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2017年 08月 22日 (火)

引地精工代表取締役社長の引地政明さんに聞く:社会って、そもそもなんだろう? 取材・写真・文/大草芳江

2010年08月26日公開

壁を避けるな、必ず解決してから通れ。

引地 政明  Masaaki Hikichi
(引地精工株式会社 代表取締役社長)

 1979年、引地製作所として、プレス二次加工を主に個人会社として創業開始。1982年、引地精工株式会社に法人化・社名変更。1984年、業務内容を変更し、省力化機械の生産に転じる。2002年、ISO9001認定取得。2004年、ISO14001認定取得。

 「社会って、そもそもなんだろう?」を探るべく、社会に関する様々な「人」をインタビュー
その人となりをまるごと伝えることで、その「人」から見える「社会とは、そもそも何か」を伝えます


産業用自動機メーカーの引地精工(宮城県岩沼市)は、
設計段階から最終製品製造まで一貫して請け負うスタイルで、
日本全国に顧客を持ち、大手企業から厚い信頼を得る、ものづくり企業である。

創業者で社長の引地さんは「様々な壁にぶつかりながら、
当たって砕けろの精神で、必ず解決してから通ってきた。
壁を避けちゃあ、負け犬なんですよ」と、繰り返し強調する。

「勝てば官軍。だから、負けるなよ。すべてに勝て」

「戦うために生まれてきた」と語る引地さんから見える、
社会とはそもそも何かを探った。

<目次>
壁を避けるな、必ず解決してから通れ
戦うために生まれてきた
勝ち組か・負け組か
日々変革する
ニーズは刻々と変化する
男に二言はない
一番厚かった壁
まず思うことが先。あとは努力次第。
曲面・鏡面外観検査ロボットを開発
今まで見えなかったものが見えるように
自宅の車庫を改造して、ひとりからスタート
申し訳なく思いながら省力化を図る
どんどん仕事が中国へ流出
ものづくりは破壊と創造
捨てることが、新たなものを生む
散々、困んないと、ダメ
苦労を楽しみに変える
勝てば官軍 だから負けるな


引地精工株式会社 代表取締役社長の引地政明さんに聞く


壁を避けるな、必ず解決してから通れ

 いろいろな挫折をしながら、いろいろな壁にぶつかりながら、でも、逃げなかったですね。「当たって砕けろ」の精神で、何が何でも解決してきました。

 新入社員が入って来た時も、必ずこんな話をするんです。「これまでは親元でぬくぬくと育ってきたが、これから社会に出る。壁に一杯ぶつかるよな。もちろん壁は厚かったり薄かったりするけど、その壁を避けていく人なら、うちの会社は、初めからよけた方がいい。どんなに薄い壁でも厚い壁でも、必ず解決してから通れ」って。

 壁にぶつかった。で、それを解決した。これ、人生の中で、大いに自信になるんだよね。だから、大いにぶつかれ、って言っているんですよ。で、必ず解決して通れ。よけちゃあ、負け犬なんですよ。

 でも俺だって、逃げたいと思ったこともあったんですよ。でも思いなおして、「当たって砕けろ」の精神で、必ず解決してきた。だから、今があるんですね。逃げていたら、この会社はなかった。

 だから、避けるな、必ず解決しろ。皆にも必ず言うんです。これは絶対にね、これから社会人になる人たちに強く言いたいね。


戦うために生まれてきた

―そんな引地さんがリアルに感じる、「社会ってそもそも何ですか?」

 難しい質問だな。でもやっぱり、この世に生まれ、自分を試す試練の場じゃないかな。試練の場だから、どんな難問も解決して、努力をして、やっぱり勝ち組に入らんといかんでしょうね。

 持論があるんです。よく若い人たちが集まったところで「何かしゃべれ」と言われたとき、よくこんな話をするんですよ。俺を例題にして、極端に言うけど、こういう奴もいるんだなと思って聞いてください。

 「皆、男に生まれたよね?男は何のために生まれたんだ?男は戦うために生まれてきた。俺はそう思っている」って。会社に行って戦い、家庭を守るために戦い。すると、使命はたったひとつですよね。

