリノ研究の歴史を変えてしまった。今までは「nothing」から学んだけれども、これからは「finite」から学べる。良い時期に、ニュートリノ研究を始めることができました。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_7">ニュートリノは日本人が好きなんだ！</h2>
<p class="q">
―それくらい日本の実験技術が進んでいる、ということですか？<br />
</p>
<p>
　日本の実験技術が進んでいたことと、運がよかったのですね。運も実力のうちと言われますが。それに、カミオカンデ・スーパーカミオカンデを通して、研究者が頑張ってこれたのは、長年の様々な経験の蓄積があるからですよ。絶えず、検出器を改良して精度向上を図りました。次はこのニュートリノを狙おう、次はこれと。その辺が実験のおもしろいところですね。<br />
<br />
　この秋につくばでKEK主催の「科学と音楽の響宴」があります。科学の講演の後に、音楽の演奏が続きます。今回の講演は私の担当ですが、そのタイトルが「ニュートリノは日本人が好きなんだ！」なんですよ（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―日本人の前だけにニュートリノは正体を現してくれる、という意味ですか？<br />
</p>
<p>
　そうそう。日本人だけにはいい顔して、外国人が実験するとなかなかいい顔しないんだよ、という話をしようと思うのだけど（笑）。この言葉は私が言ったのではなく、ドイツ人の友達が半ばあきらめ顔で、「ニュートリノは、日本人が好きなんだなぁ（笑）」って言ったのです。<br />
<br />
　少し脱線するけれど、「科学と音楽の響宴」で毎回、冒頭に挨拶をします。ある時、どうして音楽と科学が響宴するのだろう？と考えたのです。そうしたら、おもしろいことに気づいたのです。<br />
</p>
<p class="q">
―どんなおもしろいことですか？<br />
</p>
<p>
　科学は、左脳を使って、論理的な思考をする。音楽は、感覚的な働きを受け持つ右脳を使う。すなわち、科学と音楽の饗宴で、左右の脳が刺激されるわけです。そして大事なことは、科学的発見や発明は右脳が司るということです。<br />
<br />
　それ以来、「普段、つくばの皆さんは主に左脳を使っていますが、今日は講演で左脳を、次に音楽の演奏で右脳を使い、その饗宴で頭の中を活性化して、明日には大発見ができるかもしれませんよ」と挨拶することにしています（笑）<br />

</p>

<br />
<h2 id="p1_8">何も考えていない人がパッと浮かぶことはない</h2>
<p class="q">
―これまで鈴木さんは、どんな時に右脳でひらめきましたか？<br />
</p>
<p>
　我々は、"ひらめく"とかではなくて、常に、身近に起きるいろいろなことを考えているのです。自然がどうなっているか？というような、大それた話ではなく。<br />
<br />
　例えば、「明日は、鉱山の中で実験準備だ」という時、一度トロッコで鉱山に入ってしまうと、当時はなかなか外に出てこれませんでした。ですから、途中で「しまった！忘れ物をした！」とか「予定を変更して別の装置を持ってこよう」としても戻れません。坑内の線路上を歩くことは禁止されています。どんどん予定が狂ってしまう。<br />
<br />
　ですから前日に「明日は何をするか」を考えます。朝６時半に入坑して、夕方５時に出る間に、何をどうやるか？その日の作業手順を全て頭の中に叩きこむわけです。<br />
<br />
　簡単な例で言うと、「明日はこのケーブルをトロッコで運んで、そこから実験室まで持って行き、そこからどうやって配線するか」を考えるわけですね。ケーブルを単にバラバラにほどいたら、猫と毛糸玉のように、絡まってしまうでしょう？そうならない方法を考えるわけです。<br />
<br />
　新しいことではないけれども、やらなければいけないことを、常に考えるわけですね。そのような時にお風呂に入っていてボーっとしている時に、「あぁそうか、明日はこうすれば良いのだ！」ということが、浮かぶわけです。<br />
<br />
　常に考えていないと駄目でね。何も考えていない人がパッと浮かぶことはないわけで、何かを考えているから浮かぶのです。それは小さなこともあるし、「これはおもしろいな」という物理の場合もあります。<br />
<br />
　何も無いと、何も浮かばない。無から有は生じない（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―鈴木さんは最初に「素粒子物理学は何をやれば価値か皆わかっている。問題はその中でどうやって発見するかだ」とお話されていましたが、日々の具体的な目的を達成するためにはどうすればよいかを常に左脳で考えて、パッと浮かぶ、その積み重ねなのですね。<br />
</p>
<p>
　たまに右脳が、「ぷっ」とちょっかいを出して、良いことを教えてくれる時もあるわけですね（笑）。でも、左脳が働かなければ、右脳も働かないと思います。右脳だけでは、駄目でしょうね。音楽家は違うかもしれませんが。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_9">スーパーカミオカンデができないことをやりたい</h2>
<p class="q">
―素粒子物理で何をすれば価値か見通しがあり、カミオカンデ・スーパーカミオカンデで何がやれるかもわかった。そして、それではやれない「こういうことをやりたい」というものが、その積み重ねの中で"パッと"見えた瞬間があって、カムランド実験にむかったのですか？
</p>
<p>
　研究目的は長い間考えた積み重ねですが、カムランドを建設する意義は"パッと"です。それは何かと言うと、天体観測用の望遠鏡には、光学望遠鏡、電波望遠鏡、赤外線望遠鏡、Ｘ線線望遠鏡等々がありますね。これらの違いは光のエネルギーです。<br />
<br />
　光の呼び名はエネルギーが高くなるにつれて、電波、赤外線、可視光、紫外線、X線と変わります。先述の光を使う種々の望遠鏡が存在するということは、精度を極めて高性能にしようとすればするほど、検出できるエネルギー範囲が狭くなることを示しています。何でも測れる万能望遠鏡なんてないのです。<br />
<br />
　とすると、カミオカンデ・スーパーカミオカンデが狙うエネルギー範囲と異なるエネルギーのニュートリノを検出するには、全く違った手法が要求されます。電波望遠鏡とＸ線望遠鏡が違うように。これが"その瞬間"です。<br />
<br />
　カミオカンデとスーパーカミオカンデは水を使っているので、同じ方法です。スーパーカミオカンデは、水の量が２０倍の大型になっただけ。新しい実験として私はおもしろくないと思ったのです。単に大きくなっただけだから。誰かがやればよいと思ってね（笑）<br />
<br />
　そこで違ったことをやるなら、ニュートリノのエネルギーが違うところ、すなわちカミオカンデやスーパーカミオカンデでは不可能で、かつ、新たな物理の成果が期待できるところ、それがエネルギーの低いニュートリノ検出なのです。<br />
<br />
　そこには、原子力発電所から生成される原子炉ニュートリノや、地球内部で生成される地球ニュートリノが大量に飛び交うエネルギー領域ですが、スーパーカミオカンデがひっくり返っても検出できません。それをやろうと思ったわけです。<br />
<br />
　けれども、それを当時の文部省に理解してもらうのは難しかったですね。「スーパーカミオカンデと何が違うのですか？」「スーパーカミオカンデでもやれないのですか？」と聞かれるわけです。<br />
<br />
　私の答えは「スーパーカミオカンデは水を使っていますが、カムランドは油を使っています。水と油は反発します。違うでしょう？」って（笑）。　「スーパーカミオカンデはニュートリノ検出が主ですが、カムランドは反ニュートリノが得意です。カムランドはアンチ・ニュートリノ（反ニュートリノ）です。違うでしょう？」（笑）<br />
<br />
　もちろん、目指す物理が独自で特色あることも説明して、ようやく予算を認めてもらいましたが。<br />
</p>
<p class="q">
―エネルギーの低いニュートリノ検出は、ほかに行われていなかったのですか？<br />
</p>
<p>
　エネルギーの低いニュートリノの反応能力は、ますます弱くなるため、ニュートリノの痕跡を検出することは難しいのですよ。逆にエネルギーが高いと、検出器に与える衝撃が大きく、検出しやすい。<br />
<br />
　ですから、世界の研究者は、エネルギーの低い方に進もうとしないのです、難しいから。「それ、行け！」と、誰が先陣を切るかが問題だ（笑）。競争相手もいましたが、我々が突入したのです。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_10">なぜ「先陣を切る」ことができたのか</h2>
<p class="q">
―なぜ鈴木さんたちは「先陣を切る」ことができたのですか？<br />
</p>
<p>
　カミオカンデの当初の目的は、素粒子大統一理論の検証でした。この理論が予言する「陽子崩壊」が検出できればノーベル賞確実、と言われるくらいの大実験でした。<br />
<br />
　すべての原子は、原子核と電子によって構成されています。そして、原子核は陽子と中性子の集合体です。ですから、陽子が崩壊するということは、すべての物質に寿命があることを意味します。物質はすべてそのうち崩壊してなくなるのです。<br />
<br />
　けれども、心配する必要はありませんよ。陽子の寿命は10の30乗年と予想されました。今の宇宙の年齢は10の10乗年ですから問題ありません。でも当時はセンセーショナルで、世界中で漫画や週刊誌で取り上げられるくらい騒がれたのです。<br />
<br />
　ところが、陽子崩壊は１年間の観測で検出されませんでした。その結果、陽子崩壊はもっと寿命が長いことがわかったのです。<br />
<br />
　その翌年、小柴先生は「今度は太陽ニュートリノを狙おう」と提案されました。太陽ニュートリノは陽子崩壊現象よりもエネルギーが低いため、カミオカンデのエネルギー検出限界をもっと下げなければならない。これが大変で、苦労しました。<br />
</p>
<p class="q">
―特にどんなところが大変でしたか？<br />
</p>
<p>
　水を綺麗にする技術です。水の中に微量に含まれている放射能を取り除くのです。水の中には、ウランやラジウム、ラドンが含まれています。含有量は自然環境放射能のレベルですが、ニュートリノ検出の立場からみると多量です。<br />
<br />
　皆さんが飲む水の中にも、周辺の砂粒の中にも、太陽ニュートリノ検出から見れば、莫大な量の放射能が含まれています。我々が「美味しい」と飲んでいるミネラル・ウォータしかりです。<br />
<br />
　むしろ私は、地上に生きている生物は、何らかの形で自然環境放射能を利用して生きている、と考えています。逆に、それに適応できた生物だけが地上に残り、適応しきれない生物は死滅したのでしょう。<br />
<br />
　カミオカンデは、3000トンの水を蓄えています。そして、その中のウランの含有量は自然環境放射能レベルでも0.5ｇになります。これでは、ウランの自然崩壊連鎖から生じる、ベータ線（電子）やアルファー線（ヘリウム原子核）、ガンマー線がニュートリノ疑似反応を起こして、ニュートリノ検出を妨げてしまいます。それらが実験の邪魔をするので、取り除かなければいけないわけです。<br />
</p>
<p>
　このような微量放射能除去作業をカミオカンデが世界に先駆けて行ったのです。私はこの作業の責任者として頑張りました。この時の経験から、ニュートリノ検出のエネルギー限界値を下げること、つまり検出感度を上げることに関して自信がありました。<br />
<br />
　カムランドを提案した当時、世界の研究者が「無理だよ」と言ったけれども、「できるできる、大丈夫」と言い返しました。その時に、水を使わずに、油を使ったのです。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_11">カムランドが水ではなく油を使った理由</h2>
<p class="q">
―なぜ水ではなく油を使うのですか？<br />
</p>
<p>
　ニュートリノが水の中で起こす反応によって、「チェレンコフ光」という微弱な発光を伴います。この光を、「光電子増倍管」で検出します。一方、油に微量の薬品を加えると、「シンチレーション光」（蛍光）が生じます。<br />
<br />
　同じエネルギーのニュートリノが生じるシンチレーション光は、チェレンコフ光に比べて、発光量は１００倍もあります。すなわち、エネルギー検出限界値を、１００分の１以下に下げることが、可能になるわけです。<br />
<br />
　さらに、油は含有する不純物に"淡泊"です。<br />
</p>
<p class="q">
―"淡泊"とは？<br />
</p>
<p>
　水は、放射性不純物を取り除くと、それらを取り返して元に戻ろうとする性質があります。ですから、蒸留水を飲んではいけないですよ（笑）。蒸留水というのは、イオンなどの含有不純物を取り除くでしょう？この蒸留水が胃に入ると、胃壁からいろいろなものを取り込んで、元に戻ろうとしますから。<br />
<br />
　そういう意味では、飲むならミネラルウォーターの方が良いですね。ミネラルもウランも微量に含んでいるし（笑）。美味しいんですよ。<br />
<br />
　一方、油は、不純物を取ったら取られっぱなしです。この意味で"淡泊"と言ったのです。油の中からウランやトリウムといった放射性不純物を除去することは、予想以上に簡単でした。そのためカムランドでは、検出器内の放射能レベルを、自然環境放射能レベルの１０億分の１以下にすることに成功しました。<br />
</p>
<p class="q">
―他の人は「水ではなく油を使えば良い」発想自体がなかったのですか？それとも不純物を取って感度を上げる技術がなかったのですか？<br />
</p>
<p>
　昔から小規模の油を用いた実験装置はありましたが、また、巨大タンクのニュートリノ検出器の構想は、一時期アメリカ人も提案していたのですが、なぜか実現しなかった。不純物を除去して検出器の性能を上げる技術は、現在、日本が一番進んでいます。<br />
</p>
<p class="q">
―油はどれくらいのサイズですか？<br />
</p>
<p>
　500トン以上の巨大な実験装置を完成させたのは、カムランドが最初です。カムランドの成功によって、今はカナダで3000トンの検出器が建設中で、ヨーロッパでも5000トンの計画があります。なお、油を用いた検出器の正式名は、「液体シンチレータ検出器」です。<br />
</p>
<p class="q">
―「昔の油の小さな装置」は、どれくらいのサイズですか？<br />
</p>
<p>
　一番最初にニュートリノの検出に成功（ニュートリノを発見）した米国のフレデリック・ライネス博士ら（1995年ノーベル物理学賞受賞、1918-1998年）が油を使いました。原子炉内の核分裂によって生じるニュートリノを発見した当時の油検出器は、1ｍ×1ｍ×1ｍくらいの1トンサイズでした。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_12">すべての原点はカミオカンデ</h2>
<p class="q">
―「スーパーカミオカンデは、カミオカンデをそのまま大きくしただけでおもしろくない」の意味をもう少し詳しくお願いします。</p>
<p>
　「おもしろくない」と言ったのはね、とにかく、すべての原点がカミオカンデにあったからです。カミオカンデで、超新星ニュートリノと太陽ニュートリノ、大気ニュートリノを検出する技術が培われ、沢山の研究成果が得られました。その延長線上にスーパーカミオカンデがあるのです。カミオカンデ当時の「ハラハラ、ワクワク」感を見いだせないのですよ。<br />
</p>
<p class="q">
―そもそもなぜニュートリノなのですか？<br />
</p>
<p>
　太陽では「核融合反応」が起こっています。４個の水素が融合してヘリウム１個を作る過程で、ニュートリノが放出されます。星の中では、このような核融合反応が起こっていて、これが星が輝くエネルギー源なのです。<br />
<br />
　宇宙に存在する物質の主成分は、水素です。水素が集まって、水素の雲ができます。水素雲は重力によって収縮し、中心の温度が上昇します。すると、核融合反応のスイッチが入るわけです。<br />
<br />
　ですから、そのニュートリノをつかめれば、太陽の中で本当に核融合反応が起こっているのかわかるわけです。最初に、このことに着目したのは、米国のレイモンド・デービス博士（小柴博士と2002年ノーベル物理学賞を共同受賞）です。<br />
<br />
　しかし、実際に観測された太陽ニュートリノの数は、理論で予想された数の３分の１しかなかったのです（太陽ニュートリノ欠損問題）。数が合わない原因は、ニュートリノの理解が間違っているのか、あるいは実験に問題があるのか、それとも我々は太陽を十分に知らないのか、長年に渡って議論になりました。そして、ほとんどの人は、実験が間違っているのではないかと思ったのです。<br />
<br />
　ところが、カミオカンデはデービスのグループと全く異なる方法で、しかもより高精度で、かつ太陽から飛来するニュートリノかどうかを検知できる方法で観測したところ、やはり少なかった。予想量の２分の１しか、なかったのです。まずは、カミオカンデが「太陽ニュートリノ欠損問題」が正しいことを実証しました。<br />
<br />
　次に、カミオカンデは、大気ニュートリノの観測において、「大気ニュートリノ異常現象」を検出しました。宇宙からやってくる宇宙線（主成分は陽子やヘリウム）が地球大気に突入すると、大気中の酸素や窒素と反応を起こして、ニュートリノが生成されます。<br />
<br />
　ニュートリノは地球を突き抜けるほどの透過力があるので、四方八方から大気ニュートリノが神岡鉱山の地下にやってきます。大量にやってくるニュートリノのうちの、たまたまいくつかは反応を起こしてくれます。その結果を見ていると、予想と違ったのです。この結果は、「大気ニュートリノ異常」と呼ばれました。<br />
<br />
　すなわち、カミオカンデでニュートリノに対する新たな知見が得られる現象が見つかったことが、さらに、"そもそもなぜニュートリノなのか？"なのです。<br />
</p>
<p class="q">
―予想とは違う現象とは？<br />
</p>
<p>
　ニュートリノは、現在のところ性質の異なる３種類の存在が確認されています。このニュートリノに質量があると、ニュートリノが飛行中に最初にできた時の種類から別の種類に変わってしまうことが予想されます。これを「ニュートリノ振動」と呼んでいます。<br />
<br />
　すると、大気ニュートリノがカミオカンデに入ってきても、最初の種類と異なる種類になっていると、反応の仕方が違うために反応率、すなわち大気ニュートリノ検出数が予想と異なることになります。<br />
<br />
　この大気ニュートリノ異常現象をカミオカンデが初めて見つけ、次にスーパーカミオカンデが、その原因はニュートリノの質量に依存するニュートリノ振動であることを世界で初めて検証し、ニュートリノの質量発見の偉業を成し遂げました。このように、ニュートリノの新たな知見の源泉は、カミオカンデにあったのです。<br />
<br />
　だから私は、カミオカンデが終了してスーパーカミオカンデに移行した時、もちろんスーパーカミオカンデのプロポーザルを書いたり、装置の設計や開発、建設を責任を持ってやりましたが、建設が終了してデータ収集が開始されたら、スーパーカミオカンデから「逃げよう」と決心していました。<br />
<br />
　つまり、カミオカンデの続きの物理をやっても、おもしろくないな、って（笑）。もっと、新しいことをやりたかった。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_13">お釈迦様の掌の上から逃れたい</h2>
<p>
　それともう一つは、故・戸塚さん（スーパーカミオカンデ初代責任者、ＫＥＫ前機構長）と神岡でお酒を飲みながら交わした話の中の、「お釈迦様の掌の上から逃れたい」ことが一因です。カミオカンデ当時は、小柴先生が教授、戸塚さんが助教授、私が助手でした。戸塚さんとはよく喧嘩をしました。いや、実験の上での喧嘩で、議論をしょっちゅうね。<br />
<br />
　また、神岡で一緒によくお酒を飲みました。ある時、戸塚さんが「俺たち、どんなに頑張っても、孫悟空だな」って言うのです。「どんなに頑張っても、お釈迦様の掌の上から逃れられない」って。<br />
</p>
<p class="q">
―お釈迦様とは、もしかして...<br />
</p>
<p>
　誰かというと、小柴先生（笑）。何とか小柴先生の掌から逃れて、自分で実験を立案し、結果を出したいものだって。私が、スーパーカミオカンデから離れて、カムランドを提案したのには、この時の戸塚さんのボヤキもありました。<br />
</p>
<p class="q">
―やっぱり掌の上では嫌ですか？<br />
</p>
<p>
　そりゃあ、そうですよ。ゼロから全て自分でやってみたい、これこそ実験の醍醐味ですよ。<br />
<br />
　でもね、カミオカンデでよかったことは、小柴先生はあまりぎしぎしと「あれやれ、これやれ」と言わないことでした。一回任せたら、完全に任せてくれるわけです。<br />
<br />
　戸塚さんはまた、こんなことも言ってましたよ。「小柴研究室は失敗が許されない研究室だ」と。小柴先生は「それはおもしろいからやろう」と言って始めると、「君はこれこれを担当しなさい」、そして、週１回のミーティングで進捗報告を聞く。それだけ。それなのに、「失敗が許されない」独特な雰囲気があるのですよ。それが小柴先生のすごいところです。<br />
<br />
　そういう雰囲気をかもし出すから、どこにいても、いつも先生に見られている感じがするわけです（笑）。けれども任せてくれるから、自分でいろいろなことに挑戦できるわけです。自分であれやってみよう・これやってみよう、って。<br />
</p>
<p class="q">
―では実際やっている調子としては掌という感じではないけど、ふと気づけばやっぱり掌の上という感じですか？<br />
</p>
<p>
　何をやってもお見通し、という感じかな（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―ではカムランドでも、ある意味で、小柴先生といる時と、変わらないところもありますか。<br />
</p>
<p>
　いや、カムランドは小柴先生から離れて、自由自在にやりましたから、カミオカンデの時と違います。でも、先生は心配な様子で、遠くから見ていてくれたような気がしましたが。カミオカンデのように背後ではなく。<br />
</p>


<br />
<h2 id="p1_14">消えた太陽ニュートリノの謎を解決</h2>
<p class="q">
―それでは、お釈迦様の掌から逃れた感想はいかがですか？<br />
</p>
<p>
　運が良かった。<br />
</p>
<p class="q">
―「運が良かった」とは？<br />
</p>
<p>
　先ほども少しお話したように、ニュートリノは３種類あります。そして、もしニュートリノが質量を持っていると、ある種類のニュートリノが生成されてから、時間が経過すると他の種類に変わることが可能になります。繰り返しますが、この現象をニュートリノ振動と言います。<br />
</p>
　カムランドは、ニュートリノの飛行距離/エネルギーによってsin関数的に種類が変化すること（まさに振動現象）を初めて示したのです。スーパーカミオカンデが検出したニュートリノ質量と異なるニュートリノ質量の証拠を突き止めたのです。それが偶然にも、ちょうど柏崎や浜岡などの原子力発電所の位置が、神岡を中心にして、約180ｋｍのサークルの上に立地していたからなのですよ（※）。<br />
</p>
<p style="font-size:small">
※【参考】詳しい解説は下記をご参照ください。<br />
・<a href="http://www.awa.tohoku.ac.jp/kamland/?p=58" target="_blank">原子炉反ニュートリノを用いたニュートリノ振動の研究（１）_KamLAND</a><br />
・<a href="http://www.awa.tohoku.ac.jp/kamland/?p=55" target="_blank">原子炉反ニュートリノを用いたニュートリノ振動の研究（２）_KamLAND</a><br />
</p>
<p class="q">
―原発と180ｋｍの距離が、なぜよかったのですか？<br />
</p>
<p>
　ニュートリノ振動は、ニュートリノの飛行距離/エネルギーに依存するため、エネルギーの等しいニュートリノは、各原発から別々に生成されても、同じ距離のところでは同じニュートリノ振動を引き起こします。すなわち、原発までの距離が同じならば、神岡で一斉に振動を起こす（種類が変わる）ことが可能になります。<br />
<br />
　もし（原発が）バラバラの距離にあると、エネルギーが同じニュートリノでも、飛行距離が異なり、ニュートリノ振動はまちまちで、信号が打ち消されることになります。このように、偶然に原子力発電所が神岡の周りにほぼ等距離にあったことが、ニュートリノ振動発見に結び付いたのです。<br />
<br />
　さらに、原子炉ニュートリノ振動現象が、太陽から来るニュートリノ（太陽ニュートリノ）が減る、太陽ニュートリノ欠損現象を解決するニュートリノ振動と、ぴったり一致したのです。これはまた偶然にも、原子炉ニュートリノのエネルギーと180㎞の距離が、太陽ニュートリノの太陽内部で起こすニュートリノ振動と一致したのです。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜぴったり"一致する"のですか？<br />
</p>
<p>
　偶然なんですよ（笑）。太陽ニュートリノ欠損現象を、「太陽を使わずに地球上で検証できるなんて・・・」と、太陽ニュートリノの理論研究の第一人者のジョン・バコール（1934－2005年）は「自分が死ぬまでに、そんな実験ができるなんて思ってもみなかった」と雑誌に書いていました。それくらい偶然に偶然が重なっていたのですよ。<br />
</p>
<p class="q">
―本当に、偶然なのですか？<br />
<br />
</p>
<p>
　偶然の偶然の一致ですよ（笑）<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_15">最初は神岡でなく釜石につくろうと思った</h2>
<p class="q">
―どこまでが狙ったところなのですか？<br />
</p>
<p>
　もちろん、実験を計画する時は、あらゆる知識を導入して予測するわけです。太陽ニュートリノ問題を解明するには、原子力発電所のニュートリノを使えば、これこれの距離にある原子力発電所が使えるな、というように。日本で数箇所の候補地の一つが神岡でした。<br />
</p>

<p class="q">
―さきほどの孫悟空の話で言うと、場所的には"掌"に近いです。<br />
</p>
<p>
　「逃げたい」っていう話？（笑）。もともと最初は、神岡ではなくて釜石（岩手県）でやろうと思っていました。釜石は東北大学から近いでしょう？それに、釜石の方が山が深いので、実験の邪魔となる宇宙線が地下に到達する頻度が少なく、条件が良いのです。<br />
<br />
　私が視察に釜石へ行ったら、たまたまカミオカンデの実験場所を探しに釜石に行った時の現場監督の人が、所長になっていて。「あの時ニュートリノの研究を誘致すればよかった」って、言ってました。なぜかというと、神岡が一躍有名になってしまったから（笑）<br />
<br />
　しかし当時は、富士製鐵と八幡製鐵が統合して新日本製鐵（新日鉄）になる時期で、富士製鐵の釜石製鉄所の現場は忙しくて、「そんなのかまっていられない」と言われました（笑）<br />
<br />
　それで結局、釜石を断念して、２～３検討したのちに小柴先生が昔、宇宙線観測の実験をしていた神岡に決めました。神岡の実験候補地は、土被りが少し浅いんですよ。本当はもっと深いところが欲しかったのですが。<br />
<br />
　私がカムランド候補地選びに釜石に視察に行った時は、小柴先生と一緒でした。ヘマをするのではないかと思われたのでしょう。行きの電車の中で先生が、「実験の名前をつけてあげようか」と言うのです（笑）。「先生、いいです」と断りました。あくまでも、先生の掌から逃れたいので（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―もし釜石につくったら、原子力発電所を使ったニュートリノ振動の実験はどうなっていたのですか？<br />
</p>
<p>
　宮城県の女川原発が釜石から90～100ｋｍにあるので、結果論ですが、神岡よりももっとニュートリノ振動が強く起こり、良い成果が得られたのです。<br />
</p>
<p class="q">
―どっちに転んでも、狙っていたのですね。<br />
</p>
<p>
　そうです。しかし、文部省（当時）は日本に地下の実験所を二か所も必要ないと言うのです。そこで、しぶしぶ神岡に決めました。どちらでも、実験名はKamLAND（カムランド）です。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_16">地球ニュートリノを世界で初めて検出</h2>
<p class="q">
―それで先ほどのお話とつながるわけですね。<br />
</p>
<p>
　もちろん、予測が外れる場合があります。むしろ、その方が普通ですから。太陽ニュートリノ欠損現象の解決策は、誰も知らないのですから。太陽のニュートリノは、ニュートリノ振動とは異なる原因で、地球に届く量が少ないのかもしれない。その場合には、原子力発電所からのニュートリノを検出しても、生成量と同じ数のニュートリノが検出されるだけで、何の変化もありません。<br />
<br />
　そこで、原子炉ニュートリノ振動が検出されなくても、他の研究ができるように考えました。原子炉ニュートリノよりも、もうちょっとエネルギーが低い領域に、地球内部で発生するニュートリノが狙えます。地球ニュートリノはまだ、未発見でした。<br />
</p>
<p class="q">
―地球からのニュートリノとは？<br />
</p>
<p>
　そもそも地球内部の熱源には２種類あります。一つは、地球形成期に隕石の衝突によって生じた衝撃エネルギーで、このエネルギーによって、初期の地球はどろどろの溶岩の塊のような状態でした。隕石の主成分は、酸素や炭素、ケイ素や鉄などです。<br />
<br />
　その後、時間が経過するにつれて軽い物質は表面に残り、重い物質、例えば鉄などは地球の中心に沈んでいったと考えられています。地球の表面は次第に冷えて固まりますが、内部は衝突エネルギーがまだ残っていて、現在の地熱の半分を担っていると考えられています。このエネルギーが地球中心部の鉄の対流を引き起こし、地磁気を生み出します。<br />
<br />
　地熱の残りの半分は、ウランやトリウムなどの放射性物質の崩壊によるものです。この熱源は大陸を動かしたり、火山の原動力を担います。<br />
<br />
　これらの放射性物質は崩壊すると、ニュートリノを生成します（地球ニュートリノ）。地球ニュートリノをつかまえれば、先ほど述べたことが本当かどうか、また鉄はウランやトリウムと相性が悪いため、地球中心には存在しないと考えられていますが、これが正しいのか。地球形成と地球ダイナミックスの実証ができます。この地球ニュートリノを、カムランドは世界で初めて検出しました。<br />
<br />
　地球ニュートリノは、先ほどお話した原子力発電所で生成されるニュートリノよりも、エネルギーが低いのです。もし原子力発電所からのニュートリノ実験の狙いが外れても、こちらがある、それを狙ったわけです。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_17">３つの狙いすべてが当たる</h2>
<p>
　さらに、もう一つの狙いがあるのです。全部で３つ用意しました。これがだめだったらこれ、さらにだめだったらこれって。しかし、三つみんな、当ってしまいました（笑）
</p>
<p class="q">
―３つ目の狙いは？<br />
</p>
<p>
　太陽の核融合反応には、いろいろな反応の過程があります。そしてこの反応過程の中の４種類の反応からニュートリノが生成されます。それぞれのニュートリノが持つエネルギーは異なります。先ほどもお話したように、カムランドは太陽ニュートリノが減少する理由を、原子力発電所からのニュートリノを検出することによって実証したのです。<br />
<br />
　次に、太陽ニュートリノ減少の原因が解明されれば、今度は、いろいろなエネルギーの太陽ニュートリノを検出することによって、太陽の中で核融合反応が確かに起こっていることと、核融合反応の詳細がもっとわかってくるわけです。太陽は一般的な星（恒星）ですから、星の一生のメカニズムが理解されるわけです。<br />
<br />
　そこで、カミオカンデやスーパーカミオカンデで検出されたニュートリノよりも、もっとエネルギーの低い太陽ニュートリノをつかまえようと狙いました。それも捕まえることができました。<br />
<br />
　でも、我々よりも先に見つけたグループがいたので、我々の方はあまり注目されなかった。しかし、一応、狙ったものは捕まえた。こんなにうまくいく例は、滅多にないですよ。<br />
<br />
　これまでのニュートリノ実験は、「nothing、nothing」でね。なにを狙っても「あぁ見つけることができなかった」って。しかし、研究者は繰り返し、繰り返し、実験精度の向上に努力してきたのです。約５０年間も。この努力が実って、カミオカンデ以降は、まったくニュートリノ研究の様相が変わりましたね。でも、なぜこんなに次から次へと（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―なぜこれだけ「次から次へと」？<br />
</p>
<p>
　知りません（笑）。ドイツの友人は、「ニュートリノは日本人が好きなんだ」と言っています（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―世界中が皆、狙っているわけなのに、なぜできるのですか？<br />
</p>
<p>
　皆、ニュートリノの正体を暴こうと狙って実験しているのに、本当に偶然ですよ。カムランドで、原子力発電所からのニュートリノ振動の発見、地球からのニュートリノの初検出と、多くの研究者が驚いていました。<br />
<br />
　特に、地球から来るニュートリノを検出する可能性は、1935年にジョージ・ガモフ（1904-1968年、アメリカの理論物理学者）によって提唱されたので、発見には70年を費やしたわけです。<br />
</p>
<p class="q">
―70年間近くずっと検証できなかったのですね。<br />
</p>
<p>
　地球からニュートリノが来ていることは、予測はしていたけれど、それを捕まえる手段を持たなかった。<br />
</p>
<p class="q">
―鈴木さんが「手を出せた」のは、それくらい検出感度を上げる技術と自信があったからですね。<br />
</p>
<p>
　カムランド・グループの研究者の努力によって、エネルギーの低いニュートリノを検出できる技術が開発された賜物です。人ができないことをやろうとすると、予想以上の結果が生まれる良い例だと思います。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_18">定年者のニュートリノ物理学</h2>
<p>
　エネルギーの低いニュートリノをつかまえる究極の実験があります。ノーベル賞確実な実験ですよ。<br />
<br />
　今、目の前の１立方cmあたりに、約１１０個のニュートリノが浮かんでいます。宇宙ができてから１秒後の宇宙を飛び交っていたニュートリノが、その後の宇宙膨張によってエネルギーをどんどん失い、137億年の現在ではほとんど物質と反応しないくらいになっています。これを「宇宙背景ニュートリノ」と呼んでいます。<br />
<br />
　反応力が弱いから、つかまえることが難しいわけですね。それをつかまえることができたら、大発見です。すなわち、我々の知見が、宇宙創成の1秒後までさかのぼることができるわけですから。ノーベル賞間違いなしです。でも、これの実験は、定年後の人がやる実験なのですよ。<br />
</p>
<p class="q">
―それだけ難しいということですか？<br />
</p>
<p>
　そう。現役時代に手を出したら一生、なんの成果も出ないこともありうるわけですから。「定年者のニュートリノ物理学」と言われる所以です。小柴先生も定年後の一時期、宇宙背景ニュートリノ検出器を考案されました。私も誘われたのですが、逃げました（笑）。でも私は、そのうち挑戦しようと思っています。アイディアがあるのですよ。<br />
</p>
<p class="q">
―どんなアイディアですか？<br />
</p>
<p>
　それは、湾岸戦争の時に、テレビを見ていて思いついたのです。パトリオット・ミサイルというのがあったでしょう？敵のミサイルを迎撃する装置です。こころは、ほとんど止まっているニュートリノを、つかまえようとしても難しい。それなら、こっちから迎撃したらどうか。ニュートリノを動かす、エネルギーを与えるわけです。そのような加速器をつくったらどうかな、と思っているのです。<br />
<br />
　例えば、電子を大量に打ち込んで、ニュートリノを動かすのです。動かせばエネルギーを持つから、反応してくれるでしょう？<br />
<br />
　定年になってから、年齢的にはもう定年になっているけれど。今の仕事が終わってから、ゆっくりと考えようと思っています（笑）。その時は、宇宙背景ニュートリノ検出器に、"パトリオット"と名付けますよ（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―名前がちょっと怖いですね...。でも、アイディアがあっても、すぐにできるものではないんですね。<br />
</p>
<p>
　やれないですよ。いつか考えますよ。最新の超伝導加速空洞を改良すればテーブルの上で実験できますよ、大丈夫（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―たとえアイディアを公言しても、他の人はやっぱり真似できないですか？<br />
</p>
<p>
　いやいや、別にやったって構いませんよ。あとはアイディアの問題、どういう実験装置をつくるかなんですね。私はあちこちで公言しています。特に酔っ払うとね（笑）。別に私がやらなくてもいいわけで、誰かがやってくれればよいのです。そう簡単にできっこないって思うから（笑）。逆に、公言して、相手が興味を示してヒントを出してもらった方が、ずっとよいですよ。<br />
</p>
<p class="q">
―鈴木さんがミサイルみたいですね。<br />
</p>
<p>
　そうそう。相手にちょっかいを出すところが（笑）<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_19">毎日が新しい日</h2>
<p class="q">
―結局、話を聞けば聞くほど、半分は納得した気分になるけど、半分は不思議な気分が残っている感じがします。<br />
</p>
<p>
　ははは（笑）、納得されては困る。こっちは50年もやっているのですから。たびたび講演の後に「先生の話は聞いている時はわかった気がしましたが、講演が終わったら、結局はわからない」と言われます。私は「それでいいんですよ」と答えています。<br />
<br />
　わずか40分か50分の話を聞いて、「わかる」と言われたら、あなたに教授のポストを与えますよ、こちらは何十年もやっているんですから、って（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―「素粒子物理学は今、何が重要なのか研究者は皆わかっている。問題はその中で、いかにしていち早く、発見に至るか」「日々これ目的を達成するために常に考えて、ある時は、お風呂の中でぱっとアイディアが浮かぶ」というお話から、日々の積み重ねのすごさを感じました。
</p>
<p>
　神岡鉱山でカミオカンデの実験装置の建設をしていた時は、本当に毎日、毎日が、日々これ新たなりなのです。鉱山の中に3000トンの巨大な水タンクを備えて、絶えず水を綺麗に保つ必要がありました。ニュートリノが水タンクに入ってくると、電子と反応して電子が蹴っ飛ばされ、「チェレンコフ光」という光を出します。<br />
</p>


<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111020_13.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>ＫＥＫに展示されていた20インチ径光電子増倍管</p>
</div>