 勝つことしか、ないんです。私はそう思って生きているんですね。何事も戦いだと思うんですよ。良いか悪いかは別にして、自分の生き様を話しているわけですね。


勝ち組か・負け組か

 このご時世、我々中小零細は、勝ち抜いて生き残ろうとしているわけです。いや、生き残ろうと言うより、勝ち残ろうとしているんです。勝とうと思わなければ、勝ち残りませんよね。

 では、我々は何をしているのかと言うと、世の中が必要としていることは何だろう?とニーズを先取りするところからはじまります。俺たちは、世界の名だたる大手さんに相手をさせていただいているけど、ニーズを先取りして応えていかなければ、勝ち組にはならないですよ。

 必要とならないものをつくっていたら、話にならないです。少なくともアンテナを人より10センチでも20センチでも長くしろ、って皆には言いますね。

 少しでも、情報の先取りをして、世の中のニーズをとらえろ。すると、それに応えるためには、ああしよう・こうしよう、と決まりますよね。その先取りなんです。

 それをやれるか・やれないかで、自分が負け組か・勝ち組かが決まりますよね。そう私は思っています。やっぱりニーズの先取りをして、そのニーズに応えるべく努力を重ねる。それが一番ではないのかなと思っているんですよ。

 だって、ニーズがないものをつくったって、誰も買ってくれないしね。こういうものが世の中で必要だ。だからこそ、必要とされるわけですからね。


日々変革する

 日々成長するために、日々変革する。そのために、日々努力を怠らない。昔は「石の上にも三年」と言われていましたけど、それは時代遅れもいいところです。

 今は半端ない情報化社会ですよね。3年後云々じゃないです。日々じゃないですか。それだけ超スピードの時代になったと言っても過言じゃないです。

 今のご時世、俺が何としてもやらないといけないと思っているのが、改革ですよ。会社自体も、そして自分自身も、改革しないといけない。

 変革するためには、今までのやり方や考え方を捨てなければ、できないんですよね。今まではこうやっていたけれども、もっと良い方法があるよな。そう言って進めることが大事ですね。

 昔ね、宮城県と言わず東北そして日本全国で、老舗と言われた素晴らしいたくさんの会社がどんどん潰れたんですよ。それはなぜか?今までのイメージを変えられず、変革できなかった。その結果、世の中のニーズについて来れず、倒産せざるを得なかった。そんな人たちを、私はいっぱい見てきているつもりなんですね。

 いつの世も、如何に世の中のニーズの先取りし、変革を遂げていくか、じゃないかな。俺はそう思っているんです。


ニーズは刻々と変化する

 もちろん昔の良さもあります。だから、昔の良さと今の必要なものをミックスしてはじめて、世の中の人たちから必要とされるのだと思います。昔の良さの否定はしません。ただしニーズは、刻々と変わりますから。

 例えば、携帯電話ひとつとったって、昔は、メールも世の中が必要としていなかったじゃない。けれども今は、いろいろな機能が入っていますよね。GPSまで入っている。昔は、受信と発信だけで良かったのにさ。

壁に飾られていた社訓

 それはなぜかと言えば、人間は贅沢ですから、ある意味でね。今持っているもので満足し得ないから、新たなニーズが出てくる、と思っているんですね。より良いものを求めるんですよ。だから、世の中のニーズも変わってくる。

 日々変革なんですね。超スピードでニーズが変わってくる。そんな気がしますね。

 これ、確か平成2年くらいに書いたものです。会社創業当時、うちはこういうことをやっていくぞ、と。不可能を可能にしてはじめて、付加価値がありますよね。そういう仕事をしたいね、というところからスタートしたのね。


男に二言はない

―よく聞く言葉ではありますが、有言実行が難しいのではないですか?

 いや、そう言う人が多いかもしれないけど、俺は「男に二言はない」と思っていますから。言って実行しなかったら、男じゃない。そういう仲間を、一生懸命探しています。

 いくら立派なことを言ったって、やらなかったらホラですよ。男に二言はない。言ったら責任を持つ。できないのなら言うな。そういう信念ですから。それを実践してきたつもりです。

 もし言ってできなかったら、腹切ってお詫びしますよ。武士じゃないですけどね(笑)。いずれにせよ、そういう思いをずっと貫いてきたし、真剣にそう思っているんです。これ大事なことですよね。

 恰好良いこと言うやつは、いっぱいいます。でも実行しないんです。だから「馬鹿なんだ」って言いたい。言ったのなら、「男だろ。実行しろよ」と言いたい。そうやって人に言って、自分にも言い聞かせています。

 やれもしないことは言っちゃいけない、と思っていますから。大事ですね。で、こういう風に何にしても、やる気でしか解決しませんから。やる気です。すべてのやる気は、どんな問題でも解決しますね。

 でも、言ったらやるんだよ。できないんだら、口にすべきじゃない。っていう信念を持たれたら、絶対に良い方向に行きますから。間違いなく。

 自分は言ったら絶対にやる。やれないものはごめんなさいと言う。それだけはやっていたということです。本気でPRしていましたから。それを評価していただける。そうならないと、いけないような気がしますよね。


一番厚かった壁

―そもそも「壁」とは何ですか?その中でも、これまで最も厚かった壁とは何ですか?

 客先に信用をいただけない。でも、何としても信用を頂戴したい。しからば、どういうやり方で信用をいただけるような仕事をやれるか。それが、一番厚い壁だったかな。

 ここぞと決めて、それにアタックして、どうしても取引きをさせていただきたい。今までぶつかってもね、なかなか口座をいただくまでにはいかなかった、そういう時代がありましたからね。

 それには、技術力だったり対応力だったり、いろいろな足りないものがありました。ですから、それは信用をもらって口座をいただくための努力は、半端じゃないものでした。

 今なんかは、松下グループさんの本社からはじまり全国の事業所、そして、東レさん、トヨタ自動車さん、デンソーさん、あとは飛行機関係、宮城ではお菓子屋さんや牛タン屋さん。いろいろなところでやっています。


まず思うことが先。あとは努力次第。

 なぜ、これだけいろいろな業種を抱えているのか?と言うと、「治にいて乱を忘れず」という諺、ご存じですか。良いときに悪いときのことを考えて、備えるということ。やはり、ひとつの業種だと、こけるときは早いですよね。

 景気は良いばかりではない。それを頭に入れながら考えれば、不況になったときも、それをもろに喰らわずに、ある程度良い方向に行けるんだろうと思って。

 ところが恥ずかしながら、今回(リーマンショック)は避けきれなかった。これだけの不況に落ち込んで、すべての業種で影響を喰いましたわ。

 けれども、それだけ増やしてきたおかげで、この工場は満杯です。今も日曜日は休まずに稼動していますから。ですから、仲間から見れば、羨ましがられるような状態でやっています。

 自慢じゃないけどね、30年間やってきて、赤字になったのは2回しかないんです。でも今回は、3回目になっちゃうかもしれない。でもそんなのは、へっちゃらだけどね。大それた赤字じゃないし。

 全部今まで乗り越えてきたし、もちろん、なにくそと思っていますから。そういうのが必要なんですよ。まず思うことが先ですよね。だったら、先々まで見えてるの?って言ったら、そうでもないんですよ。あとは努力次第ですよ。

 多分、今、このご時世に景気が良いなんて言ったら、石をぶつけられますよ。だから、あまり言わないようにしていますけど(笑)。思いっきり景気が良いところは、あまりないでしょう?まわりを考えたら、皆、苦労しているんですよ。

 経験と実績と積み重ねが、ここで発揮できるのではないかな。それが底力になるんじゃないですか。大変なご時世ですけど、方法・手段は絶対にある、と諦めませんから。不可能に挑戦するんです。


曲面・鏡面外観検査ロボットを開発

 今年に入って、おもしろいですよ。不思議なことに、年明けた途端、警察から表彰。そして、デンソーウェーブさんから、2009年国際ロボット展の感謝状。昨年、東京ビックサイトで開かれた国際ロボット展に、うちも出したんです。

 うちはね、実は、デンソーさんと組んだんですよ。デンソーさんの多関節ロボットを使って、うちが画像処理機械をつくったんです。今まで見えなかったものを見えるように、努力しましたから。

 「鏡面仕上げ」という鏡のようなものでも、傷があることを発見できるような、画像処理機械をつくったんです。今までは、見えなかったんですよ、ぴかぴか光っているものは。

 それを工夫して、努力して開発しました。それで、光るものは光を消して、撮動して、OK/NGを判定させる、という機械をつくったんです。

 この機械を特許申請した上で、国際ロボット展に展示したら、デンソーさんもびっくりしたみたいで。うちのブースには、4日間で三千人以上も来てくれたんですね。うちも、はじめは千人も来たらいいだろうと思っていたんです。でも、2日目でカタログがなくなっちゃった。

 それだけ世の中にニーズがあったということです。今までは、こういう検査は全部、人間がずーっと見ていたわけです。それを、コンベアを流れているうちに、どんどん流して止まらずに検査してしまえ、と。


今まで見えなかったものが見えるように

―開発のポイントは何ですか?