<p>
　けれども、水の透明度が悪ければ、光電子増倍管という光センサーまで、チェレンコフ光が届かない。だから、水を限りなく綺麗にしないといけないわけです。小柴先生から、世界一透明な水を作るように命令されましたが、そのようなことは、今まで誰もやったことがないのです。<br />
<br />
　光電子増倍管にしても、世界最大のものです。この開発にも携わったけれど、こんなに大きなものを一体どうやってつくるのか？まったく見当がつかない。<br />
<br />
　これらを思い当たることから「ああしたらいい」「こうしたらいい」と考え、調べながら前進するわけです。だから、開発が終わってみると超純水製造メーカの誰よりも、私の方が水を綺麗にする方法を知っていますよ、と自負できるくらいになりました。それくらい勉強しましたよ（笑）<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_20">単に対象が違うだけで、思考方法は全く同じ</h2>
<p>
　坑内の電気配線一つにしても、すべて研究者が配線手順、接続の仕方を考えてやるのですよ。程度の差こそあれ、常に未知の課題に挑んでいました。<br />
</p>
<p class="q">
―そんなところまで研究者が自分でやるんですね<br />
</p>
<p>
　そうですよ。本職の人が見たら、そんな方法ではダメだと怒られるかもしれないけれど。実験屋は、実験期間中、無事に動けばよいと考えて、できるだけ安価に、早くしようと自分でやるのです、何一つ。<br />
<br />
　例えば、プレハブ住宅って、あるでしょう？これを、まずは屋外の実験室として使用し、次にこのプレハブをばらして神岡坑内へトロッコで運び、組み直して再度実験室の一部として使用することを計画しました。でも、そんなプレハブ、どこにもないですよ（笑）<br />
<br />
　普通のプレハブは強度を出すため、ピンを十分に打ちます。けれども、それでは分解する時が大変なので、業者の方に「やめてくれ、とりあえず仮留で良いから」と言って。その後の作業は、全て研究者や学生がやるわけです。<br />
<br />
　大工仕事もやるし、電気配線もやるし、全部やる。実験屋って、何でもやるのです。だから何でもできますよ。いつ失業しても、食べていける（笑）。<br />
</p>
<p class="q">
―そういうものの積み重ねが全部、実験結果に効いていくのですね。<br />
</p>
<p>
　結局、必要は発明の母なのですよ。「これをしなければならない」ことは、考えてやる。その一つひとつの積み重ねです。それが、例えばプレハブを組立・分解・運搬・組立という一見、単純な作業なのです。<br />
<br />
　それと、研究でこの物理の問題を、このような方法で、このような実験施設を作って、調べてみよう、と考えをめぐらす時に使う頭の場所は、多分、同じなんだと思います。単に対象が、プレハブかニュートリノなのか、と。思考プロセスは同じなのです。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_21">「今が大切」の積み重ね</h2>
<p class="q">
―目の前に見えているものが全部、大きな目的に向かって、つながっていくのですね。その対象は、プレハブであろうと、ニュートリノであろうと、全部同じ、という階層まで行くんですね。<br />
</p>
<p>
　そうですね。だから、若い人によく言っていることがあります。仕事に行き詰ってくると、「こんなことをやっても、この先これが生かされるかどうか、私にはわかりません」と言う人がいます。その時、本多光太郎先生の「今が大切」を言って聞かせます。「今を一生懸命、たとえプレハブのことかもしれないけども、それを一生懸命やれば、いつかは必ずそれがどこかで使えるから、生きるから」。<br />
<br />
　将来どうなるかなんてわからなくても、今を一生懸命やる、そして、その積み重ねが多ければ多いほど、よいのです。対象が違うだけであって、思考方法は全く同じなんだから。<br />
</p>
<p class="q">
―プレハブをゼロから組み立てるという、一見すると研究に直接関係なさそうなものも、単に対象が違うだけで思考方法は全く同じ。それで本当に全部、緻密に積み重なっていった結果、皆がやりたいけどやれないことをやれて成果を出せるんですね。<br />
</p>
<p>
　そうです。そして、経験からいうと、そういうことをやっている人は、仕事にせよ、研究にせよ早いのです。このような思考を実際に経験していない人は、やろうとしても、まわりくどい。最初に構えてしまって、これを調べて・あれを調べて・これをやってと、頭の中だけで考えて、堂々巡りをしている。それに対して、思考回路が形成されている人は、まずすぐに手足が出る。「じゃあ、こうしよう」という一歩の踏み出しが早い。<br />
<br />
　さらに大切なことは、そういう経験があると、自信になるのです。「あぁ、こういうことができた」って。「おぉ、自分でもできるじゃないか。自分もまんざらじゃないな」って思うわけです（笑）。<br />
<br />
　このような経験が多くなればなるほど、「自分は、こういうことができる」「じゃあ、次はこういうことをやってみよう」という自信につながります。<br />
</p>
<p class="q">
―最後に、今までのお話を踏まえて、中高生も含めた若い世代にメッセージをお願いします。<br />
</p>
<p>
　本多光太郎先生の「今が大切」です。今やっていることを、一生懸命やりなさい。スポーツも勉強もです。「この勉強をしたら、何か役にたつのか？」とか、「先がどうなるのか？」とか考える心配はいりません。今やっていることを一生懸命やれば、いつかそれが、いろんな場面で役に立ちます。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_23">先のわからない研究も、車の両輪のように必要</h2>
<p class="q">
―最後と言いつつ、今のお話との関連を伺いたくて質問するのですが、鈴木さんが先日の<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110920.php" target="_blank"=>東北大学理学部開講１００周年記念式典講演会</a>の時、「役に立つことを前提にすることは役に立つことを萎縮させる」と仰っていたことが、とても印象に残っています。<br />
</p>
<p>
　それは、先（出口）を決めてしまうと、その出口に行かざるを得ないわけです。そうではなくて、いわゆる応用研究でよく言われる、すぐに役に立たず、「死の谷」に一端は落ちても、そこから這い上がってくる研究は、我々の想像を絶するような応用の広がりを見せることがあります。<br />
<br />
　例えば半導体やレーザーは、もともと基礎研究でした。もっと応用とかけ離れた基礎研究に、相対性理論や量子力学があります。今ではこの二つの理論は、社会や産業のあらゆるところに生かされています。<br />
<br />
　しかしながら、昨今はほとんどの研究に、「役に立つ出口指向」が求められています。「役に立つ出口」が踏み絵となっています。これでは、最初から我々の予想以内の役に立つ成果しか出てこないですよ。死の谷をまたぐ橋が少々増えたくらいで、イノベーションにはなりません。<br />
<br />
　死の谷に落ちて、役に立つという当初の出口指向の意味で見たら「死んでしまう」ものはたくさんあります。しかし、半導体やレーザーのように死の谷を這い上がって、応用に大きな花を咲かせる研究もあるのです。これこそ、イノベーションです。このような研究を増やすには、たくさん死の谷に落とさなければいけない。<br />
<br />
　ですから、先がわかっている研究もいいけれど、先のわからない研究も推奨する、車の両輪のように、双方の研究を積極的に推し進める姿勢が重要です。<br />
</p>
<p class="q">
―先の見えるものの方がまわりからの理解も得やすいし、必要なことではあるけれども、一方で、その目的に最適化して「出口指向」になると想定内のものしか得られず、本当はあった可能性まで削ってしまう危険性もあるのですね。中高生の頃で言えば、少し入試と似ている感じもします。</p>
<p>
　目的がはっきりしていて、それに対して何かしなければいけないことがあります。そのような場合は、目的の橋を架ければよいわけです。しかし、そのようなことだけでは駄目であって、ある意味では、束縛と自由が必要と言い換えてもよいかもしれません。<br />
<br />
　確かに、先が見えるものは理解を得やすい面があります。研究サポートも得られ易いでしょう。しかし、社会に役に立つ飛躍的な発展は、先が見える研究からは出にくい。多くの先の見えない研究にも、補助がなければできない。<br />
<br />
　出口の見える研究においても、「今が大切」です。その出口に向かっていくためには、死の谷をまたぐ曲がりくねった橋や、まっすぐな橋、縄梯子のような橋等、様々な橋があります。最初からどのような橋かは誰もわからない。まさにプレハブをつくって壊して、また元通りに坑内に建てるためには、どうすればいいかを考えるのと同じで、いろいろな方法がある。常に考える習慣をつけなければいけません。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_26">学問の自由と大学の自治</h2>
<p class="q">
―最近、社会の縮小化に伴って、社会全体が目に見えやすい出口に最適化して、それ以外のものはすべて削ってしまう傾向が強くなっていると感じています。<br />
</p>
<p>
　そういうことを求めることが多くなってきていますね。無駄を省いて、最も安く、早く目的を達成しようとしている。このようなやり方では、その場はしのげますが、お先は真っ暗で、打つ手が生まれない。その場しのぎの手法です。<br />
<br />
　ある会社のトップと話をした時に、「今は、会社で開発研究など必要ありません」、「世界中を見回して、使える技術、手法、原材料を総動員して、新製品を作ります」。これが現在の日本の一面を表しています。<br />
</p>
<p class="q">
―そのような流れに対して、どうあるべきなのでしょうか？<br />
</p>
<p>
　うーん、「大学の自治」の重要性を認識することでしょうか。「学問の自由と大学の自治」とよく言われます。「大学の自治」は、どちらかと言えば教授会ががっちり守って、治外法権特区を作ることのように思われますが、本来の意義はそうではなく、「学問の自由」を確保するために、「大学の自治」があるのです。大学が勝手にのほほんと暮らすための自治ではないのです。<br />
<br />
　政治情勢、経済情勢、時の権力体制によって、「こうしろ、ああしろ」、「こういう学生を育てろ」とか、大学へ要求が強まります。「税金を使っているだろう」と。しかし、税金を使っているがゆえに、国民・社会に貢献する「学問の自由」を確保するために、「大学の自治」があるのです。<br />
<br />
　先程お話したように、学問には、縄ばしごをかける出口の見えるものだけではなく、死の谷から這い上がるようないろいろなものがあります。しかし、そういった学問ほど、外から見ると「そんなわけのわからないことをやって、将来何の役に立つのだ、やる必要なし」という外圧が押しかけます。<br />
<br />
　役に立つことが最初から明らかな研究、出口指向の研究重視の世の中で、今こういう時勢になればなるほど、「学問の自由とそれを守る、大学の自治」が重要になるわけです。<br />
<br />
　問題は「大学の自治」と言っても、大学の中を透明にしなければいけません。例えば人事や予算の使い方が国民・社会から監視される仕組みを作ってこそ、「大学の自治」が保障されます。そこを閉じてしまったら駄目ですよ。<br />
<br />
　例えば、昔から教員人事でよく言われるのは「ドブ川の泡」。ドブ川の底から小さな泡が生まれ、ぶくぶくと川面に立ち上るにつれて泡は大きくなる。すなわち、同じ大学で助手から助教授、助教授から教授のように。それでは駄目で、水を綺麗にして誰からも評価されるような人事をしなければいけません。<br />
<br />
　どこから見ても、確かに、人事も予算使用も的確に行われている。それと引き換えに「大学の自治」が認められて、「学問の自由」が得られるのです。「学問の自由」がなければ「社会の自由・発展」はないでしょう。<br />
<br />
　その意味では今、政府や経済界からの「縄はしごかけ研究」の外圧に対して、もっとも踏んばらないといけない。大学が頑張らなければならない。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_27">日本とは何かを知らずに、世界はわからない</h2>
<p class="q">
―では、これから日本はどうなると思いますか？<br />
</p>
<p>
　難しいですねぇ。私はfortune-teller（預言者）じゃないですから（笑）。でも、ある意味で、日本は今、良い試練だと思うのです。<br />
<br />
　なぜと言うと、我々の子どもの頃は、科学者の名前なんて、湯川先生くらいしか知らなかった。それより、文学者や経済学者、政治家といった人たちが、新聞や論壇をにぎわしていたのですよ。<br />
<br />
　それが日本の経済が発展するにつれて、もの社会、消費社会が謳歌して、思想や哲学は影を潜めるようになった。とにかく、資源は無限、ものを作っては捨てる。そして、文学者や哲学者に代わって、技術者や科学者が、新聞に書き立てられるようになった。<br />
<br />
　しかし、本当はそうじゃないと思います。文学者、経済学者、政治学者といった人達が社会のオピニオンリーダーにならないといけない。ところが、今の日本はそうではないけれども、これからの日本はそうなっていくでしょう。文化や文明、社会に関心を持つ、日本文化や文明とは？日本の歴史とは？どれも大事です。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜこれからの時代、文化や文明が大事になると思いますか？<br />
</p>
<p>
　なぜかと言うと、世界のグローバル化が進めば進むほど、我々は世界と向き合い、世界の人たちと接する機会が増えます。世界と付き合うためには、世界を知らなければいけません。世界を知るということは、結局、日本とは何かを知り、その上で世界の国々との違い、共通を知らなければならないのです。<br />
<br />
　日本の文化・文明と世界のそれを対比させて、相手と我々の考え方は、どんなところが異なっていて、どんなところが同じなのか。それがわからなければ、グローバル化社会の中で、話ができないのです。<br />
<br />
　そういうことを最近、身近に感じています。ＫＥＫ（高エネルギー加速器研究機構）とCERN（欧州素粒子・原子核研究所）、Fermi Lab. (米国フェルミ国立加速器研究所)が中心となり、世界の素粒子物理学の実験研究を先導していますが、いろいろな意味で、日本の発言に重みがかかります。<br />
<br />
　大きな国際会議の後の研究成果報告の記者会見の場では、ＣＥＲＮ、ＫＥＫ、Fermi Lab所長の３人が、常に指名で呼ばれます。また、世界の研究者が協力して大型プロジェクトを推進する計画を練る段階では、ＫＥＫ、すなわち日本の意向が重視されます。<br />
<br />
　このような時に、自分のこと、日本のことばかり発言しても意味ありません。世界の中の日本の位置づけ、立場、日本の情勢を考慮して意見を出すことが求められます。そこで重要になることは、結局、日本とは何か、過去・現在・未来の日本とは？を理解しなければいけない、ということです。<br /><br />
　そのような意味で、大学における教養教育（課程）の復活は重要です。それは単なる教養のための教養ではありません。グローバル化の中で世界と向き合うために、理系の学生にとっても、文学や哲学、社会学、心理学、経済学、政治学が必要なのです。そのための教養課程の復活です。グルーバル化世界の中で、口を閉ざしていては、日本は相手にされません。<br />
<br />
　グローバル化の中で、日本が言っていることに「それは正しい、そうすべきだ」と世界が認めるようになるには、そのような素養が必要です。単に物理だけできても駄目なのです。<br />
<br />
　経済力の低下とともに、日本がちやほやされた時代は過ぎました。その一方で、日本の本来の良さが、逆に目立ってきました。何度も言いますが、今は試練の時期です、良い試練だと思います。この試練を経て、グローバル社会の中での日本の指導力が発揮できるでしょう。<br />
</p>

<p class="q">
―鈴木さん、ありがとうございました。これから、ＫＥＫの見学をさせていただきます。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_30">【見学記】ＫＥＫを見学しました（文責：大草芳江）</h2>


<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111020_02.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>地下11ｍに掘られた1周約3ｋｍの巨大な円形の加速器「電子・陽電子衝突型加速器」の一部</p>
</div>
<p>
　高エネルギー加速器研究機構の広報室や各研究施設の皆さまにご案内いただき、ＫＥＫの施設見学をさせていただきました。まず驚いたのが、敷地面積の大きさです。ここＫＥＫつくばキャンパスの面積は、東西1ｋｍ、南北1.5ｋｍ、面積は約153万平方ｍ、東京ドームで言うと33個分もあるそうです。この敷地内に、地下11ｍに掘られた1周約3ｋｍの巨大な円形の加速器「電子・陽電子衝突型加速器」や各種実験装置があり、素粒子物理や物質構造などの研究が進められています。<br />
<br />
　そもそも素粒子とは「もうこれ以上分けられない粒子（物質の最小単位）」という意味ですが、古代ギリシャでは物質は「原子（atom：ギリシャ語で「もうこれ以上分けられない粒子」）が最小単位だと考えられていました。けれども原子は、電子と原子核に分けられ、さらに原子核は陽子と中性子からなることを、私たちは学校で習います。<br />
</p>

<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111020_08.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>クォークの世界をインタラクティブに体験できる展示「ワンダークォーク」</p>
</div>

<p>
　さらに陽子や中性子は「クォーク」という素粒子に分けられ、それが６種類あると予言したのが、2008年にノーベル物理学賞を受賞した小林・益川理論です。クォークは６種類あると考えると、「CP対称性の破れ」という素粒子の世界の大きな謎の一つをうまく説明できるそうです。展示ホールには、宇宙に同数生まれたはずの粒子と反粒子から反粒子が消えていく様子を表した（CP対称性の破れ）展示などもありました。<br class="c" />
</p>
<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111020_09.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>ノーベル物理学賞賞状（複製）。二羽の鳥は、対称性の破れの結果、誕生した宇宙の自然の一コマを描いている。</p>
</div>
<p>
　ここＫＥＫの加速器を用いた実験（Belle実験）が小林・益川理論を実験的に検証した関連で、研究施設や展示室には、小林・益川理論の論文やサイン、ノーベル物理学賞の賞状やメダルのレプリカなども展示されていました。ちなみに、小林・益川理論の論文は全６ページ。しかも内容の大半は「クォークが４種類存在するモデルではなぜ駄目なのか」を説明するもので、最終ページのたった数行だけが「だからクォークは６種類存在するモデルでなければならない」と書いてあるそうです。<br class="c" />
</p>
<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111020_12.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>研究室隣の展示室で見学した加速器の一部</p>
</div>
<p>
　さて、ここＫＥＫの「電子・陽電子衝突型加速器」ではどんな実験が行われているのでしょう。この加速器では、電子と陽電子（※）を衝突させて、ミニ・ビッグバンを人工的に創り、そこから生まれる大量の「B中間子」と「反B中間子」という粒子を詳しく調べているそうです。B中間子と反B中間子のペアを工場のように大量に創り出しているので、この実験は「Bファクトリー（B中間子の工場）」と呼ばれています。<br />
</p>
<p style="font-size:small">
※お馴染みの「電子」も素粒子の一つです。電子はマイナスの電荷を持っていますが、電子のちょうど反対の性質を持った「陽電子」というものがあり、こちらはプラスの電荷を持っています。<br />
</p>
<p>
　この加速器では、電子と陽電子が２つのリングの中でそれぞれ光速に近いスピードで逆方向にまわり、それが3ｋｍごとに１箇所（その的の大きさは4μｍ）で衝突されるよう設計されており、その衝突性能は世界一なのだそう。今回、衝突点近くに設置された測定器（Belle測定器）を見学させていただきました。こちらの測定器では、できた素粒子を立体写真のように撮影することができるそうです。このBelle測定器によって、2001年、B中間子の壊れ方に「CP対称性の破れ」があることが発見され、小林・益川理論が実験的に検証されたというわけです。<br />
</p>
<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111020_11.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>Belle測定器でチェレンコフ光検出器として使用されている「エアロゲル」</p>
</div>
<p>
　Belle測定器は、いろいろな種類の検出器を組み合わせてつくられているそうですが、このような「エアロゲル」という素材も使われていました。触ると発泡スチロールのような感触ですが、不思議なくらいに大変軽くて、触っているうちにベトベトします。断熱性が非常に高く、分子構造は非常に低密度ですが、発泡スチロールのように空気は入っていないそうです。Belle実験では、エアロゲルの中を荷電粒子が通過するとチェレンコフ光が発生することを利用して、荷電粒子の識別に使っているそうです。<br />
</p>
<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111020_03.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>フォトンファクトリーの一部</p>
</div>
<p>
　このほか、放射光科学研究施設（こちらは「光の工場」とのことで愛称「フォトンファクトリー」）も見学させていただきました。加速器から発生する明るく波長の短い光「放射光」を利用することで、原子スケールで物質や生命を観察できる施設です。全国各地から毎年三千人以上の共同利用者がここで実験をするため、科学者同士のコミュニケーションの場にもなっているということでした。<br />
</p>





<br />
<h2 id="p1_31">【見学後の懇談から】<br />誰も知らないことは、楽しいこと</h2>
<p class="q">
―まず実験装置の大きさに驚きました。加速器の円周は3ｋｍ、検出器もビル2階くらいの高さがあるのですね。あんなに小さなものを扱うのに、それを測定するための実験装置はあんなに大きいのですね。
</p>
<p>
　それはなぜかというと、素粒子の世界では、日常のニュートン力学が成り立ちません。量子力学という力学が必要です。量子力学においては、すべての物質は、波と粒の両方の性質を持っていると考えます。<br />
<br />
　朝永先生の「光子（こうし：みつ子）の裁判」という本があります。うたた寝をしながら先生が夢を見ている場面から話が始まります。夢の中で光子の裁判が始まります。<br /><br />

　この建物に窓が２つあります。光子さんは「両方の窓を通って中に入った」と主張しています。しかし裁判官は「そんなことはできるはずがない」と言いかえします。どちらか片方の窓だろう、と。しかし光子さんは「いや、両方から入りました」。<br />
<br />
　光子さんは、粒の性質も持っていますが、波の性質も持っているので、両方から入れるわけです。波の波面は、建物の２つの窓から入って、干渉縞をつくるでしょう。光子さんと裁判官のやり取りによって、量子力学の世界を説明するのが朝永先生の「光子の裁判」です。<br />
<br />
　このように、素粒子の世界では粒子は、波の性質を持つのです。電子を加速して、物質の細部を調べる電子顕微鏡を思い出してください。小さなものを見ようとすると、電子のエネルギーは大きくしなければなりません。たくさんのエネルギーが必要なのです。<br />
<br />
　なぜかと言うと、波だから、（波のジェスチャーをしながら）こうでしょう？例えば、ある大きさのものを見る時、それより波長の長い波では見えないけれど、それより短い波長の波なら見えるわけですね。そして、短い波長の波を作るにはエネルギーが必要です。<br />
<br />
　例えば、向こうの壁に紐を結んで揺すると、波長の大きな波は簡単にできるでしょう？けれども、波長の小さな波をつくろうと思ったら、早く手を振らなければならない。エネルギーを費やしなければ短い波長の波は生じません。<br />
<br />
　ですから、電子にたくさんのエネルギーを与えてやることで、小さなものが見えてくるわけです。そして、小さなものを見るためには、たくさんのエネルギーが必要なので、大きな装置が必要なのです。
</p>
<p class="q">
―それでいて、目に見えない世界のサイズをコントロールできること自体、自分にとっては奇跡のように感じられました。でも制御できるんですね。
</p>
<p>
　できますよ。現在、ＫＥＫでは、次の実験にむけて大きな電子・陽電子衝突型加速器と粒子検出器の建設が進められています。電子の束と陽電子の束を衝突させるには、ナノメートル・サイズで電子と陽電子の軌道をコントロールする必要があるのです。<br />
<br />
　ところが、月と地球の引力によって生じる潮汐効果で、地球が膨らんだり縮んだりします。それがミクロン・サイズなのです。これまでの加速器において、電子軌道と潮汐効果の相関がきれいに観測されています。<br />
<br />
　また、鹿島灘（茨城県の海沿い）に打ちあげる波も地面を揺すりますが、海岸から～50㎞離れたつくば市では、ナノメートル・サイズの地盤の変動をもたらします。潮汐効果は月と地球の運行から制御が簡単ですが、海岸に打ち寄せる波は予測不可能です。それでも、研究を行うには制御しなければいけないのですよ。
</p>
<p class="q">
―遠くの月の満ち欠けや波の影響まで受けるとは驚きです。そんなに小さなずれを、どうやって軌道修正するのですか？
</p>
<p>
　電磁石を使って電子の軌道を制御します。電子が通ったという情報を、前方の電磁石に教えて、電子が到着するまでに電磁石の位置を修正します。その情報をさらに前方の電磁石に教え、これを繰り返します。
</p>
<p class="q">
―それをナノメートルスケールで制御できるなんて驚きです。
</p>
<p>
　それくらいできますよ（笑）。そういう仕掛けの検討は、企業の方々は勘弁してくれと、お手上げです。研究者が考えるわけです。これまでに繰り返し言いましたが、研究者は何でもやるんですよ（笑）<br />
<br />
　必要だから、自分たちで考えるわけです。それを意外な方法で解決したりね。誰も知らないということは、楽しいことなのです。
</p>
<p style="text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_suzuki-san_02.jpg" alt=""  style="width:500px;" />
</p>
<p class="q">
―鈴木さん、本日は長いお時間、本当にありがとうございました。<br />
</p>

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20111205-top.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111205-top.jpg" width="600" height="400" class="mt-image-none" style="" /></span>
-->]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">高エネルギー加速器研究機構</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">機構長</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">高エネルギー加速器研究機構</category>
            
            <pubDate>Tue, 24 Apr 2012 08:56:17 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>ノーベル化学賞学者が東北大で講演（ダン・シェヒトマン博士インタビュー）</title>
            <description><![CDATA[<h1>ノーベル化学賞学者が東北大で講演（ダン・シェヒトマン博士インタビュー）</h1>
<p class="date">2012年3月31日公開</p>

<div class="rightPicture2" style="margin:20px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120324_01.jpg" alt="" />
<p>「ダン・シェヒトマン特別教授によるノーベル賞受賞講演会」のようす＝２４日、東北大学片平キャンパス（宮城県仙台市）</p>
</div>

<p>
　２０１１年ノーベル化学賞受賞者のダン･シェヒトマン博士（イスラエル工科大学）による公開講演会が２４日、東北大学で開かれた。「The Discovery of Quasi-Periodic Materials（準結晶の発見）」と題したシェヒトマン博士の講演に、約１７０人の研究者や学生らが熱心に耳を傾けた。<br />
<br />
　固体には、原子が立体的に規則正しく並んだ「結晶」と、原子が不規則に並んだ「アモルファス（ガラス）」の２種類がある。結晶は、平面の場合と同じように、三角形や四角形などは単位として繰り返し隙間なく並べることができるが、五角形では空間を完全に埋められないため、絶対にあり得ないと考えられていた。<br />
</p>

<div class="rightPicture2" style="margin:0px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120324_02.jpg" alt="" />
<p>ダン・シェヒトマン博士による講演のようす</p>
</div>

<p>
　ところがシェヒトマン博士は、この結晶学の常識を打ち破る、五角形の構造を持つ新物質を発見。結晶でもアモルファスでもない第三の固体として、「準結晶」という新ジャンルを開拓した。<br />
</p>
<p>
　講演でシェヒトマン博士は、アメリカでのサバティカル（研究のための長期休暇）中に準結晶を発見した時のエピソードや、準結晶の存在を根底から否定していた２度ノーベル賞受賞者のライナス・ポーリングとのやり取りなどに触れながら、研究業績を紹介。パラダイムを変える発見をした時、従来の概念を覆すことが如何に大変であるかをユーモアを交えながら語った。
</p>
<p>
　また、東日本大震災からの復興へのメッセージとして、「母なる自然は、我々に良いことも時には良くないことももたらし、我々はその営みを変えることはできない。我々科学者にできることは、母なる自然を解き明かすことだ」と呼びかけた。
</p>
<div class="rightPicture2" style="margin:0px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120324_03.jpg" alt="" />
<p>蔡安邦教授による講演のようす</p>
</div>

<p>
　このほか、準結晶の第一人者である蔡安邦教授（東北大学多元物質科学研究所）の講演もあった。蔡教授は、準結晶とは何かについて説明した後、安定な準結晶の発見から準結晶形成の指針を導き、これに基づいて、さらに安定な準結晶を発見した一連の連鎖について紹介。準結晶の構造や性質についての解説もあった。
</p>
<p>
　なお、シェヒトマン博士は、２００６年７月から９月まで、同学の「ユニバーシティ･プロフェッサー」を務めている。
</p>
<br />

<h2>ダン・シェヒトマン博士　インタビュー<br />
「興味を大切にすることで、今すぐにでもエキスパートに」</h2>
<p class="q">
―Do you have a message for junior high and high school students in Japan ?
</p>

<div class="rightPicture2" style="margin:0px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120324_04.jpg" alt="" />
<p>ダン・シェヒトマン博士（右）、蔡安邦教授（左）</p>
</div>
<p>
I wish, some of you students will want to become scientists and study science in Tohoku University, or in other university, in Japan. And hopefully some of you will became great scientists. And in order to become great scientists, you have to become an expert in something. So choose a subject, and become an expert. And you can start now, you can start becoming an expert right now, by choosing a subject. And talk to your teachers about it, talk to your parents, call a professor in the university and ask questions and become an expert in something. And if you become an expert or professional, it will take you a long way forward, and you will be very successful.
</p>
<p>
　科学者になりたい、東北大学や他の日本の大学で科学を勉強したい、という学生が皆さんの中にいることを願っています。また、皆さんの中から、偉大な科学者が生まれることを期待しています。偉大な科学者になるためには、何かのエキスパート（達人）になる必要があります。興味を持ったことは追求して、何かのエキスパートになってください。興味を大切にすることで、今すぐにでもエキスパートになれますよ。そのことについて、先生や両親に話してみなさい。そして、疑問を大学の先生にぶつけて、何かのエキスパートになってください。将来あなたがエキスパートやプロフェッショナルになれた時、そのことがあなたの力となって、きっと大成功へと導くでしょう。
</p>

<p class="q">
【関連記事】<br />
◆<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php" target="_blank">金属学者の蔡安邦さん（東北大学教授）に聞く：「準結晶」（2011年ノーベル化学賞）って何？</a>
</p>

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="20120324_02.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/20120324_02.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
-->]]></description>
            <link>http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120331.php</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">ノーベル賞</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">東北大学</category>
            
            <pubDate>Sat, 31 Mar 2012 16:24:22 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>国際競争力ある産業づくり目指しシンポ開催／ものづくり日本大賞表彰式も</title>
            <description><![CDATA[<h1>国際競争力ある産業づくり目指しシンポ開催／ものづくり日本大賞表彰式も</h1>
<p class="date">2012年3月23日公開</p>

<div class="rightPicture2" style="margin:20px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120312_01.jpg" alt="" />
<p>１２日に開催された「ものづくり・知的財産活用シンポジウム」のようす＝仙台国際ホテルにて</p>
</div>

<p>
　ものづくりの推進と知的財産権の活用を進めようと、東北経済産業局は１２日、「ものづくり・知的財産活用シンポジウム」を仙台市内のホテルで開催し、地域企業などから約１８０人が参加した。ものづくりの現場で活躍する優秀な個人・団体を表彰する「第４回ものづくり日本大賞」の表彰式も行われた。<br />
<br />
　冒頭で東北経済産業局長の豊國浩治さんは、「早期の復旧復興を図ると同時に、国際競争力のある産業づくりが必要。東北の強みである技術やデザインなどを知的財産権として保護し、継続して活動できる仕組みを強化することが重要だ」と挨拶。<br />
<br />
　シンポジウムでは、宮城県仙台市に本社を置くアイリスオーヤマ代表取締役社長の大山健太郎さんが「グローバル競争下におけるものづくり企業の経営戦略」と題して特別講演。同社が震災後、早期事業復旧を実現できたポイントについて紹介した後、年商500万円の家業から1000億円（2011年度）の企業に成長させた経営理念などについて、「目線を、ユーザで考えるか、プロダクトで考えるか、その違いだ」などと語った。<br />
<br />
　このほか、特許庁による「がんばろう日本―日本の企業を知財で応援―」と題した基調講演や、知的財産活用に意欲的に取組む企業経営者によるトークセッションなどもあった。<br />
</p>


<div class="rightPicture2" style="">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120312_02.jpg" alt="" />
<p>「第４回ものづくり日本大賞」表彰式のようす</p>
</div>

<p>
　続いて、「第４回ものづくり日本大賞」表彰式では、優秀賞（４件）と東北経済産業局賞（７件）を受賞した東北の企業が表彰された。また、東北初の内閣総理大臣賞を受賞した齋栄織物株式会社（福島県）などの企業が、ものづくりに対する思いや取組みなどを発表した。<br />
<br />
　「第４回ものづくり日本大賞」を受賞した東北の企業は、以下のとおり（計１６件）。<br />
</p>
<p style="font-size:small">
【内閣総理大臣賞】齋栄織物株式会社（福島県川俣町）「超極細生糸を使用した世界一薄い絹織物の開発」、【経済産業大臣賞】株式会社サンビックス（福島県郡山市）「電子機器トラブルを発生させない亜鉛めっきの開発」、【特別賞】ＮＥＣトーキン株式会社（宮城県白石市）「環境配慮型高性能ノイズ抑制シートの開発と事業化」、林精器製造株式会社（福島県須賀川市）「伝統技術とコンピュータ制御技術の融合による時計加工手法の開発」、ソニーエナジー・デバイス株式会社（福島県郡山市）「移動式蓄電システムを利用したパブリックビューイングシステムの開発」、【優秀賞】 株式会社南部美人（岩手県二戸市）「糖類無添加！ 麹の甘みを引き出した日本酒による梅酒の開発」、株式会社髙橋工業（宮城県気仙沼市）「コールテン鋼を用いた２００年住宅」、株式会社リード（宮城県亘理町）「ダイヤモンドの常識を覆した超高剛性・超薄刃ダイヤモンドブレード製造技術を確立」、東洋システム株式会社（福島県いわき市）「高信頼性・低コストの二次電池評価装置の開発、世界の技術開発に貢献」、【東北経済産業局長賞】盛岡セイコー工業株式会社（岩手県雫石町）「『雫石高級時計工房』の伝統技術と先端テクノロジーの融合による超精密な機械式時計つくり」、有限会社テクノ・キャスト（宮城県大崎市）「臨床手技向上等に寄与する生体近似臓器（軟組織）模型の開発」、東北電子産業株式会社（宮城県利府町）「極微弱発光検出装置の開発と応用」、株式会社宮腰デジタルシステムズ（秋田県横手市）「世界で最も高速で高品質（高解像度）な液体現像電子写真高速印刷機の開発」、株式会社高研（山形県鶴岡市）「気管内痰の吸引を、カテーテル使わずにできる構造を実現した世界初の気管カニューレ」、ソニーエナジー・デバイス株式会社（福島県郡山市）「無水銀化ｱﾙｶﾘﾎﾞﾀﾝ電池（ＬＲ）の技術開発と商品化」、クニミネ工業株式会社（福島県いわき市）「粘土を素材とする耐熱性ガス・水蒸気バリア膜用特殊粘土の実用」<br />
</p>
<br />

<h2>インタビュー（主催者、講演者、受賞者）</h2>

<h3>◆研究開発促進のためにある「特許」を理解し活用して<br />
／東北経済産業局長の豊國浩治さん</h3>
<p class="q">
―本シンポジウムのテーマである「知的財産権」は、そもそもなぜ重要ですか？<br />
</p>

<div class="rightPicture"  style="width:150px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120312_toyokuni-san.jpg" alt="" style="width:150px" />
</div>


<p>
　新しい製品をつくるには、研究や開発に大変多くの時間や資金を要する。ところが、つくった製品を真似してつくる人がいれば、それまで費やした時間や資金は回収できなくなる。すると、自分で研究開発するより、他人のものを盗んだ方が得となってしまう。そうならないように、研究開発して新製品をつくった人や、発明した人には一定の権利を与え、それを使いたい場合にはお金（ロイヤリティ）を払ってもらう。これが知的財産権の制度である。<br />
</p>
<p class="q">
―重要視する「国際競争力のある産業づくり」と「知的財産権」との関係は？<br />
</p>
<p>
　特許は日本国内だけの問題ではない。中国などの外国に物を売る時、知的財産権を侵害されないよう、色々な措置を講じて守っていかなければ、せっかくつくったものが盗まれる恐れがある。まさに国際競争力という点でも、知的財産権の制度をよく理解し、活用いただくことが大切。特許庁が守ってくれると思わず、自ら意識的に守っていくことも重要だ。<br />
</p>
<br />
<h3>◆単なる応用ではなく、常にオリジナリティを考えて<br />
／アイリスオーヤマ（宮城県仙台市）代表取締役社長の大山健太郎さん</h3>

<p class="q">
―特別講演の内容を踏まえて、中高生も含めた読者へメッセージをお願いします。<br />
</p>

<div class="rightPicture"  style="width:150px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120312_ooyama-san.jpg" alt="" style="width:150px" />
</div>

<p>
　中高生の場合、まだ世の中の常識や技術をいろいろ学ばなければいけない時期だが、学んだことを単に応用するのではなく、それを基礎知識にした上で、自分のアイディアをどう活かすか、常にオリジナリティというものを考えていただきたい。日本は（欧米諸国への）キャッチアップ（＝追い上げ）で高度成長してきたが、もう日本は今先端にいるので、キャッチアップする環境ではない。だからこそ、日本の生活の中、あるいは日本の技術の中から、新しいものをつくる気概を若い人には持っていただきたい。<br />
</p>
<br />
<h3>◆電子機器の高周波ノイズを張るだけで吸収できるシートを開発<br />
／NECトーキン（宮城県白石市）の佐藤光晴さん</h3>
<p style="font-size:small; background-color:whitesmoke; padding: 5px 10px">
<span style="font-weight:600; font-size:small">【特別賞】<br />
「環境配慮型高性能ノイズ抑制シートの開発と事業化」</span><br />
　携帯電話などの電子機器に生じる電磁ノイズの悪影響を防ぐために、貼るだけで効果的に電磁ノイズを吸収できる、高性能なノイズ抑制シートを開発。ハロゲンを使用しない製品開発に成功し、性能と環境とを両立した優れた技術力として、評価された。<br />
</p>
<p class="q">
―貴社の技術の特徴について、教えてください。<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120312_04.jpg" alt="" />
</div>

<p>
　近年、電子機器の高クロック化に伴い、高周波化するほど本来期待する以外の電圧・電流が発生してしまい、機器の動作を阻害するという悪影響があった。このような電磁ノイズを防ぐために従来から電磁ノイズ対策（EMC）部品が使われてきたが、今回の「ノイズ抑制シート」は、非常にノイジーな成分が出やすい高周波帯域（10メガ～5ギガヘルツ）で余計な電波を熱に変換して吸収できる点が特徴的。また最近は、ノイズというマイナス要因を消す用途だけでなく、積極的に本製品を使って信号や通信品質を改善するといった、プラス要素を生み出す使用法が拡大している。<br />
</p>
<p class="q">
―そのような特徴ある技術を実現できた、貴社ならではの強みとは？<br />
</p>
<p>
　「ノイズ抑制シート」（商品名：バスタレイド）は、ＥＭＣ（電磁的両立性、電磁環境工学）のパイオニアである東北大学の佐藤利三郎名誉教授をはじめ多くの方々のご指導やご協力をいただき、１９９５年に当社が世界で初めてノイズソリューションとして提案させていただいた製品。それを可能にしたのは、まず、当社独自の材料を保有している素材型デバイス創造企業であること、そしてＥＭＣ技術ノウハウや成膜プロセス技術等の長年培ってきた要素技術を活かしたＥ－デバイスの開発が根底にあり、お客様のニーズにあったデバイスをご提案させていただいている。<br />
</p>
<br />
<h3>◆超高剛性・超薄刃ダイヤモンドブレードで超精密加工が可能に<br />
／リード（宮城県亘理町）の鍋谷陽介さん</h3>
<p style="font-size:small; background-color:whitesmoke; padding: 5px 10px">
<span style="font-weight:600; font-size:small">【優秀賞】<br />
「ダイヤモンドの常識を覆した超高剛性・超薄刃ダイヤモンドブレード製造技術を確立」</span><br />
　世界に先駆けて、従来技術では成し得なかった超高剛性・超薄刃ダイヤモンドブレードを量産化した。従来ブレードよりも４倍以上の硬度を確保し、ブレード厚みを２分の１以下に抑えて、削ることが難しい素材の超精密加工を可能にしたことが評価された。<br />
</p>
<p class="q">
―貴社の技術の特徴について、教えてください。<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120312_05.jpg" alt="" />
</div>

<p>
　例えば、携帯電話などの電子機器の中には、半導体やコンデンサーといった小さな電子部品がたくさんある。我々は、電子部品をあの形に切ったり研磨するための特殊な刃をつくっている。髪の毛を４分の１にできるほど薄い、約50μm（0.05mm）の刃だ。以前は1～2cmあった電子部品だが、今では1～2mmよりさらに小さくなっている。それに伴って切る幅も狭くなるため、刃も薄くする必要がある。ところが、高速回転で切る時、刃を薄くすればする程、どうしても曲がってしまう問題があった。そこで我々は、50μmと大変薄いが全く切れ曲がりのない、大変硬いダイヤモンドブレードを開発。この刃がなければ、世の中の様々な電子部品が切れなくなる。特にハードディスクの磁気ヘッド用ブレードとしては、世界で90％以上のシェアに達している。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ貴社だけが、そのような特徴ある技術を実現できたのでしょうか？<br />
</p>
<p>
　ダイヤモンドは硬いが熱に弱く、約600℃で炭化してしまう。我々は、高熱でもダイヤモンドが炭化しない特別な炉（焼結技術）を開発し、特許を取得。ダイヤモンドが炭化しないため、大変硬い刃に焼き上げることができる。同時に薄くする技術も大変難しいが、切る・削る・磨く世界で商売する我々の様々なノウハウにより、精度良く薄くする技術を確立した。<br />
</p>
<p class="q">
―今までのお話を踏まえて、中高生も含めた読者へメッセージを。<br />
</p>
<p>
　日本の優れた点は、中国のように真似する技術ではなく、想像してものをつくり出す技術。想像力の源は、育った環境や経験が基本になる。部屋に閉じこもらず、どんなことでも良いので興味を持ち、いろいろな感性に触れ、自身の感性を磨いてほしい。<br />
</p>
<br />

<h3>◆気管内痰の吸引を、カテーテルを使わずにできる構造を実現<br />
／高研（山形県鶴岡市）の奥山伸二さん</h3>
<p style="font-size:small; background-color:whitesmoke; padding: 5px 10px">
<span style="font-weight:600; font-size:small">【東北経済産業局長賞】<br />
「気管内痰の吸引を、カテーテルを使わずにできる構造を実現した世界初の気管カニューレ」</span><br />
　吸引カテーテルを気管に挿入する必要がなく、粘膜刺激による苦痛や人工呼吸器を外した時の酸欠および細菌感染のリスクがない、吸引カテーテルの機能を備えたカフつき気管カニューレを実現したことが評価された。<br />
</p>
<p class="q">
―貴社の技術の特徴について、教えてください。<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120312_06.jpg" alt="" />
</div>

<p>
　何らかの理由で口呼吸できない人が、喉に穴を開けてチューブから呼吸する時、口に溜まった唾液や痰がつまって呼吸できなくならないよう、普通はカテーテルを用いて、唾液や痰を昼夜問わず頻繁に取る必要がある。しかし、カテーテルを用いることは、細菌感染や人工呼吸器を外した時の酸欠のリスク、カテーテルによる気管粘膜刺激の苦痛など、患者・介護者双方にとって苦痛や負担が大きかった。<br />
　そこで我々は大分協和病院と共同で、カテーテルを使わずにチューブの孔から唾液や痰を吸引できる特許技術を開発。まだシステム全体ではないものの、苦労の末、薬事法による承認も受けた。技術的な特徴は、チューブの外側でなく内側に孔を開けた点。これにより気管粘膜を吸い込むことなく安全に吸引できる点がポイント。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ貴社だけが、そのような特徴ある技術を実現できたのでしょうか？<br />
</p>
<p>
　当初はかなり長い期間、外側と内側の両方に吸引孔を設けていた。しかし外側に吸引孔があることで、万が一でも気管粘膜を吸引し出血したら大変だ。安全性を追求し、様々なテストを繰り返した結果、外側の孔を無くして内側だけにしても、吸引効率が下がらないことや、その理由も明らかになった。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ内側の孔だけでも吸引効率は下がらないのですか？<br />
</p>
<p>
　吸収孔は外側にあった方が効率が良いと普通は思うが、実は、痰は動かないものではなく、呼吸によって非常に動く。呼気の流れによって痰や唾液も一緒に流れていくため、勝手に孔の中へ入る。よって内側だけに孔があれば十分なことが明らかになった。単純な話だが、ここに辿り着くまでには、様々な試行錯誤があった。<br />
</p>
<br />
<h3>◆人体に近い血管モデルを開発し、医師の吻合訓練に貢献<br />
／テクノ・キャスト（宮城県大崎市）の曽根千枝子さん</h3>
<p style="font-size:small; background-color:whitesmoke; padding: 5px 10px">
<span style="font-weight:600; font-size:small">【東北経済産業局長賞】<br />
「臨床手技向上等に寄与する生体近似臓器（軟組織）模型の開発」</span><br />
　含水性ポリマー素材（PVA-H）による独自の中空技術を確立し、今までにないフレキシブルで湿潤性を有し、かつ生体物性に近い0.5～5mmのPVA-H製微小口径血管モデルを開発した。この血管モデルによって、より実際に近い臨床トレーニングが可能となり、微細血管の吻合訓練などの手技向上に大きく貢献している点が評価された。<br />
</p>
<p class="q">
―貴社の技術の特徴について、教えてください。<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120312_07.jpg" alt="" />
</div>
<p>
　医療の先生方が血管を縫い合わせる練習をする時、従来はシリコンやブタの血管などが利用されていたが、我々は含水性ポリマー素材を用いて、より人体に近い血管モデルを開発した。血管モデルの太さは0.5mmから5mmまであり、先生方のニーズに合わせて販売。太さの異なる血管を縫い合わせる練習などにも役立っている。<br />
</p>
<p class="q">
―そのような特徴ある技術を実現できた、貴社ならではの強みとは？<br />
</p>
<p>
　堤定美博士（京都大学名誉教授）との出会いが今につながっている。堤博士から含水性ポリマー素材でいろいろな応用が可能であることを教えてもらい、血管のほかにも臓器など、様々なトレーニング用生体模型をつくっている。<br />
</p>
<p class="q">
―ありがとうございました
</p>

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="20120312_02.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/20120312_02.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
-->]]></description>
            <link>http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120322.php</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北経済産業局</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">社会って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">アイリスオーヤマ</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">ものづくり</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">ものづくり日本大賞</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">東北経済産業局</category>
            
            <pubDate>Fri, 23 Mar 2012 09:24:56 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>新しい博士の誕生をお祝い：東北大学理学部物理（新博士インタビュー）</title>
            <description><![CDATA[<h1>新しい博士の誕生をお祝い：東北大学理学部物理（新博士インタビュー）</h1>
<p class="date">2012年3月21日公開</p>

<div class="rightPicture2" style="margin:20px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_08.jpg" alt="" />
<p>東北大学大学院理学研究科で開催された物理学専攻・新博士講演会のようす＝東北大学青葉山キャンパス（仙台市）</p>
</div>
<p>
　東北大学大学院理学研究科物理学専攻は先月、新しい博士の誕生をお祝いする会を同大の青葉山キャンパス（仙台市）で開いた。専攻賞を受賞した新博士３名による講演会も開かれ、教員や学生ら約５０名が熱心に聞き入った。<br />
<br />
　講演会では、ニュートリノ科学研究センターの渡辺寛子さんが「カムランドにおける反ニュートリノ信号の包括的研究」と題して講演。同大のニュートリノ検出器「カムランド」を用いた、原子炉ニュートリノと地球ニュートリノに関する研究成果を発表した。<br />
</p>

<div class="rightPicture2">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_03.jpg" alt="" />
<p>新博士講演会のようす</p>
</div>
<p>
　金属材料研究所の内田健一さんは「スピン流・熱流・格子ダイナミクス相互作用に関する研究」と題して講演。電子の電荷に加えてスピンの自由度も積極的に利用する「スピントロニクス」が注目を集める中、スピン流を生成する新たな手法を発見した研究について紹介した。<br />
<br />
　物性理論グループの星野晋太郎さんは、「非クラマース配置を持つｆ電子系の近藤効果と秩序化」と題して、電子の遍歴と局在の間でのみ起こる新しい物理について、理論的に研究した成果を発表した。<br />
</p>

<div class="rightPicture2">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_14.jpg" alt="" />
<p>専攻賞授与式のようす</p>
</div>
<p>
　続いて専攻賞授与式が開かれ、博士課程後期から渡辺さん（総長賞推薦）・内田さん・星野さんの３名、博士課程前期では小野善将さん・加藤新一さん・松下ステファン悠さん・澤部宏輔さんの４名が選ばれ、石原照也専攻長より賞状と記念メダルが贈られた。<br />
<br />
　石原専攻長は「自分の研究が全体の中でどのような位置づけにあるかを確認し、様々な人々との議論を通じて学問の幅を広げることは、今後何十年先の研究生活に大切なこと。新しい出会いの中で、これからも研究を発展させていただきたい」と話している。<br />
</p>
<br />