 今まで見えなかったものが見えるようになった。要するに、まず、専門用語では「ピンホール」って言うのですけど、針の先でちょっとついたような傷は、通常、人間がこうやって光に照らしてみないと見えなかったんです。

 5ミクロン(ミクロン=マイクロメートル=1ミリメートルの千分の一)の傷とか、10ミクロンの傷まで見たいのだけど。そういう精度まで、ぴしっと見れる。針の先でちょんとついたような傷まで見つけますから。

 これ以上は良品、これ以下は不良品。そういう指示をソフトで与えます。機械はきっちり、それを守りますから。人間と違って(笑)ミスはしないんです。ちゃんと見て、良し悪しを判断します。そういうロボットの開発をしています。

 サイズは大中小あって。大きいものでは、車一台流れてきても、見れますから。小さいものは、一ミリくらいのものでも見れます。幅広いです。

 簡単なわけでしょう?光ってるなら、光を殺して、検査しろ。撮動すると同時に、コンピュータで処理しますから。70センチくらいの車のドア一枚、あれ80箇所くらいに分割して、そんなの17秒くらいで検査しちゃいますから。

 人間が見ていたら、大変ですよ。数分かかるんじゃないですか?それを車なんかだと、無停止で(コンベアで)流しているわけです。そうなれば、その間に、超スピードで検査を終えないと、間に合わないですよ。70~80箇所は、15秒とか20秒以内に見ちゃう。そういう機械になったんです。

 それから、これまでのxyz軸(直交座標)じゃあ、見えなかった。xyz軸で動く機械では、曲面ではこういう風に(コンベアで)流れていくから、見えなかったのです。だけど、多関節ロボットを使ったおかげで、r(極座標)もインプットすれば、それで動くわけです。それが発見です。

 例えば、人間に傷がないか検査しろ、って言われたら、こうやって(検査する側が対象にまわりこんで)見るじゃないですか。でも、ものはベルトコンベアで動くから、このまま固定されている。でも、多関節ロボットなら、こうやって(まわりこんで)凹んだ通りに動くから、見れるんですね。

 ロボットはね、多関節ロボットなら、何でも良かったんです。デンソーさんのロボットでは、ここ(画像処理機械部分)はカメラだったのです。で、例えば、多関節ロボットにしても、このカメラを改造しないと見えないんですよ。これを取っ払って、うちは改造して、見えないものを見えるようにしたんです。

 ものづくりの中のひとつです。不良品が市場に出たら、信用をなくしちゃう。だから、そういう不良品は、製造過程の中で抑え込まないといけない。間違いなくものをつくったか、検査しているわけです。そういう、ものづくりのひとつです。


自宅の車庫を改造して、ひとりからスタート

―そもそものスタートは?

 一番最初は、自宅の車庫を改造して、自分ひとりからスタートしたんですよ。最初は、技術力や資本力がなかったから、「二次加工」と言いまして、プレスとか、そういう仕事をやりだしたんです。

 けれども本当は何をやりたかったかと言うと、やっぱり、不可能を可能にして、世の中にこれしかない、というものをつくろう。そういう構想を描いてスタートしたもんですから。五年後には、引地製作所から引地精工に改め、プレスとかはやめて、設計を入れ、省力化を展開していったのです。

 と言うのは、リコーの社長に27歳の頃に拾われて34歳まで100人弱の工場長をしていました。その時に本当に感じたのは、人をうじゃうじゃ並べて、人事管理とか、いきなり頭を悩まされたんです。

 例えば、誰かが休むと、穴が開くでしょう?ものが流れないじゃないですか。じゃあ、その穴に一人投入すれば良いという簡単な話じゃないんです。一人慣れている人が休むと、一人でやっていたものを、二人も三人も投入しないといけない。