<h2>新博士インタビュー</h2>
<p>
　大学院生はどんな研究をして、何を考えているのだろう？専攻賞を受賞した新博士３名に、研究内容や研究生活の思い出などをインタビューした。<br />
</p>

<h3>◆渡辺寛子さん</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_watanabe-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
</div>
<p style="font-weight:600; font-size:small">
博士論文題名：「カムランドにおける反ニュートリノ信号の包括的研究」<br />
指導教官　　：井上邦雄教授（ニュートリノ科学研究センター）<br />
</p>
<p class="q">
―このたびは総長賞の受賞おめでとうとざいます。まずは喜びの声を一言。<br />
</p>
<p>
　研究を始めた当初は、まさかこんなことになるとは思っていませんでした。実際に（カムランドに）行ってみると、地下の中に入らされたり、ヘルメットをかぶってトンネルの中に入らされたり（笑）。想像していた物理実験のイメージとはだいぶかけ離れていたのでどうなることかと思いましたが、５年間続けてきて良かったと思います。<br />
</p>
<p class="q">
―それでは研究内容についてご紹介ください。<br />
</p>
<p>
　私は、「ニュートリノ」という粒子を使った研究を行なっています。東北大学は「カムランド」と名付けられた世界最大の液体シンチレータ検出器を岐阜県に持っており、私たちはそこで実験を行なっています。<br />
<br />
　液体シンチレータとは、ニュートリノが来た時に光を発するものです。その光を検出することにより、ニュートリノが来たことや、ニュートリノの持つエネルギー、どんな性質のニュートリノなのか等を、２４時間３６５日ずっと監視しています。<br />
<br />
　ニュートリノはいろいろなところから飛んで来ますが、原子炉や地球の中心、さらには太陽からも飛んで来ます。そこで私の研究は、いろいろなところから飛んでくるニュートリノを研究してその性質を調べよう、というものでした。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ原子炉ニュートリノを？<br />
</p>
<p>
　自然に発生したニュートリノは、いつどこから発生したかや、その性質等はわかりません。しかし原子炉の場合、原子炉の運転状況を知ることで、いつどこから発生したかや、その性質等が良くわかっているニュートリノを使って研究できるメリットがあります。<br />
<br />
　今回、原子炉ニュートリノを使うことで、「ニュートリノが三世代で振動している」というモデルに対し、その振動をあらわすパラメータを精密に測定できたことが、まず一つ目の成果です。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ地球ニュートリノを？<br />
</p>
<p>
　私たちは地球に住んでいますが、実は、地球の中心がどうなっているかや、地球内部が持つ熱がどのようになっているかは、あまりよくわかっていないのです。なぜかというと、地球中心まで穴を掘っていくわけにもいかず、調べる方法がとても難しいためです。<br />
<br />
　けれどもニュートリノを使えば、ニュートリノは他のものとあまり反応せずに長距離を飛べる性質があるため、地球中心で発生したニュートリノがそのまま何とも反応せずに、発生した情報を持ったまま地上に飛んで来ます。ですから、地球中心で発生したニュートリノを地上で観測することで、地球内部のことがよくわかるのです。<br />
<br />
　そこで我々は、地球内部を探るために、地球の中心から来る反ニュートリノを検出しました。地球内部で発生する熱のもととして、ウランやトリウム等の放射性物質があるのですが、今回の検出により、その放射線物質起源の熱がどれくらいかを、初めて実際の測定で示すことができたのです。<br />
<br />
　もともと地球物理の分野では様々なモデルがありましたが、そのモデルを実際の測定で検証することは、先ほどお話したように、大変難しいことでした。ですから、ニュートリノを使うことで今回初めて、実際の測定結果を使って、モデルに対して制限を与えることができたことは、地球物理分野の人にとっては大変画期的な成果でした。<br />
<br />
　２００２年、ニュートリノ研究で小柴昌俊先生がノーベル物理賞を受賞しましたが、その時の記者会見で「ニュートリノ研究は何かの役に立つのですか？」という質問がありました。基礎研究は人間の生活に役立たないイメージをもたれがちですが、今回の地球ニュートリノ測定のように、ニュートリノ自体の性質を理解するだけでなく、地球の理解や人間の生活に役立つことにも応用し始められている時代に来ていると思います。今回の研究成果には、そのような意味があったと思います。<br />
</p>
<p class="q">
―それでは５年間の研究生活の中で、特に印象に残っていることは？<br />
</p>
<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_02.jpg" alt="" />
</div>
<p>
　本研究は、東北大学を主体とした国際的な実験ですから、世界の研究者と常に一緒に議論したり、自分の考えを発表したりする場面が何度もありました。学生の段階から、そのような世界的な立場で、様々な人と議論できたことは、とても役に立ったと思います。<br />
<br />
　また今回の研究には直接関係ないのですが、昨年からカムランドでは、「二重ベータ崩壊探索実験」という新しい実験を立ち上げています。去年はその準備にカムランドのメンバー総出で取り掛かったほど大掛かりな研究で、その立ち上げに最初から携われたことは、研究者になる上でとても良い経験になったと思います。<br />
</p>
<p class="q">
―最後に、後輩へのメッセージをお願いします。<br />
</p>
<p>
　やっぱり生きていると不思議に思うことはたくさんあります。その不思議だなと思うことに、最先端で直に触れられ、しかも自分の手で試行錯誤できることは、研究者ならではの醍醐味だと思います。<br />
<br />
　私も最初は「自分にはそんな能力なんてない」と思っていたところもありました。けれども、やっているうちにどんどんおもしろくなり、努力と思わないくらい楽しい時期もあるものです。<br />
<br />
　ですから皆さんも、あまり気負わず、自分がやりたいと思ったことをやってみると、いろいろ新しい発見があって良いと思います。<br />
</p>
<p class="q">
―渡辺さん、ありがとうございました。<br />
</p>
<br />
<h3>◆内田健一さん</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_uchida-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
</div>
<p style="font-weight:600; font-size:small">
博士論文題目：「スピン流・熱流・格子ダイナミクス相互作用に関する研究」<br />
指導教官　　：齊藤英治教授（金属材料研究所）<br />
</p>
<p class="q">
―このたびは専攻賞の受賞おめでとうございます。まずは喜びの声を一言。<br />
</p>
<p>
　専攻賞の受賞は非常に光栄ですし嬉しく思っています。けれどもここ半年間は個人的なことや雑務などでいろいろ忙しく、なかなか研究に割ける時間がなかったので、そんな中で博士論文を満足のいく形できちんと提出できたことに、まずは安心しています。<br />
</p>
<p class="q">
―それでは、研究内容についてご紹介ください。<br />
</p>
<p>
　電子は、「電荷」という電気的な性質と、「スピン」と呼ばれる磁気の性質、二つの性質を持った素粒子です。従来のエレクトロニクスは電荷の自由度のみを使ってきましたが、最近はスピンの自由度も積極的に使っていく「スピントロニクス」という分野が注目を集めています。<br />
<br />
　スピントロニクスは、「スピン流」と呼ばれる、電流のスピン版の現象で駆動されます。スピン流を用いることで、例えば、磁場を用いずに磁石の方向を反転させたり、情報処理ができるなど、いろいろな応用への期待がされています。しかし、このスピン流を生成するための方法が、今まではあまりありませんでした。<br />
<br />
　本研究では、スピン流を生成するいろいろな手段を開拓しました。主に熱や振動を利用したスピン流の生成法を発見したことが成果です。<br />
</p>

<p class="q">
―４年間（飛び級）の研究生活の中で、特に印象に残っていることは？<br />
</p>
<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_04.jpg" alt="" />
</div>
<p>
　僕が齊藤研究室に入った当時、研究室にはまだ数人しかいなかったため、先輩もつかず、右も左もわからない状態で研究がスタートしました。けれども、それは逆に言えば、自分のやりたいことを好きにやれた環境でもありました。ある意味では、それがいろいろな発想の転換やブレイクスルーにつながり、研究を順調に進められた大きな要因となったと思います。<br />
<br />
　また、日々の実験ももちろん重要ですが、大変思い出深いことがあります。修士２年の時、大きな国際会議の招待講演を受けました。普通の英語の講演すら経験がなかったのに、いきなり招待講演をやることになり、本当に大変でした。けれども逆にそれを乗り切ることで、英語もそれなりに上達したと思います。やはり負荷をかけて、壁を乗り切ることが重要だと思いました。<br />
</p>
<p class="q">
―最後に、後輩へメッセージをお願いします。<br />
</p>
<p>
　自分がやりたいと思ったり、疑問に思ったことは、臆せず先生や先輩に積極的に議論を持ちかけていくことが、大事なことだと思います。<br />
</p>
<p class="q">
―ありがとうございました。<br />
</p>
<p style="font-size:small">
【参考】詳しくは、<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110412.php" target="_blank">第１回日本学術振興会「育志賞」受賞：内田健一さんインタビュー記事</a>をご覧ください。<br />
</p>
<br />

<h3>◆星野晋太郎さん</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_hoshino-san.jpg" alt=""  style="width:100px" />
</div>
<p style="font-weight:600; font-size:small">
博士論文題目：「非クラマース配置を持つ f 電子系の近藤効果と秩序化」 <br />
指導教官　　：倉本義夫教授（物性理論グループ）<br />
</p>
<p class="q">
―このたびは専攻賞の受賞おめでとうございます。まずは喜びの声を一言。<br />
</p>
<p>
　僕は賞を貰うのが今回初めてなので、そういう意味では大変感慨深いです。受賞は指導教官の倉本先生はじめ、今はドイツにいる助教の大槻先生のお力添えのおかげです。両先生からは手取り足取り教えていただきました。その延長線上に今回の受賞があったと思います。
</p>
<p class="q">
―研究内容についてご紹介ください。<br />
</p>
<p>
　まず対象とするのは「ｆ電子」という電子です。これは「ランタノイド・アクチナイド」という、周期表から飛び出した２行の元素を持つ物質群です。ｆ電子は、「局在性」が非常に強いという特徴があります。局在と言うとちょっとわかりづらいかもしれませんが、局在とは原子核のまわりに束縛されている状態のこと。つまり、ｆ電子は、自分自身では動きにくいという性質がもともとあるのです。<br />
<br />
　けれども、そこに固体の中を動きまわる「伝導電子」という文字通り伝導する電子がいて、その二種類の電子が絡み合うと、とてもおもしろいことが起こるのです。それ自体では動かない局在の性質を持つｆ電子が、伝導電子に引きづられて、動き出すこともあるのですね。このとき電子は有効的な質量が非常に大きくなり、「重い電子」と呼ばれています。<br />
<br />
　このように、自分自身では動かないのですが、伝導電子に引っ張られて動き出すことを、我々は「遍歴の状態」と呼んでいます。結晶中を引きづられて動き回るｆ電子のことです。このように（ｆ電子には）、遍歴と局在、二つの振舞いがあるのです。<br />
<br />
　本研究の成果は、あるところの原子中のｆ電子を見ると止まっているのに、その隣を見ると動き出している、そんな遍歴と局在性を示す二種類のｆ電子が交互に並ぶ秩序を理論的に発見し、さらにそれが今まで謎であったPrFe4P12という物質の秩序とも対応していることを示した点にあります。
</p>


<p class="q">
―５年間の研究生活の中で、特に印象に残っていることは？<br />
</p>
<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_06.jpg" alt="" />
</div>

<p>
　当初は「理論物理学者は紙と鉛筆だけで理論研究を行うんだ」という気持ちで研究室に入りました。けれども今は、計算機が非常に発達しているので、それを使うことで非常に効率良く研究ができるのだなと思ったことが、非常に印象的でした。<br />
<br />
　最初は計算機を使う研究は、自分の思い描く理論物理学者のイメージと異なっていたため、戸惑ったのです。けれども、そもそもの目的は紙と鉛筆だけで計算することではなく、自然を解明することなんだ、目的に対して手段は何でも良いはずだ、という心境の変化があってからは、悩みもほとんどなく研究を進めることができました。<br />
<br />
　そこからは数値計算（計算機）を始めて、「これは強力な手法だな」という実感を持ちながら研究を進めてきた感じです。
</p>
<p class="q">
―最後に、後輩へのメッセージをお願いします。<br />
</p>
<p>
　月並みで申し訳ないのですが、自分のやりたいことをやるのが良いと思います。自分で決めたことは後悔がないですし、人のせいにもできません。その分すべて自己責任ですから大変ではありますが、逆に充実度も人から言われてやった以上にあると思います。<br />
<br />
　あとは、あまり考えすぎないで直感を信じるのも手かもしれないですね。考えてもわからないこともあるし、考えることと感じることはまた違うので、直感に任せて行動することも大事かもしれません。理屈だけで動いたり、感情だけで動かずに、両方バランスよく使い分けていくと、人生が充実するのではないか。これまで感じたことは、そんなところですね。
</p>
<p class="q">
―ありがとうございました。<br />
</p>

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20110224_08.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110224_08.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
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            <link>http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120310.php</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学理学部物理系同窓会 泉萩会</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">博士</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">物理学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">理学研究科</category>
            
            <pubDate>Wed, 21 Mar 2012 09:58:14 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>産学官連携で震災復興・産業振興を／産総研が仙台でワークショップ</title>
            <description><![CDATA[<h1>産学官連携で震災復興・産業振興を／産総研が仙台でワークショップ</h1>
<p class="date">2012年3月14日公開</p>

<div class="rightPicture2" style="margin:20px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120307_01.jpg" alt="" />
<p>「産総研本格研究ワークショップ in 東北」のようす＝７日、仙台市内のホテルにて</p>
</div>

<p>
　独立行政法人産業技術総合研究所（産総研）は７日、「産総研本格研究ワークショップ in 東北」を仙台市内のホテルで開催し、地元企業や官公庁などから約２４０名が参加した。<br />
<br />
　基礎研究から製品開発をつなぐ"橋渡し"的な研究を行う同研究所が、その研究成果の公開を通じて、企業との連携関係の構築・強化につなげようと、平成２１年度から開催するもの。今年のテーマは「東北地域の震災復興・産業振興を目指して」。<br />
<br />
　開会式では、産総研理事長の野間口有さんが「産業界の様々なニーズや課題に対して、全国各地にある産総研の研究成果を広く活用していただきたい」と挨拶。<br />
<br />
　宮城県副知事の若生正博さんは、県の産業復旧状況について「９割以上の企業が震災前の水準に戻るなど、内陸部を中心に復旧が進む一方、沿岸部の本格復旧は課題が大きい」と説明。単なる復旧でなく抜本的な再構築を目指し復興に取組む姿勢を示した。<br />
<br />
　東北経済産業局長の豊國浩治さんは、早期の復旧復興を図ると同時に国際競争力のある産業づくりが必要と強調。「グローバル化社会の中、産学官連携による新しい研究や事業化への取組みが、今後ますます重要になるだろう」と話した。<br />
</p>

<div class="rightPicture2">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120307_02.jpg" alt="" />
<p>基調講演のようす</p>
</div>
<p>
　続いて行われた基調講演では、東京エレクトロン宮城（宮城県黒川郡大和町）取締役会長の竹渕裕樹さんが「東京エレクトロン宮城株式会社の活動と地元企業への期待」と題して講演。同社の半導体製造用エッチング装置の技術について紹介した後、世界ナンバーワンにむけた戦略を語り、「産学官連携を強め、世界で戦える日本発のものづくり力を発信する場を一緒につくりたい」と地元企業への期待を話した。<br />
<br />
　講演会では、被災地の民間企業として、千田精密工業（岩手県）とケディカ（仙台市）が復興にむけた取組みを紹介し、公的研究機関への期待を述べた。宮城化成（宮城県）と産総研の連携による新製品開発を通した震災復興の発表もあった。このほか産総研の研究成果を紹介するパネル展示会や研究開発相談会もあった。<br />
<br />
　産総研東北センター所長の原田晃さんは「新たな科学的発見が直接すぐ産業化されるわけではないため、その間をつなぐ研究が重要だ。産学官が結集し研究を行う場と資源を提供することで、持続発展可能な産業社会に貢献したい」と話している。<br />
</p>

<div class="leftPicture" style="width:280px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120307_03.jpg" alt="" style="width:280px;" />
<p>展示会のようす</p>
</div>
<div class="leftPicture" style="width:280px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120307_04.jpg" alt="" style="width:280px;" />
<p>交流会のようす</p>
</div>
<br class="c" />

<br />
<h2>インタビュー<br />
（そもそもなぜ「産学官連携」は重要なのか？それぞれの立場から聞きました）<br /></h2>
<p>
<h3>■イノベーションにおける絆が「産学官連携」<br />
野間口有さん（産総研理事長）</h3>

<p class="q">
―「官」の立場から、そもそもなぜ「産学官連携」は重要だと考えますか？<br />
</p>
<div class="rightPicture" style="width:150px; ">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120307_nomaguchi-san.jpg" alt="" style="width:150px" />
</div>
<p>
　鉄腕アトムをご存知か？お茶の水博士は自分の研究所だけでアトムの頭脳からボディまで全部つくった。ところが現実の社会では、一つの会社や研究所だけで、基本的なものごとを研究し世の中に役立つところまで全部つくれるところは少ない。それぞれ得意な技術を持ち込み力を合わせることで、立派なものができる。それが産学官連携である。原理・原則や新しい可能性を考えるのが「学」、産業化が得意なのが「産」だが、それを現実のものにするには様々な壁がある。その壁を乗り越える研究をするのが「官」だ。つまり、イノベーションにおける絆が産学官連携である。<br />
</p>
<p class="q">
―「官」の立場から、産学官連携において一番大切なポイントは何だと考えますか？<br />
</p>
<p>
　一つは、「一日でも早く実現したい」という目的を達成すること。もう一つは、世界の人が「さすが！」と言ってくれるような成果を達成すること。二つ目は一つ目のゴールよりも時間がかかるものだが、そのような志を持つことが、産学官連携を進める上で重要な心意気だ。<br />
</p>
<p class="q">
―その前提から、本日のワークショップはいかがでしたか？<br />
</p>
<p>
　一般の人から見ると、大学や研究所は敷居が高く見えるようだが、企業の皆さんが、我々を仲間だと思い、非常に率直に自分の思いや課題を表明してくれたことが、非常に良かったと思う。<br />
</p>
<p class="q">
―全国各地にある産総研のうち、東北センターならではの特徴は？<br />
</p>
<p>
　例えば、東北センターの「コンパクト化学」のように、高圧力下で、反応の場を非常に狭い領域で限定しながら進める化学の研究は少なく、着眼点が非常に素晴らしい。化学反応では色々な物質が混ざり合う必要があるが、非常に狭い領域で出会うようにすれば、否応なしに上手く混ざり合うし、反応の場の条件も均一になる。すると、普通は生産性が落ちるものだが、並列に沢山そのような場をつくれば、反応がどんどん進む。よって、従来なかなか反応が進みづらかった反応も省エネルギーで実現できるという面白い成果が出ている。産総研の特徴の一つだ。<br />
</p>
<p class="q">
―今までのお話を踏まえ、中高生を含めた読者へメッセージを。<br />
</p>
<p>
　視野を広く持ち、高い目標に向かって、チャレンジするマインドが大切だ。最近の一番良い例は、なでしこジャパン。チャレンジする若者を大人は応援する。<br />
</p>

<br />
<h3>■オンリーワンの技術で世界ナンバーワンを目指す<br />
竹渕裕樹さん（東京エレクトロン宮城　取締役会長）</h3>

<p class="q">
―そもそもなぜ「世界ナンバーワンを目指す」ことが大切だと考えますか？<br />
</p>
<div class="rightPicture" style="width:150px; ">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120307_takebuchi-san.jpg" alt="" style="width:150px" />
</div>
<p>
　オンリーワンは素晴らしいが、ビジネスの世界ではオンリーワンであっても必ずしも成功するとは限らない。お客様の数が限られる中、値段や情報量等の競争で有利なのはナンバーワン。ビジネスで社会に貢献するにも、世に大きく広めることが必要だ。マインドとしても、ナンバーワンを目指さなければ、モチベーションや技術等が向上しない。だから我々は、サッカーでワールドカップを目指すように、オンリーワンの技術をもってナンバーワンを目指す。<br />
</p>
<p class="q">
―「産」の立場から、そもそもなぜ「産学官連携」は重要だと考えますか？<br />
</p>
<p>
　利益を上げるための活動が我々産の役割だが、資源が限られる中、買いたくても買えない時や、やりたくてもやれないことがある。そんな時、純粋に研究をする学が、そこでつくった技術等を最終的に世の中に広げようとする時、どこかで産と結びついてくる。それがうまくつながれば、お互いメリットがあり、ユニークなものを生み出せる可能性が高い。産がきちんと儲からなければ、税金も入ってこない。産と学がうまくつながるコーディネイトの役割を、日本の官にお願いしたい。<br />
</p>
<p class="q">
―「産」の立場から、産学官連携において一番大切なポイントは何だと考えますか？<br />
</p>
<p>
　官も学も公的機関としての公平さが必要なため難しい部分もあるが、規制がなくなることではないか。産学官のうち最も自由な立場が産だが、何をやるにしても規制があると、なかなか進められない。イノベーション創出のためには、自由な発想が生まれる場や仕組みをつくることが重要だ。<br />
</p>
<p class="q">
―今までのお話を踏まえ、中高生を含めた読者へメッセージを。<br />
</p>
<p>
　一頃お金が儲かる金融機関を目指す人たちが増え、それに伴い中高生も文科系を志望する人が増加した一方で、理科系の人気は下がったと言われる。しかし、新しいものを生み出すのは、理科系の仕事。目指せ理科系。<br />
</p>
<br />
<h3>■自社独自では難しい研究開発を連携により実現<br />
小山昭彦さん（宮城化成　代表取締役）</h3>

<p class="q">
―貴社は産総研と共同研究されていますが、「産」の立場から、そもそもなぜ「産学官連携」は重要だと考えますか？<br />
</p>
<div class="rightPicture" style="width:150px; ">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120307_oyama-san.jpg" alt="" style="width:150px" />
</div>
<p>
　我々中小企業は、進めたい事業や良いアイディアがあっても、技術的・金銭的な面で、なかなか自社独自で開発まで進めないところがある。そこで我々は、産総研の研究者に相談したり、産学官連携で助成金を申請するなどして研究開発を進めてきた。産総研との連携により、新素材の開発や新分野への切り込みができつつある。今後はそれを商品化し次の事業につなげたい。また、異分野の人とも関係性ができ、従来とは違った仕事が入ってくるなどのメリットもあった。<br />
</p>
<p class="q">
―「産」の立場から、産学官連携において一番大切なポイントは何だと考えますか？<br />
</p>
<p>
　まずは自分たちのアイディアを、きちんと研究者に話せること。次に、研究者の研究成果や特許などを、自分たちの企業や製品にどう利用できるか、それがうまくマッチングできれば、共同研究などは進むだろう。<br />
</p>
<p class="q">
―今までのお話を踏まえ、中高生を含めた読者へメッセージを。<br />
</p>
<p>
　若者のアイディアやヤル気で技術力をもっと上げていかなければ、日本の技術力は落ちてしまう。世界ナンバーワンを目指す気持ちを、若いうちからぜひ持って欲しい。<br />
</p>
<br />
<h3>■製品化のためには継続的な連携が重要<br />
蛯名武雄さん（産総研コンパクト化学システム研究センター先進機能材料チーム長）</h3>

<p class="q">
―「官」の立場から、そもそもなぜ「産学官連携」は重要だと考えますか？<br />
</p>
<div class="rightPicture" style="width:150px; ">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120307_ebina-san.jpg" alt="" style="width:150px" />
</div>
<p>
　産総所は、日本のものづくりに関する最も大きな研究所のひとつ。つくばの他にも東北や北海道などに地域センターがあり、地域のものづくり企業と積極的に連携しようとしている。地元のものづくり企業のニーズに合わせ、我々の知識や研究成果を活かし製品化していただくことで、東北発ものづくりの後方支援的な役割を果たしたい。実際にいくつかの製品ができ始めているので、それを更に推し進めると同時に、引き続き支援させていただくことで、一緒に成功事例を出し続けたい。<br />
</p>
<p class="q">
―「官」の立場から、産学官連携において一番大切なポイントは何だと考えますか？<br />
</p>
<p>
　地元企業との継続的な連携が大切だ。一般的な産学官連携は、競争的資金に申請し、一時的な連携で終わってしまうが、２～３年では製品化まで大抵いかない。本当のものづくりは、もっと長い時間がかかるものなので、一時的なサービスではなく、継続的な連携が大切だ。そのためにはお互い近くにいることが重要。特に我々は仙台にいるので、地元企業との継続的な連携を心がけ製品化まで支援を続けたい。<br />
</p>
<p class="q">
―今までのお話を踏まえ、中高生を含めた読者へメッセージを。<br />
</p>
<p>
　「科学はこういうものだ」とか「これはこういう用途に使われるものだ」など、決まりきった考え方にとらわれず、自由な考え方でイメージを膨らませた先に、本当の答えがある。今ある材料や技術が必ずしも解ではない。新しい人が新しいアイディアをもって工夫していけば、新しく世の中に役立つことになりうることは、昔も今も変わらないし、可能性は小さくなっていない。だから、自由に新しいものをつくる考え方は、新しい人にこそ、より持ってもらいたい。ぜひ自信をもって挑戦して欲しい。<br />
</p>

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20120307_01.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120307_01.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">産業総合研究所東北センター</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">社会って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">産業技術総合研究所東北センター</category>
            
            <pubDate>Wed, 14 Mar 2012 06:54:28 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>中村智樹さん（東北大学教授）に聞く：小惑星探査機「はやぶさ」の贈り物</title>
            <description><![CDATA[<h1><img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203-top.jpg" alt="中村智樹さん（東北大学大学院理学研究科地学専攻　教授）に聞く：科学って、そもそも何だろう？" style="margin:0px 0px 5px 0px" />
<span style="padding: 5px 0px 0px; font-size: small; font-weight: 600;">取材・写真・文／大草芳江</span>
</h1>
<p class="date">2012年3月7日公開</p>
<div id="subject">
<p id="t">小惑星探査機「はやぶさ」の贈り物<br />
～太陽系の惑星はどのように誕生したのか～</p>
<p id="n">中村　智樹　　Tomoki Nakamura<br />
（東北大学大学院理学研究科地学専攻　教授）
</p>
</div>

<p style="font-size:x-small;">
　1966年生まれ。理学博士。東京大学大学院理学系研究科鉱物学専攻修士課程修了。東京大学理学部で地球外物質研究室に進学し、太陽系始原物質の物質科学的研究を始める。九州大学の宇宙化学研究室に赴任し、米航空宇宙局・太陽系探査部門、独マックスプランク研究所・宇宙化学部門に留学、2001年より九州大助教授を務め、2010年に東北大准教授、2012年から東北大学教授に就任。
</p>
<p style="padding:10px;border:1px solid gray;font-size:small">
<span style="font-weight: 600; font-size: small;">一般的に「科学」と言うと、「客観的で完成された体系」というイメージが先行しがちである。　<br />
しかしながら、それは科学の一部で、全体ではない。科学に関する様々な立場の「人」が<br />
それぞれリアルに感じる科学を聞くことで、そもそも科学とは何かを探るインタビュー特集。<br />
</span><br />
<br />
我々の太陽系は、いつどのように誕生したのか？<br />
それを調べるために我々は、太陽系が誕生した当時の姿を残している<br />
小惑星や彗星などの小天体から、物質を手に入れなければならない。<br />
<br />
2010年6月、日本の小惑星探査機「はやぶさ」は、<br />
小惑星から物質を持ち帰ることに世界で初めて成功した。<br />
<br />
その「はやぶさ」のカプセルを一番最初に開封し、<br />
カプセルから微粒子を取り出して分析・解析したのが、<br />
東北大学大学院理学研究科教授の中村智樹さんだ。<br />
<br />
中村さんらが小惑星の物質を分析・解析した結果、<br />
小惑星が太陽系の生い立ちを記録していることや、<br />
その小惑星の生涯が明らかになってきた。<br />
<br />
「はやぶさ」の贈り物とは何か？<br />
中村さんに研究の背景やプロセスも含めて聞いた。<br />
<br />
＜目次＞<br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120203.php#p1_1">なぜ「はやぶさ」は小惑星に行ったのか？</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120203.php#p1_2">「はやぶさ」の微粒子の取扱いには非常に苦労した</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120203.php#p1_3">小惑星イトカワ微粒子を分析してわかったこと</a><br />
　　<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120203.php#p1_3_1">結論１：隕石は小惑星から飛んできた</a><br />
　　<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120203.php#p1_3_2">結論２：小惑星イトカワは現在の10倍以上の大きさだったが、強い衝突で小さくなった</a><br />
　　<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120203.php#p1_3_3">結論３：小惑星は日焼けする</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120203.php#p1_4">小惑星の形成モデルが明らかに</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120203.php#p1_5">新しい技術で、惑星科学の新しい時代に入った</a>
</p>


<br /> 
<div class="interview"> 
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/kagaku_interview.gif" alt=""> 
<p>惑星科学者の中村智樹さん（東北大学大学院理学研究科地学専攻　教授）に聞く</p> 
</div> 
<br /> 


<br />
<h2 id="p1_1">なぜ「はやぶさ」は小惑星に行ったのか？</h2>
<p class="q">
―そもそもなぜ中村さんはこの研究をしているのですか？まずは、モチベーションや研究背景などから教えてください。<br />
</p>
<p>
　我々の太陽系はいつどのように誕生したのか？私は以前から、太陽系誕生の謎に興味を持ち、ずっと研究を続けてきました。太陽系は今から45億年前に生まれましたが、最初の約１千万年の間で、大事な出来事のほとんどは終わっていると考えられています。<br />
<br />
　私は特に、この太陽系初期にどんなことが起きたのか？を解明したいと思っています。そのための情報は、太陽系が誕生して間もない当時から太陽系にあった、小さな天体にしか残っていないのですよ。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ、小さな天体だけなのですか？<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="width:250px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_1.gif" alt=""  style="width:250px" /><br />
<p>【図１】太陽系形成の標準モデル（提供：東北大学中村智樹教授）</p>
</div>

<p>
　図１をご覧ください。上の図は、45億年前の太陽系です。中心には原始太陽があり、まわりにはガス円盤があります。ガス円盤の中には、約1000分の1mmの小さな塵（ちり）が浮かんでいます。<br />
<br />
　ガス円盤の中でいろいろな現象が起こった後、最終的には直径約10～100kmの小天体が、太陽系の中にたくさんできたと考えられています（図１の中央）。<br />
<br />
　この小天体は、円盤の中を浮かんでいた小さな塵が集まってできたものです。そのため小天体の物質を研究することで、この円盤の中で何が起こったかや、どのようにして天体ができたかが、わかってくるわけです。<br />
<br />
　このような小天体が45億年前の太陽系にはたくさんありましたが、その大部分は衝突・合体を繰り返すことで、現在の地球や火星などの惑星になりました（図１の下）。つまり小天体を研究することで、大きな惑星がどうやってできるのか、その最初の段階がわかる、ということですね。<br />
<br />
　ところが、理由はよくわからないのですが、小天体がほぼそのままの状態で太陽系に残っている領域があるのです。その一つが、例えば、火星と木星の間にある「小惑星帯」です。ここには今知られているだけで、６０万個もの小さな天体が密集しています。<br />
<br />
　もう一つは、海王星や天王星の向こう側にある「カイパーベルト」と呼ばれる領域です。ここにも今確認されているだけで、数千個の小天体があります。この領域の天体は非常に暗いので、これから（観測技術の向上によって）どんどん発見されていくでしょう。<br />
<br />
　つまり、小惑星帯には太陽系で最初に生まれた天体が、ほぼそのままの姿で残っているというわけです。そして昔から、地球に飛来する隕石は、この小惑星帯からやって来たものだと考えられてきました。<br />
<br />
　そのため、隕石を研究することで、太陽系の昔のことがわかると考えられ、実際にいろいろなことがわかってきました。もともと私の専門も、宇宙から地球に飛来する隕石や宇宙の塵（ちり）の研究です。<br />
<br />
　ところが、一つだけ問題がありました。本当に隕石が小惑星から来ているという確証が、実はなかったのです。<br />
</p>
<p class="q">
―そもそもなぜ、今まで隕石は小惑星から来ていると考えられていたのですか？<br />
</p>
<div class="rightPicture" style="width:250px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_2.gif" alt=""  style="width:250px" /><br />
<p>【図２】隕石と小惑星の反射スペクトルの比較（提供：東北大学中村智樹教授）</p>
</div>

<p>
　間接的な理由ですが、一つは反射スペクトルです。簡単に言うと、小惑星の色と隕石の色を比べてみましょう、というわけです。<br />
<br />
　図２をご覧ください。「普通コンドライド」は、地球上に落下する最も多い隕石です。「Ｓ型小惑星」は、小惑星帯に多く存在する小惑星で、イトカワもＳ型小惑星に属します。グラフの横軸が波長で、縦軸が反射率です。<br />
<br />
　下の曲線は、小惑星が太陽からの光を反射し、地球にやって来た光を分光することで得た、小惑星の反射スペクトルです。上の曲線は、実験室で隕石に太陽光と同じような光を当て、隕石の表面から反射した光を分光することで得た、隕石の反射スペクトルです。<br />
<br />
　両者の反射スペクトルを比べると、ここが低いとかここは高いとか、凸凹した感じはよく似ていますね。しかし、そもそもの絶対的な反射率は違って、隕石の方が明るいですね。一方、小惑星の反射スペクトルは、暗くて右上がりです。<br />
<br />
　もし隕石と小惑星が同じものならば、同じ反射スペクトルを示すはずですが、このように、何かが違うのですね。ですから、本当に隕石が小惑星から来たのかどうか、確証はなかったわけです。<br />
</p>
<p class="q">
―では、どうすれば良いのですか？<br />
</p>
<p>
　じゃあ、どうすれば良いかと言えば、実際に小惑星の物質を地球に持ち返って、隕石と比べれば良いわけです。地上でいくら実験や分析をしてもわからないことも、物的証拠を手に入れることができれば、一発でわかるわけですね。だから、「はやぶさ」は小惑星に行ったのです。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_2">「はやぶさ」の微粒子の取扱いには非常に苦労した</h2>
<p class="q">
―中村さんは「はやぶさ」分析担当ですが、どのように分析は進みましたか？苦労された点はありましたか？<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="width:250px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_3.gif" alt=""  style="width:250px" /><br />
<p>【図３】小惑星イトカワ微粒子。その多くは直径約0.01mmだったが、図３は比較的大きな粒子で、約0.05～0.1mm（提供：東北大学中村智樹教授）</p>
</div>

<p>
　「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」から地球に持ち帰ってきたカプセルの中から微粒子を取り出して特定する担当が僕なのですが、カプセルのふたを一番最初に開ける担当も僕だったのです。<br />
<br />
　微粒子を紛失しないようにどうやってカプセルのふたを開けるかや、カプセルの中からどうやって微粒子を見つけるかは、「はやぶさ」が帰ってくる２年くらい前から、ずっと宇宙科学研究所に通い、何度も練習を繰り返しました。この時は「はやぶさ」が本当に無事地球に帰還できるかわからなかったので、結構きつかったですね（笑）。<br />
<br />
　そして、2010年6月に「はやぶさ」が無事帰還してから、カプセルの中の微粒子が実際に小惑星イトカワのものだったことを特定し、記者会見を開くまで、（予定よりも遅れて）約６ヶ月間もかかったわけです。微粒子の取扱いには、非常に苦労しました。<br />
</p>
<p class="q">
―どのようなところが一番苦労しましたか？<br />
</p>
<p>
　カプセルのふたを開ける時も死ぬほど緊張しましたが、開封に無事成功し、中を見ると、あるはずの粒子が見えなかったのですよ、何も。その中から目では見えない粒子を取り出し、それが小惑星のものかを判別する必要があり、そこに時間がかかったのです。<br />
</p>
<p class="q">
―どのようにして目で見えない粒子を取り出し、それを小惑星由来と特定したのですか？<br />
</p>
<p>
　「マニュピレータ」という特殊な装置を使って、針先を帯電し、その静電気で微粒子をひっつけることで、カプセルの中から微粒子を取り出しました。取り出した微粒子が本物かどうかは、電子顕微鏡を使って特定するのですが、それもまた大変でした。<br />
<br />
　その後、特定した微粒子の一部を使って初期分析を行いました。先ほどお話したように、小惑星の微粒子が隕石と同じものかどうかなどを調べたわけですね。<br />
</p>
<p class="q">
―どのようにして、小惑星の微粒子と隕石が同じかどうか、調べたのですか？<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="width:250px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_4.jpg" alt=""  style="width:250px" /><br />
<p>【図４】Ｘ線回折技術による分析（提供：東北大学中村智樹教授）</p>
</div>


<p>
　私の分析方法は「放射光」と言って、高エネルギー加速器研究機構（茨城県つくば市）にある放射光施設にこの微粒子を持ち込み、強力なＸ線を照射することで、微粒子を構成する結晶の種類や元素の存在度を調べました（図４）。<br />
<br />
　微粒子を構成する結晶の種類や元素の存在度を特定した後、ダイヤモンドの刃を使って微粒子を輪切りにし、その断面を電子顕微鏡でさらに細かく分析して、微粒子を構成する結晶の成分を測定しました（図５）。各結晶の成分は微粒子の形成温度などを記録しています。<br class="c" />
</p>

<div class="rightPicture" style="width:250px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_5.jpg" alt=""  style="width:250px" /><br />
<p>【図５】電子顕微鏡による分析（提供：東北大学中村智樹教授）</p>
</div>

<p class="q">
―微粒子は0.01～0.1mmという小ささですが、その断面をつくるのに苦労はありませんでしたか？<br />
</p>
<p>
　もともと私の専門は、最初にもお話したように、地球に飛来する隕石や宇宙塵（うちゅうじん）の研究です。イトカワの微粒子は、これまで私が研究していた宇宙塵よりも少し大きいくらいなので、分析における技術的な苦労はなかったと思います。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_3">小惑星イトカワ微粒子を分析してわかったこと</h2>
<p class="q">
―それでは、中村さんらの初期分析でわかったことは、どんなことでしたか？<br />
</p>
<p>
　「はやぶさ」が世界で初めて持ち帰った小惑星の微粒子を分析した結果、大きな成果が２つありました。一つは、小惑星が太陽系の生い立ちを記録していることを証明した点。もう一つは、小惑星の生涯がわかった点です。<br />
</p>

<br />
<h3 id="p1_3_1" style="font-size:small">◆結論１：隕石は小惑星から飛んできた</h3>
<p>
　まず、「はやぶさ」が小惑星イトカワから持ち帰った微粒子は、地球に最も多く飛来する普通コンドライド隕石の成分と、全く同じであることがわかりました。<br />
<br />
　先ほどもお話しましたが、電子顕微鏡とＸ線回折技術の２つの分析方法を使って、微粒子を構成する鉱物の詳しい化学組成を調べました。<br />
<br />
　その結果、微粒子は、カンラン石、Ｃａに乏しい輝石、Ｃａに富む輝石、斜長石、トロイライト（硫化鉄）、テーナイト（鉄ニッケル金属）、クローマイトなどの鉱物で構成されていることがわかりました。この鉱物の組み合わせは地球の岩石にはなく、普通コンドライト隕石特有のものです（図６）。<br />
</p>
<p style="font-size: x-small; text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_6.jpg" alt=""  style="width:500px;" /><br />
【図６】結論１：小惑星は原始天体であった（提供：東北大学中村智樹教授）<br />
</p>
<p>
　ですから、小惑星は隕石の母天体であり、一言で言えば「小惑星イトカワは太陽系の原始的な天体である」、つまり、小惑星は太陽系初期の記録を残している天体であることが、まず証明されたのです。<br />
<br />
　したがって、イトカワ微粒子を研究すると、太陽系誕生時の天体形成やその進化過程が解明されます。<br />
</p>

<br />
<h3 id="p1_3_2" style="font-size:small">◆結論２：小惑星イトカワは現在の10倍以上の大きさだったが、強い衝突で小さくなった</h3>
<p>
　次に、小惑星イトカワは変な形をしているんです。白黒があって、岩がゴツゴツしていて。それが実は、最初からこんな形をしていたのではなく、後からこんな形になったことが、僕らの分析でわかったのです。<br />
</p>
<p class="q">
―どのようにして、それがわかったのですか？<br />
</p>
<p style="font-size: x-small; text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_7.jpg" alt=""  style="width:500px;" /><br />
【図７】結論２：イトカワ微粒子は天体内部で加熱されたものとそうでないものがある（提供：東北大学中村智樹教授）<br />
</p>
<p>
　図７は、微粒子の断面写真です。よく観察すると、右側の粒子は、結晶内部の元素組成が非常に均一なんですよ。これは何を意味しているかと言うと、これらの微粒子は、もともと今よりもっと大きな岩体で、それが大変長い時間加熱されたことにより、結晶中の元素組成が均一になったことを示しています。<br />
<br />
　そして結晶の成分から、大部分の微粒子は、温度で言うと、摂氏800度くらいで非常に長時間、加熱されたものであるということがわかりました。一方で約２割は、800度までは加熱されていない、結晶中の元素組成が不均一なものも見つかりました。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ今よりもっと大きな岩体であることがわかるのですか？<br />
</p>
<p>
　少し難しい説明になりますが、太陽系が生まれた時にできた天体は、だんだん大きくなるわけですね。だんだん大きくなる過程で、天体内部は、放射性元素が壊変することによって、発熱するのです。<br />
<br />
　放射性元素は天体内部にほぼ均質に存在し、また熱は天体表面から逃げていくため、天体中心の温度が最も上昇します。そして天体が大きければ大きいほど熱がこもるため、（天体の）温度は高くなるわけです。<br />
</p>
<p style="font-size: x-small; text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_8.jpg" alt=""  style="width:500px;" /><br />
【図８】太陽系形成期の天体加熱。縦軸は時間（百万年）、縦軸は絶対温度（K）（提供：東北大学中村智樹教授）<br />
</p>
<p>
　イトカワ内部が摂氏800度（絶対温度で約1200K）まで上がるには、ある程度以上、天体が大きくなければいけません。それは、計算で求めることができ、シミュレーションの結果、イトカワの直径は20㎞くらいなければいけないことがわかりました（図８）。<br />
<br />
　一方、現在のイトカワは変な形をしていて、大きさが500×300×200mくらいしかなく、直径20㎞よりも全然小さいですね。ですから、もともと直径20㎞だった天体が、砕けて小さくなったと考えられるわけです。<br />
<br />
　天体が砕けるわけですから、砕ける瞬間、非常に大きな衝突現象があったと考えられます。その証拠がどこかに残っていないかなと調べたら、結構たくさん残っていたのですよ。<br />
</p>
<p style="font-size: x-small; text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_9.jpg" alt=""  style="width:500px;" /><br />
【図９】結論３：イトカワ微粒子の多くは強い衝撃を受けている（提供：東北大学中村智樹教授）<br />
</p>
<p>
　図９は、イトカワの微粒子をさらに拡大した画像です。泡のような粒々が見えるでしょう？これは、衝突現象によって一気に温度が上昇し、結晶の一部がどろどろに溶けて、お湯が沸騰するように結晶が液体化して沸騰した状態が、そのまま固まったものです。衝撃で温度が上がった場合、温度が上がるのも早いですが、下がるのも早いのです。<br />
<br />
　以上のことから、小惑星イトカワは、もともとは直径20㎞くらいあったけれども、あとで砕けて小さくなった、とわかるわけですね。<br />
</p>

<br />
<h3 id="p1_3_3" style="font-size:small">◆結論３：小惑星は日焼けする</h3>
<p>
　もう一つ、おもしろい結果がありましてね。「小惑星は日焼けする」というものです。インタビューの冒頭で、隕石と小惑星の反射スペクトルを比べた時、小惑星の方が暗いとお話しましたが、この原因は日焼けであることがわかったのです。これは茨城大学の野口高明先生らによって解明することができました。<br />
</p>
<p class="q">
―「小惑星の日焼け」とは何ですか？<br />
</p>
<p>
　宇宙での日焼けを「宇宙風化作用」と言います。これは、太陽から来る放射線が小惑星表面に当たることで、小惑星表面にある砂の一番表面の部分が化学反応を起こし、ナノサイズの微小な金属鉄（ナノ粒子）ができるために起こります。この微小金属鉄は、赤黒い色をしています。<br />
<br />
　野口先生は電子顕微鏡の名手で、微粒子の表面を電子顕微鏡で分析し、表面の透明な結晶の上にこれらナノ粒子が存在することを、綺麗に撮影することに成功しました。それはもともと綺麗な結晶に赤黒いパウダーをまぶすようなものなので、それで暗くなる、つまり日焼けするわけですね。<br />
<br />
　地球に飛来するような隕石は、小惑星が大きく砕けた時、小惑星の中からやって来るので、色は白いのです。例えば、イトカワの表面が白く見えている部分は、外から隕石が衝突したため、表面の物質がずれて中身が見えている部分です。<br />
<br />
　要するに、前々から地球で観測していた小惑星の表面と、隕石の反射スペクトルが違う原因は、この宇宙空間の日焼けということもわかったわけですね。このように最も大事だと思っていたテーマを、我々初期分析チーム全体の成果として解明できたことは、非常に良かったと思います。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_4">小惑星の形成モデルが明らかに</h2>
<p>
　以上の分析結果をまとめることで、小惑星イトカワがたどった歴史が明らかになってきました。<br />
<br />
　45億年前、太陽系のガス円盤で約20㎞の小天体ができた後、その天体に含まれる放射性元素が壊変し、温度が上昇していきます。図10（2）をご覧ください。中心の赤色の部分が一番温度が高く、約800度あります。その外側の緑色や黄色の部分はそれほど温度が上昇していません。
</p>
<p style="font-size: x-small; text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_10.jpg" alt=""  style="width:500px;" /><br />
【図10】小惑星イトカワの形成史（提供：東北大学中村智樹教授）<br />
</p>
<p>
　温度が上がった状態から冷えるまで、大体数千万年くらいかかるので、ゆっくり冷えた後、図10(3)(4)のように、他の天体が衝突し、もともとのイトカワ小惑星がバラバラになったと考えられます。<br />
<br />
　そして、大部分の欠片は宇宙空間に飛び散りましたが、一部の同じ方向に飛び散った欠片が、図10(5)のように、もう一度重力で集まり、現在のイトカワになったと考えられます。<br />
<br />
　一度バラバラになった欠片が集まっているため、本来なら天体中心にしか無い加熱された赤い物質が、天体の表層にたくさんあるのです。そこに探査機「はやぶさ」が訪れて、砂を採取してきたわけですね。<br />
</p>
<p class="q">
―衝突して欠けた小惑星の一部とも考えられると思うのですが、なぜ一度バラバラになったとわかるのですか？<br />
</p>
<p>
　小惑星イトカワは、大きさ数mm～数mのいろいろな岩石が寄り集まっただけの岩の塊で、中はスカスカなんです。探査機「はやぶさ」が近づいて、イトカワの密度を測った結果、中身の30％が空洞であることがわかりました。<br />
<br />
　一回砕けたもので集まらなければ、中は空洞にならないですよね。もしこれが欠けた一部の欠片なら、中が詰まっているはずなので、一度バラバラになったと考えられるのです。<br />
<br />
　このように欠片が集まった小惑星を「ラブルパイル型」と言います。ラブルパイル型の小惑星は、小惑星帯に多く存在しています。一方、誕生した頃の小惑星は皆、図10(2)のような「オニオンシェル型」です。なかにはオニオンシェル型のまま残っている小惑星もありますが、その多くは途中で砕け、ラブルパイプ型になっているのです。<br />
<br />
　小惑星がオニオンシェル型からラブルパイル型になるのは、小惑星の一生なんですよね。ですから、イトカワは年をとった小惑星というわけです。<br />
<br />
　最終的には、このイトカワですら破壊され、さらに小さくなります。粉くらい小さくなると、あとはもう、ゆっくりゆっくり太陽の方に落ちて行くだけなので、最後はなくなるのです。このような小惑星の一生が、確固とした証拠をもって明らかになりました。<br />
</p>
<p class="q">
―これまでは証拠を直接持って返ってくることができなかったから、小惑星の生涯を明らかにできなかったという意味ですか？<br />
</p>
<p>
　これまで隕石はたくさんありましたが、どの小惑星から来たものかはわかりませんでした。一方、「はやぶさ」の場合、この小惑星から採取した砂だとわかります。<br />
<br />
　その前提で、その砂が実はもっと大きな天体の一部だったと分析でわかり、じゃあ今のサイズはもともとのものから砕けたものだ、という議論ができるわけですね。今まではそういうことができなかったので、そこが決定的に違うと思います。要するに、このような小惑星の形成モデルを具体的に示すことができたことが、大きな成果ですね。<br />
</p>
<p class="q">
―小惑星の生涯がわかる意味を、どのように感じていますか？<br />
</p>
<p>
　我々はどこから来てどこへ行くのか。我々をつくる元素も、もとを正せば、このガス円盤の中に浮いていた約1000分の1mmの塵に含まれていた元素なのです。そのような塵が集まり、小さな天体ができて、その小さな天体が、さらには地球などの惑星になって、その上で進化した我々がいる。そのような我々の存在自体の大元の部分を理解するという感じですね。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_5">新しい技術で、惑星科学の新しい時代に入った</h2>
<p class="q">
―最後に、今までのお話を踏まえて、高校生を含めた読者にメッセージをお願いします。<br />
</p>
<p>
　我々の地球や太陽系はいつどのようにできたのか？を調べるために、我々はその物的証拠として、いろいろな惑星の物質や小惑星の物質、彗星の物質などを手に入れなければいけません。<br />
<br />
　今までは無理だと思われていましたが、ここ約５年間で、人類は彗星や小惑星の物質を相次いで手に入れることができました。それは、惑星科学の大転換です。新しい技術で、新しい時代に入ったのです。<br />
<br />
　「はやぶさ２」も2014年に打上げ予定で、2020年の地球帰還を予定しています。今度も小惑星に行くのですが、有機物や水を含むタイプの小惑星に行くんですよ。ですから、我々の生命の起源や海の起源などが解明されるのではないかと期待できるわけですね。<br />
<br />
　特に高校生の皆さんが大学生や大学院生になる頃は、自分が欲しい天体の物質を、探査機を飛ばして直接取りに行って研究できる新しい時代です。このような研究に興味のある方は、ぜひ新しい技術の成果を楽しんでもらえたら、と思います。<br />
</p>

<p style="text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_11.jpg" alt="" />
</p>
<p class="q">
―中村さん、本日はありがとうございました。<br />
</p>

<p style="border:1px solid gray; padding:10px 20px">
2012年3月15日（木）、せんだいメディアテーク（仙台市青葉区）にて開催される「東北大学理学部開講１００周年記念公開シンポジウム」では、中村智樹先生の講演やサイエンスカフェなども行われます。ご興味のある方は、<a href="http://www.sci.tohoku.ac.jp/event/cat/100/">公式サイト</a>をご覧ください。
</p>

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20120203-top.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203-top.jpg" width="600" height="400" class="mt-image-none" style="" /></span>
-->]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学理学部開講１００周年記念公開シンポジウム</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">地学専攻</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">教授</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">理学研究科</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">理学部</category>
            
            <pubDate>Wed, 07 Mar 2012 08:08:00 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>金属学者の蔡安邦さん（東北大学教授）に聞く：「準結晶」（2011年ノーベル化学賞）って何？</title>
            <description><![CDATA[<h1><img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120223-top.jpg" alt="金属学者の蔡安邦さん（東北大多元研教授）に聞く：科学って、そもそもなんだろう？" style="margin:0px 0px 5px 0px" />
<span style="padding: 5px 0px 0px; font-size: small; font-weight: 600;">取材・写真・文／大草芳江</span>
</h1>
<p class="date">2012年3月5日公開</p>
<div id="subject">
<p id="t">準結晶（2011年ノーベル化学賞）って何？
</p>
<p id="n">蔡　安邦　　TSAI An-Pang<br />
（東北大学　多元物質科学研究所　教授）
</p>
</div>

<p style="font-size:x-small;">
　1958年、台湾生まれ。台北工業専科学校卒（現　台北科技大学）。現地の日系企業に就職した後、1985年秋田大学鉱山学部卒、1990年東北大学大学院工学研究科博士課程修了、工学博士。1990年同研究所助手、1993年同助教授、1996年科学技術庁金属材料技術研究所主任研究官、2001年ディレクターを経て、2004年より現職。金属物性、特に準結晶研究を専門とし、最近では金属組織と電子構造の制御による触媒の調製の研究も従事している。日本IBM科学賞(第8回)、準結晶国際会議・第1回ジェイム・マリア・デュボア賞、本多フロンティア賞(第5回)、日本金属学会奨励賞、功績賞などを受賞、仏ロレーヌ工科大名誉博士号も受けた。
</p>
<p style="padding:10px;border:1px solid gray;font-size:small">
　<span style="font-weight: 600; font-size: small;">一般的に「科学」と言うと、「客観的で完成された体系」というイメージが先行しがちである。　しかしながら、それは科学の一部で、全体ではない。科学に関する様々な立場の「人」が
それぞれリアルに感じる科学を聞くことで、そもそも科学とは何かを探るインタビュー特集。
</span><br />
<br />
固体は、原子が規則正しく周期的に並んだ「結晶」と、<br />
原子が不規則に並んだ秩序のない「アモルファス(ガラス)」の２つに分類される。<br />
<br />
ところが、この常識を打ち破る物質を、1982年、<br />
イスラエル工科大学のダン・シェヒトマン博士が発見した。<br />
<br />
「周期性はないが、原子が秩序をもって並ぶ」という、<br />
結晶でもアモルファスでもない第三の固体。<br />
<br />
これが2011年ノーベル化学賞を受賞した「準結晶」の発見であり、<br />
高温超伝導とならぶ20世紀後半の２大発見である。<br />
<br />
しかしながら発見当初、準結晶の存在は、<br />
結晶学の定義に反するとして否定された。<br />
<br />
初期に発見された準結晶は質が悪いものばかりだったために、<br />
「結晶の欠陥に由来するものであり本質的な構造ではない」という<br />
意見が大勢を占め、新物質として広く受け入れられなかったのだ。<br />
<br />
その風向きが変わるきっかけをつくったのが、当時、<br />
東北大学金属材料研究所の博士課程１年生だった蔡安邦さんだ。<br />
<br />
蔡さんが高品質で安定な準結晶をつくることに初めて成功したことで、<br />
構造や物性の解析が飛躍的に進み、準結晶は従来の物質概念とは異なる<br />
新しい構造物質として、広く認められるようになった。<br />
<br />
その後も蔡さんらは、高品質で安定な準結晶を次々と発見し、<br />
現在までに見つかった準結晶物質のうち、実に９割近くを発見。<br />
<br />
今回のダン・シェヒトマン博士のノーベル賞の授賞説明文には、<br />
蔡さんらの論文が複数引用されるなど、その貢献が認められている。<br />
<br />
「準結晶の発見は、物質構造に新しいパラダイムをもたらしたと同時に、<br />
"秩序"とは何か？という問いかけでもある」と語る蔡さんに、<br />
準結晶とは何か、そして、そもそもなぜ準結晶を研究するのか、<br />
そのモチベーションやスタンスなども含めて聞いた。<br />
<br />
＜目次＞<br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php#p1_1">自分の意思で始めた準結晶の研究は、暗中模索のスタート</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php#p1_2">博士１年生の論文が、ノーベル賞授賞説明文に引用される</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php#p1_3">従来の結晶学の常識に反する準結晶</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php#p1_4">高品質で安定な準結晶の発見によって、新物質として確立</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php#p1_5">秩序とは何かを問う準結晶</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php#p1_6">「なぜこうなるのか？」を常に考えることの連鎖</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php#p1_7">一つの視点だけで見ると、重要なことを見落としてしまう</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php#p1_8">夢や理想は自ら望むもので、与えられるものではない</a><br />
</p>


<br /> 
<div class="interview"> 
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/kagaku_interview.gif" alt=""> 
<p>金属学者の蔡安邦さん（東北大学多元物質科学研究所教授）に聞く</p> 
</div> 
<br /> 



<h2 id="p1_1">自分の意思で始めた準結晶の研究は、暗中模索のスタート</h2>
<p class="q">
―そもそもなぜ蔡さんは、準結晶の研究を始めようと思ったのですか？<br />
</p>
<p>
　準結晶の研究は、博士課程１年生から始めました。私は大学院生（修士・博士過程）の頃、東北大学金属材料研究所に所属していたのですが、研究室でたまたま準結晶をやっていた方がいまして、ふとおもしろいなと思ったことが、きっかけなんですね。それで指導教官に「このテーマをやりたい」と、自分自身の意思表示をして研究を始めました。<br />
</p>
<p class="q">
―最初は、準結晶のどんなところが「おもしろい」と思ったのですか？<br />
</p>
<p>
　当時は「これぞ」と言うよりも、やはり何となく新しい物質ということで、いろいろな意味でやる余地があるのかなと思いました。私が準結晶の研究を始めたのは、準結晶の論文が発表された1984年から、３～４年が経った、86～87年くらいの頃でした。<br />
<br />
　その頃はちょうど世界的な高温超伝導（※）ブームでした。新聞や雑誌も毎日のように高温超伝導について報道するくらい。その時、研究者が皆ドドッとそっちに流れたのです。だから逆に、一人ゆっくりやって行こう、と（笑）。<br />
</p>
<p style="font-size:small">
※高温超伝導：超伝導現象（電気抵抗がゼロになる現象）は通常は20K（摂氏マイナス253度）以下で起こるのに対して、100K（摂氏マイナス173度）程度あるいはそれ以上で見られる超伝導現象。冷却剤として安価な窒素が利用できるので、実用上の発展が期待されている。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ敢えて流行とは逆を行こうと思ったのですか？<br />
</p>
<p>
　流行り出したものを競争してやっていくのは、個人的にはあまり好きではないのですね。確かに予算とか、あるいは今で言うサイテーション（論文引用）数で言うと、良いのかもしれないけど。あまり競争がないのは、じっくりやれるという意味では良いのです。<br />
<br />
　でも当時は、まだ準結晶って、何と言うか使いものにならないし、試料もろくにできていなかったから、新しい物質として必ずしも確立されたものではなかったのですね。そのテーマをやって良いのかどうか、実は不安もありました。<br />
</p>
<p class="q">
―どのような不安ですか？<br />
</p>
<p>
　普通、物質科学では、まず良い試料をつくった上で、構造あるいは物性を調べたりするのです。けれども当時、構造を調べることのできるような良い試料はなく、物性を調べようと思ってもちゃんと測れるような試料もなかった、そんな時代でした。<br />
<br />
　ただ不安と言っても、私自身はまだ20何歳で若いから、そんな不安というわけじゃないけど（笑）。むしろ先生を含めてまわりの方から、「このテーマで学位論文をとれるかな？」と不安の声はあったのですね。<br />
<br />
　けれども指導教官は「１年間やってみて駄目だったらテーマを変えようね」と言ってくれました。良い先生に巡り会えたのは、非常に重要なファクター（要素）ですね。自分の意思でやりたいと言った人には、むしろ挑戦させてくれるような先生でした。<br />
</p>
<p class="q">
―手探りの段階から、準結晶の研究はスタートしたのですね。<br />
</p>
<p>
　そういう意味では、研究テーマは、良い試料をつくるところから手探りせねばならず、まさに暗中模索のスタートでした。<br />
</p>
<p class="q">
―暗中模索の中、それでも「おもしろい」と思い続けられるような、何か光のようなものは、感覚としてあったのですか？<br />
</p>
<p>
　主に構造を調べましたが、準結晶は構造自体が難しいのです。けれども研究をやり始めて、いろいろ実際に、電子顕微鏡を見ているとね、形が非常に美しいのですよ。<br />
</p>
<p style="font-size: x-small; text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120223-1.jpg" alt=""  style="width:500px;" /><br />
【図１】まるで花びらのような準結晶の電子顕微鏡写真。直径は約500ナノメートル(ナノは10億分の1)（写真提供：蔡安邦・東北大学教授）
</p>
<p>
　例えば、この花びらに見える一つひとつが準結晶ですが、お花畑のようで見入ってしまいます（図１）。後ほどご紹介する回折パターンも、まるで星空のようで非常に美しいのです。そういう意味では、実際に構造はおもしろいと言うか、非常に美しいのですよね。<br />
</p>
<p class="q">
―美しさの中に、何かおもしろい構造があることが、直感的にも感じられたのですね。<br />
</p>
<br />

<h2 id="p1_2">博士１年生の論文が、ノーベル賞授賞説明文に引用される</h2>
<p class="q">
―実際に研究を進めてみて、いかがでしたか？<br />
</p>
<p>
　最初は手探りですから、きっかけは何でも良いのですが、そのきっかけがないのです。従来の論文をいろいろ読んで、皆どんな試料をつくっているか？を調べるところからスタートしました。そしていろいろ試しているうちに、比較的早い博士課程１年生の時点で、良い試料を発見することができました。
</p>

<div class="rightPicture" style="width:250px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120223-2.jpg" alt=""  style="width:250px" /><br />
<p>【図２】熱力学的に安定なAl-Cu-Fe単準結晶の写真（正１２面体の外形を示している）（写真提供：蔡安邦・東北大学教授）</p>
</div>

<p>
　しかも、おそらく皆さんがあまり眼を配らないような、アルミニウム・銅・鉄という、ありふれた元素の組み合わせなんです。その組み合わせの準結晶を撮影すると、１２面体の外形をしています（図２）。当時は英科学誌『nature』に投稿するような文化はなかったので、国内の『応用物理学会欧文誌』に投稿しました。<br />
<br />
　実は、その時に書いた論文、それはおそらく僕の生涯初の論文でもあるのですが、それが今回の2011年ノーベル化学賞の授賞説明文（※）にちゃんと引用されていました。そういう意味では、出だしは非常に良かったですね。<br />
</p>
<p style="font-size:x-small">
※Scientific Background on the Nobel Prize in Chemistry 2011　
The Discovery of Quasicrystal（PDF）: 　<a href="http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/2011/advanced-chemistryprize2011.pdf" target="_blank">http://www.nobelprize.org/nobel_prizes/chemistry/laureates/2011/advanced-chemistryprize2011.pdf</a><br />
</p>
<p class="q">
―博士課程１年生の人生初の論文が、ノーベル賞に深く関係するなんて、滅多に無い、とても嬉しいことですね。その研究は、今回のノーベル賞にどのように位置づけられているのですか？<br />
</p>
<p>
　「物質として確立」という意味では、博士課程１年生の時の仕事は、貢献したのかもしれないですね。良い試料があれば、構造解析ができるのでいろいろ調べられるのです。また、良い試料がなければ「本当に準結晶は存在するのか？しないのか？」という話になるので、その差は大きいのです。<br />
</p>
<p class="q">
―「新しい物質として必ずしも確立されたものではなかった」とのことですが、当時はどんな状態だったのですか？<br />
</p>
<p>
　構造で定義することを考えた場合、従来の物質構造の概念の範疇内で、つまり結晶とガラスだけで説明がついてしまったんです。発見当初の試料は良い試料ではなかったので、結晶とガラスの両者が入り混じった状態と理解してしまえば、説明できないわけでもなく、新しい概念で考える必要はなかったのですね。<br />
<br />
　そういうわけで、「何も新しい概念を打ち出して、実際に存在しないものをわざわざ...」と混沌とした状態だったのです。私の博士過程１年生の仕事は、良い試料を世界で初めて見つけたことで、混沌とした状態をはっきりさせました。そういう意味では、ちょっと貢献したのかな（笑）<br />
</p>
<p class="q">
―準結晶の存在を実際につくって証明したわけですね。そこからは「まずやってみよう」から「もっとやってみよう」に？<br />
</p>
<p>
　そうですね。一つあれば、次はどうやってまた同じ準結晶をつくっていくかですね。そこでは「なぜ準結晶ができるのか？」をいろいろ考えなければいけません。<br />
<br />
　「準結晶がなぜできるのか？」、少なくとも大枠のことがわかったら、今度はそれに基づいて、また新しい準結晶を探索して見つけ出す、その連鎖でやっていくうちに、いろいろなものを見つけるようになりました。<br />
</p>
<br />

<h2 id="p1_3">従来の結晶学の常識に反する準結晶</h2>
<p class="q">
―準結晶が、結晶でもアモルファスでもない新たな「物質として確立」されたインパクトとは、どのようなものだったのでしょうか？科学的な概念や歴史も含めて、もう少し詳しく説明をお願いします。<br />
</p>
<p>
　なぜ準結晶がそれほど注目されたのか？その理由は、大きく二つあります。<br />
<br />
　まず、結晶とは何をもって結晶と定義されるか。図３上のように、一つの単位格子あるいは一つの単位を繰り返し、ずっと積み上げていくことで形成されるのが、結晶学の基本です。図３は２次元（平面）ですが、３次元（立体）でも同じです。<br />
</p>

<p style="font-size: x-small; text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120223-3.jpg" alt=""  style="width:500px;" /><br />
【図３】正方格子、正三（六）角格子、五角形格子（上）と、それぞれの回折パターン（下）（図提供：蔡安邦・東北大学教授）
</p>

<p>
　「一つの単位を繰り返す」、それは言い換えれば、「周期性がある」ということです。結晶の構造を調べるために、結晶に電子線やＸ線を当てて回折パターンを観察する方法がありますが、その回折パターンができる一つの大きな理由は、周期性があるからです。<br />
<br />
　一つの単位を繰り返すから、一層目の格子面と二層目の格子面で反射される。その反射したものが、ある条件で、波が強め合う部分はスポットとして表れ、弱め合う部分は真っ暗で何も見えない。こうしてできた回折パターンを見て、結晶の構造を調べるわけです。（図３下）<br />
<br />
　つまり、周期性があるが故に回折スポットは発生し、逆に、得られた回折スポットも必ずこの周期的な配列をしなければいけない。それが、当時の結晶学の掟だったのです。<br />
<br />
　その掟で言うと、まず一つ目の問題は、では５角形の単位を使った場合はどうなるか？ということです。五角形の場合、平面だけを考えると埋め尽くせず、隙間が残ってしまいます（図３右）。<br />
<br />
　すると、いわゆる物質科学において、原子は一番細密な方向で配列されるという視点からは許されないわけです。もう一つの理由は、こういう五角形を積み重ねると、（回折パターンに）周期性は出てこないと考えられていました。<br />
<br />
　ところが、以上の２点を踏まえ、準結晶の回折パターンを見た結果、スポットは等間隔ではなかったのです。しかもスポットが、いろいろなサイズの五角形をつくっていました。これは、いわゆる５回対称のような、五角形の単位の存在を意味しています。<br />
<br />
　つまり、先程お話した結晶学の定義に反しているのですよ。周期性がないのに、なぜスポットが発生しているのか？では、その構造をどう理解するのか？という、新たな問題がもう一つ生まれるわけです。<br />
</p>
<br />

<h2 id="p1_4">高品質で安定な準結晶の発見によって、新物質として確立</h2>
<p class="q">
―それで発見当時、準結晶の存在が否定されたわけですね。<br />
</p>
<p>
　実は、初期に発見された回折パターンには問題があって、回折スポットが潰れたり暗くなったり、形が歪んだりしていました。これは、構造中に欠陥があることを意味しています。<br />
<br />
　もし欠陥があるとなると、何も新しい構造で説明しなくてもいいんです。先程もお話したようにガラスと結晶の中間状態であれば、それでも説明できちゃうのです。それが一つの問題なんですね。<br />
<br />
　だから当時、準結晶が発見されても、本当に新しい物質かどうか、議論がありました。それを認めない人も多かったわけです。<br />
<br />
　特に、二度のノーベル賞に輝いたライナス・ポーリングという結晶化学の世界的権威が、「準結晶なんて存在していると思わない」と、ずっと反対していたんですね。そういう関係で混沌とした状態が続いていました。<br />
<br />
　私が博士過程１年生の時、最初に見つけた準結晶は、この状態を打開しました。図４は実際に私がつくった準結晶の回折パターンです。従来の準結晶より、ものすごくシャープなピークで、かつピークの数がとても多いものをつくりました（図４）。<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="width:250px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120223-4.jpg" alt=""  style="width:250px" /><br />
<p> 【図４】安定なAl-Cu-Fe準結晶の電子線回折パターン（写真提供：蔡安邦・東北大学教授）
</p>
</div>


<p>
　スポットが鋭ければ鋭いほど秩序が高く、スポットの数が多いほど構造の完全性が良いことを意味しています。この回折パターンを見る限り、従来のような結晶とアモルファスの中間状態、あるいは入り混じった状態という考え方では、もはや説明できません。<br />
<br />
　すると、準結晶という新しい概念を考えなければいけません。この試料があることで、準結晶は新しい物質として確立されたわけですね。<br />
</p>
<p class="q">
―博士学生１年生の段階で、自分の研究が「物質として確立」という重要な貢献をしていたことは、わかっていたのですか？<br />
</p>
<p>
　当時は、それほど重要とはわからなかったのですよ。私は、学位をとるのに必死でした（笑）。なかなかノーベル賞と絡められる研究は願ってもやるものではないですから、今になって、特にノーベル賞を受賞して、最初の仕事は非常に重要だったなと改めて思います。それが初期の展開ですね。<br />
<br />
　その後は、一つわかれば、またいろいろ「なぜ準結晶ができるのか？」を勉強したり調査したりして、それから約25年間、準結晶の研究を続けました。もう人生の半分は、準結晶をやっていることになりますね（笑）。<br />
<br />
　そういう意味では、20数年、日本の仲間たちとコツコツ進めていった結果ですから、今回のノーベル賞受賞は励ましになるのです。最近の傾向として、ぱっとおもしろいことが出てきて予算がつくと、皆さん飛びついて研究する感じだけど。むしろじっくりやった方が、本当に良い仕事、残る仕事ができるのではないでしょうか。<br />
</p>
<br />

<h2 id="p1_5">秩序とは何かを問う準結晶</h2>
<p class="q">
―先ほどの、説明できない構造は、どうやって説明するのですか？<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="width:250px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120223-5.jpg" alt=""  style="width:250px" /><br />
<p> 【図５】この格子点の集合に秩序が見えてくる？（図提供：蔡安邦・東北大学教授）
</p>
</div>
<p>
　では、まず最初に、図５を見てみてください。これは結晶なのか、ガラスなのか、わかりますか？<br />
</p>
<p class="q">
―うーん、規則的には見えないので、結晶には見えないですね。ガラスと言うか、ゴミみたいに秩序なく見えます。<br />
</p>
<p>
　結晶には見えないですよね。でも、これを線で結ぶと、図６左のようになるのです。このパターンは、発見者の名前をとって「ペンローズ・パターン」と呼ばれています。<br />
<br />
　準結晶が発見される前の1974年、イギリスの数学者・ペンローズは、ある法則に従って、二種類のタイルを貼り合わせ、敷き詰めていくと、隙間なく平面を埋め尽くすことができるパターンを発見しました。<br />
<br />
　このペンローズ・パターンの頂点に、原子をおいて回折を起こしてやると、つまり光学変換してやると、図６右のような回折パターンが見られるのです。
</p>

<p style="font-size: x-small; text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120223-6.jpg" alt=""  style="width:500px;" /><br />
【図６】図５の格子点を線で結んだペンローズ・パターン（左）とその回折パターン（右）（図提供：蔡安邦・東北大学教授）
</p>

<p>
　こうしてやれば、秩序があるとすぐに皆さん、わかりますよね。ですから、準結晶の発見は、物質における秩序とは何か？という問いかけでもあるのですよ。<br />
</p>
<p class="q">
―今まで人間は、それを秩序として捉えられなかったのですね。<br />
</p>
<p>
　どうしても人間には先入観というものがあって、秩序とは周期であるというイメージがありますからね。電子線やＸ線回折は先入観なしで物質の構造を見ているために、埋もれた秩序を掘り起こすことができるのかもしれませんね。<br />
<br />
　そういう意味では、普通の結晶（図３下）に比べて、準結晶の回折パターン（図４）の方が美しいですよね。ですから「美しい」とは、そういう意味なのですよ。電子顕微鏡の中に、こんな光景が広がっていたら、それは魅せられてしまいますよね。<br />
</p>
<p class="q">
―人間が神秘的な美しさを感じるのは、そこに隠された秩序があるからなのでしょうね。そういえば、ペンローズ・パターンの回折パターン（図６）は、準結晶の回折パターン（図４）と、とてもよく似ていますね。<br />
</p>
<p>
　そうですね、似ていますね。ですから、準結晶が発見された時、ペンローズ・パターンは、準結晶の骨格構造だと認識されました。このように準結晶の構造概念は、かなり早い時期に確立されたのです。<br />
<br />
　しかし、準結晶の構造が新しい秩序をもつ物質構造として認められたのは、良質で安定な準結晶が発見された後のことでした。先ほどもお話したように、実際に準結晶の詳細な構造を解き明かすためには、良質な試料が必要だったのです。<br />
</p>
<br />

<h2 id="p1_6">「なぜこうなるのか？」を常に考えることの連鎖</h2>
<p class="q">
―一番最初に安定な準結晶を発見した仕事も大変重要ですが、その後も蔡さんは安定な準結晶を次々と発見し、現在までに見つかった準結晶物質のうち、実に９割近くを発見していると聞いて、大変驚きました。どうやったら、そんなに次々と発見できるのですか？<br />
</p>
<p>
　ははは（笑）、それはやっぱり一番最初にお話したような話で、研究をやりながら「なぜ準結晶ができるのか？」を常に考えているわけですよね。<br />
<br />
　「なぜ？」とその根源を考えているうちに、「もしかしてこうかな？」と思い、「じゃあ、実験でこれを証明してみよう」とやってみて、いろいろ確認しながら進めていくと、一つのものができて、もう一つのものができます。<br />
<br />
　いくつかできると、共通点を見つければ、今度は整理ができるわけですね。例えば３つくらいあれば、原理原則はある程度考えられるわけです。すると「なぜできるのか？」の理由がわかる。<br />
<br />
　そこから「その理由は本当かな？」と考えて、またその原理原則に基づいてやってみると、いろいろできてくる、その連鎖ですよね。そんな感じで、自然にやってきました。<br />
</p>
<p class="q">
―準結晶をつくること自体が目的というよりも、まず根底に「なぜ準結晶ができるのか？」という問いかけが常にあって、原理原則をつくりながら、それをいろいろ確かめていくうちに、結果として次から次へと準結晶ができた、という感じなのですか？<br />
</p>
<p>
　そうそう。「これがこんな原理原則でできるのなら、これもできるはずだよね、だったら本当かな」ということを繰り返してやっているうちに、次から次へと。研究をやっていて、やっぱり常に考えるのは同じで、そこなんですよね。<br />
<br />
　もちろん、もっと頭の良い人はさらに細かく考えていろいろ計算したりすると思うけど。我々実験屋さんが一番手っ取り早いのは、「なぜこうなるか？」を考えて、「こういう概念で正しければ、これもできるはずだ」と実際につくっていくことなんです。<br />
</p>
<p class="q">
―そんな感じで、自然にやっていたら、24年が経っていた感じなのですか？<br />
</p>
<p>
　そうですね。他のこともやっていますけど、基本的にはずっと途切れることなく。そうやって準結晶を継続していたら、一連の発見に全部関わっているのは私一人だけ、ということになりました。実際は私一人だけでなく、途中でいろいろな人と一緒にやったこともあるけど、全部関わっているのは私一人だけですね。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ蔡さん一人だけに？<br />
</p>
<p>
　それは、この研究をやっていても、別に予算がたくさん獲得できるわけでもなく、それでお金儲けできるわけでもないんですよね。ですから、あまり競争する相手はいないです（笑）。「何となくこれはおもしろいなぁ」というものですから。<br />
</p>
<br />

<h2 id="p1_7">一つの視点だけで見ると、重要なことを見落としてしまう</h2>
<p class="q">
―今はどんな研究をしていますか？<br />
</p>
<p>
　2004年に東北大学に戻ってから、準結晶の研究もしながら、準結晶研究で培ってきた概念を活かして、触媒の研究もやっています。ですから今の研究室は、準結晶と触媒、二つの両輪でやっています。<br />
</p>
<p class="q">
―準結晶の概念を活かした触媒の研究とは？<br />
</p>
<p>
　この組み合わせでなぜ準結晶ができるのか？という概念を、今度は触媒に活かして、いろいろな組み合わせで他の触媒をつくれないかな、という研究です。<br />
<br />
　その中で一番狙いたいのは、白金やパラジウムなどの貴金属を使わなくても、同じ性能だったり、ある特定の性能を置き換えるような組み合わせを探したいな、というセンスでやっています。準結晶は構造ですが、触媒は物性（物質の性質）を変えるわけです。<br />
</p>
<p class="q">
―研究のスタンスとしては、準結晶と同じような感覚ですか？<br />
</p>
<p>
　そうですね。やっぱり仕事の大筋は全部、通っていますね。おそらく原点は同じところから来ているな。もちろん後のアプローチはいろいろ変えなければいけませんが、一番大筋の原理原則は、同じですね。<br />
</p>
<p class="q">
―そのような一つの筋を通して研究を続けてきた蔡さんが今、見えている世界とは、どんな世界ですか？<br />
</p>
<p>
　触媒は構造ではなく物性なので、「原子顕微鏡を見て美しい」ということはあまりなく、見えているものは準結晶とは違います。ただ、二つの研究は全部、金属という概念で結びついているのです。<br />
<br />
　触媒の研究は10年に入ろうとしていますし、準結晶の研究は始めてから24年、実は、やる度に理解は深まっていくのです。最初に原理原則をつくるのは大変ですが、いろいろなものが全部リンクして、それが一回できてくると、今度見えてくるものは多いのです。<br />
<br />
　同じ金属でも、構造と物性では、視野がさらに広がった感覚があります。あくまで研究者の立場で言いますが、同じものであっても、常に見方を変えていくことは、とても大事なことなのです。<br />
<br />
　例えば、実験してうまくいかない時もありますね。けれども、うまくいかないのは「狙い通りの結果ではなかった」という意味で、ちゃんと実験をやっていれば、失敗なんてないのです。うまくいかないことも、一つの結果なのだから。それを時々、見方を変えて見てみると、むしろ大事な結果かもしれないですね。<br />
<br />
　最近は、同じ物質でも、いろいろな視点で見えるようになってきました。「ここから見ると駄目だな、おもしろくない」と、別の方向から見るんです。一緒に研究している、いろいろな分野の人たちから、いろいろな視点を学びました。<br />
<br />
　私の専門は金属ですが、準結晶の研究者は物理学者が多いのです。私、物理屋さんから学んだこともたくさんあって、そのセンスを身につけることも大事ですね。すると後々、物質を見る時、金属の眼だけでなく、物理の視点から見ると、おもしろいことがいっぱいあるんです。そこにも活かされているんですね。<br />
<br />
　今の触媒は化学の人と一緒に研究しているので、もう一つ、化学の視点でも見えるようになってきました。逆に、化学の眼ではおもしろくなくても、金属の眼から見るとすごくおもしろいものもあります。すると、いろいろなテーマが生まれるんです。<br />
<br />
　ですから、自分が持っているセンスは、準結晶も触媒もいろいろな人と一緒に研究をやってきたことで、いろいろな視点で、何でもおもしろく見えるというようなものですね。<br />
</p>
<p class="q">
―複数の目でものを見て、それがどんどんリンクしていく感じなのですね。<br />
</p>
<p>
　そうなんですよね。準結晶なんか、性質や特性だけで見ると「使えない」となってしまうけど、そういうものではないのですよ。最初は「美しい」と思うセンスだったりするのですよね。<br />
<br />
　そもそも最初の自然科学は、それをすぐ使えるようになるなんて、誰も思っていないのです。積み重ねるうちに「あぁ、そこは、そういうところあるな」と、後からわかるものですよ。<br />
<br />
　ですから研究を、ただ「性質」だけ、あるいは「使えるものになるか・ならないか」という視点だけで見ると、どうしても視野が狭められ、重要なことを見落としてしまうことは、よくあることです。僕の研究は、まずそれを見落とすことなく、いろいろ見えるのですよね。<br />
<br />
　でも若い頃は、学位を取るために、がむしゃらにいろいろな論文を書くとか。今の様子を見ると、もう少し落ち着いて、違う視点で見るようになったら良いなと思うのだけども。きっと年齢の関係もあるのでしょうが、僕も歳を取ったなぁ（笑）。<br />
</p>
<p class="q">
―でも、そもそもの根源を知りたい、という筋は変わっていないのですね。<br />
</p>
<p>
　今はもうちょっと視点がいろいろあるけど、根源を掘りたい、そこが僕の研究の原点。最初から「なぜできるのか？」、そこからいろいろな「なぜ？」というクエッションが生まれて、研究を続けてきました。そこは基本的に変わっていないですね。<br />
</p>
<br />

<h2 id="p1_8">夢や理想は自ら望むもので、与えられるものではない</h2>
<p class="q">
―最後に、今までのお話を踏まえて、高校生も含めた読者へのメッセージをお願いします。<br />
</p>
<p>
　やっぱり、考えることが一番大事じゃないのかな。今あまり考えていないことは、勿体無いです。何をやっても、「なぜ？なぜ？」を常に問うこと。それがいっぱいあることが、理系・文系に限らず、一番大事じゃないかなと思います。<br />
<br />
　それと、もし理数系を目指しているのなら、研究者の素質として一番重要なのは、素直さです。考えることも大事ですが、それ以前に、素直さが大事なんですよね。<br />
</p>
<p class="q">
―素直さとは？「なぜ？」と自然現象に対して素直に問える心の状態という意味ですか？<br />
</p>
<p>
　そうですね。それもどこかリンクしているかもしれないですね。それができるか・できないかですね。あくまでスタイルであって、こうすべき・ああすべきの方法論は、わからないけれども。<br />
<br />
　つまり、何のために研究をしているのか？知的好奇心以外の目的とか、いろいろ変な理由になっちゃうと、たびたび変な方向に行っちゃうのね。ですから、自分の仕事を楽しめるかどうかではないでしょうか。もし将来研究者を目指すのなら、それをやれるのが最高ですね。<br />
<br />
　あとはやっぱり、自分は何をしたいのか。2008年ノーベル化学賞を受賞された鈴木章先生のおことば、"夢や理想は自分で望むものであって、与えられるものではない"に集約されます。ですから、あまり理数科離れとか、そういうことを気にする必要もないし。やっぱり、いつだって、そういう人はいるだろうと。「夢を抱こう」とか、いろいろ言うけれど、それは言ってあげても仕方ないのね。結局、そんなところでしょう。<br />
</p>


<p style="text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120223.jpg" style="width:500px" alt="" />
</p>
<p class="q">
―蔡さんが大切にされているスタンスを、最後にメッセージとしてまとめていただいた形になったと思います。蔡さん、本日はありがとうございました。</p>


<p style="border:1px solid gray; padding:10px 20px">
2012年3月15日（木）、せんだいメディアテーク（仙台市青葉区）にて開催される「東北大学理学部開講１００周年記念公開シンポジウム」では、蔡安邦さんの講演やサイエンスカフェなども行われます。ご興味のある方は、<a href="http://www.sci.tohoku.ac.jp/event/cat/100/" target="_blank">公式サイト</a>をご覧ください。
</p>

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20120223-top.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120223-top.jpg" width="600" height="400" class="mt-image-none" style="" /></span>-->]]></description>
            <link>http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php</link>
            <guid>http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120223.php</guid>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学理学部開講１００周年記念公開シンポジウム</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
            <pubDate>Mon, 05 Mar 2012 13:05:56 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>歌人の小池光さん（仙台文学館館長）に聞く：科学って、そもそも何だろう？</title>
            <description><![CDATA[<h1><img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120218-top.jpg" alt="科学って、そもそも何だろう？：歌人の小池光さん（仙台文学館館長）に聞く" style="margin:0px 0px 5px 0px" />
<span style="padding: 5px 0px 0px; font-size: small; font-weight: 600;">取材・写真・文／大草芳江</span>
</h1>
<p class="date">2012年2月20日公開</p>
<div id="subject">
<p id="t">心と身体をつなぐもの、それが言葉である。
</p>
<p id="n">小池　光　　Hikaru Koike<br />
（歌人、仙台文学館館長）</p>
</div>