 そんな悩みをいっぱいしたもんですから。俺が会社やるなら、こんな苦労したくないな。そうじゃなくて、これがロボットだったら、文句も言わないし休まないし。そこらへんが、発想なんです。

 苦労したんですよ。壁にぶつかったから。こういう考えで、会社をつくるはめになったんです。


申し訳なく思いながら省力化を図る

 だからね、バブルの時代は自分らが動くと、失業者を増やすんですよね。だから気の毒でした。けれども、開き直るしかない。だって世の中が必要としているのだから。俺がつくらなくたって、他の誰かがやるんでね。割り切ってやっていました。

 例えばね、60人いる会社があるとします。その会社に「三千万円投資するから自動化してほしい」と頼まれるわけです。すると、30人くらいはいらなくなるわけです。

 30人クビにされたら気の毒だな。だから、できるだけ30人は別の仕事を新たに入れて、クビにしないでくださいね。俺達、紹介しますから、とやったのだけどね。けれども相手の経営上の問題だから、俺達は立ち入るわけにはいかない。

 そんな嫌な思いもしましたね。でも、割り切るしかなかった。世の中にはそういうニーズがあるわけですから。あえて割り切って、自動化して、余った人間は、別の仕事をさせてやってくださいね。そうやって進めてきました。

 だから、ある意味では、なんかこう申し訳ないなという思いも持ちながら、一生懸命、省力化を図ったわけです。


どんどん仕事が中国へ流出

 でもね、省力化をしていなかったら、もっと早く中国に負けていますよね。日本でロボット化したからこそ、まだ付加価値のある仕事が残っている。でも今ですら、どんどん仕事は中国に流出していますよ。

 なぜならば、ものすごく精密なものは中国はまだダメと言っていますが、普通のものなら日本に対抗できるくらい十分な加工が中国でできますから。

 多くの大手さんは、一番最初にコストなんですよ。同じことをやるのに、例えば、日本では1000円だけど中国で500円なら、中国でやった方がいいよな。日本では逆立ちしても1000円かかるんだからな。それが現状なんですね。ですから、どんどん仕事は流出していく。

 それで今、俺は何を考えているかと言うと、その流出を止めたい。我々中小零細が固まって、中国が500円なら我々も500円でやる。知恵を絞り、創意工夫して、中国に負けないものづくりをしよう。

 その手本を俺が見せようと思って、二千万円する機械を犠牲にして、ものづくりの今までの考えを捨てさせ、新たな手法で、加工を始めていますから。中国が500円なら俺たちも500円でやる。それでも利益を出す。それを去年からやっています。


ものづくりは破壊と創造

 要するに、今までのものづくりのやり方を根底から変えたのです。今までのものづくりのやり方を捨て、新しい手法でやりだした。今までにない方法ですよ。

 やっぱり皆さん、素晴らしい脳みそを親からもらっているんですね。使わないから活性化しない。使えば活性化する。だから、ガンガン使って、知恵を絞れば良い。

 パナソニック前社長の中村邦夫会長が「ものづくりは、破壊と創造で行こう」と言った。今までのやり方を破壊しよう。創意工夫をしよう。創造をしよう。そうやっていかないとダメだよと言ったのですね。

 あれは私も賛成でね。今までのやり方に固執するから、1000円が1000円のままなんですよ。1000円のものを500円にできるやり方があるんですよ、それで儲かるやり方が。

 全く画期的なやり方をしていますから。それは全く今までのやり方に固執しない。全く今までの考えを捨てさせましたから。だからこそ、できることなのです。特許もそれに準じて申請中です。

 おかげさまで二千万円以上のマシンも、16、17台あるんですよ。それなりに日中は皆さん社員の人たちに働いてもらって、夜、稼がせるんです。コンピュータだけで仕事をするんです。朝来たら10個も20個も、ものがつくりあがっている。そんな方法を考えついたのです。


捨てることが、新たなものを生む

 やる気なんですよ。本当にやる気ですよ。やる気があれば、解決できますから。やっぱり、ぶつかんないと駄目なんですよ。もやしに育ったら腰が弱くなるから、突風でも来たら倒れますからね。ガーンと根っこを大きく生やしておけば、倒れないでしょう?