<p style="font-size:x-small;">
　1947年宮城県柴田町に大池唯雄（本名小池忠雄、「兜首」「秋田口の兄弟」で第8回直木賞受賞）の長男として生まれる。東北大学大学院理学研究科修士課程修了。1972年短歌結社「短歌人」に入会。1975年埼玉県の私立高校へ理科教師として就職。1978年第1歌集『バルサの翼』を発行、翌1979年同歌集により第23回現代歌人協会賞。1980年「短歌人」の編集人となった。1995年には第4歌集『草の庭』により第1回寺山修司短歌賞。2001年、第5歌集『静物』で芸術選奨文部科学大臣新人賞（文学部門）。2004年、「滴滴集6」30首（「短歌研究」2003年1月号）および「荷風私鈔」34首（「歌壇」 2003年9月号）をもって第40回短歌研究賞。同年、評論集『茂吉を読む―五十代五歌集』で第2回前川佐美雄賞。2005年、第6歌集『滴滴集』で第16回斎藤茂吉短歌文学賞。同年、第7歌集『時のめぐりに』で第39回迢空賞をそれぞれ受賞。
</p>
<p style="padding:10px;border:1px solid gray;font-size:small">
　<span style="font-weight: 600; font-size: small;">一般的に「科学」と言うと、「客観的で完成された体系」というイメージが先行しがちである。<br />
しかしながら、それは科学の一部で、全体ではない。科学に関する様々な立場の「人」が
それぞれリアルに感じる科学を聞くことで、そもそも科学とは何かを探るインタビュー特集。
</span><br />
<br />
日本を代表する歌人の一人で、仙台文学館の二代目館長を務める<br />
小池光さんは、東北大学理学部物理学科の出身である。<br />
<br />
物理学から短歌への転身はだいぶ違うことをやったようにも見えるが、<br />
「物理と短歌なんていうのは、およそ学問の対極にあるものだけどね。<br />
　ただ感覚としては、人が思っているほど違ったことをやってしまった、<br />
　という感じはないですね」と、小池さんは言う。<br />
<br />
「科学と短歌は、同じとは言えないけど、似ている」と語る、<br />
小池さんがリアルに感じる科学とは何かを探るとともに、<br />
そもそも短歌とは何か、なぜ短歌をつくるのかを聞いた。<br />
<br />
＜目次＞<br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php#p1_1">数学を解く快楽に似たものは、短歌の場合にもある</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php#p1_2">皆なぜ短歌をつくるかと言えば、おもしろいから</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php#p1_3">一方で形を壊し、一方で形あるものに憧れる</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php#p1_4">クリエイティブなものはすべて人に喜びを与える</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php#p1_5">心と身体の間をつなぐ橋みたいなもの、それが言葉</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php#p1_6">言葉を自分で新しくつくった時に、心が楽になる</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php#p1_7">生涯、文学に縁がない人なんていない</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php#p1_8">その褒める言葉が短歌なんだ</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php#p1_9">【見学記】仙台文学館「小池光 短歌講座」</a><br />
</p>


<br /> 
<div class="interview"> 
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/kagaku_interview.gif" alt=""> 
<p>歌人の小池光さん（仙台文学館館長）に聞く</p> 
</div> 
<br />


<h2 id="p1_1">数学を解く快楽に似たものは、短歌の場合にもある</h2>
<p class="q">
―小池さんがリアルに感じる科学とは、そもそも何ですか？<br />
</p>
<p>
　ふふふ、いきなり難しいこと聞くね（笑）。そうですね、「科学とは何ですか」ですか？大問題で、急に答え出ないねぇ。<br />
<br />
　好奇心って、あるでしょう？知らないことを「知りたい」という欲求。つまり人間の本能かな。何事もさ、「なんでこうなったのだろう」とか「これから先どうなるのだろう」とか、人間は想像力を持ってしまったから、そういうことを考えざるを得ないじゃない。<br />
<br />
　そういうところに、知らないものに対する好奇心みたいなものが芽生えてきて、それを体系化していくのが、サイエンスというものの一つの現れじゃないかな、と思いますね。「不思議だな」とか、そういう感じね。それは科学の第一歩なのですね。<br />
</p>
<p class="q">
―そもそも科学と短歌、同じところはありますか？<br />
</p>
<p>
　そりゃ、全然別のものですよ。<br />
</p>
<p class="q">
―どこが最も「全然別」だと思いますか？<br />
</p>
<p>
　だって科学は、一種の数式みたいなものでしょう？数式という言語で会話しているわけだよね。一方で、歌は「大和言葉」という約二千年も昔からある日本語で会話しているのであって、全然、その言語体系が違うわけだから。<br />
<br />
　同じところがあるか・ないかと聞かれれば、何も無いのだけど。ただ、妙にね、感覚としては、数学なんかに似ているんだよね。<br />
</p>
<p class="q">
―数学と短歌、どのあたりが感覚としては似ているのですか？<br />
</p>
<p>
　例えばね、数学には、答えが一つしか無いわけでしょう？その答えに辿り着ければゲットしたわけだし、辿り着かなければ駄目なのだけど。<br />
<br />
　一方で短歌は、五七五七七、というものですね。五七五七まではできたけど、どうしても最後の七ができない、みたいなことって、しょっちゅうあるわけ。<br />
<br />
　最後の七ができなくて、七転八倒して苦しんで、ある時、ひょんとそれが浮かんで、「あぁ、歌ができた」って感じがするわけね。それが一番おもしろいのだけど。<br />
<br />
　その時、最後の答えみたいなものが、ぱん、と出てきた時の快感は、数学の問題が解けた時の快感と、すごく似ているんです。<br />
<br />
　僕、高校時代は数学が大好きで、数学しか興味がなかったから、そればかりやっていたのだけど。数学って、すごくおもしろくて、数学を解くことは一種の快楽なんですよ。その快楽に似たものは短歌の場合にあるのです。<br />
<br />
　「こうすれば、こうなるな」と答えが見つかった時、すごく嬉しいわけじゃないですか。その嬉しさは、わりと科学の発見なんかの嬉しさと似ていると。要するに喜びであると。そんなことは、まぁ敢えて言えば、言えるのかな。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_2">皆なぜ短歌をつくるかと言えば、おもしろいから</h2>
<p class="q">
―「答えが見つかった喜び」という点で見ると、短歌と数学で似ているのですね。ただ、数学の場合、その答えは私にとっても他の誰かにとっても皆同じですが、短歌の場合、私の答えとあなたの答えは違うようなイメージです。それでも「最後の答えは一つ」という感覚なのですか？<br />
</p>
<p>
　まぁ、それは実際的にはそうだけど、「答えは一つ」というのが実感だね。読者の数だけ答えがあるようじゃ、良くない歌だね。本当に優れた歌とは、誰が読んでも「これで決まりだ」、そういうものなんです。わりと客観的なんですよね。<br />
</p>
<p class="q">
―短歌は客観的なイメージがあまりなかったので、なんだか意外ですね。<br />
</p>
<p>
　良い歌はそうである。良くない歌はそうではない。<br />
</p>
<p class="q">
―逆に言うと、そのレベルまで行かなければ、みんなが良い歌だと思わない、ということですか？<br />
</p>
<p>
　「みんな」って言うわけじゃ、ないけれども。「みんな」と言うのは、「例えば、みんな」なのだよね。この世にわかってくれる人が１０人いればいい。１００人なんて贅沢な望み。１０人の人がちゃんと読んでくれれば余は満足である。そんなものなんです。<br />
</p>
<p class="q">
―それでは最後の「七」を、どのようにして探すのですか？<br />
</p>
<p>
　大変なものですよ・・・七転八倒ですよ。いろいろなことしてね。逆立ちしたり、お酒を飲んだりしてね。<br />
</p>
<p class="q">
―科学者でも、そういうお話をする人がいます。<br />
</p>
<p>
　そうですか。そういう点では、わりと人間って、いろいろな現れ方をしているだけで。物理学と短歌なんて、およそ学問の対極にあるものだけどね。意外と生理的なレベルと言うのかな、本音のところで言えば、そんなに違うものでもない。<br />
<br />
　要は、好奇心が満たされた時の快感であったり、そういうプロセスで動いている分には、同じとは言えないけれども、似ているところがあるのではないですか。<br />
</p>
<p class="q">
―小池さんは最初に「人間の本能」とお話していましたが、そういうプロセスで見れば、科学も短歌も似ているということですね。<br />
</p>
<p>
　そうだね。短歌とは定まった形の詩（定型詩）なのだけど、定型詩の持つ共通のおもしろさとは、快感であって。皆なぜ短歌をつくるかと言えば、おもしろいからなんですよね。<br />
<br />
　「五七五七七」が大きなルールで、まぁ、それ以外のルールもないわけではないけど、大原則で言えばそれだけなのでね。その範囲内で、どれだけ自由に自分の言いたいことを言えたかが、歌のできばえと言うか、歌をつくる動機なのではないでしょうか。<br />
<br />
　それは、わりと数学か何かで「できた！」とか「わかった！」とか「納得！」という感覚と似ていますね。だから、人が思っているほど、（物理学と短歌で）「違うことをやってしまった」っていう感じはないですね。<br />
<br />
　短歌って、今で言うゲームなんだよね。昔の人はゲームの機械も何もないから、短歌をやることで、それを満たしてきたわけでしょう。そういうゲーム的な喜びみたいなものを言葉でやって、昔の人はどんどん高度なものにしていったわけです。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_3">一方で形を壊し、一方で形あるものに憧れる</h2>
<p class="q">
―「人が思っているほど違うことをやってしまった感じはない」ということですが、物理から短歌に転身した経緯について、もう少し詳しく教えてください。<br />
</p>
<p>
　あんまり物理ができない学生でね。ちんぷんかんぷんで。「これはどうなっているのだろう？」と思うことがいっぱいあって。でも友達なんかは、見ていると、みんな、できるんだよね。<br />
<br />
　それで友達に聞くと、みんな「わかる」と言うでしょう。だから僕、理科の生徒としては、すごく劣等生だったのですよ。その中で、たまたま文学が好きだったから、いろいろ本を読んだり、ちょっと真似事で詩を書いてみたり、そんなことをやっていたわけ。<br />
<br />
　そんな中で短歌に出会って、すごくフィットしたと言うか、フィーリングが合ったと言うか。「これは言葉でやっている数学だな」という感じでしたね。数学は数式という言語でやるものだけど、日本語でやった数学みたいなものが短歌なんだ、という感じ。<br />
</p>
<p class="q">
―小池さん以外の歌人でも、そのように短歌を見ている人は多いですか？それとも小池さんならではの感じ方ですか？<br />
</p>
<p>
　そうだね、あまり（他の人は）思っていないでしょうね。<br />
</p>
<p class="q">
―「フィーリング」ということではありますが、今思えば、なぜそう思ったのだと思いますか？<br />
</p>
<p>
　なんか自分でもよくわからないね。ただ、形あるものに憧れていた、と言うか。僕達が学生だった頃は、形を壊す時代だったわけでしょう？全共闘運動とかね。<br />
<br />
　今までこだわってきた形を壊す運動だったわけ。そんな中にいた時、形への憧れ、魅力のようなものを、逆に感じるようになっていたことは確かだね。<br />
<br />
　短歌って、形だから。揺るぎない形式をもって一千二百年も生きてきたものを、改めて見てると、「あぁ、こっちの方がすごいな」と言うか、安心すると言うかね。<br />
<br />
　だから結局、全共闘運動なんていうものと、僕が短歌やったことは、どこかですごくつながっているんですよ。心のあり方みたいなものに。一方で形を壊して、一方で形あるものに憧れる。<br />
</p>
<p class="q">
―そういう意味では、当時と状況は異なりますが、今も社会は不安定化しています。そんな中、普遍的なものに憧れる気持ちはわかるような気もします。そう言えば、物理学よりも短歌の方が、ずいぶん歴史が長いですね。<br />
</p>
<p>
　短歌の方がずっと長いですね。近代科学より、はるかに昔からある形式ですから。近代科学は、せいぜいデカルト以来でしょう？だから四百年とか、そんなもんじゃないですか。短歌は一千二百年くらいやってきたわけね、五七五七七で。すごい話でしょう？<br />
<br />
　もちろん科学だって、科学の形があるわけだよね。でもそれは私にはとても難しすぎて、わからないんだ（笑）。こっちはもう、単純だからね。五七五七七って、それだけでしょうが。わかるもわからないも、ないわけですよ。すぐにできちゃうんですよ。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_4">クリエイティブなものはすべて人に喜びを与える</h2>
<p class="q">
―「五七五七七だけで千二百年」は確かに「すごい話」ですね。けれども、どうやったら「すぐにできちゃう」のですか？<br />
</p>
<p>
　そりゃ、パッとなんて、出てきませんけどね。今の私は、なかなか。やっぱり苦労して、頭を振り絞って、絞り切ってですね、七転八倒していくと、なんか、ふと出てくる。そんなもんなんですよね。<br />
</p>
<p class="q">
―やっぱり絞り出すものですか・・・<br />
</p>
<p>
　絞り出す。もう、ぎりぎり、むちゃくちゃ。<br />
</p>
<p class="q">
―どのようにして短歌を「絞り出す」のですか？<br />
</p>
<p>
　まずは自分の心の状態を整えて、とても良い気持ちになるようにしないと、駄目だね。<br />
</p>
<p class="q">
―「とても良い気持ち」とは？<br />
</p>
<p>
　見るもの聞くものすべてに喜びがあるような、世界が愛と喜びに満ちたものであるような気持ち。例えば雑草に花が咲いていても、「きれいだな」とすごく肯定的に見れるような気持ちにならないと、やっぱりものはつくれないのね。<br />
<br />
　普通は花が咲いていても「なんだ、花が咲いているだけじゃないか」って思うじゃないですか。すると、対象に対して愛がないから、そういうのは歌にならないの。<br />
<br />
　だから、歌をつくる時は、心のコンディションを上げていかなければならないのだけど、それがなかなか上がらない。だから、苦労する。<br />
<br />
　何日もかけてコンディションづくりをしても、なかなかそういうコンディションになれないわけだよね。だんだんこの歳になると、いろいろ辛いこと悲しいこと。あなたくらいの歳ならそんなことないけどさ。もう老人だから（笑）。なかなか、辛くて大変なんだ。<br />
</p>
<p class="q">
―辛くて大変なことは、歌にはならないのですか？<br />
</p>
<p>
　ならないことはない。でも、それを読んでも楽しいものじゃないでしょう？人に喜びを与えるものじゃないから。<br />
</p>
<p class="q">
―基本的に、短歌とは人に喜びを与えるもの、ということですか？<br />
</p>
<p>
　短歌に限らず、クリエイティブなものはすべて人に喜びを与えるから。科学だって、そうでしょう？未解決なものを解決した、っていうのは、本能的な喜びだから。それで科学者は動いているわけだよね。だから、そういう点では同じ。<br />
</p>
<p class="q">
―心のコンディションで言うと、最近の科学者達は「これもやらなきゃ」「あれもやらなきゃ」と忙しくて、「本能的な喜び」からどんどん離れていっているような雰囲気です。<br />
</p>
<p>
　そうみたいだね。サイエンスが巨大化しちゃって、自分がどこかの歯車みたいにしかならないでしょう？それは本能的な喜びとか、そういうものは削ぐ方向に行くわねぇ。<br />
<br />
　科学するということが、子どもっぽい喜びみたいなものから、良く言えば専門化して、悪く言えば、本能的な喜びに満ちているべきはずのものが、仕事とか作業とか、そんなイメージに近くなってきたね。<br />
<br />
　それはもう完全に組織化されちゃっているから、そこから逸脱できないわけだよね。要するに、変わり者はいらないというような。変わり者がいたから、科学っておもしろいのだけど、変わり者いないものなぁ・・・。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_5">心と身体の間をつなぐ橋みたいなもの、それが言葉</h2>
<p class="q">
―個人としても年を取れば取るほど辛いことや悲しいことが増えて、社会としても成熟化すればするほど本能的な喜びからは離れてしまう。では、どんなことに気をつければ、心のコンディションは整えられますか？<br />
</p>
<p>
　まずは歩く。あとは、電車に乗るとかね。乗り物に乗る、っていうのは、いいんだよね。<br />
</p>
<p class="q">
―直接関係なさそうに思えますが、それはなぜですか？<br />
</p>
<p>
　適度に振動が加わって、あるリズムがあって。そこに身を委ねていると、自分の心の中にある困ったものが、なんか溶け出すような気がして。要するに、無に近づく、みたいな。<br />
<br />
　我々が生きている時、ネガティブな感情が山ほどあって、要するにマイナス状態になっているわけですよ。<br />
<br />
　でも、ものをつくるのはプラス状態のできごとだから、マイナスからプラスに移さないと、ものはできないわけね。その真ん中にあるのが０のライン。だから心のコンディションを整えるというのは、０のところに自分を置くみたいな感じですね。<br />
</p>
<p class="q">
―プラスではなく、０ですか？<br />
</p>
<p>
　プラスじゃなく、とりあえず０に置いて、そこからプラスに持っていく。今までのネガティブなものをクリアしていかないと、創造的なものは見えてこない。これは、科学でも同じじゃないかな。<br />
<br />
　だから、そのためにすごく素朴に、自転車に乗ったり、歩いたり、電車に乗ったり。昔の人は、そういうことを、もっと旅としてさ、歌をつくっていったわけだけども。<br />
<br />
　毎日毎日が小さな旅行みたいなの。例えば（仙台文学館館長として月に数回、東京から）仙台に来るのだって、仕事で行くというのではなく、小さな旅をしているような気持ちになれると、いいんだよね。なかなか、なれないのだけどね。<br />
<br />
　うまくなれた時は、なんか気持ちがいいんだな、喜びがあるんですよ。要するに、家にこもって机の前に座っていたって、短歌はできないってことだよ。だから外界に出る、肉体を動かす。<br />
<br />
　短歌って、リズムだからさ。リズムって、身体感覚じゃない？身体を使わないとね。だから短歌って、結構、身体を使って書くものなんですよ（笑）。<br />
<br />
　それで、ポケットに手帳を一冊しのばせておいてさ、ちょっと浮かんだフレーズをそこに書きつけるとか。そんなことをやっていて、詩の形にしていくんだね。<br />
</p>
<p class="q">
―心と身体はつながっているんですね。<br />
</p>
<p>
　そう、つながっている、つながっているの。人間は心と身体からできているわけだけど、両者って、全く違うものじゃないですか。その違うものであることが、人間をすごく苦しめているのだけど。<br />
<br />
　心と身体の間をつなぐ橋みたいなもの。それが言葉であり、その言葉を様式化したものが短歌になる。だから非常に肉体的なことを精神的なものでカバーしている、と言うかさ。<br />
</p>
<p class="q">
―心と身体がつながっている感覚、現代社会では少なくなっている感じがします。むしろ心と身体が乖離しているような感覚がありますね。<br />
</p>
<p>
　現代人は皆、そういう悩みは抱えちゃっているよね。そういう意味で、昔の人がね、やっぱり乖離していなかったんだよね。さかのぼればさかのぼるほど。人間は昔、心的存在と肉体的存在が、それほど葛藤していなかったんでしょう。<br />
<br />
　それがだんだん分離することによって、近代文明が生まれるわけだけど、そこですでに失われたものがあってね。それが今ますます肥大化している。全体性を失わせている、というのがある。<br />
<br />
　全体性が失われちゃって分断化されて、細かなところだけにやらせられて。すると、あまりおもしろくないよね。喜びがないんだよね。もっと生々しく喜んで生きていきたいと思うのだけど。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_6">言葉を自分で新しくつくった時に、心が楽になる</h2>
<p class="q">
―その「生々しい喜び」というもの、心と身体がつながった喜びというものは、一体どういうものですか？<br />
</p>
<p>
　どういう風なんだろうね。難しいね、哲学の問題だね。<br />
</p>
<p class="q">
―そこを何とか言語化してもらいたいのです。<br />
</p>
<p>
　例えば、１万円札を今日、失ったとするでしょう。すごくショックじゃないですか。すごく心が縮み乱れて。ところが、その日にさ、良い歌を一首つくれれば、１万円札はなくなったけど、一首できたから±０だ。そんな感じ、というのは答えにならないのかなぁ。<br />
<br />
　何かを得たんだよね、歌をつくることによって、私は。それは、失った１万円分くらいに値するような財産。それを１０つくれれば１０万円儲けた、そんな感覚かな。答えにならないけどさ（笑）・・・あなたの質問は、随分難しいね。<br />
</p>
<p class="q">
―何か大切な物を失ったとしても、それによって何かを得て±０という感覚はわかる気もします。けれども「１万円」の例えには、交換可能な価値という意味も含まれていますか？それとも、一度失ったら取り戻せない、お金で買えない価値を失うという比喩ですか？<br />
</p>
<p>
　じゃあ、その１万円の話は、ちょっと例が悪かったから、やめよう。<br />
<br />
　あのね、私、家内を亡くしたのね。もう１年半くらいになるのだけど。すごいショックと悲しみに浸されるじゃないか。でもその時の歌をつくって、「あぁ、この歌ならできたな」という感じを得ると、慰められるんだよね。<br />
<br />
　悲しみは心の問題だけど、結局、慰めはむしろ肉体的な要素であって。ちょっと肩の荷がおりるとか、なんか体が柔らかくなるとか、ご飯が美味しいとか。そういう肉体的なものにフィードバックしていく、って言うのかな。<br />
<br />
　だから、妻を失うなんて深刻な体験が、歌をつくることで痛みが和らぐ、少しだけどね。それがさっきの１万円札の喩えで言ってみたかったのだけど。<br />
<br />
　生きていくことは、常に失いに満ちていることでさ。あなたはまだ若いから、そんな実感はないだろうけど。僕らくらいの歳になると、もう日々失っていくわけでしょう？老化っていうのはさ。できていたことが、できなくなるわけだから。<br />
</p>
<p class="q">
―身体の方で言えば、私事ですが、ぎっくり腰をしてから腰痛持ちになり、前より自由に動けなくなってきました。<br />
</p>
<p>
　腰痛も辛いよなぁ。だから、腰痛がこれだけ辛いということを歌にすると、その腰痛が少し和らぐ気がする、良い歌ができればね。<br />
<br />
　歌には、つくることで、その人を支えたり、救ったりするものがあって。歌に限らず、文学って、そういうものだと思うけど。歌は特に、簡単明瞭にそれができる形だね。<br />
</p>
<p class="q">
―そう考えみると、人間って不思議な存在ですね。<br />
</p>
<p>
　不思議な存在だねぇ。もう心と身体っていう全然違うものが、直結しちゃうからね。心のダメージがすぐ身体のダメージになって現れたりするから。だから、心が動かない時は、身体を動かすんだよ。<br />
</p>
<p class="q">
―最初に小池さんが「心のコンディションを整えるために、歩いたり電車に乗る」とお話された時は意外に思いました。けれども、そもそも心と身体はつながっていて、例えば腰痛でも、失ってしまった大切な何かを材料にして自分が価値だと思うところで何か新しいものをつくれたら、逆に失わなければ得られなかったものかもしれない、これはこれで良かったのかもしれない、って思えるかもしれないですね。<br />
</p>
<p>
　そうそう。腰痛して得した、みたいな。そういうことなんだ。歌にはネガティブなものをプラスに転じるような要素があって。<br />
<br />
　だから大昔から、どんな種類の民族でも、歌や詩や文学は必ずあるわけでしょう？文字を持たない民族でも、歌や詩はあったわけだよね。<br />
<br />
　それは、どうしたら心の痛みを和らげてくれるのだろうという時、やっぱり言葉というものと出会う。心と身体をつなぐものが、言葉である。何かそういう役割をしているんですね。<br />
</p>
<p class="q">
―よくよく考えてみると、言葉や心って、よく知っているようで、実は何だかよくわからない不思議なものなのですね。<br />
</p>
<p>
　心って、よくわからないでしょう？誰もが知っているものだけど。心というのは何かと言えば、その言葉なんだよね。言葉イコール心みたいなものだから。<br />
<br />
　言葉の集まったものの全体像が、心というわけですよ。その人が持っている言葉の体系全部が心というもので行っているわけだよ。そう私は思うんだよ。心とは言葉である。<br />
<br />
　だから、その言葉を自分で新しくつくった時に、心が楽になる。難しいことだけども、結局、その喜びと言うか、回復力を頼んで、文学をやり続けている、ということじゃないですか。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_7">生涯、文学に縁がない人なんていない</h2>
<p class="q">
―小池さんも、だから歌をつくっているのですか。<br />
</p>
<p>
　もっと若くて元気いっぱいの１０年、２０年昔を振り返れば、すごく歌をつくることが楽しくて。ひとつできればもうニコニコで。ネガティブなものが拭い去られる気がしてね。だから歌をつくったんだと思うんだけど。<br />
<br />
　今はちょっと、心と身体の具合がうまくいかなくて、お休みしている感じがするね。やっぱり家内が亡くなったのがすごくショックで、なかなかそこからね。常にネガティブな状態に心があって、いくら散歩しても０まで戻れないところで今、苦しいんでいるわけ。<br />
</p>
<p class="q">
―自分はまだ、そこまで大きなものを失ってしまったことを想像できないです。逆に今日、自分で自分に驚いたのは、心と身体のつながりを、普段あまり考えていないのだな、と。<br />
</p>
<p>
　あぁ、それは健康な姿。要するに健康な人って、そんなことで悩まないわけだよ。そうでしょう？だから、それはそれでいいの。<br />
<br />
　文学や短歌は、ある意味で健康な人には縁のないものであって。そんなものなくても、平気で生きているじゃないですか、いくらでも。本を全然読まない人だって山ほどいて。<br />
<br />
　ただ、心と身体が乖離していることに、すごい苦痛を感じてしまう時があるのよ、人生というのは、誰でも。生まれてから死ぬまで幸せだった人なんて、いないのだから。非常に深刻な自体に直面して、とても苦しくなった時に、誰でもそこで苦労するのだよね。<br />
<br />
　だって、神様にお祈りするとかさ、それはもう100％、心の問題でしょう？でも、それはその人の辛い肉体を救うために、心が出てきたわけです。信じることで、心が引っ張り上げられて、その勢いで体も引っ張り上げよう、みたいなね。<br />
<br />
　そういう欲求は必ずどんな人にでも、そんな局面は出てくるので、そういう意味では、生涯、文学に縁がない人なんていない、と思いますね。<br />
<br />
　人生って、まっすぐじゃなくて、途中で、ドカンというのが来るわけですよ。ドカンって上がる場合もあるだろうけどね。ドカンと沈んだ時、どうやってそこから這い出るかは、もう必死になるわけだよね、どんな人でもね。<br />
<br />
　短歌をつくることは、そういう時の救済の手段としてある、と言えばいいかな。小さな手段なのだけども。だから、歌をつくる人はなくならないし、皆、歌をそれなりに必死になってつくって何とか自分を支えている、ってわけなんだね。<br />
<br />
　心が少し軽くなると言うかね。肩こりの時にマッサージを受けると、気持ち良いじゃないですか。あんな感じで、言葉のマッサージみたいなものなんだな（笑）。<br />
<br />
　自分で自分をマッサージしているのだけど、うまくマッサージすると、肩こりが楽になる、みたいな。そんな感じが近いかな。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_8">その褒める言葉が短歌なんだ</h2>
<p class="q">
―最後に、今までのお話を踏まえて、中高生も含めた読者へメッセージをお願いします。<br />
</p>
<p>
　我々は、言葉に操られるばかりじゃないですか。言葉に操られるのではなくて、自分で言葉を操ってごらん。歌でもつくってごらん。結構おもしろいよ。<br />
<br />
　人の言った言葉ではなくて、自分の言った言葉で何か喋ってごらん。それは思いがけず、楽しいものだよ。<br />
<br />
　もっと具体的に言えばね、褒められると、誰でも嬉しいでしょう？その言葉って、一生忘れないじゃないですか。だからあなたも誰かを褒めてごらん。その褒める言葉が、短歌なんだ。<br />
<br />
　人間でなくても、良いけどさ。太陽が東の空から上ってきて、すごく素敵だと思った。それは、太陽を喜ばせているのだから。<br />
<br />
　言葉を発するということは、誰かを喜ばせる、誰かを慰めることなので、だから結構、おもしろいのだよね。<br />
<br />
　あなたが褒められて嬉しいように、あなたの歌を読んで誰かがおもしろがれば、素敵じゃないか。<br />
</p>
<p class="q">
―言葉は私の心と身体だけでなく、他の誰かもつなぎ、それがまた私を喜ばせるのですね。<br />
</p>
<p>
　喜んでいる人を見ることは、良いことじゃないですか。まして、自分が喜ばせたと思ったら、嬉しいわけでしょう。<br />
<br />
　そういう嬉しさや喜びというものを、言葉はつくりだす力があるのだから。<br />
</p>
<p style="text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120218-3.jpg" alt="" />
</p>

<p class="q">
―小池さん、本日はどうもありがとうございました。<br />
</p>

<br />
<h2 id="p1_9">【見学記】仙台文学館「小池光 短歌講座」</h2>
<p>
　仙台文学館では、「小池光短歌講座2011」を毎月開講しています。事前に参加者から募集した短歌を小池さんが一首ずつ講評する講座で、ユーモアを交えながらのわかりやすい指摘に、会場いっぱいの受講者らは熱心に耳を傾けていました。<br />
</p>

<div class="leftPicture" style="width:280px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120218-2.jpg" alt=""  style="width:280px;" /><br />
<p>「小池光 短歌講座2011」のようす</p>
</div>

<div class="leftPicture" style="width:250px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120218-1.jpg" alt=""  style="width:280px;" /><br />
<p>小池さんが参加者からの短歌を一首ずつ講評</p>
</div>
<br class="c" />

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20120218-top.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120218-top.jpg" width="600" height="400" class="mt-image-none" style="" /></span>
-->]]></description>
            <link>http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120218.php</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">仙台市文学館</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学理学部物理系同窓会 泉萩会</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">仙台市文学館</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">歌人</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">館長</category>
            
            <pubDate>Mon, 20 Feb 2012 08:06:08 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>大野英男さん（東北大学教授）に聞く：科学って、そもそも何だろう？</title>
            <description><![CDATA[<h1><img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120118-top.jpg" alt="科学って、そもそも何だろう？：大野英男さん（東北大学電気通信研究所教授）に聞く" style="margin:0px 0px 5px 0px" />
<span style="padding: 5px 0px 0px; font-size: small; font-weight: 600;">取材・写真・文／大草芳江</span>
</h1>
<p class="date">2012年2月13日公開</p>
<div id="subject">
<p id="t">自分で土俵をつくれる人になって欲しい
</p>
<p id="n">大野　英男　　Hideo Ohno<br />
（東北大学　電気通信研究所　教授、<br />
　東北大学 省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンター　センター長）
</p>
</div>

<p style="font-size:x-small;">
　1954年、東京生まれ。専門は、半導体工学、スピントロニクス。北海道札幌南高校出身。東京大学工学部卒業、工学研究科修了。IBMトーマス・J・ワトソン研究所客員研究員などを経て、1995年に東北大学電気通信研究所教授。2010年に東北大学省エネルギー・スピントロニクス集積化システムセンター・センター長に就任。また2010年から内閣府最先端研究開発支援プログラム「省エネルギー・スピントロニクス論理集積回路の研究開発」中心研究者。2003年にThe IUPAP Magnetism Prize、2005年に日本学士院賞、日本人としては3人目のアジレント欧州物理学賞を受賞。2011年には「希薄磁性半導体における強磁性の特性と制御に関する研究」でトムソン・ロイター引用栄誉賞（ノーベル賞有力候補者）を受賞している。
</p>
<p style="padding:10px;border:1px solid gray;font-size:small">
　<span style="font-weight: 600; font-size: small;">「科学って、そもそもなんだろう？」を探るべく、【科学】に関する様々な人々をインタビュー<br />
科学者の人となりをそのまま伝えることで、「科学とは、そもそも何か」をまるごとお伝えします 
</span><br />
<br />
私たちは今、エレクトロニクスなしには考えられない生活を送っているが、<br />
そもそもエレクトロニクスとは、電子の性質を利用する技術の総称である。<br />
<br />
その性質とは、電荷（電気を伝える性質）とスピン（磁石になる性質）だ。<br />
今日のエレクトロニクス技術は、電荷の性質を利用する半導体デバイスと、<br />
スピンの性質を利用する磁気デバイス、この二つを上手に、しかし別々に<br />
使うことで、発展を遂げてきた。<br />
<br />
そして今、電子の電荷とスピン、この両方の性質を同時に利用する研究分野<br />
「スピントロニクス」（エレクトロニクスとスピンの造語）が、これまでの<br />
技術の限界にブレークスルーを与える次世代のエレクトロニクス技術として、<br />
注目されている。<br />
<br />
スピントロニクスの基礎研究と応用研究により、数々の権威ある賞を受賞し、<br />
世界トップを走る大野英男さん（東北大学電気通信研究所教授）がリアルに<br />
感じる科学とはそもそも何かを聞いた。<br />
<br />
＜目次＞<br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_1">科学と技術の橋渡しに、楽しみとやりがい</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_2">半導体と磁性体の世界に橋をかける</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_3">電子の電荷とスピンを同時に使う「スピントロニクス」</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_4">電子のスピンを使って、エネルギーを使わずに情報を記録</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_5">情報機器の頭脳にあたる「論理集積回路」に革新</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_6">社会の基盤となるところに、変革を起こしたい</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_7">自分たちの技術開発で新たな地平を切り拓いていく</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_8">世界的にユニークな立場でトップを走っている理由</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_9">世界の流れをつくろうとなると、どうしてもそこまでやらなければいけない</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_10">皆に使われる技術でなければ、技術ではない</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120118.php#p1_11">自分で土俵をつくれる人になって欲しい</a><br />
</p>


<br /> 
<div class="interview"> 
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/kagaku_interview.gif" alt=""> 
<p>東北大学電気通信研究所教授の大野英男さんに聞く</p> 
</div> 
<br /> 

<h2 id="p1_1">科学と技術の橋渡しに、楽しみとやりがい</h2>
<p class="q">
―大野先生がリアルに感じる科学って、そもそも何ですか？<br />
</p>
<p>
　今は幸いなことに「サイエンス（科学）とテクノロジー（技術）の橋渡し」とでも言いましょうか。ものごとを理解し、その理解を深めようという科学のテーマと、ある技術を総合して世の中に役立つ技術にしようというテーマ、二つをやらせていただいています。そのような意味では、科学と技術の両方をやらせてもらっていることに、楽しみとやりがいを感じています。<br />
</p>
<p class="q">
―科学と技術、それぞれどのようなところに「楽しみ」や「やりがい」を感じているのですか？<br />
</p>
<p>
　科学、基礎研究の部分には随分、楽しみが入っています。基礎研究は、いつか何かの役に立つかもしれませんが、今すぐには役立たないかもしれません。それでも「これを知りたい」「この現象はどこから出てくるのか理解したい」と思い、そのために実験・解析し、場合によっては理屈も考えます。<br />
<br />
　こう言うと言い過ぎかもしれませんが、それは推理小説を読む感覚に似ています。どこにどんな結末があるかはわからないけども、やっぱりおもしろいから次から次へ進んでいく。基礎研究の楽しみは、おもしろくて推理小説のページを次々めくるように「こういう風になっていたんだ。だったらこうすると、どうなっているのだろう？あぁ、こういうことが出てくるんだ」という楽しみですね。<br />
<br />
　一方で応用しようとすると、自然が自分をどこに連れて行くのかわからないような状態で思考することはなかなかできませんから、「こういうものをつくりたい」という行き先が決まっています。基礎的な部分もたくさんありますが、例えば「癌を治したい」とか、目標意識がすごくはっきりしています。それはそれで非常にやりがいと責任があることです。<br />
<br />
　このように、楽しみがある面とやりがいのある面、その両方を今、同時にやっています。それぞれ関連はしていますが、テーマは別です。そこがリアルと言いますか、やりがいがあって楽しいな、と私が思ってやっているところですね。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ大野さんはそのように思うようになったと思いますか？<br />
</p>
<p>
　大学は工学部でした。工学部には「最終的には何かに役立たせたい」という大きな目標があります。その枠組みからは結局出ていないのだろうと思います。もし「基礎と応用のどちらかに分類しなさい」と言われれば、私の基礎研究も、広い意味では応用を指向する研究に入るでしょう。<br />
<br />
　その中には、今の問題を解決することから、将来新たなことをできるようにすることまで、時間的には非常に広い対象があるわけです。今日明日の大切な問題を解決することも重要ですが、ただそれだけをやっていると、時間的に遠くのことが視野に入らなくなりそうな気がして。あるいは時間的に遠くのことばかりやっていると、今度は今の問題に貢献できていないような気がして。<br />
<br />
　本当はそんなことはないのですが、どちらかを選ぶことができずに、行ったり来たりしているうちに、現在は両方やるようになっている、ということだと思います。
</p>
<p class="q">
―両方とも同時にやることの方が、難しいのではないでしょうか？<br />
</p>
<p>
　私がドクター（大学院博士課程）の頃の先生は、どちらかと言えば中長期的な視野で、物理学に強い工学の先生でした。また当時、米国に１年滞在していた時の米国の先生は、どちらかと言えば応用に強い先生でした。どちらにも非常にやりがいを感じていたので、二人の先生の影響を受けたのでしょうね。そして、就職した頃は、どちらかと言えば応用に近いことをやっていて、それからだんだん長期的なこともやれるようになってきました。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_2">半導体と磁性体の世界に橋をかける</h2>
<p class="q">
―具体的にはどのような研究をしていますか？<br />
</p>
<p>
　半導体（※１）の研究です。８８年にＩＢＭのトーマス・J・ワトソン研究所に客員研究員として赴く前から、１０年くらいずっと半導体の研究をしていました。そして８８年に江崎玲於奈さん（※２）らのグループに配属された時、「何でも好きなことをやっていいよ」と言われたので、当時ＩＢＭにいた宗方比呂夫先生（現・東京工業大学教授）と一緒に、すごく新しいことをやったのです。<br />
</p>
<p style="font-size:x-small">
※１　【半導体】電気を通しやすい「導体」と電気を通さない「絶縁体」との中間的な性質を示す物質のこと。電気をどの程度通すか（電気伝導性）を周囲の電場や温度によって変化させる性質が、電子工学で利用されている。代表なものとしてシリコンがある。<br />
</p>
<p style="font-size:x-small">
※２　【江崎玲於奈】日本の物理学者。「半導体におけるトンネル効果の実験的発見」で１９７３年ノーベル物理学賞受賞。<br />
</p>
<p class="q">
―「すごく新しいこと」とは何ですか？<br />
</p>
<p>
　半導体でありかつ磁性体（※３）である物質、最終的には（磁性体は）磁石になったのですが、半導体でありかつ磁石である、世の中にはない新しい物質をずっとつくっていました。<br />
</p>
<p style="font-size:x-small">
※３　【磁性体】磁場の中で磁化される物質のこと。詳しくは後述の「電子のスピン」の項を参照のこと。<br />
</p>
<p class="q">
―「半導体でありかつ磁石である物質」とは何ですか？昔はなかったのですか？<br />
</p>
<p>
　それ自体は昔からありましたが、新しい種類をつくってみようと挑戦したらできたのです。それはどちらかと言えば、基礎的な材料科学でした。半導体の物理と磁性体の物理の接点で、いろいろ新しいことを理解したり明らかにすることができました。さらにそれを使って「低温ではこんな現象も見える、こんなこともできる」といった原理検証実験もやりました。<br />
<br />
　そして、東北大学の宮崎先生らと一緒に仕事をさせていただくうちに、別の文脈ですが、低温ではなく室温で動くような磁石の素子と、いわゆる半導体と呼ばれる集積回路（※４）を結びつけることで、新しい省エネルギーの集積回路ができる、という研究も始めました。<br />
</p>
<p style="font-size:x-small">
※４　【集積回路】特定の複雑な機能を果たすために多数の素子を一つにまとめた電子部品。一般的に「半導体」と言った場合、半導体自体でなく、半導体を用いてつくられたダイオードやトランジスタ、またそれらの集積回路である半導体集積回路（IC）を指すことが多い。<br />
</p>
<p>
　その結果、「半導体自体を磁石にする」アプローチと「磁石の素子と半導体の素子を組み合わせてつくる」アプローチの両方をやることになったのです。どちらも「半導体の世界と磁性体の世界に橋をかける」意味では同じです。これまでいろいろな紆余曲折がありながら、今はそれに関わる二つの側面をやるようになりました。<br />
</p>
<p class="q">
―「半導体の世界と磁性体の世界に橋をかける」意味とは何ですか？<br />
</p>
<p>
　前者の「磁石と半導体の性質を併せ持つ、新しい物質をきちんとつくって理解しよう」というアプローチは、すぐには応用ができないかもしれないけれども、その先にある応用を目指した基礎的な研究という流れですね。先述の通り、推理小説を読むのと似たところがあります。それをきちんと理解することが将来役立つことにつながることを期待して、一つひとつ理解していくことが意義だと思います。<br />
<br />
　後者の「磁石の素子と半導体の素子を組み合わせ、新しい集積回路をつくろう」というアプローチは、今日明日の問題に解を与えようとする研究活動です。例えば今、集積回路を高性能かつ省エネルギーにする問題がありますが、現在の技術的アプローチだけでは、非常に大きな困難が生じています。そこに磁石の技術を入れることで、新しい風穴を開けようという意義があると思います。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_3">電子の電荷とスピンを同時に使う「スピントロニクス」</h2>
<p class="q">
―磁石と言えば冷蔵庫にくっついている磁石をイメージしますが、そもそもなぜ「磁石の技術」によってブレークスルーがもたらされるのですか？<br />
</p>
<p>
　冷蔵庫にくっついている磁石と同じ物質ではありませんが、我々は、磁石の仲間で非常に小さいものを使います。磁石というのは、いろいろなことができるのですよ。磁石の説明をするためには、まず電子について説明しなければいけません。<br />
<br />
　電子には「スピン」という性質があります。フィギアスケートでくるくる回るスピンなどからおわかりのように、スピンとは回転のことです。スピンは小さな磁石であり、電子自体が小さな磁石なのです。ところが我々の体の中にも電子がたくさん入っていますが、我々の体は磁石ではありませんね。なぜかと言えば、電子のスピンの向きが揃っていないからです。<br />
<br />
　一方、我々が磁石と呼ぶ物質は、電子のスピンがバラバラではなく揃っているものです。電子のスピンが揃っていると、我々が外から見ても、「磁石だな」とわかる形になります。このように、磁石を磁石たらしめている電子の性質をスピンと呼びます。<br />
<br />
　今日のエレクトロニクス（電子工学）は、電子の電荷（電気を伝える性質）とスピンで支えられています。例えばパソコンでは、情報が半導体の集積回路で処理されます。そこでは電子の電荷の流れを利用しています。<br />
<br />
　そして処理した情報は、ハードディスクに蓄えられます。そこでは磁石を利用して、すなわち電子のスピンを使って、情報を失わないように記録しています。パソコンでは、電子の電荷とスピンを上手に、しかし別々に使っているのです。<br />
<br />
　これに対して我々は、電荷とスピンを同時に使うことに取り組んでいます。この分野は「スピンエレクトロニクス」、または「スピントロニクス」（※５）と呼ばれています。<br />
</p>
<p style="font-size:x-small">
※５　【スピントロニクス】スピンとエレクトロニクスの造語。今日のエレクトロニクス機器のほとんどは、半導体を用いて、電子の「電荷」（電気を伝える性質）を利用することで情報を制御している。スピントロニクスでは、電子の電荷の自由度に加えて、さらに電子の「スピン」（磁石になる性質）の自由度も併せて利用することで、全く動作原理の異なる、新しい機能を持つ素材や素子を開発することが期待されている。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_4">電子のスピンを使って、エネルギーを使わずに情報を記録</h2>
<p class="q">
―電子の電気を伝える性質（電荷）だけでなく、電子の磁石になる性質（スピン）も同時に使えるようになると、例えば、どのような点が良いのでしょうか？<br />
</p>
<p>
　磁石には、Ｎ極とＳ極の方向がそう簡単には変わらない性質があります。小さな磁石のＮとＳの方向を一度決めてしまえば、放っておいても変わらないのなら、それをメモリとして使おう、というわけです。<br />
<br />
　ＮＳとなっているところは「1」、ＳＮとなっているところは「0」と思おう、とすることで情報を記録することができます。すると、情報記憶のためにエネルギーは必要ありませんね。これはハードディスクと同じです。<br />
<br />
　ところが現在の半導体、特に半導体の集積回路では、情報記憶のためにエネルギーを使わざるを得ません。そこにもし磁石の記憶素子を使うことができれば、電源を全部オフにしても記憶が残るため、記憶を読んだり書き換えたりする時だけ電気を使い、後は放っておけば良いとなるわけです。すると、設計・製造法などが随分、省エネルギーになります。<br />
<br />
　磁石はＮとＳの向きが変わらないので、かなり小さくすることができます。ただし、あまり磁石を小さくし過ぎると、室温くらいの温度ではＮとＳがゆらゆら揺れてしまいます。磁石が大きければ揺れませんが、磁石が小さければ揺れて、小さ過ぎるとくるくる回ってしまいます。そこまで行くとＮとＳの向きがわからなくなるので使えませんが、そこまで行かなければ、かなり小さくできます。<br />
<br />
　あとはどうやって「0」を「1」に書き換えたり「1」を「0」に書き換えるか、あるいはそれを「1」とわかったり「0」とわかったりするか。それが新しい磁石の応用の一つです。<br />
<br />
　それができるようになれば、非常に小さい磁石をたくさん並べることで非常に大容量なメモリができ、その一つひとつに「アクセス」して、内容を読み出したり書き込んだりすることができます。<br />
<br />
　今は、半導体より大容量のメモリができる可能性があるため、例えば「DRAM」（※６）の代わりにしようと、非常に大きな会社もこの技術に注目しています。しかし、それは単にメモリとして使おう、という話です。<br />
</p>
<p style="font-size:x-small">
※６　【DRAM（ディーラム）】コンピュータなどに使用される半導体メモリの一種。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_5">情報機器の頭脳にあたる「論理集積回路」に革新</h2>
<p class="q">
―メモリよりもさらにすごいものに応用できるのですか？<br />
</p>
<p>
　我々の一番の特徴は、単なるメモリとしてではなく、情報機器の頭脳にあたる「論理集積回路」、つまり演算する部分にも、そのような磁石のメモリを入れていこう、という点にあります。<br />
</p>
<p class="q">
―演算する部分のどこに、磁石のメモリを使うのですか？<br />
</p>
<p>
　論理集積回路も、やはり記録をする必要があります。例えば「1＋2＝3」の場合、「1」も「2」も結果が「3」であることも、覚えなければいけません。ですから、そのような論理集積回路の記録機能を、電気の必要ない形で実現できれば、論理集積回路そのものも省エネルギーになります。<br />
</p>
<p class="q">
―電気のいらないメモリと言えば、すでにフラッシュメモリ（半導体メモリの一種）があるのではないですか？<br />
</p>
<p>
　フラッシュメモリも素晴らしい技術ですが、特に書く時の時間が非常にかかってしまうのです。論理集積回路の場合、非常に高速のメモリが必要です。フラッシュメモリも人間に比べれば大変速く書けますが、非常に速く動いているプロセッサ相手ですと、ちょっと耐えられないくらいに遅いのです。<br />
<br />
　さらに論理集積回路の場合、何度でも「0」にしたり「1」にしたり書き換えることができなければいけません。しかし、フラッシュメモリは何度も書き換えができないのです。書き換え回数はせいぜい１万回程度。普通の用途なら、この程度で耐えられますからね。その代わり、うんと安く作れるようにしてあるのです。<br />
<br />
　それに対して我々の磁石の技術は、非常に高速にかつ何度でも書き換えることができます。さらに「覚えていなさい」という時は、電気を切っても情報を覚えてくれます。これを我々の専門用語では「不揮発」と言います。<br />
<br />
　つまり、電気を入れておかなければならない「揮発性のメモリ」ではなく、電気を切っても内容が書き込める「不揮発性のメモリ」として、高速かつ何度でも書き換えができる。そのようなメモリは今のところ、磁石のメモリしか無いのです。<br />
</p>
<p class="q">
―先述の「ハードディスク」も磁石の技術ということですが、技術的な違いは何ですか？<br />
</p>
<p>
　半導体集積回路は全部、電気でやらなければいけません。電気で書き込み電気で読み出すのです。ハードディスクも外から見ると、電気で書き込み電気で読み出すように見えますが、最終的にはＮＳかＳＮかの磁石の向きを、磁気センサーで読み取ります。<br />
<br />
　つまり同じ「磁石の技術」と言っても、ハードディスクは磁気センサーで読み込み磁界で書き込むのに対し、我々の半導体集積回路は電気で直接読み込み電気で直接書きこむ、という技術的には非常に大きな違いがあります。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_6">社会の基盤となるところに、変革を起こしたい</h2>
<p class="q">
―そもそもなぜ論理集積回路なのですか？磁石の技術と組み合わせることで、大野先生が思い描く世界とは何ですか？<br />
</p>
<p>
　これからますます社会全体を省エネルギーにしていかなければなりません。そのためには単に「蛍光灯をLEDなどの省エネルギーなものに替える」といった発想だけでなく、エネルギーを上手に使う必要があります。<br />
</p>
<p class="q">
―エネルギーを「上手に」使うとは？<br />
</p>
<p>
　「上手に」使うとは、イコール制御する、ということです。例えば「外気温がこの程度なら、中はこの温度で良いですね」とか「光がこの程度入れば、これくらいの暖房で良いでしょう」とか。冷暖房一つとっても、いろいろな制御の仕方がありますね。<br />
<br />
　その制御をする時に一番必要なのが、論理集積回路なのです。しかし今、論理集積回路が、ある限界に来ています。もうこれ以上、性能が上がらなくなってしまったのです。それは発熱が大き過ぎて、つまり消費電力が大き過ぎて、性能が上げられないのです。<br />
<br />
　つまり、半導体集積回路のパフォーマンスを上げていくためには、単位面積あたりのパフォーマンスをもう上げられなくなっているため、それを上げる手法を今、世界中で皆が探しているのです。<br />
<br />
　例えば皆さんが今お使いのコンピュータは、「マルチコア」という、いくつものプロセッサが１つの集積回路に入ったようなアーキテクチャ（基本設計、設計思想）を使っています。それを大変簡単に言いますと、１つではもう性能が上げられなくなっちゃったので、２つ、４つ、８つ使いましょう、という世界なのです。<br />
<br />
　それはそれで大事なことですが、１つずつで比べると、あまり性能が上がっていません。しかし、１つの部分の性能を上げることができれば、マルチコア全体の性能が上げられます。<br />
<br />
　そのために必要なことが、同じ性能をさらにエネルギー消費の少ない形で実現する集積回路であり、それが先ほどお話した、磁石の技術と組み合わせた集積回路なのです。<br />
<br />
　それが様々な機器に入ることで、従来の制御をさらに省エネルギーでできたり、あるいは、これまでは消費エネルギーが大き過ぎて入れなかった部分にも使える集積回路ができると考えています。それによって何かが特別便利になるというよりも、社会の基盤となるところに変革を起こしたいのです。<br />
<br />
　それを我々が最初にブレークスルーして提供することで、例えば半導体の大部分に我々の技術が使われ、より省エネルギーでハイパフォーマンスなものを手に入れることができる。そんなすごい技術開発をして、世界に先駆けて形にして見せようとしています。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_7">自分たちの技術開発で新たな地平を切り拓いていく</h2>
<p class="q">
―電子の電荷だけでなくスピンも併せて半導体に利用する技術開発は、現在の集積回路の限界にブレークスルーをもたらすことで、単に何かが改良されると言うよりも、社会の基盤そのものに変革を与えるようなインパクトがあるのですね。それは逆に言えば、具体的に何がどう変わるかは説明しづらいということでしょうか？<br />
</p>
<p>
　そうですね。身近で便利なところにも入って行くはずですが、身近でなくても重要なことはたくさんあるので、そのようなことはどうやったら伝えたら良いのかは、ずっと課題のままです。良い言い方はないのかもしれないですけどね。<br />
<br />
　例えば、Googleなどが使っている「データセンター」（※７）の消費電力は非常に大きいため、我々の集積回路がきちんと使われるようにできれば、例えば５年後に原子力発電所１個分くらいは省エネルギーが実現できるだろう、という試算があります。そのようなことに貢献できると以前お話したこともあるのですが、なかなか身近ではないので説明が難しいですね。<br />
</p>
<p style="font-size:x-small">
※７　【データセンター】各種のコンピュータ（メインフレーム、ミニコンピュータ、サーバ等）やデータ通信などの装置を設置・運用することに特化した施設の総称。（引用：<a href="http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC" target="_blank" >Wikipedia</a>）<br />
</p>
<p>
　また、半導体産業は３０兆円くらいのとても大きな産業です。けれども、自分が高校生時代を思い出してみても、３億円と３０兆円の違いなんてなかなか実感できないですから、そういう言い方でも駄目なんだろうな、と思いますしね。<br />
<br />
　半導体の重要さがわかった最近の例では、大手半導体メーカー「ルネサスエレクトロニクス」が被災し半導体が製造できなくなったために、世界各地で自動車が製造できなくなりました。それは自動車が制御するための半導体をたくさん使っているからです。<br />
<br />
　そのような意味でも、制御するための一番大事な頭脳である半導体を、どこか別の国に頼ったり、あるいは頼っても良いのですが、そのときでも自分たちの技術開発から新たな地平を切り拓いていくことは、非常に重要な意義があることだと考えています。広い意味で日本の富に貢献できればいいなと思います。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_8">世界的にユニークな立場でトップを走っている理由</h2>
<p class="q">
―他にもそのような研究をしているところはあるのですか？<br />
</p>
<p>
　世界中でいくつものチームがそのようなことにチャレンジしようとしていますが、我々は世界に先駆けてそのようにアプローチし、そのために必要な素子を開発するユニークな技術も有しており、現在は世界的にユニークな立場でトップを走っていると思います。<br />
<br />
　実際に我々が40ナノメートルの素子を開発し、それがきちんと動くことを世界に先駆けて見せたので、世界がそちらに動き出したという経緯もあります。今では40ナノメートルの素子を、さらに小さくできそうです。<br />
</p>
<p class="q">
―大野先生たちのグループが、世界的にユニークな立場でトップを走れている理由とは何ですか？<br />
</p>
<p>
　他の人達がそういうものを使ったメモリをつくろうとしている時、それはそれで良いですが、我々は大学ですから、そういうメモリができるなら、論理集積回路にもそれを入れることができるはずだ、より高性能かつ省エネルギーでつくれるはずだ、と考えました。<br />
<br />
　すると設計も必要ですし、材料科学も必要ですし、素子をつくる技術も必要になります。それは私一人でできることではありません。普通はそれぞれ個別の研究をしていますから、それを統合した形でどういうものかを提示できる機会、あるいはチームをつくることは、とても難しいのです。<br />
<br />
　しかしここでは幸いにして、半導体のエキスパートである遠藤哲郎先生、半導体の集積回路を設計するエキスパートである羽生貴弘先生、磁石のエキスパートである安藤康夫先生などが私たちのチームと一緒にやろうと言ってくれたので、新しい世界を探求できるのです。この３人の先生を始めとする様々な人たちと一緒に、新しい集積回路を世の中に見せていこう、とチャレンジしています。<br />
<br />
　さらに、東北大学には最先端のクリーンルームも整備されており、プロトタイプをつくることのできる環境が、この研究所の長年の努力によって維持されています。ですから「じゃあ、これを示して見せよう」という時、世界に先駆けて見せることができます。<br />
<br />
　つまり、全体のアイディアも新しいですし、それを実現するための個々の技術も世界トップクラス、それをやれるチームができて、しかもそれらを総合して形として見せられるファシリティー（施設や設備）もあります。ここまでトータルでできるところは、世界で非常に少ない、ということです。その結果として今、世界的に注目されつつある成果を挙げているのだと思います。
</p>
<br />
<h2 id="p1_9">世界の流れをつくろうとなると、どうしてもそこまでやらなければいけない</h2>
<p class="q">
―では現在、技術的に一番難しいところはどのようなところですか？<br />
</p>
<p>
　小さくすればするほど磁石が不安定になるので、ぐらぐらします。ですから、如何に小さくても磁石が安定な材料を開発する必要があります。かつ電気的にきちんと読み書きができること。その全部を満足しなければいけないことが、難しいですね。<br />
<br />
　あと、同じ磁石をたくさんつくる技術も大変です。例えば、40ナノメートルの磁石を80ナノメートルピッチ、つまり40ナノメートル離してもう一個、40ナノメートル離してもう一個、それを10の9乗（10億）個つくって初めて１ギガのメモリになりますからね。それを同じようにつくる技術は、ものすごく大変なんです。<br />
<br />
　いずれ大きな会社が本気で参入し始めると、そういうところはわりと開けていく問題かもしれないなとは思っています。ただ技術的には、いくつか解決しなければいけないものもあるので、そういうところはきちんと解決して、私たちの技術をパッケージとして完成させたいな、と考えています。<br />
</p>
<p class="q">
―個々の技術ではなくパッケージとして完成させたい理由は何ですか？<br />
</p>
<p>
　材料はきちんとしていなければいけないし、素子がきちんとできていなければいけません。それをどんな構造にするか、どんなパフォーマンスにするか、そのためにはどうすればいいか。それから、そのような素子と半導体の集積回路を組み合わせて、あるひとつの機能をつくるきちんとした回路にしていく技術も重要です。その回路を組んで全体としてある機能を実現する半導体チップをつくる、つまり集積回路をつくるというのは、また別の技術です。<br />
<br />
　最終的には、材料から含めてそれらをパッケージにすると同時に、世界にいる半導体集積回路を設計する人たちが、気軽に我々の技術で新しい集積回路を設計できるようなインターフェイスもつくれるような世界まで持っていけたらいいな、と思っています。<br />
</p>
<p class="q">
―最終的に誰かが実際に使うところまで含めて、基盤から全部パッケージでつくりたいというわけですね。<br />
</p>
<p>
　そうですね。ある部分・ある部分だけをつくっていても、だめなんです。世界の流れをつくろうとなると、どうしてもそこまでやらなければいけない。<br />
<br />
　ですから再来年くらいになれば、半導体を設計する人たちで「一緒に苦労してもいいよ」という人たちに来てもらう予定です。実際に我々がつくった設計のツール（ソフトウェア）を使って設計してもらうことで、性能を評価してもらおうと考えています。<br />
<br />
　それで「これはいいな」ということになると、だんだん世界の流れがそっちの方向にむかって、かつ我々の技術がその流れの中心にいる形にできるんじゃないかなと思って。そういうところを目指しています。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_10">皆に使われる技術でなければ、技術ではない</h2>
<p class="q">
―大野先生らの技術が世界の流れをつくり、かつ流れの中心にいることを目指す理由とは何ですか？<br />
</p>
<p>
　技術は、皆に使われなければ、技術ではないからです。やはり我々の仕事は税金でできているので、広い意味では人類の富ですが、もう少し狭い意味で言えば、日本の広い意味での富に貢献したい、ということです。<br />
<br />
　半導体の世界はもはやボーダレスですから、誰とどのように組んで何をやるかは、もう何でもありの世界なのです。ですから、日本が何も貢献することができなければ、別のところで中心ができて、そちらの方で進んでしまうでしょう。この意味で、技術開発の世界の中心にいることは、今後も大切なことなのです。<br />
<br />
　ある技術を完成させることだけを目的にするのなら、一過性のものでも良いかもしれません。しかし、それを元にいろいろなものを発展させていこうと思ったら、やはり世界と一緒にやらなければいけないし、その中でも中心的な役割を果たさなければ、結局技術は使われません。あるいは使われたとしても、他のところで中心になってしまいます。<br />
<br />
　それではやはり開発する意義も、現在我々が先頭に立っている意義もなくなってしまいます。ここまで来たのなら、世界の流れをつくり、その中心にいて、最終的には世界の技術開発が日本を中心にまわるような形にできたらな、と思います。<br />
<br />
　それは雇用にも関わってきますよね。そういう人たちが日本という場で必要とされる活動の場があれば、必ずしも日本人だけが雇用されるわけではないかもしれませんが、日本である頭脳集団が活動するわけですから。<br />
</p>
<p class="q">
―技術的な基盤だけでなく、社会全体のいろいろな基盤になるような中核の技術をつくりたい、という思いがあるのですね。<br />
</p>
<p>
　そこが今、我々が一番貢献できそうですし、しなければいけないと思っています。推理小説の続きを読む方は少し遅れていますが、今は良い時期に良い人達と一緒にチームで技術開発ができているので、それを何とかきちんとした形にしようと、力を入れてやっています。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_11">自分で土俵をつくれる人になって欲しい</h2>
<p class="q">
―最後に、今までのお話を踏まえて、中高生も含めた読者にメッセージをお願いします。<br />
</p>
<p>
　科学も社会も教育も、自分たちが生まれる前にもちろんあるのですけど、皆さんが一緒につくっていかないといけないものです。と言うより、つくっていくものなのです。<br />
<br />
　我々の国では、外からルールが与えられ、そのルールの中でどうやってやっていくかを考える教育を受けています。それはそれで良い面もありますし、ルールを破れという意味ではないのですが、一方で、自らルールをつくり新しい仕組みをつくることはあまり経験しませんね。しかしながら、これからはそれが大変重要になっていくと思います。<br />
<br />
　ですから私は学生の皆さんに「自分で土俵をつくれるような人になって欲しい」と言っています。人のつくった土俵で良い試合ができるだけではなく、自分で新しい土俵をつくりましょう。科学で言うと、新しい分野をつくることになりますが、それをぜひ意識して欲しいと思います。<br />
<br />
　これから社会でも新しい問題がどんどん出てきますし、新しい発展の仕方をしていきます。そこでは社会が勝手に発展するのではなく、自分たちがどんな枠組みで、どんな社会のしくみをつくっていくのかが、これからますます大事になっていくと思います。ぜひそれを意識して、自分で土俵をつくれる人になって欲しいと願っています<br />
</p>
<p style="text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120118.jpg" alt="" />
</p>
<p class="q">
―大野先生、本日は大変お忙しい中、ありがとうございました。
</p>
<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20120118-top.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120118-top.jpg" width="600" height="400" class="mt-image-none" style="" /></span>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">センター長</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">教授</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">電気通信研究所</category>
            
            <pubDate>Mon, 13 Feb 2012 16:44:23 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>東北大学教授（地学専攻）の塚本勝男さんインタビューシリーズ（第３回）</title>
            <description><![CDATA[<h1><img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110326-top.jpg" alt="東北大学教授（地学専攻）の塚本勝男さんインタビューシリーズ（第３回）" style="margin:0px 0px 5px 0px" /> 
<span style="padding: 5px 0px 0px; font-size: small; font-weight: 600;">取材・写真・文／大草芳江</span> 
</h1> 
<p class="date">2012年2月8日公開</p> 
<div id="subject"> 
<p id="t">結晶成長と宇宙実験</p> 
<p id="n">塚本 勝男　TSUKAMOTO Katsuo<br /> 
（東北大学大学院理学研究科・理学部 地学専攻 教授）</p> 
</div> 
 
 
<p style="font-size:x-small;"> 
1948年、大阪府出身。専門は結晶成長学。1975年、東北大学大学院理学研究科修士課程修了 （理学博士）。1979年、ナイメーヘン大学（オランダ）研究員、1981年、IBMチューリヒ研究所客員研究員、Phillips研究所(オランダ、アインドーヘン)客員研究員、1983年、東北大学大学院理学研究科地球物質科学科助手、助教授などを経て、2006年から現職。
</p> 
<p style="padding:10px;border:1px solid gray;font-size:small"> 
　<span style="font-weight: 600; font-size: small;">「科学って、そもそもなんだろう？」を探るべく、【科学】に関する様々な人々をインタビュー<br /> 
科学者の人となりをそのまま伝えることで、「科学とは、そもそも何か」をまるごとお伝えします
</span><br /> 
<br /> 
　46億年昔の太陽系惑星の起源と進化の謎を「結晶成長」の視点から理解しようとするのが、塚本勝男さん（東北大教授）である。そのために塚本さんらが新開発した原子・分子レベルで結晶成長のプロセスを直接"その場"観察できる実験装置は、そのユニークさが欧米で評判となり、国際宇宙ステーション（ISS）搭載用"その場"観察装置にもつながった。<br />
<br />
　「宇宙と地上の大きな違い、それは"重力"です」と語る塚本さんは、46億年昔の太陽系における物質形成を理解するためには、宇宙空間と同じ"無重力"環境での物質形成過程を理解する必要があると強調する。地球上の経験だけでなく、宇宙の経験を得るために、これまでも宇宙基地や航空機を使った無重力実験を行ってきた塚本研究室。2001年からロケット実験を行っており、2012年には、これまでのノウハウを活かし、ISS日本実験棟「きぼう」を使ったタンパク質結晶の無重力実験を予定している。<br />
<br />
　そもそもなぜ宇宙でタンパク質結晶なのか。第３回目のインタビューとなる今回は、その研究背景なども含めて、研究内容について聞いた。
<br /> 
<br /> 
＜目次＞<br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326.php#p1_1">宇宙実験の歴史</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326.php#p1_2">なぜわざわざ宇宙で結晶をつくのか？</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326.php#p1_3">企業がスポンサーになる理由</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326.php#p1_4">実用的研究だけでなく基礎研究も</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326.php#p1_5">宇宙でタンパク質結晶が研究される理由</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326.php#p1_6">メカニズム解明で物量短期戦に対抗</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326.php#p1_7">アメリカの宇宙実験が下火に</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-2.php#p2_1">結晶が「綺麗」「汚い」とは</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-2.php#p2_2">無機塩よりタンパク質の欠陥が厄介</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-2.php#p2_3">なぜタンパク質の「良い」結晶か</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-2.php#p2_4">タンパク質は結晶化しない？</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-2.php#p2_5">タンパク質結晶の成長パターンを見る</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-2.php#p2_6">タンパク質結晶の成長速度を測る</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-2.php#p2_7">過飽和度を上げると成長速度は速くなる？</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-2.php#p2_8">最適な成長条件を知って結晶成長をコントロール</a><br /> 
 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-3.php#p3_1">分子が一つか二つかで大違い</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-3.php#p3_2">不純物の影響を調べるために</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-3.php#p3_3">地上でも良い結晶はつくれる</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-3.php#p3_4">「宇宙では結晶成長速度遅い」常識覆す</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-3.php#p3_5">無重力下の結晶成長における不純物の効果</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-3.php#p3_6">2012年国際宇宙ステーション宇宙実験</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-3.php#p3_7">ヨーロッパの宇宙実験が失敗した理由</a><br /> 
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-3.php#p3_8">日本の強みとは</a><br /> 
 
</p> 
 
<br /> 
<div class="interview"> 
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/kagaku_interview.gif" alt=""> 
<p>東北大学教授の塚本勝男さんに聞く</p> 
</div> 
<br /> 
 
<br /> 
<h2 id="p1_1">宇宙実験の歴史</h2> 
<p class="q"> 
―そもそもなぜ宇宙でタンパク質結晶の実験をするのですか？<br /> 
</p> 
<p> 
　では、その前にまず、これまで世界中で行われてきた宇宙実験について、少し歴史的な話から始めますね。いろいろな宇宙実験の一つに無重力実験があります。その始まりは1960年代にアポロが月に行った頃まで遡ります。その帰り際に無重力空間を利用して科学実験をしよう、という「スペースラボ計画」がありました。<br />
<br />
　無重力下では、雪の結晶はどうなるだろう？クモの巣はどのように張られるのだろう？中高生のシンプルな疑問に基づく宇宙実験がアメリカによって行われたのです。宇宙船の余剰な空間をうまく利用して、いろいろな無重力実験が行われました。その多くはデモストレーション的で、科学実験と呼べるものではありませんでしたが、多くの一般市民や中高生を巻き込む話題提供になりました。また、無重力とは何か？に注目するきっかけ、そしていろいろなサイエンスを別の視点で見直すきっかけになったことは確かです。<br /> 
<br /> 
　宇宙実験ではほかに、例えば「宇宙エレベーター」の計画がありました。無重力を利用することで北極から南極まで高速に、安価に移動できるエレベーターのアイディアです。その原理は1960年代に提案されていましたが、現実には、例えばロープは長ければ長い程重くなるなど、技術的な問題でストップしていたのです。ところが、1990年代に飯島澄男さんが「カーボンナノチューブ」（※）を発見しましたね。カーボンナノチューブは細くて軽く非常に丈夫という性質を持ちます。この新しい材料の登場によって、今まで原理的に不可能と考えられていたアイディアが復活したわけですよ。最近もいくつかの大学で、宇宙エレベーターをつくろうという計画があります。
</p> 
<p style="font-size:x-small"> 
※カーボンナノチューブ...炭素原子が網目のように結びついて筒状になったもので直径はナノメートル単位。<br /> 
</p> 
<p> 
　このほかにも宇宙に関わるいろいろな計画が考えられています。例えば地上なら人間は飛行機程度しかつくることができませんが、重力の少ない月や火星なら、昆虫の飛行原理から学び、簡便な空飛ぶものをつくれるのではないか、という研究が進んでいます。その際には、例えば宇宙では重力が少ないが、空気が少ないために揚力も少ないので、そのバランスをどう取るかといった問題など、地上の技術をそのまま宇宙に適用するだけではものにならないことはわかっています。それをどうすれば良いのか、考える過程がおもしろいわけですよね。<br /> 
</p> 
<br /> 
 
<h2 id="p1_2">なぜわざわざ宇宙で結晶をつくのか？</h2> 
<p class="q"> 
―それでは「宇宙実験」と結晶の関係は？<br /> 
</p>
<p> 
　ここで結晶の話に戻りますが、「地上では良い結晶ができない」という考え方があります。例えば、シリコンで半導体をつくる場合、地上では容器壺に入れて結晶をつくるのですが、内壁に接触している部分から欠陥が生じたりするのです。そのため「ならば欠陥を無くすために、宇宙で浮かせてつくれば良いのでは」といった単純な発想があるわけです。<br />
<br />
　あるいは、例えば「ゼオライト」という結晶があります。ゼオライトは、色や臭い、汚れなどの吸着に使われている結晶です。なぜ吸着するかと言うと、結晶構造の中にたくさんある小さな穴に、それらが入るからです。ゼオライトは天然の結晶ですが、実際は人工的につくられています。身近な例で言えば、洗剤は界面活性剤にゼオライトを溶かしたようなものですよ。界面活性剤で汚れを包み込み、それをゼオライトに吸着させて水で洗い流す、ということを洗剤はやっているわけです。<br /> 
<br /> 
　すると、ゼオライトを利用して、例えば有毒なガスやとんでもない何かを吸着するものや、あるいは酸素や水素を吸着して燃料になるものをつくれるかもしれない。そのような期待から今、ゼオライトは盛んに研究されているのです。そのひとつに、1980年代から「ゼオライトを宇宙でつくろう」という計画がアメリカでスタートしました。「なぜ、わざわざ宇宙でつくる必要があるのか？地上でもつくれるじゃないか」という考えもあります。しかし、後述するように宇宙と地球では（結晶が）できる環境が大きく違い地上でできない機能の結晶ができることも期待されたわけです。しかし、私はそうは思っていませんでしたが。<br />
<br />
　例えば、皆さんは「水は0℃で凍るものだ」と思っていますよね。けれども、無重力で浮かせてつくると、-50℃くらいまで下げなければ結晶にはならないのですよ。それは氷だけでなく、どんな物質でもそうです。例えば、太陽系で最初にできた物質の「オリビン」という結晶は、地上なら1890℃で溶けます。そのため、メルト（融液）を冷やしていくと1890℃付近で結晶ができると思われていたわけです。<br />
<br />
　しかしながら、宇宙ではそうではないことが、我々の実験を通してわかってきました。100℃下げても200℃下げても500℃下げても結晶はできません。実は、1000℃くらいまで下げなければ結晶はできないことがわかってきたのです。つまり、地上では約1900℃でオリビンの結晶はできていたのに、宇宙では1000℃くらい温度を下げないとできない。できる温度が全く違うから、今度は物性や機能が全く違うものができる可能性があるわけですね。
</p> 
<br /> 
<h2 id="p1_3">企業がスポンサーになる理由</h2> 
<p class="q"> 
―宇宙実験には莫大なコストがかかりそうですが、それでも宇宙で結晶をつくるメリットは何ですか？<br /> 
</p>
<p> 
　タンパク質やゼオライトの結晶も宇宙環境でつくれば、おそらく地上ではできない機能ができるのではないかと期待されているわけです。そのため、アメリカでは企業が莫大なお金をつぎ込んで研究を応援してきました。例えば「３Ｍ」など巨大な化学メーカーがスポンサーになったりしていました。<br />
<br />
　もう一つの大きなスポンサーは製薬会社です。当時も今もそうですが、薬はとても高付加価値な商品です。例えばアスピリン（解熱鎮痛薬）程度の薬なら、今まで一個１０円だったものが一万円になっても誰も買わないよね。けれども、エイズなどの病気が薬で治るとなれば、百万円でも一千万円でも買う人はいるわけです。ですから地上ではできない新薬が、宇宙空間、特に無重力空間を使うことでつくれるのではないかと大変期待され、アメリカの製薬会社などは盛んに研究を始めました。<br />
<br />
　その対象の一つが、タンパク質の結晶です。タンパク質には、薬以外にもいろいろな使い道があるのですよ。太る原因となるパンやご飯と味は同じでも、カロリーがないような食品をつくることができれば健康に役立ちますね。タンパク質の結晶は、マーケットとして非常に広いわけです。ですから、アメリカの製薬会社や食品会社などは、タンパク質の研究に膨大なお金を出しているのですよ。つまり、アメリカの宇宙開発は、このような企業が支えてきたわけですね。ただ、最近は宇宙を観光や宣伝に活用しようとする企業が増えたりして様子が違ってきていますが。これも宇宙利用の多様性がはかられて大変良いことだと思います。
</p> 
<br /> 
<h2 id="p1_4">実用的研究だけでなく基礎研究も</h2> 
<p class="q"> 
―だから、タンパク質結晶の宇宙実験が行われているのですね。<br /> 
</p>
<p> 
　ここまではわりと実用的な話をしましたが、宇宙実験には、実用的な分野と基礎研究の分野の二つがあります。例えば半導体製造に欠かせないシリコン（ケイ素）も、実用的な研究だけでなく、地上の研究を支える基礎研究を宇宙でやろうという研究も進みつつあります。<br />
<br />
　その一つに、例えば「熱伝導度（伝導による熱の伝わり易さを示す物理量）」があります。普通の個体ならば、熱伝導度の値は理科年表などに書いてありますよね。一方、熱は固体だけでなく液体にも伝わります。ところが、シリコンを溶かして、溶液の熱伝導度はどれくらいか？とデータを調べてみると、300％くらいの誤差があるのです。これについては日本の研究者が精力的に研究をしてきました。<br />
<br />
　なぜ誤差が多いかと言えば、（固体には対流がありませんが）液体には対流があるためです。そのため、熱伝導度を測定する時には、対流を抑えなければいけません。けれども、対流を抑えるような実験は、地上ではなかなかできませんでした。そのため地上で行われた多くの研究はなかなか正しい結果が出なかったのです。<br />
<br />
　そこで、宇宙空間の対流のない世界で熱伝導度を測ろう、という実験が行われました。つまり、地上では対流があるために複雑になっています。けれども、対流をなくして、パラメーターを一つ減らして実験すればもう少し簡単になるので、本当のメカニズムがよくわかるようになるのではないか、ということです。<br />
<br />
　半導体製造に欠かせないシリコンですが、良いシリコンをつくろうと思えば、熱伝導度のデータが必要になりますね。それに、これからお話する結晶成長のいろいろなパラメーターにしても、対流を抑えた時のデータがなければ、地上でどうなるかも予想できません。このように宇宙には、物性を測定するような分野もあるのですよ。<br />
<br />
　宇宙実験には、（打ち上げ費用だけで）例えば、装置１gあたり１万円もの莫大なコストがかかるわけです。それ以上の商品価値があるものをつくらなければ、地上に持って帰っても割に合わないわけですが、そのコストに見合うものは薬くらいでしょう。それ以外の分野では、地上で測れないものを宇宙で測って研究する基礎的な分野が、主流ということですね。
</p> 
<br /> 
<h2 id="p1_5">宇宙でタンパク質結晶が研究される理由</h2> 
<p> 
　宇宙実験には、実用的な分野と基礎研究の分野の二つがあると先ほどお話しましたが、そのちょうど中間くらいに位置するのが、今回のお話のテーマでもある、タンパク質の結晶成長の研究なのです。</p>
<p class="q"> 
―先ほどタンパク質結晶の実用的な研究について少しお話いただきましたが、基礎研究の方はどのようなものですか？<br /> 
</p>
<p>
　食塩やシリコンなどの無機塩は簡単な構造をしていますが、タンパク質は、一つの分子あたり数千～数十万個の原子が集まった複雑な構造をしています。我々が結晶化できるのは、数百万個あるタンパク質の１％程度です。その構造を解こうにも、例えばこの炭素原子と酸素原子の間の距離が正確にわからなければ、分子構造を描くことはできません。その構造を解くときに、結晶の完全生が良い場合はX線解析で精度の良いデータが出てくるのですが、結晶の完全性が悪い場合は良い精度が出ないのです。研究者はだれでも高分解能を求めますから、良い結晶が欲しいわけです。そんな中、宇宙でつくった結晶の方が、統計的に20％くらいの割合で、地上でつくった結晶よりも完全性が高いことがわかってきました（※）。<br />
</p>
<p style="font-size:x-small">
(※)最近では地上で宇宙実験の成果をもとに工夫をして作った結晶のほうが良いという報告もされている。
</p>
<p>
　また、実用的な面で言えば、先ほどもタンパクの結晶はマーケットとして広いとお話しましたが、今はパテント（特許）の時代。構造を決めればパテントになるし、構造が決まらなければ、たとえ良いものをつくってもパテントに申請しにくいのです。すると、できる限り良い結晶をつくって、構造を決めて、パテントに登録することが、会社の生死を分ける話になるわけですね。特に、世界的な製薬会社や食品、化学メーカーなどが、もの凄い勢いでそれらをパテントにしていきました。その一つとして天然のものを生成する方法もありますが、人工的につくることも大切になります。そのような背景がタンパク質の結晶成長の研究につながってくるのです。
</p> 
<br /> 
<h2 id="p1_6">メカニズム解明で物量短期戦に対抗</h2> 
<p class="q"> 
―今までのお話と塚本研究室の関係は？<br /> 
</p>
<p> 
　今、溶液からの結晶成長の研究は、宇宙を使って盛んに行われていますし、我々もしています。それは、なぜ宇宙で綺麗な結晶をつくれるのか、そのメカニズムを知ることができれば、地上でも再現することができると考えているためです。<br />
<br />
　今までアメリカではNASAが、政府や民間企業からの莫大なお金を使って、宇宙で結晶成長の研究を盛んに進めてきました。その金額は、日本では考えられないくらいの規模ですよ。例えば、アメリカのある研究室に行った時、スペースシャトルから戻ってきた結晶の山がテーブル一杯に積んでありました。それだけアメリカでは、物量短期戦で大量につくられた結晶を分析にまわすわけですが、その解析が間に合わないために放置されているほどなのです。一方、日本では当時も今もそうですが、せいぜい数個の結晶を宇宙でつくる程度の規模なのですよ。これではアメリカ式にやっても到底追いつかないよね。<br />
<br />
　ちょうどその頃、宇宙で実験をしようと、僕らが参入しました。僕らが考えたことは、物量作戦で実用に託す研究もあるけれども、結晶成長のメカニズムをきちんと一つひとつ知るような基礎研究が宇宙利用には適しているだろう、ということですよ。日本ではその考えが通ってきて、物質科学の分野でもきちんとメカニズムを理解しようという方向になってきたわけですね。そのような我々の考え方に同調して、アメリカでもたくさんの優秀な研究者たちがメカニズムの研究を始めたわけです。<br />
<br />
　それに、アメリカ式は宇宙でつくった結晶を地上に持ち帰って調べる方法でしたから、そこにはいろいろな議論がありました。例えば、宇宙で結晶をつくって地上に持ち帰るだけでは、できた結晶が宇宙でどのような状態であったかはわからないですよね。人によっては、良い結晶ができなかった言い訳として、「宇宙では良い結晶ができたけれども、地上に持って帰る間に欠陥が入ったのだ」と主張する人もいたわけです。だから僕らは、宇宙でつくるのなら宇宙で結晶成長の出来方を調べた方が良いと考えました。アメリカでも僕らと似たような考えた人がいて、ただ、Ｘ線で構造を調べようという意図のアイディアもあったのです。けれども、その計画はすべて駄目になってしまいました。<br />
</p> 
<br /> 
<h2 id="p1_7">アメリカの宇宙実験が下火に</h2> 
<p class="q"> 
―なぜ駄目になってしまったのですか？<br /> 
</p>
<p> 
　僕の場合は、溶液から成長する際の対流の影響を考えてい時に、地上で実験をする限り、重力による対流はさけられないと思い、無重力実験を考えたんです。そして、どうやったら無重力実験ができるかを考えて「キララ計画」をたてたかは、<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20101105.php">第１回インタビュー</a>で詳しく述べました。そのキララ計画で使う実験装置はフライト前のプロトタイプの実験装置まではできていたのですが、実験が中止になったのは、チャレンジャー号爆発事故（※）があったからです。
</p> 
<p style="font-size:x-small"> 
（※）チャレンジャー号爆発事故：1986年、アメリカの宇宙船スペースシャトル「チャレンジャー号」が射ち上げから73秒後に分解し、7名の乗組員が犠牲になった事故。<br /> 
</p> 
<p> 
　このような私的な研究とは別に公的な無重力実験も、不景気のためアメリカ政府から補助が得られなくなり、宇宙実験そのものが下火になってしまいました。例えば、NASAで宇宙実験をしようとすると、（5cm位の厚さのフォルダを見せながら）これだけ分厚い計画書を書かないといけないのです。宇宙実験でどのようなことが期待できるか、約3日間にわたってたっぷりプレゼンテーションしながら審査されるのです。僕もアメリカで審査したことがあります。<br />
<br />
　このように、宇宙で結晶をつくるだけでなく、結晶成長のメカニズムをきちんと知らなければ、果てしなくお金がかかることになるということがわかってきたので、基礎研究の方がまず必要という考えになってきたのです。アメリカの研究でも、僕らが提案している「その場」観察を取り入れる研究プランが決まったのです。けれども、先ほどお話した通り、結局それは一部しかできませんでした。<br />
</p> 
 
<br /> 
<p id="sa_next"> 
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20071226-n.gif" alt="次へ"> 
<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110326-2.php">結晶が「綺麗」「汚い」とは</a> 
</p> 
<br /><br /> 
 
 
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</div> 

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20110326-top.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110326-top.jpg" width="600" height="400" class="mt-image-none" style="" /></span>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学大学院 理学研究科 地学専攻 塚本研究室</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">地学専攻</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">教授</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">理学研究科</category>
            
            <pubDate>Wed, 08 Feb 2012 08:36:44 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>学生がビジネスプラン提案　第７回キャンパスベンチャーグランプリ東北</title>
            <description><![CDATA[<h1>学生がビジネスプラン提案　第７回キャンパスベンチャーグランプリ東北</h1>
<p class="date">2012年2月6日公開</p>

<div class="rightPicture" style="margin:20px 0px 0px 20px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_01.jpg" alt="" />
<p>第７回ＣＶＧ東北表彰式のようす＝３日、ホテルメトロポリタン仙台（仙台市青葉区）</p>
</div>
<p>
　学生による新事業提案コンテスト「第７回キャンパスベンチャーグランプリ（ＣＶＧ）東北」の表彰式が３日、ホテルメトロポリタン仙台（仙台市青葉区）で開かれ、各賞あわせて９件が表彰された。高橋宏明実行委員長（東北経済連合会会長）は「チャレンジ精神を発揮し、時代の開拓者として活躍して欲しい」と挨拶した。<br />
<br />
　ＣＶＧ東北は、起業家精神に富んだ人材を育てようと、東北地域の経済人などでつくる実行委員会が２００５年から実施。今年は５県１０校から４９件の応募があった。近年のスマートフォンやタブレットＰＣの普及と東日本大震災を反映した提案が多くあった。<br />
</p>
<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_02.jpg" alt="" />
<p>最優秀賞受賞グループによるプレゼンテーションのようす</p>
</div>
<p>
　審査の結果、最優秀賞には東北大学の加納学さんらによる「デジタルサイネージと顔認識機能を利用した新しい広告手法」が選ばれた。化粧室など公共の場にある鏡を広告媒体にする提案で、人それぞれに合った広告を提案する斬新なアイディアが高く評価された。加納さんらは、３月８日に開催される全国大会に東北地区代表として出場する。<br />
<br />
　このほか、東北経済産業局長賞などの特別賞２件、奨励賞３件、努力賞２件が入賞した。入賞者には表彰式で、賞状と盾、賞金が授与された。入賞者は次のとおり（Ｇはグループ受賞で氏名は代表者、敬称略）。<br />
<br />
▽最優秀賞＝デジタルサイネージと顔認識機能を利用した新しい広告手法（東北大学・加納学Ｇ）▽特別賞・東北経済産業局長賞＝ペットの笑顔と命を見守るアプリBirth smile（宮城大学・西原政比彦Ｇ）▽同・日刊工業新聞社賞＝位置情報スマートフォンＳＮＳ「ＬＯＣＡ」の開発（東北大学大学院・平野裕作）▽奨励賞＝日本のUser Experienceに革命を起こす「Advoice」（国際教養大学・高下凌Ｇ）▽同＝フェアトレード製品市場の開拓に向けたネットワーク作り（弘前大学・岡本元聖）▽同＝ＵＶ－Ａ照射環境制御を用いた植物の栽培と光照射乾燥方法の複合化（八戸工業大学・長内崇拡Ｇ）▽努力賞＝Find Your Treasure!（国際教養大学・長田紘一郎Ｇ）▽同＝かもしれない倉庫（会津大学短期大学部・渡辺史Ｇ）<br />
</p>

<p style="font-size: x-small; text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_03.jpg" />
入賞者と関係者による集合写真
</p>
<br />

<h2>最優秀賞受賞者インタビュー</h2>
<h3>◆ビジネスプランをつくるプロセスで成長<br />　／最優秀賞受賞Ｇ代表の加納学さん（東北大学教育学部３年生）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_kanou-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
<p>最優秀賞受賞Ｇ代表の加納学さん（東北大学教育学部３年生）</p>
</div>