 要はね、何か新しいものを開発しよう、生み出そうとするなら、今までの考え方・やり方を、本当に捨てないとだめです。すると、いろいろなアイディアが生まれ、いろいろな手法を見出さなきゃといけない。ですよね、ものづくりをしないといけないわけですから。

 今までこれをこうやってつくっていたけれども、これをやめろって言われた。だったら、これをつくるためには、どんな方法でやるの?新たな方法を考えざるをえないわけでしょう?

 それが、今までにないものを産むんですよ。実感しているんです。それに実践もしていますから。実感と実践です。

 それに、中国への仕事の流出を止めたい。なぜ日本から中国へ仕事が流出するんだ。これをまず止めたい。そして、最終的にはカムバックさせたい、仕事を。逆に中国企業も「日本に頼んだ方が、コストは安くあがるし、良いものがあがる」。最後には、そう言わせてやりたい。

 そんなの何年もかからないでやれると思っているんでね。自分としては、絶対やれると思っていますから。それがやれないと、日本から仕事が流出してね、失業者がどんどん増えますから。まずは流出を止めたい。

 だってね、同じもので、日本は1000円、中国は500円。日本も500円まで下げれたら、それでも利益が出るように創意工夫をしたら。同じ500円でやれるなら、あえて中国に頼む必要ないよね。まずはそれをやろう。

 絶対やれるんですよ。自分を信じてやっていますから。やれるんだ。やってやろうってね。


散々、困んないと、ダメ

 だって、さっきの画像処理(検査ロボット)だって、そうですよ。こうやって特許申請できたのも、やる気なんですよ。2、3年悩みながらも。

 でも半分は自動だったのです。ただ、多関節じゃなかったので、いまいちだったんですね。それで一昨年くらいにデンソーさんが多関節ロボットを開発したのですよ。それをうちが、引用したのです。

 だけど、考えてみたらね。何もデンソーさんのロボットじゃなくても良かったのです。デンソーさんは特許に無関心、私らが勝手に取ったんだ。デンソーさんにも声かけたのだけど、「うちもパテント料(発明・特許・アイデアを商品化した際に発生するお金)払いますから使わせて下さい」からはじまったのです。

 世界各国で使ってくれたら、ずっとパテント料が入ってきます。そういうのを狙ってやったのです。そういうやり方をいろいろ考えたら、方法・手段はあるんですよね。

 考えないから、出てこないのじゃないかな、と私は思うのですけどね。散々、困んないと、ダメなんですね。だから、人間困るとそういうアイディアも生まれるし。本音でね、やる気満々でやられているから、ぜひ成功して下さい。


苦労を楽しみに変える

 結局、やる気なんですよね。苦労にぶつかってもね、苦労を楽しみに変えればいいんですよ。苦労だな、大変だなと思ったものを、解決したときの楽しさや充実感は、半端じゃないですよ。やりがいや生きがいを半端なく感じますよね。

 苦労を楽に変えれば良いのです。そう思いながら、やってきました。そうでも思わなければ、やってられなくなるよね、逃げたくなるよね。いきなり壁にぶつかったらさ、人間って弱いから。

 俺も、壁をよけようと思ったこと、たくさんあります。でも思い直して、解決しないと先がないよなという思いで、どちらかと言うと体当たりして、ここまで来たと思っていますから。

 そういう思いは、何度もしましたね。格好いいものじゃないです。やってられないなと思うこともいっぱい。でも思い直して、「なせば成る、為さねばならぬ何事も」だよな。

 そういうことは、いっぱいやってきましたね。逃げたら、避ける癖がつくじゃない?避けて逃げる人は、うちに来てほしくない。そこからスタートさせてもらうんでね。


勝てば官軍 だから負けるな

―最後に、中高生へメッセージをお願いします。
 仮に、中高生時代の引地さんがここにいるとしたら、何と声をかけますか?

私が声掛けるの?それ難しいな(笑)。

生きていく上で「勝てば官軍」。
だから、負けるなよ。
すべてに勝て。

それにしても、それ、良い質問だね。
俺も、使わせてもらおうかな(笑)

―引地さん、本日は長いお時間、どうもありがとうございました。

取材先: 引地精工      (タグ: ,

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