<p class="q">
―喜びの声を一言。<br />
</p>
<p>
　学年も学部も異なるメンバーと一緒に、様々な切り口を重ねながら、プランをつくるプロセスで多くのことを学んだ。受賞には驚いているが、その結果として、賞をいただけたことが嬉しい。</p>
<p class="q">
―本プランを提案したのはなぜ？<br />
</p>
<p>
　メンバー各々のアイディアの種を掛け合わせることで、新事業提案プランができた。アイディア出しの段階で、自分を出しつつ相手から吸収していくプロセスが楽しかった。<br />
</p>
<p class="q">
―これからの意気込みを一言。<br />
</p>
<p>
　今回提案したプランは、これから大企業も力を注ごうという分野。現段階では起業に至らないレベルだと思うので、いろいろな方のお力添えや自分達のブラッシュアップの過程で、他には負けない何かを築きたい。その先に起業や成功があれば嬉しい。<br />
</p>
<p class="q">
―中高生も含めた後輩へメッセージを。<br />
</p>
<p>
　いろいろな選択肢を考え、目先のものだけでなく、もっと広い視野で、自分の興味があることを増やしたり深めていけたら、より良い人生が送れると思う。<br />
</p>
<p class="q">
―ありがとうございました。<br />
</p>

<br />
<h2>ＣＶＧ東北関係者インタビュー</h2>
<p class="q">
―中高生も含めた若い世代に、あなたが期待することは何ですか？<br />
</p>
<h3>◆スケールの大きな構想でチャレンジして<br />
　／実行委員長の高橋宏明さん（東北経済連合会会長）</h3>

<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_takahashi-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
</div>

<p>
　（今回のＣＶＧ東北で）斬新なプランが多数あり将来がとても楽しみだ。今の世の中、なかなかせせこましいから、人間どうしても小さくなってしまう。若い人には、大人のせせこましい世から離れて、スケールの大きな構想を持ってチャレンジしてもらいたい。<br class="c" />
</p>

<h3>◆地元を大切にしつつ、外に飛び出し自分を磨いて<br />
　／審査委員長の原田晃さん（産業技術総合研究所東北センター所長）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_harada-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
</div>

<p>
　今、日本の社会はどんどん縮小化している時期だが、若い人もそれにつられてはいけない。若い人達は自分の地元を大切にしつつ、外に飛び出し、自分を磨いて大きくなることが大切。その両方を満足するよう、元気に頑張って欲しい。皆で元気になりましょう。<br class="c" />
</p>
<h3>◆チャレンジ・夢・希望は若者の特権<br />
　／日刊工業新聞社東京支社長の石上明男さん</h3>

<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_ishigami-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
</div>
<p>
　チャレンジ・夢・希望は若者の特権。やる気さえあれば何でもできる時間が若者にはある。ヒト・モノ・カネは人によって差があるが、時間は皆平等に２４時間ある。それを如何に有効に大事に使うかだ。今日からでも挑戦していこう。<br class="c" />
</p>

<h3>◆斬新かつ柔軟な発想で未来を切り開いて<br />
　／東北経済産業局長の豊國浩治さん</h3>

<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_toyokuni-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
</div>
<p>
　若い皆さんには、斬新かつ柔軟な発想で未来を切り開いて欲しい。Facebook上場の話もあったが、日本でも最年少で上場する社長さんやスポーツで大金を稼いでいるのは２０代。そういう人達に負けない気持ちで頑張ってもらいたい。<br  class="c" />
</p>

<h3>◆科学を楽しんでもらうことが大切<br />
　／実行委員の山城巌さん（みやぎ工業会副会長）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_yamashiro-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
</div>
<p>
　若い世代に求めるだけでなく、我々も若い世代に科学を楽しんでもらうことが大切だ。今年も学都「仙台・宮城」サイエンス・デイに企業として出展し、その関係で中学校に出前授業をして皆さんに大変喜んでいただけた。今後もそのような活動を続けたい。<br class="c" />
</p>
<h3>◆自分が本当にやりたいことを見つけて<br />
　／実行委員の工藤治夫さん（宮城産業人クラブ会長）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_kudou-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
</div>
<p>
　自分は本当に何が好きなのかを見つけなさい。それを徹底的に自分のものにし、自分で仕事をつくれば、会社を興し、多くの人が飯を食べていけるようになる。その一つの心が決まれば、千里の道を歩んでいけば、苦労はあっても、成功につながっていく。<br class="c" />
</p>

<h3>◆コミュニケーションがとれる人材に<br />
　／佐伯昭雄さん（宮城産業人クラブ前会長）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_saeki-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
<p>（写真左）</p>
</div>
<p>
　パソコンにむかって一人黙々とやるのでなく、わいわい酒を飲みながらきちんとコミュニケーションをとれる人材にならなければだめ。そうでなければ良いアイディアは浮かばない。酒を飲む目的はコミュニケーションだが、今の世の中、目的と手段を間違えている場合が多いことを、よく考えてもらいたい。<br class="c" />
</p>
<h3>◆チャレンジあるのみ<br />
　／佐藤徹雄さん（宮城産業人クラブ副会長）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_satou-san.jpg" alt="" style="width:100px" />
</div>

<p>
　あなた達に次世代をつくっていってもらいたい。そのためには挑戦して、安住の考えだけでなく、リスクを伴ってでも、チャレンジしていってもらいたい。<br class="c" />
</p>

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20120203_01.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120203_01.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
-->]]></description>
            <link>http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120206.php</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">日刊工業新聞社</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">社会って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">ビジネスプラン</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">学生</category>
            
            <pubDate>Mon, 06 Feb 2012 14:04:53 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>伊達宗行さん（物理学者）に聞く：科学って、そもそも何だろう？</title>
            <description><![CDATA[<h1><img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120119-top.jpg" alt="伊達宗行さん（財団法人新世代研究所理事長、大阪大学名誉教授）に聞く：科学って、そもそも何だろう？" style="margin:0px 0px 5px 0px" />
<span style="padding: 5px 0px 0px; font-size: small; font-weight: 600;">取材・写真・文／大草芳江</span>
</h1>
<p class="date">2012年1月21日公開</p>
<div id="subject">
<p id="t">「科学」は人間の本性であり、<br />
人間を大事にすることと同じ。
</p>
<p id="n">伊達　宗行　　Muneyuki Date<br />
（財団法人新世代研究所理事長、大阪大学名誉教授）
</p>
</div>

<p style="font-size:x-small;">
1929年仙台生まれ。理学博士。専門は物性物理学、特に磁性、極低温、強磁場研究で国際的に著名。1952年東北大学理学部卒業。1955年東北大学理学研究科物理専攻中退。大阪大学理学部教授を29年、同学部長、日本原子力研究所の初代先端基礎研究センター長、日本物理学会会長、日本学術会議会員、同第４部長などを歴任。現在、財団法人新世代研究所理事長、大阪大学名誉教授。電子スピン共鳴の研究で松永賞（1971）、超強磁場の開発で仁科記念賞（1980）、そして日本金属学会論文賞（1985）、藤原賞（1991）、紫綬褒章（1991）、勲二等瑞宝章（2000）を受賞。主な著書に、『新しい物性物理』（講談社）、『極限科学　強磁場の世界』（丸善）、『極限の科学』（ブルーバックス）、『「理科」で歴史を読みなおす』(ちくま新書）等がある。
</p>
<p style="padding:10px;border:1px solid gray;font-size:small">
<span style="font-weight: 600; font-size: small;">一般的に「科学」と言うと、「客観的で完成された体系」というイメージが先行しがちである。　<br />
しかしながら、それは科学の一部で、全体ではない。科学に関する様々な立場の「人」が<br />
それぞれリアルに感じる科学を聞くことで、そもそも科学とは何かを探るインタビュー特集。<br />
</span><br />
<br />
物性物理学の専門家で、特に磁性・極低温・強磁場の研究で国際的に著名な<br />
物理学者の伊達宗行さんは、「『科学』と『科学技術』は非常に違う」と強調する。<br />
<br />
「『科学』とは自然そのものを探究する学問であり、<br />
　科学が見出した成果を如何に人間社会に持ち込むかが『科学技術』である」<br />
<br />
伊達さんがそう強調する根本には、科学のあり方を考えること、それはつまり、<br />
人間の本性（ほんせい）を大事にすることと同じである、という思いがあった。<br />
<br />
そんな伊達さんがリアルに感じる科学とはそもそも何かを探った。<br />
<br />
＜目次＞<br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_1">「科学」と「科学技術」は非常に違う</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_2">人間の本性に反している</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_3">科学を総合的に理解する人が少なくなっている</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_4">大学の矮小化と科学者のサラリーマン化</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_5">アンチ・サラリーマンポリシー</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_6">時代を離れた科学者はいない</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_7">科学者も芸術家もつくるものではなく自然に出てくるもの</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_8">昔は教授になれる人数だけを教育した</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_9">天才を見出す能力に欠けた、サラリーマン化した評価方法</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_10">物理学は斜陽産業で、お呼びではない</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_11">物理学は「何がわからないか」を探す学問</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_12">人間を大事にすることと同じ</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php#p1_13">伊達先生が最近執筆した本の紹介</a><br />
</p>


<br /> 
<div class="interview"> 
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/kagaku_interview.gif" alt=""> 
<p>物理学者の伊達宗行さん（（財）新世代研究所理事長・大阪大学名誉教授）に聞く</p> 
</div> 
<br /> 


<h2 id="p1_1">「科学」と「科学技術」は非常に違う</h2>
<p class="q">
―伊達先生がリアルに感じる科学とは、そもそも何ですか？<br />
</p>
<p>
　殊に東日本大震災後、ある意味では、科学のあり方が問われています。非常に重要な問題だと思うので、今日はそこから始めましょう。<br />
<br />
　そもそも「科学」と「科学技術」は違います。それははっきりさせなければいけません。「科学」とは自然そのものの探究です。一方、科学が見出した成果を如何に人間社会に持ち込むかが「科学技術」です。したがって、科学と科学技術は非常に違います。<br />
<br />
　科学は、人間を容赦しません。例えば、あと一億年もすれば地球は人間が生きるようにしてはくれないでしょう。やがて地球は太陽に飲み込まれます。そして太陽系すべての星が死の世界への導かれます。そんなところに人間の入り込む余地などないわけです。<br />
<br />
　しかし、そのような自然を探求する学問、それが科学なのです。科学が見出した成果を人間社会に如何に使うかが、科学技術です。そして時代はどんどん変わり、科学のウエイトが高まり、科学技術の恩恵も非常に大きくなりました。<br />
<br />
　そして今回の震災で、こんな議論があったことを、僕は非常に心配しているのです。東電の原発事故を、「やっぱり科学が悪い」と言う人がいる。これは非常に問題だと思います。それは科学技術のやり方が問題なのであって、科学には良いも悪いもないんです。<br />
<br />
　繰り返しますが、科学とは人間の思惑とは無関係に存在する自然を調べるもので、人間にあくせくしていない。それが科学の魅力でもあるし、また自然の実態ですよ。<br />
<br />
　2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治さん（理化学研究所理事長）も仰っていました。酷い災害が起こる。それを科学技術のせいにするのも良くないが、さらに良くないのは、科学のせいにすることだ。それは絶対にいけません、科学と科学技術はわけなさいと。まさに仰る通りだと思います。<br />
<br />
　そういうことで今、科学のあり方を非常に心配しているのです。震災後、いろいろな意味で社会は歪んでいる。非常に由々しき事態です。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_2">人間の本性に反している</h2>
<p class="q">
―どのような点に歪みを感じますか？<br />
</p>
<p>
　私は科学を若い頃からやってきて、現在もその延長線上にいますが、関連する科学技術には関心がありますし、それなりのことも考えています。<br />
<br />
　何と言っても、真理を探求する科学という学問、それは理学・工学に関わらず、我々人間にとって最も大事なものの一つです。そして科学技術は、科学が切り拓いた新しい成果を受けて、「ではどこをなおそうか」と技術をさらに改良して進めていく。それが人間の歩んできた道ですよ。<br />
<br />
　それは原子力も同じです。原子力は人間が発見した「第２の火」と言われています（「第３の火」という人もいます）。<br />
<br />
　５０万年前、ネアンデルタール人か誰かが、火を使うことを覚えました。火を使うことが、人間と他の生物を区別する非常に重要な境目です。しかし、火が人間のものとなり誰でも使えるようになるまでに、５０万年もかかっているわけです。<br />
<br />
　少なくとも火が人間社会に入ってから１、２万年、火は危ないものだったでしょう。今の原子力のようにね。しかし５０万年後には、大火事が起きようが火山が爆発しようが、「火を使うのはやめよう」なんてことは絶対に言わなくなったわけです。<br />
<br />
　ちょっと数字で見てみましょう。原子レベルで言えば、火（化学反応）はeV（電子ボルト）程度、これは温度換算で約１万度です。一方、人間は火無しでは温度は自然に任せきり、自分では百分の１度もつくれません。つまり人間は火の使用で約百万倍（10の６乗倍）の熱エネルギーを手に入れたのです。<br />
<br />
　それから５０万年が経ち、人間は「第２の火」を発見しました。それはMeV（メガ電子ボルト）、奇しくもさらに６桁エネルギーが高いのです。そんな桁違いのものを、わずか５０、１００年で人間がマスターできるなんて到底思えません。ここから人知を尽くさなければいけないのです。ですから、それを「捨ててしまおう」なんて、とんでもない話です。人間の本性に反しています。<br />
<br />
　人間の本性とは、如何に困難なものであっても、あらゆる努力を払って改良に改良を重ね、科学技術の粋を駆使し、極めて危険に見えるものでも人間が使えるものにしてきた点にあります。原子力、宇宙旅行などが、このカテゴリーに入るでしょう。それが人間が他の動物に対して誇れるべき人間の能力なのです。だからこそ地球の覇者になっています。<br />
<br />
　そのようなことを、きちんと認識しなければいけません。それはやはり、科学をどう発展させるかが第一であり、そしてそれを踏まえて科学技術をどう発展させるか（失敗を乗り越えて）です。ものごとの順序はそうですよ。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_3">科学を総合的に理解する人が少なくなっている</h2>
<p class="q">
―問題の本質はどこにありますか？<br />
</p>
<p>
　結局、今の科学界で一番問題なのは、科学者が専門家になり過ぎたことです。学問が進むほど、どうしても専門家でなければ仕事はできないため、やむを得ないことではありますが、科学を総合的に理解する人が少なくなっていることを心配しています。<br />
<br />
　産業革命まで、科学と芸術は一体のものであったと言います。それは「アルス」と呼ばれており、それ自体が創造の中核でした。それまでは、サイエンスも無ければアートも無く、広い視野でいつも全体を眺めていたのです。<br />
<br />
　しかし、その中から科学が異常なまでの成功を収め、ひとり抜けだして産業に革命をもたらし、社会構造に重要な影響を与えた時、アンチテーゼとしてアートが生まれました。アルスは分離され、崩壊したのです。<br />
<br />
　科学が地球をも変えられる、となった今日、"科学者による自己最適化"はもはや許されなくなりました。社会全体がアルスへの回帰を考えなければならない時期に来ています。<br />
<br />
　さもなくば、これからの科学は部分的な肥大病になる、あるいは大事なものが放って置かれる恐れがあります。そのことを非常に心配しているのです。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_4">大学の矮小化と科学者のサラリーマン化</h2>
<p>
　そして、科学者という存在がかつて尊敬され社会的地位を保っていたのとは裏腹に、大学が矮小化してきたことを心配しています。我々が若い頃と比べても、さらに矮小化しています。しかし、それは我々の時代よりもずっと前から始まっていることです。<br />
<br />
　「科学」という言葉が生まれたのは、１９世紀頃と言われています。イギリスのファラデーが電磁気学という新しい分野を実験的に確立した頃から、社会に「science（サイエンス）」や「scientist（サイエンティスト）」という言葉が生まれました。<br />
<br />
　しかしファラデーは、「scientist」と呼ばれることを非常に嫌ったそうです。彼は「philosopher」（フィロソファー：哲学者）と呼ばれたがった。<br />
<br />
　つまり、専門で小分けするのではなく、「philosophia（フィロソフィア：愛知）」、つまり知を愛する、そういうものが学問だとファラデーは強調しているのです。<br />
<br />
　その時代から比べれば、我々の時代もずいぶん矮小化したのですが、最近は特に、科学者がサラリーマン化していると感じます。もちろん生活がある程度安定しなければいけないですから、定収入のある社会に科学者を置かなければいけない、それは確かです。<br />
<br />
　しかし、科学者は普通のサラリーマンとは違うはずで、学問をするのに昼も夜もないはずです。ところが、昔の大学は昼夜も出入り自由でしたが、今の大学は「建物の管理の問題があるから」と言って夜は入れません。このような面においても、科学者の行動が矮小化されているのです。<br />
<br />
　私の見聞きの範囲で、外国でもこんな話がありました。「メスバウアー効果」を発見したメスバウアーというドイツ人研究者が、ある会議に参加した時のことです。<br />
<br />
　その会合をまとめている科学者たちの奥さんたちが会議にやって来て、こう言ったそうです。「ノーベル賞をもらったメスバウアーて、あなた？私の主人を１ヶ月間も大学に釘付けにして、家に帰さなかったのは、あんたなのね！」って。そう言って、笑ったそうですよ（笑）。<br />
<br />
　つまり、非常に重要な発見がなされる時は、昼も夜もないんです。ところが、サラリーマン化された科学者の生活の中では、それはもう不可能です。研究の場所が昼と夜で別々に管理され、それに自分が合わせていかなければならない。それではサラリーマンですよ。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_5">アンチ・サラリーマンポリシー</h2>
<p>
　それから、例えば「これはもうぐじゃぐじゃやっていると、細かいものばかりやるようになって、こんなことじゃ科学はダメになる。ひとつ、一杯飲んで大騒ぎでもするか」ということが、今は個人的にしかできなくなりました。<br />
<br />
　昔はそういうことをしようと言えば、お金が出たのですが、今は科学研究費の使い方が非常に厳しくなりました。そうなったのは、悪いことをする奴がいるからなんですよ。だから、しょうがないのですが。<br />
<br />
　しかし結果的に、最も重要な研究と、その活力をまとめるための行動にお金を使うことが難しくなってしまいました。やっぱり、これもサラリーマン化現象の一つであろうと思っています。<br />
<br />
　私は東京で財団法人の理事長をやっていますが、これはとにかく「あいつは優秀だ」と見込みのある研究者を集めて一杯飲ませる会ですよ。もちろん名目はきちんとしていますが、なかなか能率が上がりますよ（笑）<br />
<br />
　というのは、そうやって専門領域を越えた有能な人たちが仲良くなって、共同研究をし、新しい発想で良い仕事が出始めています。やっぱり、そういった場が必要なんですよ。<br />
<br />
　アンチ・サラリーマンポリシーでもって、ものごとを動かさないといけないですね。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_6">時代を離れた科学者はいない</h2>
<p class="q">
―なぜ科学者のサラリーマン化現象は起こっているのでしょうか？<br />
</p>
<p>
　一つには、残念ながら、学問が進んだからですね。やはり昔のような、非常に根源に関わる重要な問題がなくなっちゃった。あとは、それを如何に展開し、如何に組み合わせて、というのが多くなった、ということは言えます。<br />
<br />
　２０世紀は物理学にとって奇跡の時代だったと言われていますが、２１世紀はそうなりそうもないですね。「奇跡」になることは、ほぼ発見されてしまいました。しかし、またとんでもないことが起きて、これから社会というものは進んでいくでしょう。<br />
<br />
　例えば、生命現象の物理学には、まだまだとんでもない発見があるだろうと思います。今、生命現象はわかったと言われていますが、枝葉末節がわかっているだけで、大きなところはまだわかっていません。<br />
<br />
　具体的には、例えば脳のどの部分が何をしているか等はかなりわかっていますが、全体がどうやって動かされるかや、総司令部がどうなっているかは、まだわかっていません。大体、そういうものがあるかどうかもわからないのです。<br />
<br />
　ですから、自然科学の中では、まだまだ非常に重要な発見があると思いますけどね。それが実際に２１世紀中、どれだけ進むかは、まだ１０年しか経っていないのでわかりません。<br />
<br />
　しかし２０世紀と比べて、最初の１０年を見れば、確実に減ったと言えるでしょう。２０世紀の最初の１０年は、例えば、アインシュタインの相対性理論、量子論や超電導の発見がありました。物理だけでも、とんでもない大きなものが発見されたのです。<br />
<br />
　一方、２１世紀の最初の１０年は、もちろん大事なことはいっぱいありましたが、それほど革命的なことは起きていません。「これから９０年もあるのにわかったことを言うな」と反論されるかもしれませんが（笑）、やはり２０世紀と２１世紀の違いだと思いますよ。<br />
<br />
　その前だって、１４～１６世紀頃にルネサンスで社会が変わり、１６００年前後にガリレオ・ガリレイが登場し、１７００年前後にニュートンが登場しました。やはり節目、節目があるのですね。<br />
<br />
　物理学者の中でほぼ意見が一致しているのは、とにかくここ数百年間を見ると、トップの物理学者はニュートンとアインシュタインの二人だ。数百年に一人という桁違いの科学者である。そうロシアの天才科学者ランダウが言っていました。<br />
<br />
　それはやはり科学者の資質の問題もありますが、時代というものを離れた科学者はいないですね。いくら天才でも、何もやることができない場所に放り出され、新しいことのできない時代に置かれたら、何もできませんよ。ただ生まれて死んでいくだけです。<br />
<br />
　ニュートンもアインシュタインも、やっぱり時代が彼らを天才に仕立てたというところがあります。そのような意味では、２１世紀にも百年に一人出る天才がいるのだろうけど、それが働くべき場所にいるかどうかは、また別問題なのです。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_7">科学者も芸術家もつくるものではなく自然に出てくるもの</h2>
<p>
　ここで科学者の話に戻りますが、今、本当に優秀な科学者を育てられるのかと非常に心配しています。社会が科学を必要とすると声高に言っていますが、その理由は非常に簡単です。それは、科学ではなくて科学技術が欲しいからです。<br />
<br />
　例えば、世界の自動車メーカーのトップになるには、それなりの技術者を持つ必要があります。ですから社会が欲しがっているのは、そういうものに対応できる科学技術者であって、科学者ではないのですね。<br />
<br />
　最初に述べたように、科学と科学技術は非常に違うのです。そういう目で見ると、本当に科学者を育てられる場が、今、準備されているのでしょうか。昔よりも狭くなっているのではないか、という気がしますね。<br />
<br />
　今は、例えば「ポスドク一万人計画（※）」で研究者を増やしたりしていますが、それは、先ほどお話ししたように社会のニーズに応えるためのものであって、純粋な科学者を増やすためのものではないですね。<br />
<br />
※文部科学省が1996～2000年度の5年計画として策定した施策。研究の世界で競争的環境下に置かれる博士号取得者を一万人創出するための期限付き雇用資金を大学等の研究機関に配布したもの。（参照：Wikipedia「ポストドクター等一万人支援計画」）<br />
<br />
　それはどういうことかと言えば、もともと科学者とは無理してつくるものではなく、自然に出てくるものです。それは芸術家と同じですよ。ですから、やっぱり共に「アルス」の世界で、科学と芸術は本質的に同じなのです。<br />
<br />
　例えば、芸術関係でも学校がありますが、それは一つの通り拔けるべき門ではあるものの、そこを卒業したからと言って、芸術家が増えるわけではないし、また成功するとも限りません。<br />
<br />
　ひどく才能があっても、表に出ないまま死んでしまう人もいれば、ある時代と奇妙に馬が合って、滑稽な芸術がもてはやされることもあります。<br />
<br />
　いろいろへんてこなことがあるのですが、科学者にも同じようなところがありましてね。だから科学者と芸術家は同じなんですよ。科学者も芸術家も理屈の合わないところで育っているわけです。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_8">昔は教授になれる人数だけを教育した</h2>
<p class="q">
―「科学者は自然に出てくるもの」なのにどうやって「優秀な科学者を育てる」のですか？<br />
</p>
<p>
　我々の時代はまだ良かったと思うんです。それはなぜかと言うと、戦争中、大学の各学科で卒業生の一人か二人が「特別研究生」にされたのです。僕もそれをさせてもらいました。何が良いかと言うと、いきなり助手より良い給料をもらって研究ができたのです。<br />
<br />
　では、なぜ日本はそんなことをしたのか。それは戦争で若者が死んでいく中、科学者の卵を絶やさないようにしなければいけない。だから、教授になれる人数の確保だけを前提として教育したわけです。<br />
<br />
　しかし今は、そういう発想が全くありません。要するに、社会のニーズに応えるためには日本中でたくさん技術者をつくらなければいけないわけです。<br />
<br />
　けれども大学教授の数というのは、大学の数が増えたり減ったりしなければ、年間どの程度補充するか予めわかっているわけです。その補充できるだけの人数で言うと、旧帝大の一物理学科で一人か二人だけ学者にすれば良い、という計算になるのです。<br />
<br />
　戦時中は、そういう奴には助手より良い給料を渡そうという、非常に露骨な政策が取られたわけです。そのおかげで僕は、そのお金をもらって研究ができましたよ。<br />
<br />
　要するに、科学者、つまり教授候補が１０人いれば良いところに１００人も１０００人もいようでは、所詮不健全な社会です。一方で戦時中のように、一人か二人、非常に優秀な者を中心に教育しようという時代もありました。<br />
<br />
　しかし、今はそういうことをやろうとすると、「それは差別だ」と批判されます。だから今は、そうやって満遍なく金をバラまいているだけで、政策に強烈な指導力がないんですよ。<br />
<br />
　如何にして日本は最高レベルの天才的科学者を逃さないようにできるか。それを逃せば、もう皆どこかに生きて、それなりの人生を送って死んじゃうのですからね。<br />
<br />
　今日、ある意味では、教授になるのが偶然みたいな面があります。「教授席が空席になったからそこを埋めよう、あそこにこんな奴がいるから呼んでこよう」というのが主流で、便宜的に決まるケースもかなりあるのが実情です。若い時から目をかけ、じっくり育ててロイヤルゼリーをなめさせ（学問にもそういうのがあるんですよ）大物に仕立てる、こんなケースは稀になりました。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_9">天才を見出す能力に欠けた、サラリーマン化した評価方法</h2>
<p>
　また、学問の評価方法が、それこそサラリーマン的になっていると感じます。昔は入学した時点で「あれはもう将来の教授ですなぁ」という雰囲気をもった人間がいたもんですよ、いくら若くても。そこがおもしろいところでね。<br />
<br />
　こんな話があるんです。ショパンがポーランドからパリに逃れ、パリのとあるカフェでピアノを弾いた時のこと。その会場に偶然居合わせた非常に著名なピアニストが「諸君、起立したまえ、天才にむかって」と言ったそうです。おもしろい話でしょう。<br />
<br />
　ポーランドから逃れてきたピアニストが、天才であることは確かです。ショパンのピアノ曲には、それまでの古典的なものとは全く違った華やかさがありますからね。けれども、それを一瞬でわかった人も偉いんです。<br />
<br />
　この話は象徴的なので少し大げさに言いましたが、物理学者でも同じことが言えます。まだ何もしていない段階で「あいつはとんでもない奴だ。将来大物になるぞ」とわかっているケースがあるんです。<br />
</p>
<p class="q">
―それはどうやってわかるのですか？<br />
</p>
<p>
　それが、どうも言い難いのだなぁ・・・。どうやってわかるかと言うと、「見てわかるんです」と答えるしか、しょうがない。科学にはそういう面があるのです。先ほどのショパンの例のようにね。けれども、そういうのが大事な雰囲気がなくなってきました。<br />
<br />
　今は例えば「論文を１０本書かないと教授になれませんよ」というような雰囲気になっていますね。その証拠に論文の質が低下していると思います。昔はある論文を書くためには、それに関係する論文は全部、引用論文として書いた、と言うより、書けたのです。<br />
<br />
　しかし今は、例えばある考えがネットに流れると、あっという間にそれに関係した論文が１万本出てくる。１万本を全部引用論文として書くわけにはいかない、というわけですよ。<br />
<br />
　昔は「論文ができました」となると「引用は完全にしましたか？」となるのだけど、今は完全な引用なんてできるわけがない。学問というものは変わってしまったと、ノーベル物理学賞を受賞した小林・益川両氏も嘆いておられましたよ。<br />
<br />
　これは難しい問題です。人が多くなり、それから天才を見出す能力に欠けたサラリーマン化した場、しかも引用が不正確なまま論文がつくられる、そういう時代になっているわけです。<br />
<br />
　このような中で、群を抜いた仕事はどうやって出てくるのか、それはなかなか難しいです。科学を進めていくためには、今後の大問題ですね。それを科学行政として行政がどれだけ認識してやっていけるかが、非常に難しい問題になっています。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_10">物理学は斜陽産業で、お呼びではない</h2>
<p class="q">
―科学の現状について、問題点は山のようにありますね。<br />
</p>
<p>
　その通りです。就職問題も良くないと思います。我々が教授の頃は、研究室に配属された学生の就職に、教授が責任を持っていました。「少々乱暴者ですが一生懸命取り組む奴です」等と学生の個性を書いた教授の推薦状は信用され、企業は学生を採用してくれました。けれども現役の教授に「就職の世話はしているのか？」と聞くと、「今はそんなことをできる時代じゃないですよ」と言われます。<br />
<br />
　逆に今は、留学生がうんと増えていますね。ところが、せっかく育てた留学生には「日本よりもアメリカに行った方がいい」「中国に帰って来いと言われた」等と言われて、優秀な人間を確保することも難しい。現役の教授らは「逃げられる」という言い方をしていますよ。将来性のある優秀な人材を育て、そして確保するのは、なかなか大変です。<br />
<br />
　さらに悪口を言うと、教師の方にも問題があります。物理学の卒業生でありながら、物理学全体が見えていない。化学の卒業生でありながら、化学の一部しか見えていない。生物の卒業生でありながら、生物の一部しか見えていない。<br />
<br />
　しかし本当の大学の仕事とは、もちろん個々の優れた実績を持っていなければ困りますが、問題はやはり、物理のあるべき姿を把握できるかどうかなのです。しかし今は、それが難しくなっています。<br />
<br />
　なぜかと言うと、昔は教養部があったのですが、今は教養部という形はなく、だいぶ流動的になっています。昔は一般教養で物理学は必須でしたが、今はなかなかそれができていません。<br />
<br />
　最近驚いたのですが、福島大学の若い人で、東日本大震災後に放射線測定を行った人の手記に、「物理学科系業者は自分一人しか福島大学にいなかった」とありました。それほど（物理学者が）減らされたのかと大変驚きました。<br />
<br />
　もはや物理帝国の崩壊ですよ。物理学は斜陽産業で、お呼びではないのです。就職率を上げるために即戦力となる学生を育てようとする工学部系の教師にだんだん変わってきています。特に地方大学はそういう現実路線で、ますます物理が要らなくなっています。<br />
<br />
　しかしながら、物理的な考え方をできる人がいなければ、次の世代を一体どうするというのですか。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_11">物理学は「何がわからないか」を探す学問</h2>
<p class="q">
―そもそも物理的な考え方とはどのようなものですか？<br />
</p>
<p>
　物理学は「何がわからないか」を探す学問だと思った方が良いでしょう。「これだけは全然何かわからないことが根本にあるのだ」ということを探すのが、物理学の重要な仕事です。それがわかったら、あとは化学や生物学等に譲るのです。<br />
<br />
　しかし、そういうことのわかる物理学者が減っていることを非常に心配しています。素粒子や物性理論といった分野としての区切りの前にあるのは、もっと一般的にある物理学ですよ。<br />
<br />
　少し話は脱線しますが、私は東京で財団法人の理事長をやることになったので、会合で「理事長挨拶」というものをしていたのですが、理事長挨拶の内容なんて、もう決まっているんです。けれども、そんなの馬鹿げているでしょう（笑）<br />
<br />
　そこで「挨拶講演」というものをつくりました。学問の中で物理的なコンセプトが、どのように存在するのか、どのように組み立てられているのか、それぞれのニュアンスで講演するというものです。物理学だけでなく、化学や医学等いろいろな話を交えてね。挨拶講演、結構好評なんですよ（笑）<br />
<br />
　数学にも、わりと同じようなところがありますね。数学的あるいは物理学的に、新しいものがどういうものか、そしてどんな普遍性があり、他の学問と接続しているのかを見つけ出して皆さんに伝えることが、物理学の大事な仕事なのです。<br />
<br />
　そのためには、それなりの教育をしなければいけません。物理学全体の基本を教えなければいけないのです。けれども、どうしても自分の専門にこだわって（視野が）狭くなりますからね。<br />
<br />
　今度の地震だって、「あんな津波は絶対に来ない」と専門家の学者が思い込んでいたわけですから。ですから、今度の現実は貴重な経験として、単なる事実の書き込みだけではなく、研究の方法論として学問を進化させるために使わなければいけないのです。<br />
<br />
　およそ予知をしようという学問では、大事なことは歴史を調べると出てくるものです。歴史を調べることで、ある程度の人は今度のような大津波が来ることを知っていました。産業技術総合研究所の研究者で、昔の痕跡（堆積物）を調べていた人がいます。すると約千年前の貞観津波、その千年前、さらにその千年前まではわかるそうです。やはり歴史を調べてみるとわかることもあるのです。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_12">人間を大事にすることと同じ</h2>
<p class="q">
―これまでのお話を踏まえて、中高生も含めた読者にメッセージをお願いします。<br />
</p>
<p>
　そもそも科学というものは、教育によってつくられるものではありません。科学は、人間の本性に関わるものです。人間がこの世に現れ、現在地球の覇者となるほど発展したのも、人間が科学という考え方を理解したからです。それが人間の、他の動物と最も異なる特性の一つであり、まずそれを非常に大事にして欲しいと思います。<br />
<br />
　皆さんが、非常に正直に自然を見る、あるいは人の社会を見る、そこで感じたことや思うこと、そこに科学の原点があります。それが非常に重要なことなのです。それは教育によって磨かれるものではありますが、そもそもは人間の本性に従っているものであることを、ぜひ認識して欲しいのです。科学も芸術も同じ原点を持ち人間の本性の一つです。つまり人間を大事にすることと同じなのです。<br />
<br />
　自分自身の最も特徴ある人間の本性を発展させること。その根本から、科学に対する理解や信頼、思い入れ、そういうものを育てて欲しいと心から願っています。<br />
</p>
<p style="text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120119.jpg" alt="" />
</p>
<p class="q">
―伊達先生、本日はありがとうございました。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_13">伊達先生が最近執筆した本の紹介</h2>
<p>
・『「理科」で歴史を読みなおす』(ちくま新書)　：一般向き<br />
・『極限の科学』（ブルーバックス）　：理系向き<br />
</p>



<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20120119-top.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20120119-top.jpg" width="600" height="401" class="mt-image-none" style="" /></span>
-->
]]></description>
            <link>http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php</link>
            <guid>http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20120119.php</guid>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">名誉教授</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">大阪大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">物理学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">物理学科</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">理学部</category>
            
            <pubDate>Sat, 21 Jan 2012 11:32:58 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>田村裕和さん（原子核物理学者）に聞く：科学って、そもそもなんだろう？</title>
            <description><![CDATA[<h1><img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110810-top.jpg" alt="原子核物理学者の田村裕和さん（東北大学大学院理学研究科教授）に聞く：科学って、そもそもなんだろう？" style="margin:0px 0px 5px 0px" />
<span style="padding: 5px 0px 0px; font-size: small; font-weight: 600;">取材・写真・文／大草芳江</span>
</h1>
<p class="date">2011年12月27日公開</p>
<div id="subject">
<p id="t">物質のでき方の基本は謎だらけ</p>
<p id="n">田村　裕和　　TAMURA Hirokazu<br />
（東北大学大学院 理学研究科 物理学専攻　教授）
</p>
</div>

<p style="font-size:x-small;">
専門は原子核物理学（実験）。1983年東京大学理学部物理学科卒業。1988年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了（理学博士）。東京大学大学院理学研究科助手を経て、1996年東北大学大学院理学研究科物理学専攻助教授、2004年から同教授に就任し、現在に至る。2009年仁科記念賞を受賞。
</p>
<p style="padding:10px;border:1px solid gray;font-size:small">
　<span style="font-weight: 600; font-size: small;">「科学って、そもそもなんだろう？」を探るべく、【科学】に関する様々な人々をインタビュー<br />
科学者の人となりをそのまま伝えることで、「科学とは、そもそも何か」をまるごとお伝えします 
</span><br />
<br />
英語の「atom（＝原子）」はギリシャ語の「これ以上分解できないもの」を<br />
語源とすることからもわかるように、太古の昔から人間は<br />
「物質とは何からできているのか」を探究し続けてきた。<br />
<br />
現代の教科書には、原子はさらに原子核と電子に分解され、<br />
原子核は陽子と中性子に分解されることが当前のように書かれ、<br />
さらに、物質を構成する最小単位は「素粒子」と呼ばれている。<br />
それでは、物質のでき方の基本など、みな既にわかっているものかと思いきや、<br />
「実は未だに謎は山ほどあるのです」と原子核物理学者の田村裕和さんは語る。<br />
<br />
物質の基本単位である原子核が、本当の意味での究極粒子である素粒子から、<br />
どうやってつくられてきたのだろう？<br />
それを「奇妙な素粒子（ストレンジクォーク）」を使って探究する<br />
田村さんという「人」から見える、科学とはそもそも何かを探った。<br />
<br />
＜目次＞<br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_1">物質のでき方の基本は謎だらけ</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_2">素粒子（クォーク）から、どうやって原子核はできたのか？</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_3">奇妙なクォークでつくる「ハイパー原子核」</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_5">複雑な原子核や物質の世界を、クォークの理論で説明したい</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_6">宇宙に浮かぶ巨大な原子核「中性子星」</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_7">中性子星にある人類未知の物質を地球上で調べる</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_8">大強度陽子加速器施設「J-PARC」で実験本格化</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_9">一つの理論ですべての現象を説明したい</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_10">実験と理論が協力し合って、新しい物理学に発展する</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_11">ハイパー原子核γ線の測定に初めて成功</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_12">Λ粒子が原子核に入ると、原子核の大きさが縮む現象を発見</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810.php#p1_13">何かにとらわれることなく、いろいろな興味で、いろいろな経験をして</a><br />
【学生インタビュー】<br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810-2.php#p2_1">先生や先輩たちの話を聞いて「おもしろそう」だった</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810-2.php#p2_2">７年間かけて皆でつくった実験装置「ハイパーボールＪ」</a><br />
・<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810-2.php#p2_3">自分が興味のあることを、体験しながら探して</a><br />

</p>


<br /> 
<div class="interview"> 
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/kagaku_interview.gif" alt=""> 
<p>東北大学大学院理学研究科教授の田村裕和さんに聞く</p> 
</div> 
<br /> 



<h2 id="p1_1">物質のでき方の基本は謎だらけ</h2>
<p class="q">
―田村さんはどんな研究をしているのですか？なぜ、その研究をしているかを中心に、教えてください。<br />
</p>
<p>
　まず、我々が研究しているのは、「原子核」や「素粒子」（＝物質を構成する最小単位）です。けれども、素粒子自体を研究しているのではなく、素粒子がどのように集まって原子核や物質をつくっていったかを、調べています。<br />
<br />
　皆さんが良くご存知の原子には、元素の周期表からもわかるように、たくさんの種類があります。原子の中には、原子核とそのまわりをまわる電子があります。<br />
<br />
　原子核には電荷（陽子の数）の異なるものが90数通りあり、それに応じてまわっている電子の数も異なるため、いろいろな性質の異なる物質ができるわけです。<br />
<br />
　また、電子は原子核に比べて非常に軽いので、原子の質量のほとんどは原子核の質量です。ですから、原子核がどのような電荷や質量を持つかが、実は、物質の一番基本的な性質を決めていることになるのです。<br />
<br />
　原子核は、陽子と中性子からなり、それらがだいたい同個数ずつ、くっついてできています。ですから我々の疑問は、物質のでき方の一番の基本である陽子や中性子が、なぜ存在するのか？それがどのようにくっついて原子核になったのか？その原子核には、どのような種類があるのだろうか？ということです。<br />
<br />
　こうしたことはもう当たり前のように教科書に書いてあるので、皆さんすでにわかっていることだと思われるかもしれませんが、実は、未だに謎は山ほどあるんですよ。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_2">素粒子（クォーク）から、どうやって原子核はできたのか？</h2>
<p class="q">
―どのようなところが、まだわかっていないのですか？<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="width:250px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110810_1.gif" alt=""  style="width:250px;" /><br />
<p>【図１】現在の知見では、物質は原子からなり、原子の中にある原子核は陽子と中性子（まとめて核子と呼ぶ）からなり、さらに核子は二種類の「クォーク」、upとdownから構成されていることが実験的にわかっている（提供：東北大学大学院理学研究科原子核物理研究室）</p>
</div>
<p>
　陽子や中性子の中には、さらに「クォーク」という素粒子があります。陽子と中性子は、クォーク３個で構成されていることがわかっています。このクォークが、本当の意味での素粒子、つまり、「これ以上分解できない究極の粒子」と考えられています。<br />
<br />
　しかし、クォークから陽子や中性子がどのようにしてつくられるのか、なぜクォーク３個なのか、こうした基本的なことが未だによくわかっていないのです。また、とても軽いはずのクォークから、なぜあのように100倍も大きな質量を持つ陽子・中性子ができるのかも大きな謎です。このように、素粒子クォークから陽子や中性子がつくられる謎を解明することが、物質を理解するための出発点です。<br />
<br />
　なおかつ、陽子や中性子ができても、それらがくっつかなければ原子核になりませんから、なぜくっつくのだろう？というところを解明することも必要です。そこにも、わからないことがいっぱいあるんです。要するに、このふたつを解明できれば、物質のでき方がわかったことになるのではないか、ということなんですね。<br />
<br />
　実際に、宇宙には一番最初は、バラバラの素粒子しかありませんでした。それなのに今の世界では、陽子と中性子、それらがくっついてできた原子核がもとになって物質となっています。つまり、宇宙の最初期「ビックバン」直後の素粒子だけの世界と、今の世界の間には、何か歴史的な発展があるわけですね。その途中には、まだまだわかっていないことがいっぱいあるのです。<br />
<br />
　要するに、物質の基本単位である原子核が、本当の意味での究極粒子である素粒子から、どうやってつくられてきたのだろう？それを調べることが、僕に限らず、原子核物理学者の現在のテーマですね。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_3">奇妙なクォークでつくる「ハイパー原子核」</h2>
<p class="q">
―その謎に対して、田村さんはどのようなアプローチで解明しようとしているのですか？<br />
</p>
<p>
　それを調べるにあたって、いろいろな方法があるのですが、我々は、クォークと陽子・中性子、あるいは、クォークと原子核の関係をもっと詳しく調べようとしています。<br />
</p>
<p class="q">
―どのようにして調べるのですか？<br />
</p>
<p>
　クォークは全部で６種類あることがわかっているのですが、現実の宇宙にはそのうち２種類しか存在しません。けれども宇宙のごく初期には、６種類あったことがわかっています。クォークは６種類あると予言したのが、小林・益川理論です（2008年ノーベル物理学賞）。その６種類は特別な実験でつくることができるんですよ。けれども、つくってもすぐに壊れちゃって、また２種類だけになってしまう。<br />
<br />
　陽子と中性子が原子核をつくる基本のブロックですが、その陽子と中性子は２種類のクォーク、「up（上向き）クォーク」と「down（下向き）クォーク」が組み合わさってできています。けれどもクォークは６種類あるのですから、別のクォークに取り替えれば、陽子・中性子ではないけれども、似たような別の仲間の粒子ができるはずなんですよ。<br />
<br />
　実は、そのような粒子は、加速器を使った実験で無理やりエネルギーを与えてやることで人工的につくることができます。しかし、このような粒子は、現在の物質世界には存在していません。なぜならば、つくってもすぐに壊れてしまうから。宇宙初期にはあったかもしれないですけど、今はないわけです。そのような意味では、こうした粒子を加速器で人工的につくる研究は、物質の立場から行う宇宙の研究の一種と言うこともできますね。<br />
<br />
　そこで今、我々は、クォーク６種類を全部使うのは難しいので、３種類目のクォーク「strange（奇妙な）クォーク」に注目しています。<br />
</p>
<p class="q">
―「３種類目」とは、何順で言っているのですか？<br />
</p>
<p>
　質量で言っています。図２を見てください。６種類のクォークの下にある数字が、質量を表しています。ちょっと単位が難しいのですが、upクォークとdownクォークの二つが特別に軽いのです。右に行くほど、ものすごく重いのですが、重たいものは不安定で、すぐに壊れてしまいます。ですから、無理やりつくっても地球上に存在できるわけがないのです。<br />
</p>

<div class="rightPicture" style="width:300px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110810_2.gif" alt=""  style="width:300px;" /><br />
<p>【図２】素粒子（クォーク）の種類（提供：東北大学大学院理学研究科原子核物理研究室）</p>
</div>
<p>
　けれども、３番目に軽いstrangeクォークは、不安定ではあるものの、upクォークとdownクォークの次に軽く、寿命が割と長いのです。寿命は、10のマイナス10乗秒（＝10億分の１秒）。「長い」と言っても一瞬ですが（笑）、それでも他の３種類よりは長くて、性質もよくわかっているんですね。<br />
<br />
　陽子と中性子は、「upクォーク・upクォーク・downクォーク」あるいは「upクォーク・downクォーク・downクォーク」で構成されています。この３個のうちいずれかを、strangeクォークに入れ替えるのです。すると「strangeクォーク・upクォーク・downクォーク」となり、陽子・中性子と似ているのですが、やっぱりちょっと違う性質を持った変な粒子ができるのですね。<br />
<br />
　このstrangeクォークが一つ入った特殊な粒子を「Λ（ラムダ）粒子」と呼んでいます。Λ粒子は、陽子・中性子の仲間ですから、実はちゃんと原子核の中に入れることができるのですよ。こうしてできる原子核を「ハイパー原子核」と言うのですが、我々は実際にこれを実験でつくって研究しているのです。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_5">複雑な原子核や物質の世界を、クォークの理論で説明したい</h2>
<p class="q">
―どうして「ハイパー原子核」をつくるのですか？<br />
</p>
<p>
　どんな意義があるかと言いますと、一つは、周期表にあるような原子のもとになっている原子核とは構成要素がまるで違う、質的に全く異なる原子核、あるいは物質をつくることができるということです。こういう新しいタイプの原子核をたくさんつくり、物質の種類を広げることが、一つの興味です。ただ、これはつくったとしても非常に寿命が短く、ある時間が経つと壊れちゃうので、そのまま何かに応用できるというものではありませんね。<br />
<br />
　我々の目的の一つは、先ほどもお話しましたように、陽子と中性子からなる原子核の中で、陽子と中性子がどのような力でくっつきあっているかを調べることです。この陽子と中性子の粒子間の力を「核力」と言います。湯川秀樹先生がその力のしくみを予言し、ノーベル物理学賞を受賞した、日本人には非常に馴染みある重要な力ですね。けれども実は、湯川さんが約50年も昔にノーベル賞を受賞したにもかかわらず、核力は未だに完全には解明されていないのです。<br />
</p>
<p class="q">
―どのあたりが解明されていないのですか？<br />
</p>
<p>
　もともと陽子と中性子の間には、湯川さんの言うように特別な"のり"みたいな物質（中間子）があって、それでくっついていると言われてきました。その考え方は正しいのですが、すべての物質はクォークでできていることがわかっちゃったので、すべてクォークで説明できなければならないわけです。湯川さんの発見した"のり"の物質も、実は、クォークでできていることがわかりました。<br />
<br />
　すべての陽子と中性子のくっつき方や原子核のでき方を、すべてクォークの理論によって説明することができるはずなのです。それで「すべてがわかった」ことになるのですね。ところが、それは大変難しいので、クォークの種類を全然違う種類のものに替えて、陽子・中性子を種類の違う新しい粒子にし、現実には存在しない原子核を無理やりつくってやるのです。<br />
<br />
　すると、その粒子間の力も変わるはずですよね。そして、その粒子と他の陽子・中性子の間の力をいろいろ調べてやれば、クォークを替えると力がどう変わるかがわかるのです。要するに、クォークの種類を入れ替えたら核力はどう変わるかを調べていくと、核力はクォークのどのような性質から生まれるのかがわかるわけですね。こうして、クォークの理論から、核力、あるいは原子核の性質を導き出すことが可能になるわけです。<br />
<br />
　何か基本的な法則があったら、そこから全てが演繹的に計算され、説明されて欲しいわけですね。物理学って、そういうものなのです。ですから、例えばアインシュタインの一般相対論のような基本理論があると、それは方程式一つだけの本当にシンプルな理論ですが、そこから、時間・空間の性質からあらゆる天体の動きやら宇宙全体の性質までが全部、出てこなければいけないわけです。そして実際に出てくるわけですね。それと同じことを、物質に対してもやりたいわけですよ。<br />
<br />
　クォークの基本理論は一応あるのですが、そこからどうやったらこの現実の複雑な原子核や物質の世界が説明できるかは、まだわかっていないのです。それをやりたい、そういうことなのですよ。そのために、クォークの種類を替えた原子核をつくってみて、そこからクォークの理論で物質がどのように説明できるか調べているということです。それが我々の一番大きな目的ですね。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_6">宇宙に浮かぶ巨大な原子核「中性子星」</h2>
<div class="rightPicture" style="width:300px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110810_3.gif" alt=""  style="width:300px;" /><br />
<p>【図３】中性子星ができるまで（提供：東北大学大学院理学研究科原子核物理研究室）</p>
</div>
<p>
　実はもう一つ、おもしろい目的があるんですよ。ここに、いろいろな星の絵がありますが、「中性子星」という星があるのです。太陽のような星、いわゆる恒星は、どんどん大きくなっていきます。星の内部で原子核反応が起こっていて、どんどんエネルギーを出して膨張していくのです。そして最後には大爆発を起こして、壊れちゃいます。この大爆発のことを「超新星爆発」と言います。<br />
</p>

<p>
　超新星爆発を起こすと、外側はすべて吹き飛ぶのですが、その反動で内側は圧縮されて、一番内側には非常に質量の大きい固まりが残ります。それが重すぎた場合は、ブラックホールになります。けれども、ブラックホールになり切れなかった中途半端に重たいものがあるんですね。それを「中性子星」と言います。<br />
</p>
<p class="q">
―「中性子星」のどのようなところがおもしろいのですか？<br />
</p>
<p>
　普通の物質は、原子核のまわりに電子があって、それが原子をつくっていて、その原子が結晶のように並んで物質になっています。けれども、その電子が全部消えてなくなって、すべての物質の原子核だけがくっつき合って塊となって一つの星ができているのですよ。ほとんど中性子だけから成り立っているので中性子星というわけですが、ものすごく密度が大きいんです。耳かき一さじ程度でトラック1000台分くらい。それくらい膨大な質量を持っているんです。<br />
<br />
　原子核には陽子があったはずですが、陽子はプラスの電荷を持っているので、陽子と陽子の間では、実は電気的な反発力があるわけですね。原子核の中ではこの反発力よりも、もっと強い"のり"の力で陽子同士もくっついているわけですが、そうは言ってもあまりに陽子の数が多くなると、陽子同士の反発力によってバラバラになってしまいます。<br />
<br />
　電子は、マイナスの電荷を持っているでしょう？電子と陽子がくっついて中性子に変わるんですね。すると、電子の数と陽子の数は等しいですから、最終的には全部、中性子になっちゃうわけです。星と言っても半径10キロメートルくらいの小さな星ですが、それが太陽の２倍くらいの質量を持っているんです。凄まじいでしょう？<br />
<br />
　すべて中性子だけという塊、一個の巨大原子核のような星です。それが実際にあることがわかっていて、天文の観測でもたくさん見つかっています。それを発見した人や計算した人たちが、すでにノーベル賞を受賞しています。また、さきほど電子と陽子がくっついて中性子に変わるといいましたが、実は電子は、マイナス電荷を陽子に吸い取られて「ニュートリノ」という中性の粒子に変化し、星から外へ逃げていきます。これを実際に観測して、超新星爆発で中性子星が作られるメカニズムを証明したのが、小柴先生です。中性子星は、宇宙の中でも非常におもしろい天体なんですね。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_7">中性子星にある人類未知の物質を地球上で調べる</h2>
<p class="q">
―中性子星と田村さんの研究は、どのような関係があるのですか？<br />
</p>
<p>
　中性子星があることはわかっていますが、その性質は謎に包まれています。現場に行って直接調べるわけにもいかないので、観測だけで皆、遠くからのぞいて想像しているだけなのです。ただ、いろいろな中性子星の観測結果と、さまざまな原子核の実験データをもとにつくられた理論を組み合わせてみると、どうも中性子星の中では、密度が非常に大きいせいで、３種類目のstrange クォークが勝手に生まれ、中で安定に存在しているらしいということが、予想されるようになってきたのです。<br />
<br />
　これはかなり画期的なことです。宇宙にあるこの世界の物質は、今現在はupクォークとdownクォークの２種類だけでできているはずなのです。初期宇宙では、ほかのクォークもあったはずなのですが、すぐに消えちゃったはずなのです。けれども今でも、中性子星の中に行けば、外側はupクォークとdownクォークからなる中性子ですが、中の方にはstrange クォークがあるらしい。これは、我々の物質観がかなり変わることだと僕は思うのです。<br />
</p>
<p class="q">
―どのように物質観は変わるのですか？<br />
</p>
<p>
　だって、これまでupクォークとdownクォークだけで、宇宙のすべてはできていると思われていたわけです。けれども実は、そうじゃない。strange クォークの入った物質は、普通の原子核とは全く違う性質を持っているはずなので、我々が全く知らない物質なわけです。あるいは、別の言い方をすると、先ほどお話したΛ粒子のように、strange クォークの入った粒子が、中性子星の中にはいっぱいできているのではないか。それが本当だとすると、すぐ壊れちゃうはずなのに、壊れないで安定して存在していると予想されます。<br />
<br />
　それが本当かどうかを調べるためには、もちろん観測しても良いのですが、所詮観測しても現場に行けるわけではないので、詳しくはわかりません。そこで、我々がやっている実験では、strange クォークの入った原子核をつくります。この性質を詳しく調べてやると、strange クォークが入った時、物質あるいは原子核の性質がどう変わるかがわかるわけです。それで、その理論がつくれるわけですね。この理論計算を進めると、じゃあ、これが大きくなって中性子星になったら、中にstrange クォークがどれくらい存在していなければならないか、計算で出すことができます。けれども、その計算のもとになるのは、我々がやるような実験なのですよ。<br />
<br />
　要するに、ハイパー原子核の実験をすることによって、strange クォークの入った物質の性質を調べ、中性子星の中のstrange クォークの割合、あるいは、そこがどういった性質の物質かを解明することができるのです。ですから我々の実験には、実際に行って調べることができない中性子星の中にある、今まで人類が知らなかったすごく変な物質を、地球上で調べているといった意味もあるのですね。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_8">大強度陽子加速器施設「J-PARC」で実験本格化</h2>
<p class="q">
―それはどの辺りまで明らかになっているのですか？<br />
</p>
<p>
　なかなか鋭い質問ですね（笑）。これは日本で特に盛んな分野です。筑波のKEK（高エネルギー加速器研究機構）や京都大学、大阪大学の人たちと一緒に研究しています。ハイパー原子核やstrange クォークの研究は、世界で最も日本が進んでいる分野なのですよ。<br />
<br />
　今まで我々がやってきた研究を全部合わせますと、中性子星の中のどれくらいの深さまで行って、密度がどれくらいまで上がれば、strange クォークが発生し始めるのか、ということがかなりわかってきました。半径15kmのうち中心から5kmから10kmくらいでしょうかね、中心に近いところへ行くと、急に strange クォークが、ばーっとできてくるんです。そういった中性子星の中の構造もわかってきました。<br />
<br />
　ただ、そうは言っても、まだ観測と合わないところもあって、謎がいっぱいです。例えば「中性子星の中はこうなっているはずだ」と計算も一応できるのですが、計算式を少し変えてみると、答えがかなり違ってしまうので、ちょっと難しいですね。まだ完全にはわかっていないのです。そのためには、もっとこういった研究をしなければいけないですね。<br />
<br />
　さらに、実はつい最近、とても質量の重い中性子星が発見されて、天文学者や核物理学者の間で世紀の大発見かもしれないと大騒ぎになっています。この重い中性子星の中にもstrange クォークがあるはずですが、それがΛ粒子のような我々が知っている粒子（バリオン）とはまったく違う形で存在している可能性があるのです。
<br />
<br />
　陽子、中性子、Λ粒子のようにクォーク３つが閉じ込められた塊の粒子（バリオン）ではなく、クォークがばらばらになってしかも超伝導状態になっている「クォーク物質」ができていなければ、その中性子星の重い質量が説明できないのです。「クォーク物質」の存在が証明できたら本当に画期的なことですが、そのためにも我々の研究がますます重要になっています。
</p>
<p class="q">
―これからどのように研究を進めますか？<br />
</p>
<p>
　こういった strange クォークが入った粒子って、Λ粒子の他にも何通りもあってね。strange クォークが２つ入っていたり、電荷もプラスのやつもあればマイナスのやつもあるし、電荷がないやつもあるんです。陽子と中性子は、プラスとゼロですけどね。strange クォークが入った粒子には、電荷がマイナスのやつもあるんです。<br />
<br />
　このように異なる種類のstrange クォークが入った粒子を全部、原子核にそれぞれ入れてどうなるかを調べます。すると、中性子星の中でもどの種類がどれくらいできてくるのか、といったことも全部わかるだろうと思います。それを、これからどんどんやっていこうと思います。<br />
</p>
<p class="q">
―具体的には、どのような実験をするのですか？<br />
</p>
<p>
　茨城県東海村で2009年から稼働した、「J-PARC」というすごく大きな加速器を使います。世界最強の強いビームを出す、凄まじい加速器ができたのですよ。これは陽子のビームなのですが、飛んでくる陽子の個数（加速度）が、世界で断トツに多いのです。その強度はこれまでの世界最高加速器の10倍にもなります。<br />
<br />
　J-PARCで本格的な実験がやっと始まりつつあったところで、今回の震災によって多少被害を受けてしまいました。しかし修理は無事済んで、2012年1月から本格的に動き出します。そうすると今お話したハイパー核の研究が、ものすごく進むはずですよ。すると多分４、５年もすれば、もう少しはっきりと「中性子星の中はこうなっているはずだ」と言えるかもしれませんね。<br />
<br />
　もう一つは、先ほどお話したように、なぜクォークが３つでくっ付いて、それで陽子と中性子ができて、その粒子間の力（核力）が今のようになっているか。それをきちんとクォークの理論で説明する時に、非常に役に立つデータが取れると思います。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_9">一つの理論ですべての現象を説明したい</h2>
<p class="q">
―田村さんの研究に対する個人的なモチベーションを聞かせてください。<br />
</p>
<p>
　物理の研究は、基本的な物理法則で、全ての現象を説明することが目標です。物理学とは、そういう学問なのです。例えば、ニュートンの理論というのは、それまで別々の法則に従うと信じられていた地球上の物体の動きと天体の動きを、一つの法則で同時に統一的に説明してしまったのですね。それが「かっこいい、素晴らしい」と憧れて、物理の道に進みました。<br />
<br />
　今一番の問題は、クォークという素粒子があり、クォークがどのような法則に従うかはわかっているのに、そこから現実に存在する物質のさまざまな性質が、まだ説明できていないということです。もちろん、この課題は世界的に研究されています。そこに少しでも自分が貢献したいと思うのです。<br />
<br />
　アインシュタインのように何か一つの画期的な理論を考えつき、たった一つの方程式を計算してやれば、あらゆるものが説明できてしまう。そのような理論をつくるのは、すごくかっこいい。アインシュタインのように究極の理論をつくって、すべての現象を説明したいというのが、物理をやるすべての学生の夢だと思います。それもあって、理論物理学者になりたい学生さんがいっぱいいますね。<br />
<br />
　アインシュタインの重力の理論は完璧ですごいのですが、それとは別に、物質の基本単位であるクォークの理論もちゃんとあって、それも間違いないことがわかっています。けれども、違った理論がいくつかあったら、本当は気持ち悪いのです。「重力が今のようになっているのはなぜか？」「物質が今のようになっているのはなぜか？」、やっぱり一つの理論から、すべてを説明したい。それは、誰も見つけていない究極の理論で、それができたら本当に素晴らしい。それに憧れて理論物理をやりたい学生もいっぱいいます。<br />
</p>
<p class="q">
―理論か実験で言うと、田村さんは実験物理ですね。<br />
</p>
<p>
　僕も学生の頃は、かっこいいので、アインシュタインみたいな理論物理をやりたいと思っていました。けれども、なんせ数学的な能力がある人でないとできない、それはすぐにわかるんです。<br />
<br />
　僕の場合は学部３年生の時、こういう原子核の実験をやる先生で、素敵な方に出会いました。自分がやっている研究が如何に楽しいか、いつもニコニコしながら楽しそうに講義で喋っているのです。何を言っているかわからなかったことも多かったのですが、とにかく楽しそうなので、その研究室に行ってみました。<br />
<br />
　それ以来、こういう実験の方が、おもしろいと思うようになりました。もし僕が理論をやっていたら、研究者になれなかったかもしれないし、あるいは、たいした成果も出なかったかもしれないですね。僕の場合は、父親が電気屋さん、つまり技術者だったこともあって、装置をいじったり、何か測ったりすることが好きだったというのもありました。それで、実験の方に行ったのです。<br />
</p>
<p class="q">
―実験物理ならではの「おもしろい」ところは何ですか？<br />
</p>
<p>
　理論物理はもちろんかっこいいのだけど、でも物理学である以上、数学とは違うところが一つだけあるのですよ。現実に合っていない理論は、ゴミと同じなのです。どんなに素晴らしい理論でも、現実と合わない理論は、数学としては良いですが、物理学には全くならない。<br />
<br />
　「じゃあ、この理論は現実をちゃんと記述しているのか？」を確かめるには実験家の努力が必要です。それで、いろいろな工夫をして、いろいろなデータをとって、いろいろな怪しい理論が出てくる中で、どれが正しいのか、あるいは、どれも正しくないのか、を判定します。ものすごい数のいろいろな理論が提案されていますが、全部正しくないことも、たくさんありました。<br />
<br />
　実験をやると、どの理論も予想していない、すごく不思議な現象を見つけちゃっうことがよくあります。それが本当の発見なんです。実験屋さんが、理論屋さんが予想もしていなかったことを見つけると、その説明をするために、全く新しい理論が必要になって、その新しい理論を使うと初めて、他にいっぱいあった謎も一気に解明されることもあります。つまり、実験をやることによって、理論家が思いもしなかったような、物理学を発展させる。そういうことが素晴らしいと思いますね。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_10">実験と理論が協力し合って、新しい物理学に発展する</h2>
<p>
　あと、理論がかっこいいと言いましたけど、素粒子はどうしても理論主導の面がなくもないのですけど、我々が今やっているような素粒子と現実の物質を結ぶところですね、そこは理論計算がものすごく難しいところで、理論だけではやっぱりうまくいかないのですよ。<br />
<br />
　理論と実験が対等に協力し合って、場合によっては実験の方が理論をリードして、いろいろデータをとって、いろいろ解釈して、「どういう理論だったらこれを説明できるか」を理論家と一緒に検討して、新しい考え方をつくっていきます。そうやって進んでいくんです。<br />
<br />
　実は、それは原子核だけでなく、物質のもう少し先の世界、結晶や超伝導体など、これを「物性物理」と言いますが、そういった物質の性質の研究分野も同じです。理論と実験が本当にうまく絡み合って、協力し合って物理学をつくっていく。さらに、半導体や超伝導体の研究をしている人はそれ自身もおもしろいのだけど、それが産業に応用できるところもあって、さらに進んでいるわけです。<br />
<br />
　我々はちょっと残念ながら、ハイパー核とか変な原子核はいっぱいつくれますけど、すぐに消えちゃうので、それを使って、何か世の中に役に立つことができるかと言えば、実用性は今のところ全くないのですが。ただ物理学としては、物質と素粒子の間を結ぶ、一番大事なところだと思っています。やっぱりそこが一番、今やりがいがあるところだと思っています。<br />
</p>
<p class="q">
―今まで研究してきた中で、実際にそのようなことはありましたか？<br />
</p>
<p>
　実験物理の醍醐味の話ですが、先ほど僕が言ったのは、例えば、ニュートンが不十分でアインシュタインが正しかったというような、もっと物理学の枠組みをひっくり返すような、ものすごい大転換の話です。そういう大転換が実験によって起こることも、過去にはありましたね。<br />
<br />
　例えば、４種類目のクォークを発見した実験なんかが、そうですね。実は、さきほどクォークは６種類あるとお話しましたが、1960年ごろクォークという素粒子が考え出されたときにはクォークは３種類でした。それが、４種類目のクォークを実験家が発見してしまったので、大変なセンセーションになりました。<br />
<br />
　クォークが４種類あるといいと予想していた理論家もいるにはいましたが、そもそもクォークは素粒子なんだから種類がたくさんあったら不自然でしょう。「３種類なら許せるけど、４種類あったらおかしいだろう。だったら、５つ目、６つ目、７つ目はどうなっているんだ」という話になりますからね。場合によっては、「本当は素粒子ではないのではないか。さらにその中に何かあるのではないか」と思う人もいるしね。それは大変な大発見だったわけです。<br />
<br />
　けれども、よくよく考えたら本当は６種類なくてはいけないのだと、４種類目が見つかる前から言っていたのが、小林・益川理論です。ものすごく先見の明があったわけで、それは理論の素晴らしさですね。<br />
<br />
　けれども当時は、誰もそんな理論は顧みず、「素粒子と言うのだから、数がいっぱいあっちゃ駄目でしょう」と、あまり相手にされなかったことでしょうね。でも実験で４種類目が見つかったので、「じゃあ、５つ目、６つ目もあるかもしれない」と、小林・益川理論も取り上げられるようになったわけですね。要するに、一つの実験で、さっと大きく理論の考え方が変わることがあります。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_11">ハイパー原子核γ線の測定に初めて成功</h2>
<p class="q">
―田村さんの研究では、いかがでしたか？<br />
</p>
<p>
　僕の実験で言えば、そんな大それたことはないです。けれども僕の場合は、実験で大発見というよりも、「こういうものはあるかもしれないけど、誰も測れないだろう」と思われていたものを、装置を工夫して測れるようにしたんですね。<br />
</p>
<p class="q">
―どのようなものを測れるようにできたのですか？<br />
</p>
<p>
　ハイパー原子核から出てくるγ（ガンマ）線を測ったんです。「それを測ると、こんなことがわかるはず」と、前もって理論家の人がいろいろとアドバイスしてくれていました。けれども測れなければ全然始まらない話なので、みんな測りたいと思っていたわけですが、今まで誰も測れなかったのです。そこでいろいろ装置を開発して、測定に成功しました。<br />
</p>
<p class="q">
―ハイパー核から出てくるγ線を測ると、どんなことがわかるのですか？<br />
</p>
<p>
　要するに、strangeクォークを持った粒子（Λ粒子）が、原子核の中で、どのように動いていたり、どんな力をまわりから受けているかが、γ線の測定によって、手に取るようにわかるようになった、ということなのです。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜγ線の測定によって、Λ粒子の動きや力がわかるのですか？<br />
</p>
<p>
　γ線とは光の一種です。普通の可視光やエックス線などの光は、原子から出ます。原子のまわりをまわっている電子には、軌道があり、軌道が変わる時、余分なエネルギーを光として出すわけですね。それと同様に、原子核も、陽子や中性子がぐるぐると原子核の中を整然とまわっているのです。そこにも実は軌道があって、そのまわっている軌道が変化する時に出る光が、γ線なのです。<br />
<br />
　そのγ線のエネルギーなどを正確に測ることで、原子核の中でどういう軌道でまわっているか、わかっちゃうわけです。それが我々の装置によって、できるようになったわけですね。このようにして、Λ粒子が中でどう動いているかがわかり、中で動いているΛ粒子が受けている力もわかるようになって、、ハイパー核の中身の細かい構造がわかるようになりました。だいぶ、その辺の研究が進みました。<br />
<br />
　ただ、実験してみると、理論家の予想通りじゃないこともいろいろありました。例えば、γ線の出方やエネルギーなど、予想とはだいぶ違っていることもありましたね。それは、理論の中でΛ粒子の核力が正しくなかったからです。そこで理論が修正されて、そうやってより正しい理論に変えられていく。やはり実験あるいは理論が何か大発見してすべてが発展したと言うより、実験と理論の両方で互いに連携しながら研究が進んでいく。そういうことだと思いますね。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_12">Λ粒子が原子核に入ると、原子核の大きさが縮む現象を発見</h2>
<p class="q">
―「実験と理論の両方で互いに連携しながら研究が進んでいく」具体的なエピソードはありますか？<br />
</p>
<p>
　ハイパー核のγ線測定は、僕のこの１５年くらいのテーマですが、それを最初にやろうとした頃のことです。当時、僕は助手で、ハイパー核のγ線をこれから測り始めると言った時、当時、理論の大学院生だった肥山詠美子さん（現在、理化学研究所）が、「γ線を測るのなら、ぜひある測定をしてください。原子核にΛ粒子を入ると原子核がきゅっと縮むのがわかるはずなんです」と言ってきたのです。<br />
<br />
　Λ粒子が原子核に入ると原子核がきゅっと縮むとは、昔から理論的には予想されていて、計算もされていたのですが、誰も測れる人がいなかったのです。けれども、僕の装置を使ってγ線の放出の様子を正確に測ると、実は縮む様子までわかることに、最初は僕も気づいていなかったかなぁ。<br />
<br />
　それで当時２０代の彼女が、「こういう風に縮んで、その縮んだ影響でγ線の出方がこう変わるはずだ」というところまで精密に計算して論文までつくって、それで「測ってください」って言ってきたわけね。「あぁこれだったら、本当に測れるかもしれないな」と思い、急きょ実験方法を検討して、すでに提出していた実験提案書を書き換えて再提出して、それで実験したのです。<br />
<br />
　そしたら彼女の予言通り、原子核が縮んでいる証拠がつかまった、ということがありましたね。楽しいですよ。理論の予言通りでも楽しいし、違っていても、それはそれで楽しいです。<br />
</p>
<p class="q">
―その研究は、どのような点でユニークなのですか？<br />
</p>
<p>
　だいたい原子核は、ほとんど縮まないことで有名な物質なのです。水玉のようにぶよぶよ振動したりして一瞬だけ縮むこともあるのですが、ずっと縮んだ状態にしておくことはできない。水だって、圧縮しようとしても密度はほとんど変わらないですよね。大きな原子核も小さい原子核も、いつも一定の密度なのですよ。陽子と中性子は割とみっしり詰まっているのですが、それがいつも完全にくっついているわけでなく、ちょっと微妙な一定の距離を置いてお互いが存在しているのです。<br />
<br />
　陽子や中性子のように、互いに引力で引き付け合っている粒子が集まれば、たくさん集まるほど全体が小さく縮むのが普通なのですが、原子核は縮まないのです。大きくても小さくても、いつも同じ距離を保っていて、全体の密度は一定なのですよ。でもΛ粒子を入れると、ちょっとだけどぎゅっと縮んで密度が上がるんです。<br />
</p>
<p class="q">
―なぜ縮むのですか？<br />
</p>
<p>
　なぜ？を説明するのはちょっと難しいのですけど（笑）。Λ粒子は特別な粒子でして、クォークの種類が違うせいで、陽子や中性子がすでに存在している中にも、どこまでもずけずけと入っていけるのですよ。<br />
<br />
　陽子と中性子は、すでに自分の仲間がいるところには入れないのです。陽子ならすでに陽子がいるところには入れないし、中性子ならすでに中性子がいるところには入れません。<br />
<br />
　原子の中の電子もそうですね。電子もある軌道にすでに電子がまわっていると、同じ軌道に入れないのです。実は、これは高校の化学でも習っています。K殻、L殻、Ｍ殻というのはそれぞれがいくつかの軌道の集合です。同じ軌道を電子が１つしか回れないため、それぞれの殻にはいれる電子の個数も決まってしまうのです。<br />
<br />
　厳密に言うと、電子には上向きと下向きのスピンのものがあって、これを別々の粒子と考えていいので、一つの軌道に上向きスピン１個と、下向きスピン１個の２個が入れるのですけど、とにかく、ある軌道には同じ粒子は１種類しか入れないという決まりがあります。これは、「排他原理」と言うのですが、量子力学の鉄則なんですよね。「パウリ原理」や「パウリ排他律」とも言います。<br />
<br />
　その鉄則に従うと、原子の電子軌道の場合と同じように、陽子や中性子も、原子核の中でそれぞれいろいろな軌道を、みっしりと詰まってまわっているわけです。そこには外からは入れません。だから、一番外の空いている軌道をまわるしかないわけです。外の軌道をまわっても、中は別に縮まないわけですね。<br />
<br />
　けれども、Λ粒子は種類の違うクォークを持っている、陽子や中性子とは別種の粒子なので、その排他原理に従う必要がないため、陽子や中性子がすでにまわっている軌道にも入っていけるのです。一番内側でも、途中の軌道でも、好きな軌道に入ることができます。実験でも、好きな軌道に入れることができます。<br />
<br />
　そうやって中の方に入ると、そこだけ密度が上がりますよね。さらに、Λ粒子は陽子・中性子を引力でひきつけるので、まわりから陽子・中性子が集まってきて、全体の密度が上がる。そういうことが起こるんです。それはおもしろい。普通の原子核では、絶対に起こらない効果ですね。<br />
</p>
<br />
<h2 id="p1_13">何かにとらわれることなく、いろいろな興味で、いろいろな経験をして</h2>
<p class="q">
―クォークの理論と、現実の物質、このふたつをつなげたい。そして、一つの理論で、この複雑な現実の世界を説明したい。そのためには、理論と実験がお互い協力し合うことが大事で、そのようにして物理学が発展していくおもしろさを、田村先生のお話から感じることができました。<br />
</p>
<p>
　そこをやらないと、現実の世界がわかったことにならないことは確かなのでね。<br />
</p>
<p class="q">
―では最後に、今までのお話を踏まえて、中高生も含めた読者へメッセージをお願いします。つまり、田村さんはどんなことが大切だと思っているかを、メッセージに代えさせていただければと思います。<br />
</p>
<p>
　一般には、やはり高校の頃は、何でも積極的にやってほしいな、ということですかね。僕なんかも、高校生の頃は受験勉強もあったし、物理や数学が好きだったけれども、精神医学や心理学の本を読んで「精神科医になりたい」と思ったり、仏教の本を読んだり。やっぱり、知的好奇心が一番大きい時でしたね。<br />
<br />
　だから、自分が将来何になりたいかなんて、普通はわからなくて良いと思うのです。高校の頃、それを決めるのは無理だと思います。よく自分が将来何をすれば良いかわからないということで、何となく引け目を感じると言うか、「自分の将来像もないのに勉強して良いのか、目的なく大学に進学して良いのか」と思っちゃう人が結構いるみたいだけど。<br />
<br />
　でも、僕もそうだったんですが、別に最初から科学者になるだなんて、それは決められないものですよね。もちろん科学者も一つの夢ではあったかもしれないけど。だから高校の頃は、将来の目標を明確にしていなくても、いいのかなと思うのですけどね。ただ、それでも高校３年生になれば進学する大学の学部や学科を決めなければいけないのが難しいところです。本当は早すぎると思うんですが。<br />
<br />
　将来の目標がはっきりしていなくてもいいのですが、無気力になってはいけません。高校生から大学１、２年生くらいまでは、とにかくいろいろなことに興味を持って、もちろんその中で気に入ったものはどんどん勉強してもらいたいですね。しかし、何かにとらわれる必要も必ずしもなくて、いろいろな経験をしてもらいたい、ということですかね。<br />
<br />
　東北大学の１、２年生によくいるのですけど、ひきこもってしまったり、あるいは、物理学科なら物理の勉強はするけど、ほかには興味がなかったり。もちろん、学校の勉強まっしぐらの人の良い部分もあるけど、でもやっぱり積極的にいろいろなことに首をつっこんでみたり、いろいろなことをやってみて、経験を積んでほしいなと思いますね。<br />
<br />
　そうやって、だんだんやりたいことが、自ずと見えてくると思います。ましてや高校生は、やはり基礎知識をつける時期、あるいは考え方の基本を身につける時期。ですから、今の学校でちゃんと勉強して、あと部活なり課外活動をしっかりやって、友達をたくさんつくってということを、普通にやることが一番良いと思うのですけどね。<br />
</p>
<p class="q">
―個人的な感想ですが、自分が中高生の頃を振返ると、何か具体的な目的に最適化しなければならないような脅迫感のような雰囲気があって、本当は自分が不思議に思ったり興味が湧いた気持ち自体を削ってしまった気がします。だから、それをとり払って、不思議に思ったり興味が湧いたものに、ナチュラルにリンクをかけれたら良かったなと思います。<br />
</p>
<p>
　全くそう思いますよ。なんか最近、そういう傾向がありますよね。将来の目標がなければいけないとかね。でもそれはかえって、酷なことかなと思いますけどね。けれども、だいたい大学の高学年くらいになったら、当然将来を見据えて、そこから先は、突っ走ることでしょうね。<br />
</p>
<p style="text-align:center">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20110810_4.jpg" alt=""  style="width:600px;" /><br />
</p>
<p class="q">
―田村さん、本日は大変お忙しい中、どうもありがとうございました。<br />
</p>

<br />
<p id="sa_next">
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<a href="http://shinbun.fan-miyagi.jp/article/article_20110810-2.php">【学生インタビュー】先生や先輩たちの話を聞いて「おもしろそう」だった</a>
</p>
<br /><br />

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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学理学部物理系同窓会 泉萩会</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">教授</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">物理学専攻</category>
            
            <pubDate>Tue, 27 Dec 2011 09:13:35 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>世界中の研究者が憧れる研究拠点へ／東北大学WPI-AIMR本館竣工記念式典</title>
            <description><![CDATA[<h1>世界中の研究者が憧れる研究拠点へ／東北大学WPI-AIMR本館竣工記念式典</h1>
<p class="date">2011年12月17日公開</p>


<div class="rightPicture2" style="margin:20px 0px 0px 0px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_28.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>７月末に竣工した東北大学WPI-AIMR本館＝東北大学片平キャンパス（仙台市青葉区）</p>
</div>
<p>
　東北大学原子分子材料科学高等研究機構(山本嘉則機構長、仙台市青葉区、以下WPI-AIMR)の本館の竣工記念式典が７日、開催され、同大学や文部科学省、施工業者などの関係者らが出席した。<br />
<br />
　本館の建設は震災のため予定より約４ヶ月遅れ、７月末に竣工した。外壁は旧東北帝国大学工学部金属工学教室のすだれレンガが壊されることなく保存され、居住空間はガラスを用いて現代的に仕上げられた。研究者同士の活発な交流を促進するためのスペースも設けられた。
</p>
<div class="rightPicture">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_03.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>東北大学WPI-AIMR本館竣工記念式典の様子</p>
</div>
<p>
　記念式典では、山本機構長が司会を務め、「これまで片平や青葉山キャンパスに散在していた研究者の大半が一堂に会することにより、さらなる異分野融合研究を推進し飛躍発展する研究環境が整った」と挨拶した。続いて井上明久総長からの挨拶があり、阿部博之元総長（現・科学技術振興機構顧問）、戸渡速志文部科学省大臣官房審議官、黒木登志夫WPIプログラム・ディレクターから祝辞があった。
</p>
<div class="rightPicture" >
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_05.jpg" alt=""  style="width:200px;" />
<p>交流会で鏡開きを行う関係者ら</p>
</div>
<p>
　記念式典後は、出席者が研究者の説明を受けながら、研究室や交流スペースなどの施設を見学した。次いで行われた交流会では、西澤潤一元総長（現・上智学院顧問）と長田義仁WPIプログラムオフィサーから祝辞があった後、関係者による鏡開きが行われ、同機構のさらなる飛躍発展を祈願した。
<br />
<br />
　同機構は、文部科学省が０７年度にスタートした「世界トップレベル研究拠点（WPI）プログラム」に採択された６拠点のひとつ。
材料科学分野を中心として、世界中から第一線の研究者が集い、異分野を融合させ、新材料の研究開発から応用まで一貫して取り組む研究拠点の構築を目指している。
</p>
<br />


<h2>インタビュー：関係者に聞くこれからの意気込み</h2>


<h3 style="border:0px">◆井上明久さん（東北大学総長）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px; margin:10px 0px 0px 0px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_inoue-san.jpg" alt=""  style="width:100px;" />
<p>井上明久さん（東北大学総長）</p>
</div>
<p>
　これまで各キャンパスに散在していた研究者が片平キャンパスに一堂に会することにより、本プロジェクトに求められている、異分野が融合し合うことで新たな科学技術・学術を創り出す環境は整った。後はぜひ各研究者等に頑張っていただき、さらには本学の発展に力を尽くしていただきたい。
</p>
<br />
<h3 style="border:0px">◆山本嘉則さん（東北大学WPI-AIMR機構長）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px; margin:10px 0px 0px 0px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_yamamoto-san.jpg" alt=""  style="width:100px;" />
<p>山本嘉則さん（東北大学WPI-AIMR機構長）</p>
</div>
<p>
　（研究環境整備のため）文部科学省から２０億円を措置された、非常に大きな責任が我々にはある。国民の税金を使っているので、その期待に応えて、世界中から材料科学の研究者が集結するような、世界トップの研究拠点をつくらなければいけない。プロ野球選手が大リーグに憧れるように、「材料科学と言えば仙台」と世界中が憧れるような研究拠点をつくりたい。
</p>
<br />
<h3 style="border:0px">◆谷垣勝己さん（東北大学教授）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px; margin:10px 0px 0px 0px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_tanigaki-san.jpg" alt=""  style="width:100px;" />
<p>谷垣勝己さん（東北大学教授）</p>
</div>
<p>
　日本は昔から内向き志向で、一時は世界へ出ようとした時期もあったが、最近は内に戻っている傾向にあると思う。このような世界トップレベルの研究拠点があれば、また新しく日本が外に打ち出せる、あるいは外国人を日本に呼んで来れることになる。それは研究の発展に重要なこと。その観点から期待をしているし、私個人としても楽しみだ。
</p>
<br />

<h3 style="border:0px">◆高橋隆さん（東北大学教授）</h3>
<div class="rightPicture" style="width:100px; margin:10px 0px 0px 0px">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_takahashi-san.jpg" alt=""  style="width:100px;" />
<p>高橋隆さん（東北大学教授）</p>
</div>
<p>
　WPIは世界が注目する研究所。これから東北大学の英智を片平に集結させ成果を挙げようという、まさに出発点。これまで各キャンパスに分散していた研究者達が新しい建物に一堂に会し、すぐ隣の部屋には、自分とは全く分野が異なる、一流の研究者達がいる。そこで融合研究を進めて、もう一飛躍したい。世界の材料科学のメッカという、東北大学の一番の強みを活かし頑張りたい。
</p>



<br />

<h2>フォトギャラリー（WPI-AIMR本館の施設見学）</h2>

<div style="width: 290px; float: left; margin: 15px 0px 0px 0px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_02.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">内観</p>
</div>
<div style="width: 290px; float: right; margin: 15px 0px 0px 10px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_19.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">交流スペース</p>
</div><br class="c" />

<div style="width: 290px; float: left; margin: 15px 0px 0px 0px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_11.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">バイオデバイス研究室（下村グループ）</p>
</div>
<div style="width: 290px; float: right; margin: 15px 0px 0px 10px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_12.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">界面物理化学研究室（栗原グループ）</p>
</div><br class="c" />

<div style="width: 290px; float: left; margin: 15px 0px 0px 0px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_13.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">有機ソフト・ハイブリッド材料研究室（阿尻グループ）</p>
</div>
<div style="width: 290px; float: right; margin: 15px 0px 0px 10px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_14.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">電子材料研究室（谷垣グループ）</p>
</div><br class="c" />

<div style="width: 290px; float: left; margin: 15px 0px 0px 0px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_15.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">界面物理化学研究室（Teizerグループ）</p>
</div>
<div style="width: 290px; float: right; margin: 15px 0px 0px 10px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_16.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">材料物理先端分光研究室（高橋グループ）</p>
</div><br class="c" />

<div style="width: 290px; float: left; margin: 15px 0px 0px 0px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_17.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">界面物理化学研究室（一杉グループ）</p>
</div>
<div style="width: 290px; float: right; margin: 15px 0px 0px 10px;">
<img src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_18.jpg" alt="" style="width: 290px;">
<p style="font-size: x-small; padding: 0px; margin:0px">有機ソフト・ハイブリッド材料研究室（山本・浅尾研究室）</p>
</div><br class="c" />
<br />

<!--
<span class="mt-enclosure mt-enclosure-image" style="display: inline;"><img alt="article_20111207_28.jpg" src="http://shinbun.fan-miyagi.jp/images/article_20111207_28.jpg" width="500" height="333" class="mt-image-none" style="" /></span>
-->]]></description>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">科学って、そもそもなんだろう？</category>
            
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">WPI</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">東北大学</category>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#tag">竣工式</category>
            
            <pubDate>Sat, 17 Dec 2011 18:30:45 +0900</pubDate>
        </item>
        
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